邪神の子 ~赤き瞳のクレイドル~   作:末末

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うおォン回とか。





第121話 “豚と鶏亭”での血肉の晩餐

 

 

「二名様、ご案内しまーす!」

店の中は、二つに区切られている様に見えた。

入って左側と右側の客層が、何となく違う様な気がする──「気付いた? 左側が、冒険者や衛兵さん達、んで右側が一般の人達だよ」

なるほどな。衛兵はともかく、冒険者連中は基本、荒くれのイメージがどうしても付きまとうからな……区別されているのは、悪い事じゃない。

まあ、もし冒険者が暴れても、衛兵か同業者がすぐ抑えるだろうし。

 

少し奥の、左側の二人テーブルに案内された。店内を見回す。煙りが立ち込めているかと思ったが、そうでも無い。

天井、壁に排気口があり、そこにほとんどの煙が吸い込まれている。

換気も万全か。住宅街近くにあるだけあるな。

「さーて、取りあえずは、果実水と豚バラ皿と鶏皿にしようか?」

リリンの言葉に、メニューを見てみる。極めてシンプルなメニューだ。

肉は四種、豚バラと豚トロに鶏肉、鶏皮──お値段、各皿銅貨三枚。安い。

飲み物は、果実水。果実水炭酸割り。香草茶。炭酸水。酒は無し。野菜は酢漬け野菜のみ──いいな。

「ああ。それでいい」

リリンが、早速店員を呼ぶ。

 

「七輪置きまーす。ご注文の品、少しお待ち下さいね」

店員がテーブル中央に、炭火の七輪を置く。七輪の上には網。おお……前世でよく行っていた、焼肉屋を思い出すな。

「よお、リリン。来てくれたのかい」

果実水を運んできたドワーフ。リリンと同じ、栗色の髪と髭。

髪は丁寧に撫で付けられ、波打つ顎髭には、黒金の髭輪。髪飾りがないから、男だな。

「うん。肉がたらふく食べたいって人、連れてきたよ」

ほおう、とドワーフ男性。俺をまじまじと見ると、腹を揺らして笑った。

「すげえ顔立ちしてんな。女の従業員には、相手させられねえな」

わっはっは、と豪快に笑う。髭も揺れる。

「この人、ここの店長であたしの叔父さんなのよ」

「おう。リリンの叔父の、バルガン・ウィンターヒルだ。よろしくな」

差し出される手を握り、握手をする。心強い感触だ。

「たっぷり食べていきな。おまけしてやるよ」

豪快に笑いながら、バルガンさんは厨房に戻って行った。

 

「お待たせしました。こちら、豚バラ皿と鶏皿です。少し焦げ目が付くまで焼いて下さいね」

店員が、豚バラ皿と鶏皿を テーブルに運んできた。

一皿に、肉六枚が乗っている。一人なら、二、三皿で充分な量だ。

そして、トング。うん、いいな。本格的な焼肉屋だ。

「塩と香辛料で、充分味は付いているけど、物足りなかったら、タレを追加するといいよー」

ほう、まずは塩という事か。

リリンが、豚バラと鶏肉をトングで摘まみ、バランスよく網の上に乗せていく……ここは、リリンに任せよう。

 

焼けた端から、食っていく。リリンが次々と肉を乗せていき、ある程度焼けた端から食っていく。焼くの上手いんだよな。

「ほらこっち焼けてるよ。すいませーん、注文お願いしまーす」

パクパクと、肉を口に放り込むように食べるリリン。俺も負けじと、肉を食べる。そろそろ、味変えるかな……甘辛タレにさっぱりダレ、か。酢漬け野菜も頼むか。

「おう、注文は?」

バルガンさん、直々に注文を聞きに来た。

「えーとね。豚トロに鶏皮。あと、果実水お代わりね。クレイドルは?」

「甘辛タレとさっぱりダレ、お願いします。果実水炭酸割りと、酢漬けも」

「……おう以上だな。網も取り換えさせよう」

のっしのし、とバルガンさんが厨房に戻る。

 

「豚トロ、いいくらいだよ。鶏皮は、もうちょっとかなー」

ひょい、と俺の取り皿に、焼けた豚トロを乗せてくるリリン。

リリンの焼いてくれた、豚トロの焼き加減は何とも応えられないものだった。

脂が落ちる直前まで焼き、中心まで火が通った状態──ミディアムレア、という感じだ。

うん、美味い。リリンも、焼けた豚トロをパクついている。

鶏皮が焼ける匂いが、何とも待ち遠しい。

「鶏皮、お待たせねー。さっぱりダレがお勧めだよ」

丁度いい感じに焦げ目が付いた鶏皮を、リリンのアドバイス通りに、さっぱりダレにくぐらせて、口に運ぶ……おお、柑橘系のタレか。鶏の脂と柑橘の薫りが、混じった味わい……。

「美味いな。うん」

「だよねー。口直しに、さっぱりダレは必要だよ」

鶏皮をさっぱりダレに付け、口の中に放り込むように食べるリリン。いい、食いっぷりだな。

よし、まだまだ食える。残った果実水炭酸割りを、ぐっ、と干す。

「すいませーん。注文お願いしまーす」

店員さんが来るまで、白菜の酢漬けを摘まんでいよう……美味いな。やや甘めなのがいい。

 

