邪神の子 ~赤き瞳のクレイドル~   作:末末

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今回、ちと短目です。


_〆(。。)


第109話 帝都ミルゼリッツ 新たな縁 自称“姉”

 

 

帝都ミルゼリッツ、南門。高さ約十二メートル。横幅約六メートルの、頑木と鋼鉄で造られた、鉄城門──堅牢な石造りの城壁の高さは、約十五メートルにもなる。当然、他の東西北の門と城壁も、同じ造りになっている。

帝都の四方を、堅牢な城壁と城門。そして、幅十メートルに深さ三メートルの堀で囲んでいる。掘は、水路の働きもしている。

堀を挟んで街道と門を繋ぐのは、鉄城門と同じ材質で造られた、巨大な鉄橋。

幅十メートルに、長さ二十メートル。因みに、鉄橋の上げ下げと、城門を開く兵士は専用の役職に就いている、ある種のエリートであり、その責任は重い。

 

街道側、鉄橋を挟んで左右には衛兵の詰所がある。ちょっとした宿舎の様になっており、一つの詰所に、常に十名ほどが常駐している。

仮眠室、食料庫、キッチンにトイレ、シャワー室等の生活空間が整えられ、計二十名の衛兵が常に駐在している。

外壁、周囲約十キロの帝都ならではの、詰所の衛兵の多さ──そして、南門では衛兵達が、少しばかり困惑している状況になっていた。

 

詰所の近くで佇んでいる女性。衛兵達は、その女性に戸惑っていた。

冒険者ギルドの受付嬢だ──輝く様な金髪。美麗に整った目鼻立ちに、褐色の肌。何より耳目を引くのは、煌めく様な赤い瞳と薄紅色の唇。

十代後半になるかならぬかの年頃(に見える)──彼女は、姿勢良く背筋を伸ばし、東の方角をじっと見つめている──唇に、微かな笑みが浮かんでいるのを、誰も気付きはしない。

 

「彼女……いつからあそこに?」

少し離れた所で、衛兵二人が話をしていた。疑問を呈したのは、今だ、新入り然とした雰囲気の若手の衛兵だ。その疑問に答えたのは、歴戦の雰囲気をまとう、ベテランの衛兵だ。

「昼ちょっと過ぎくらいかな。いきなりやって来たんだよ。何用かと聞いたら、『弟を待ってます』だと」

「冒険者ギルドの仕事を、放ってですか?」

「いや、半日休暇を取ったと言ってたな」

弟を待つため、半日休暇を……はあ、とため息混じりの若手。

 

門を通る前に、帝都での用件と身分証確認をされている訪問者達から見ても、彼女は目立つ様で、チラチラと視線を彼女に送っている。

無論、詰所近くにいる彼女に声をかける者はいないし、彼女もまた、視線に気付いているかいないか、受け流している。

「はーい、確認が済んだなら、速やかに進んで下さーい。帝都の滞在が、心地良いものでありますようにー」

衛兵達が声高に、訪問者達に慣れた様子で声をかける。のんびりした口調ではあるが、視線は鋭く、訪問者達の様子を探っている──「あっ!」

受付嬢が不意に声を上げると、凄まじい勢いで駆け出して行った。

何事かと、衛兵達がざわめいた。

「止まらないでー、何でもないですから、落ち着いて進んで下さーい」

声を張り上げながら、訪問者達を誘導する衛兵達。

 

 

「そろそろ着くぞ」

グランさんの声に、目を覚ます。グレイオウル領を昼過ぎに出発して、三度の休憩を挟み、約三時間半で帝都に到着。兵站街道と云うだけあって、移動はかなりスムーズだった。

さらには、馬車も良い。それもそのはずで、グレイオウル家の専用馬車で、御者さんもグレイオウル家に仕えている人だ。馬車内は、夏は涼しく、冬は温かくなるような仕組み──涼温の風を発生させる魔法陣が、床に貼り付けられている。これは、ラーディスさんの開発した物で、魔道具として特許を取得しているそうだ──ふうぅ~あ~あ、と大あくびをしながらシェーミィも起き出した。

