邪神の子 ~赤き瞳のクレイドル~   作:末末

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第12話 縁は繋がっていく

「今日一日は、休暇にしな。骨休めも大事だぜ」

朝食を一緒にとりながら、ダルガンさんが言った。ジャンさんも一緒だ。

朝食のメニューは、パンにベーコンエッグ。玉子は固めで頼み、ベーコンは少し強く焼いてもらった。スープは、鶏皮と玉葱のさっぱりとした味わい。付け合わせはいつもの野菜の酢漬け。朝食としては、なんの問題もない。

「城塞都市を色々回ってみな。それなりの観光名所があるからよ」

旺盛な食欲を見せながら、ダルガンさんがいう。

「良ければ、俺が案内してもいいが?」

ジャンさんが聞いてきた。そうだな、ここを拠点としているジャンさんに頼もうか。

「じゃあ、お願いしてもいいですか」

「紹介しておきたい場所も色々、あるからな」

 

朝食後、一休みして都市を案内してもらう事となった。城塞都市はその名の通り、全体的に質実剛健な造りとなっているものの、独特な歴史があるので、創成期の記念碑や、覇王公に関係する遺物が納められている博物館もあるという。

正直、そういう歴史を感じさせる場所や博物館は好物だ。前世で、茶器の展示会に入り浸った事もあるくらいだ。

 

ジェミアさんとリネエラさんの目を掻い潜り、ギルド内から出るのは、はっきりいって面倒だったが、そこはダルガンさんとマーカスさんに協力してもらった。

 

城塞都市の大通りをジャンさんと歩く。

「紹介しておきたい宿がある。中級宿なんだがな。他の宿に比べて、いいとこなんだ」

「なるほど、なんて店名なんですか?」

「オーガの拳亭って名前だよ……店名の由来はまあ、行けば分かる。ところで、見ておきたい所はどこかあるか?」

「そうですね~雑貨屋は、知り合いがいますので、武具屋を覗いて見たいですね」

 

鍛冶・スティールハンド──豪快な達筆の看板だ。

「俺が知る限りは、ここの品揃えは初心者から上級者まで、幅広く取り扱っている。品質確かな物が欲しいなら、ここに来たらいい。もっとも、安物は置いてないけどな。冷やかしでもしてみるか」

ジャンさんは何か嬉しそうに、店に足を踏み入れる。

 

おおう……右も左も、色々な武具。男子の心を騒がせるに充分な景色だ。両手持ちの剣。斧。鎚やら何やら、盾に鎧兜。細々とした武器。投擲用の短刀に手斧。そして、色々な種類の弓……いや、いかにもって感じの店だ。

 

「へえ、新人かい。久し振りだな。何か必要な、って……まだ早いか」

「まだ、訓練中ですからね。この店を利用するのは、訓練を終えてからですよ」

 

「おう。俺はストルムハンド。見ての通り、ドワーフだ。ジャンが言ったように、安物は置いてねえ。だがな、ここで買った品の修理。サイズの変更は、基本的に全て無料だ。そうでなくとも、格安でやってやるよ」

身長百五十センチくらいか。がっしりとした、頑健そのものといった体格。丸太のようなぶっとい腕。胸元まで伸びている整えられた髭は、銀細工が施された、二つの髭輪?で纏められている。

「初めまして、クレイドルといいます。今後ともよろしくお願いします」

「ほう……店員に、女を雇ってなくてよかったぜ」

わははは、と豪快に笑うと、顎髭が揺れた。

 

「この兜、なかなかいいですね」

首筋まで覆われている、鷲の顔を模したフェイスガードが付いた革の兜。兜の縁は、金属で補強されている。おお、重さもいいぐらいだ。

 

「それ気に入ったか? 被ってみな。こうやって後頭部のベルトを……よし、どうだ?」

おおう……これはいいな。フェイスガードを下ろしても、視界は少々狭くなるが問題なし。

慣れれば、どうという事も無くなるだろう。

フェイスガードを引き上げ、兜を脱ぐ。そして兜をまじまじと見る。これはいいものだ……買っちゃう?