 

「四名だが、大丈夫か?」

「はい。大丈夫ですよー、奥の席になりますけどいいですか?」

「ああ、構わないよ。お前達もそれでいいな?」

構いません! 若い声が答える。

「四名様、奥テーブルに、ご案内しまーす! こちらへどうぞー」

 

甘辛タレに付けた豚バラを堪能していると、隣の席から、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

黒ずくめの四人組──その内の一人。長い黒髪を結い上げている男性。グランさんだ。

こんな場所で合うとはな……今は、暗黒騎士団同士の食事会か何かだろうか?。

話しかけるのは、遠慮するのが大人ってものだ。

 

──「クレイドル、ほら豚トロ焼けたよ。鶏肉はもう少しだねー」

ひょい、といい具合に焼けた豚トロを、俺の取り皿に分けるリリン……。

豚トロを、さっぱりダレに付け、口に運ぶ。豚トロにも合うな。皮鶏を甘辛タレにつけたら、どうだろうか?

やはり、合う。リリンの焼き方もいいんだよな。

鶏肉の焦げ具合。豚トロの焼き加減。真似できないな、これは……それにしても、ここに果実酒炭酸割りの一杯か、米でもあれば……。

まあ、贅沢か。美味い肉に会っては、ただ焼いて食うべし、と昔の人も歌っていたしな。

 

「クレイドル、あと二皿くらいいく?」

「うん、そうだな……豚トロと鶏肉いこう。あと、飲み物か」

腹八分ってとこにしておこう。

「すいませーん。注文、お願いしまーす!」

「おーう、ちょっと待ちなー!」

バルガンさんの声が聞こえた。

 

 

肉が来るまで、果実水と酢漬け野菜を口にしている。今日は若手連中に、たまには焼肉を奢るのもいいと思い、“豚と鶏亭”に連れてきた。

たらふく肉を食べられるのは、ここが最良だからな──うん? 聞いた声が、隣から聞こえた。

隣席に目をやると、ドワーフと向かい合い、肉を口に運んでいるクレイドルの姿があった。

(早速、知り合いが出来たか……ふむ)

「七輪起きまーす。お肉は直ぐに来ますから、少しお待ち下さいね」

炭火の七輪が、テーブルを明るくし、炭火の薫りが食欲を駆り立てる。

「今日は、たっぷり食べるといい。たまには、肉尽くしといこうか」

はい!、と若手達が嬉しそうにいう。

 

「お待たせしました。豚バラに豚トロ、鶏肉を二皿ずつですね」

七輪を囲む様に並べられる、肉皿。早速トングを取り、肉をバランスよく網に配置する。

早く焼ける豚バラを中心にして、少し時間がかかる鶏肉は、端に配置する。

「焼けるまで、酢漬け野菜を食べていろ」

今日は、若手達の食欲に付き合ってやるか……。

 

 

「すいませーん。お会計お願いしまーす」

リリンが店員を呼ぶ。まだ食べられるが、腹八分にしておくか……いや、たらふく食えた。

この後は、宿に帰ってゆっくりと寝るだけだな。

 

「おう。銀貨三枚ってとこだな」

直ぐにやって来た、バルガンさんが云う。うん? いくら何でも安くないか?

「叔父さん、ちょっと安くない?」

「言ったろ。おまけしてやるって。今日のとこは、酢漬け野菜と飲み物は、俺の奢りだ」

あっはっは、笑うバルガンさん……う~ん、今日のところは、甘えておくか。

「うん。今日のところは、ご馳走になっておくね」

「おう。リリン、いつでも来な。クレイドルと言ったな? 今後とも、よろしくな!」

豪快に笑うバルガンさんに、こちらこそよろしくと、挨拶を交わす。

 

 

いや、いい店だったな──“豚と鶏亭”。

流血と苦痛の茨の外殻(ソーンオブマックスペイン)との、相性がいい店だ……血肉の補給を、充分にさせて貰ったな。今後とも、お世話になりそうだ……。

血肉を満たした後は、休息だ。たっぷり睡眠を取る事にしよう。

「リリン。明日は、休暇にするつもりだ。血を回復したい……」

店から出て、リリンに告げる。

「うん。そだねー。ゆっくり休みなよ」

リリンの言葉に、甘える事にした。

 

リリンは、わざわざ俺の宿まで送ってくれた。

「あたしいつもは、ギルドの喫茶室にいるから、いつでも来るといいよー」

「ああ、分かった」

じゃーねー、と手を振りながら、リリンは街並みに姿を消して行った。方向からして、家に帰るのだろう。

さて……俺はどうするか。時間はまだ早いんだよな。宿で一杯軽く飲んで、眠るか。

 

 

夜明けとともに、目が覚めた……昨日、血を補給した事で体の調子がいい。やはり、肉だな。肉を食わないと。

窓を開け、外気を取り入れる──心地いい風だが、冷たい。そうか、冬物買わないとな。

よし、魔力制御の時間だ。その後は、朝食まで一服といくか……。

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