 

「クレイドル、外を見ろ。帝都南門が見えてきたぞ」

フェイスガードを引き上げ、開いた窓から外を見る……おおお、凄いな。前世のテレビで観た、中世から残る城郭や城壁とは、明らかに違う。この目で直接見ているからかもしれないが、いや……これは凄い。近くで見たら、さらに凄く感じるだろうな。さすが帝都。規模が違う……。

 

南門の前には、帝都への訪問者達が列をなしている。その少し前、馬車の停泊所に馬車が停まり、身に付けている物以外の荷を、荷台から降ろす。

時刻は夕方前。意外と早く到着した。兵站街道と馬車のお陰だろうな──間近に見る鉄城門と、堀を挟んで街道を繋ぐ鉄橋。凄いな……帝都の威風が、実感となって迫って来る様だ。

「うん?」

グランさんが南門を見る。つられて南門を見ると、並んでいる訪問者達に騒ぎが起こっている──何ぞ?

 

門の前に並んでいる、帝都の訪問者達を蹴散らす様に、俺の前に女性が飛び込んで来た──その女性が開口一番言い放った言葉は……「私が、姉です」

ニコリと笑う、女性。何とも純粋で、混じり気の無い笑顔……いや、怖いんですが?!

「ええ、と……」

戸惑う俺の腕を、ガシリと掴む女性。

「さあ、行きましょう。大丈夫です。お姉ちゃんに任せればいいのです」

グイグイと、引っ張る女性を改めて見る──ギルドの受付嬢!? 力強いな!!──誰かー! 男の人呼んでー! 誰か、男の人ー!!

 

「ちょっとー! 何!?」「おいっ! 何のつもりだ!?」

シェーミィとグランさんの抗議も何のその、受付嬢は俺の腕を掴み、グイグイと衛兵詰所に向かって行く──「弟です。このまま通ってもよろしいですよね」

疑問系ですらない、断固たる発言……いや、衛兵さん困ってるんですが?

「え、ええと……?」

若手らしい衛兵さんが、俺と受付嬢を交互に見て戸惑っていたところに、ベテランらしき衛兵さんが来た。

「まあ……ギルド関係者が直に連れて来たんだ。訳アリって事で、いいだろ。見たとこ冒険者だな? 冒険者証見せてくれ」

冒険者証を取り出し、提示する。

「……うん? 珍しいな。二枚羽根か。という事は、訓練期間二ヶ月だったのか」

「あ、はい」

「初級クラスのAランク、クレイドルか……うん、通用口に案内しよう。さ、着いてきな」

冒険者証を返してもらい、ベテランさんのあとに着いて行く。

 

開かれた城門のすぐ横手にある扉をノックする、ベテランさん。

扉に設置された小窓が開き、向こう側で待機していたであろう、衛兵が尋ねて来た。

「どうした?」

「冒険者ギルドの関係者だ。通してくれ」

おう、と向こう側の衛兵が答え、小窓を閉めた。

ガチャ、ガキン、と鍵を開ける音。すぐに扉が開く。

「よし、行こうか」

ベテランさんに促され、通用口を通る──並んでいる人達にすまなく思う。グランさんとシェーミィとは、冒険者ギルドで落ち合えばいいが、どう説明したものかな……。

「早速、冒険者ギルドに行きましょう! お姉ちゃんに任せればいいのです。リッグさん、有難うございました」

「ああ。こういうのは、頻繁にはやめてくれよ?」

「はい。では、失礼します」

リッグさんというのか、覚えておこう。というか、引っ張るのやめて!

 

引きずられる様に連れて行かれる、クレイドルを眺めるリッグ。

(顔ぐらい、確認しとけばよかったかな?)

鷲の頭部を模した黒い兜。フェイスガードを下ろしていたので顔は見えず。

(声からして、うちの若手連中くらいか?)

まあ、いいか、とリッグ。顔を合わせる機会はあるだろうさ──「帝都へようこそ。二枚羽根のクレイドル」




帝都到達を一応の区切りとして、近いうち、今までの登場人物のまとめ、おさらいをしようと思います。


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