邪神の子 ~赤き瞳のクレイドル~   作:末末

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修行や訓練パートはいらぬ! といった読者諸兄には不向きな話が続きます。
クヒャラララ(笑い声)


第11話 本格的な体力訓練と戦闘訓練

 

「剣がぶれない様に柄を押さえるんだ! 余計に疲れるぞ! あまり前のめりになるな! 倒れるぞ!」

ジャンベールが、クレイドルに叫ぶようにアドバイスをする。今、クレイドルの格好はいつもの訓練着ではない。

訓練着の上に、訓練用の金属で補強された革鎧を装備していた。腰には同じく訓練用の剣。そして盾を担いでいる。

「姿勢を意識しろ! 上半身を起こせ! 顔を上げろ、前を見るんだ!!」

「はい!!」

勢いよく返事をするクレイドル。

「まだ余裕あるみたいだな。あと一分追加!」

ガシャガシャと音を立てながら、走り込みを続けるクレイドルを見ながら、ダルガンデスは微笑んでいた。

(これまた、キツイこった。だがよ、これからもうちっとキツくなるぜ)

 

「よし、走り込みは終わりだ。剣を抜いて盾を構えろ」

すうっと深呼吸一つ。クレイドルが構えた。

何の合図もなく、ジャンベールが手にした剣で打ち掛かる──。

 

盾から伝わる衝撃。まだ息が充分に整っていないが、何とか受け止めた……うおっ!

追撃が来た。体当たりだ。勢いよく押され踏ん張るが、それを利用された。横にまわりこんだジャンベールさんに足を払われ──

「はい。死んだ」

ジャンベールさんの声に頭を上げる。仰向けに倒れた俺の喉元に、剣が突き付けられていた。

「ま、こんなとこだな。よし、昼飯までもう少しだ。クレイドル、シャワーでも浴びてこいや」

「……はい」

疲れた。いやホントに疲れた。標準装備?を身に付けての訓練は、ホントに疲れる。その後の戦闘訓練、一分も持たないのはまだまだ未熟なんだよなあ……努力だ、努力……。

 

「鉛はまだ入れてねえよな?」

「いや、一枚入れてます。荷物を持っての走り込みを早い段階でやらせるつもりですので」

 

訓練用の革鎧。鉛の板を三枚仕込む事が出来る様に細工がされている。鉛板一枚。約一・五キロ。最大四・五キロ。一荷物ほどの重量。

もちろん、訓練を受けている新人には伝えていない。ジャンベールの訓練は軍隊式。

もっとも、ジャンベールから言わせれば平坦な訓練場では少々、甘いとの事。起伏のある場所でこそ、この訓練は活きるというのが、元兵士のジャンベールの言い分だった。

 

シャワー後の昼食の時間。ダルガンさんとジャンさんとの、長テーブルを挟んでのいつもの時間。午後の予定を話し合いながらの会話。なかなかに充実した時間帯だ。

昼食のメニューは、たっぷりの豚肉に玉葱とジャガイモの汁物。そして、白米と酢漬けの青野菜。豚汁と飯のセットという感じか。飯と汁で充分な食事──

 

「今のとこ、座学を指導出来る奴がいねえからな。しばらくは、体力造りと戦闘訓練しかやる事はねえなあ。まあ、体力造りをしときな。体力はいくらあってもいいからなあ」

ダルガンさんがいい、ジャンベールさんが頷く。

「座学の方は、何があるんですか?」

「まあ、多岐にわたるけれど、基本が中心だな。基本中の基本を知っていれば、充分という感じだが……教え手次第だろうな」

ううむ……知識面でも、最低限の事は知っておいた方がいい、という事だな……。

 

食事時にジェミアさんとリネエラさんがいなかったのは、食事担当のマーカスさんとダルガンさんにきつく止められたからだという。

「てめえらの仕事じゃねえだろうが。自分らの仕事をしろ」

と言われての事だったという。マーカスさんとダルガンさんは、二人から──横暴だ。強権だ。奥様に言いつける。ハゲ。筋肉だるま。ムキムキ変態マッチョ野郎。少年趣味──

数々の暴言を浴びせられたとの事だ……酷くないか。

「あいつら、ちょっとおかしくなってるが気にするな。座学は今のところ気にしなくていい。先に渡した教科書に目を通しておけ。今のところはそれで充分としておきな」

 

宿舎に戻り、教科書に目を通す。異世界知識を使う気は無い。基本的な事はしっかりと身に馴染ませておきたいからな……昼後の休憩時間は有意義に使いたい。

再訓練は、昼食の一時間後。昼寝するには気が高ぶっている……基本が学べる教科書から、なるべく知識を吸収するとしよう。メモ、大事!

鉛筆に似た筆記用具があるならば、書き込みは大事! この鉛筆、先人の転生者の知識の賜物なんだろうなあ……感謝しかないな。

 

採取。採掘。初級向けの依頼は、大概が常設依頼との事。この依頼がなかなかに大事で、これらの依頼をコツコツこなす事が、ギルドと依頼者達の信頼に繋がるのだそうだ。

それと、怪我で無理ができない冒険者の仕事にもなるらしい。

常設依頼ではない採取、採掘依頼は少々難易度が上がるとの事。特別な場所でしか取れない、貴重な採取、採掘品を得るには危険な場所に行かないといけないからだ。

あとは討伐依頼。初級が単独でこなすのは危険な依頼なので、パーティーを組む事が前提になっている──他にも、依頼は多岐にわたる。まずは知識と戦闘技術を身に付けてからだ。焦りは禁物だ。

 

「キエェェエエ!!」

くらえっ! 一の太刀!! 好きにかかって来いと言われたので、好きにさせてもらう──。

当たり前のように避けられ、背後から肩をぶっ叩かれた。

「それはダメだろ。なんだ今の大振り」

マーカスさんに呆れられた。ダルガンさんに負けず劣らずの体格にもかかわらず、軽やかな体捌き。なんか、悔しい。

「現役時代は‘’精妙剣‘’だの言われてたからなあ。そんな大振り、通用しねえよ」

ダルガンさんが笑う。ジャンさんは苦笑していた。ぬう……マーカスさんの動きを思い出す。

特に速い動きでもなく、するりとすれ違う様な動きだった。

「なんです? さっきの動き。避ける様な動きじゃなかったですよね?」

「あ? 踊りだよ、踊り。剣も優れれば舞踏に似るってな。逆もまた然り……俺が学んだ流派の教えだよ」

ガハハと豪快に笑うマーカスさん。この豪快さとさっきの精妙な動きが、全く繋がらない。

むう……やはり悔しい……。

「もう一度お願いします」

「おう。来な」

ニヤリと笑い、剣を構えるマーカスさん。剣先を下段にダラリと下げた、構えとも見えない、妙な構え。

よし、少し小細工させてもらうぞ。俺は盾を拾い、構える。剣はなるべく見えない様に、背後に構えた。盾をマーカスさんに向け、少し身を沈める。そして、少しずつジリジリとマーカスさんに近づく……マーカスさんは不動。俺が間合いに入ってくるのを、待っているのだろう……おりゃっとばかりに盾を放り投げ、マーカスさんの足狙いで、姿勢低く駆け出す。マーカスさんが盾を弾く音が聞こえ──ない……。

「ダメだなあ。それも」

マーカスさんの声が背後から聞こえたと同時に、衝撃を頭部に感じた。

「まあ、狙いは悪くなかったがな」

 

マーカスの声は、クレイドルには聞こえなかった──

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