邪神の子 ~赤き瞳のクレイドル~   作:末末

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幕間 集う冒険者達① 疾風ジャンベール

「うん? 新入り入って来たんですか?」

喫茶室に入って来た冒険者がカウンターに座る。宿に荷物を置き、こざっぱりとした姿に着替えてきた冒険者。伊達男といった雰囲気と装いをしている。

貴族風の、落ち着いた上品な衣服。顔立ちと佇まいも、気品ある容姿。丁寧に整えられた口髭と顎髭が、伊達男振りを現している。

男の通り名──‘’伊達なる疾風‘’ジャンベール。通称、疾風のジャン。中級Cランクのベテランで、二十代なかばの男。風属性の魔術持ちの剣士。

「ああ。ダルガンがいうには、なかなか面白そうなやつらしい。クレイドルって奴だが、会ってみな。驚くぜ」

ニヤリと、喫茶室の亭主マーカスさんが笑う。

ほう、とジャンベールは思った。ダルガンさんが、ああいう言い方をするのはなかなか無い事だと思い、フラりと訓練場に足を踏み入れる。

ああ……懐かしいな、この雰囲気。十代の頃に散々、鍛え上げられた事が嫌でも思い出されて来た……。

 

「走れっ!走れ走れ走れっ!!」

懐かしい声……熊食いダルガンデス。自分が若手の時もああだったな……。

「よし、三分休憩。息を整えろ」

地面にあぐらをかき、息を整えている新人らしき男を見る……。

 

十代後半といったところか。へばっている新人を見る……輝く様な金髪と整った目鼻立ち。唇の形と色は、妖艶に象られている……そして、白磁の様な肌色。しかし柔な感じはない。油断ならない強かな面構えをしている様に見えた。

 

「ううむ……」

思わず唸った。何か妙な気配を感じる。なんだろうな……暗黒神の信徒の感じとも違う……白磁の青年が、こちらを見上げて来た。

目が合う。青年はにこり、と微笑んだ。

「ええと……初めまして」

「ああ……初めまして、だな。俺はジャン。ジャンベールだ。疾風のジャン、と呼ばれている」

「俺は、クレイドルです。初級訓練を受け始めている最中、です」

「よし……三分。次は素振り、百だ……数えてるぞ」

ダルガンさんが、新人、クレイドルに素振り用の木剣を渡す。

「よお。久し振りだな、どこからの帰りだ?」

早速、素振りを始めた新人を横目に、ダルガンさんが聞いてくる。

「帝都からの帰りですよ。臨時パーティーで覇王の試練場に挑んだんですが、十階で降参しました」

「ふうん。臨時パーティーが悪かった訳じゃねえんだろ?」

「勿論。それなりに名の通った三人で組んだんですが……急に難易度が上がりましてね」

十階以降からの難易度。悪魔系がグループで出現する階層。万全な準備さえ備えておけば、どうこう出来る難易度ではなかった……単純な実力不足。思い知らされた……。

「まあ。あそこは十階が一区切りだからな。あと、五階だからといって無理しなくてよかったなあ……よし、百! 三分休憩。そのあと、また走り込みだ」

肩で息をしているクレイドルが頷き、大きく深呼吸をしている。

「ところでよ。おめえ、城塞都市に何か用事あるか?」

「いえ。しばらく休暇にしようと思ってるんですが、何か?」

「おめえ、訓練教官やらねえか。ちゃんと報酬は出すからよ?」

なるほどな。クレイドルの訓練……か。

「今のところ体力造りを優先しててな。そろそろ、戦闘訓練をやらせてえと思ってんだ」

「……分かりました。引き受けますよ。俺以外の奴らに声は掛けてます?」

「いや座学の方は誰かいい奴が来たら、任せてぇんだがな。誰かいい奴、こっちに戻ってこねえかな」

「うん? 彼以外の新人は居ないんですか?」

今更ながらに気付いた。そういえば、と……。

「そうなんだよ。クレイドル以外には……三分経過! クレイドル、走れ! そうなんだよ。奴以外の新人が来ねえんだよ。その分、マンツーマンで、鍛える事が出来るんだがな」

何か嬉しそうにいうダルガンさん。徹底的に新人を鍛える事が、嬉しいのだろう……。

 

昼食前。シャワーを終えたクレイドルと訓練場近くの宿舎の近く、長テーブルを挟んで座っている。ダルガンさんは、食事の用意を頼みに行った。水を飲んでいるクレイドルを、なんという事もなく見る……。

湯上がりの白磁の肌が、微かな桜色に染まっていた。その気は無い自分でさえ、思わずどきりとするほどの艶っぽさ……こいつ手強いな。

直感。歴戦の直感が、このクレイドルを警戒すべき男として認識させた……面白いな。うん。面白い。ふむ。いい後輩と知り合ったかもしれない……。

昼食。ダルガンさん、クレイドルと三人での食事……何故か、ジェミアが当たり前の様に給事担当みたいに側に控えている。

昼食の内容は、丸パンに鶏肉団子とキャベツのスープ。香辛料をまぶした鶏肉の炙り焼き。付け合わせは、玉葱の酢漬け。

相変わらず、新人訓練の食事はなかなかにいいものだ。美味く栄養ある食事こそが、新人には必要だ。美味い食事での士気上昇は馬鹿にならん。

よし、新人の訓練教官としての実績を積んでおいても、悪い事は無いだろう……。

「ダルガンさん、戦闘訓練の教官は任せて下さい。クレイドル、これからよろしくな」

クレイドルは頭を下げて言った。

「はい。これからよろしく、御願いします」

 

「クレイドル君、スープのおかわりをどうぞ」

ジェミアが、まだ少々残っている器にスープを注ぐ。

「おう。俺も頼む」

「ご自分でどうぞ」

「てめえら、ホント分かりやすいな」

ダルガンが顔をしかめた。

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