「これ、いくらです?」

「おう。お買い上げか? そうだなあ……なかなかいい出来だからな、銀貨五枚ってところだが、まあ祝儀だ、銀三枚と銅五枚でいいぜ」

「買います」

即決。良いものは直ぐに入手しなければ、ならない。これはいいものだ。うむ。

「おいおい、即決か。いい買いっぷりだな」

「良いものは、直ぐに決めないといけないんですよ」

兜を撫で回しているクレイドルを、苦笑しながら暖かい目で見る、ジャンベールとストルムハンド。

釣りはいいですと銀貨四枚を渡そうとしたが、「そういうのは十年早い」と断られた。

 

「また、来な」

ストルムハンドさんに見送られ、店を出た。何かいい掘り出し物を見つけた気分になった。

「少し早いが、昼食にするか?」

「そうですね。どこかいいとこありますか?」

「ふむ……オーガの拳亭に行こうか。あそこの女将に、お前を紹介しておこう」

ジャンさんがいうには、オーガの拳亭は宿であるが、宿泊するにしないに関係なく、普通に食事を出してくれるのだという。

普通の宿は軽食のみで、食事をする時はどこかしらの食堂に行くらしい。

 

「オーガ亭の食事は、なかなかだぞ。マーカスさんの食事とも比べても、なんら遜色ない。人に紹介するに充分な店だ……まあ、女将はなかなかに、曲者だが」

オーガ亭と略したジャンさん。美味い食事と曲者の女将。マーカスさんの食事と比べても遜色ないか。ううむ、楽しみだ。

 

おう……曲者の女将か。うん、凄いな。マダムというより……マンダムって感じだ、な。

「あらあら、これはこれは、ずいぶん可愛い仔犬ちゃんを連れて来たわね~」

マーカスさんの食事どころか、体格すらも遜色ない……薄化粧のオネェだった。身長、肩幅、腕周り、拳。というか、大胸筋がね……打撃力を誇示しているんよ。フック、アッパーが得意ブローですといわんばかりの大胸筋が……。

 

「ミランダさん、こいつは新人のクレイドルです。数日前から、新人訓練を受けてます」

「ようやく新人ちゃん、来てくれたのね~」

しみじみといった感じでマンダム、いやマダムがいう。

格好も凄いな。肩出しの、黒を基調とした金色で彩られたチャイナドレスの様な服装。がっつり切れ上がったスリットから覗くは、逞しく引き締まったおみ足。蹴りも凄いだろうな……。

高く結い上げた艶のある黒髪。形のいい耳には、ルビー?のピアスが嵌められている……。

 

「少し早いですが、昼食出来ますかね?」

「大丈夫よ~ちょうどいい豚と鶏が入ってるのよ。野菜も新鮮な物揃ってるわよ~」

バチコン、と打撃力のあるウィンクを叩きつけてくる、マダムミランダ。

「ポークステーキとおまかせサラダ、それにスープ、お願い出来ますか……クレイドルはどうする?」

「あ、はい。同じのでお願いします」

「んふふ~ちょっとお時間もらうけど。いいわよ。パンでいいわよね~」

ミランダさんは踊るように、厨房へと戻っていった。

「ここは何を注文してもハズレはない。これだけで、いい食事どころだ。値段も安いしな」

いつの間にかテーブルに置かれていた水差しの水をコップに注ぎながら、ジャンさんがいう。

 

食事はジャンさんの言った通り、かなり美味しかった。いい焼き具合のステーキと、シンプルな具材のとろみのあるスープ。サラダは緑黄色揃ったバランス。これらで銅貨五枚は安いと思う。

デザートの、ウサギカットのリンゴに少々驚いたが。

 

 

 

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