邪神の子 ~赤き瞳のクレイドル~   作:末末

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まだまだ続く、訓練と修行パート。
排除も否定も多様性の一つ!! ウヒヒヒ(嘲笑)


幕間 集う冒険者達② 教師レンケイン

 

 明け方丁度に、城塞都市に到着できた。

久し振りの城塞都市が、明け方の陽光に照らされているのをのんびりと眺める。

 城門で入国を待つ人々の顔に、多少の焦りはあれども、暗い顔は無い……帝国領内を行き交う人々の雰囲気は、どれも明るい。覇王公の威風が今だ活きている証なのだ。

 さてと、並ぶか……人々の中に入り雑じる。

 

 冒険者ギルドに足を踏み入れる。懐かしさを感じる喧騒。早くも自分に気付いた荒くれ連中が声をかけてくる。

「よう! 先生、お帰り!」「貴族院はどうだった?」「薬学、復習したいんだけど!」

 なじみの人達に挨拶をする。ここだな。やっぱり僕の居場所はここだ。気のいい荒くれの人達。澄まし顔の貴族院の雰囲気とは違う。この喧騒こそが、僕の居場所だ。

 

 深緑色のローブを纏った、藍色の毛並みをした青年。髪は肩のところで綺麗に切り整えられている。貴公子然とした柔和な顔立ち。

 荒くれ集う場所には、少々似つかわしくない風貌ではあるが、何の違和感もなくギルド内に溶け込んでいる。

 通称、“教師”レンケイン。二十代前半の理知的な雰囲気を持つ狐族の男。腕っぷしではなく、知識を武器とする冒険者。 採取、採掘、魔物、魔獣の知識を武器として、中級のCランクに到達した、ある種の変わり者の冒険者。荒くれ連中から敬意を払われるに充分な実力者だ。

 

「よう。久し振りだな、レンケイン」

ダルガンさんの声。この顔も久し振りだな……何だか機嫌が良さそうだ。

「何か、いい事でもありました?」

ニヤリと笑う、ダルガンさん。

「おう。久し振りに、新人が入ってなあ……くくく、なかなか面白い奴だぞ」

 ふうん。ダルガンさんがこういう事を言うのは珍しいな……。

「今、訓練所でジャンとマーカスに鍛えられてるぜ。見学にいってみな」

 職員が、ダルガンさんを呼ぶ声。おう、とダルガンさんが応え、のしのしと去って行った。

 

 訓練所に行くのも久し振りだなと思い、足を運ぶ。

 

「キエエェェェエエ!!」

 気合い、一閃。訓練用装備に身を堅め、フルフェイスの兜を被った男が、ジャンさんに打ちかかっていく─と見せかけ、左手に持っていた盾を投げつけた……あっさりと避けられ、すれ違い様に腹を打たれ、うずくまる。

「見え見えだ。今から盾を投げますよといわんばかりだったぞ。小細工ありきの攻撃はよせよ」

 呆れて、ジャンベールがいう。

「チクショウ!……もう一度お願いします!」

 若い声。十代後半って感じだ。剣を正面に構え、ジリジリとジャンベールに近付いていく。

 ジャンベールが、前方に突き出す様に片手で剣を構えている─フルフェイスの男が、ずいっと前に出ると同時に、目の前に突き出されたジャンベールの剣を弾き、一気に間合いを詰め、斬りかかる。

 ジャンベールはすうっと左足を引き、半身になると、くるりとフルフェイスの男と体を入れ換え、背後に回る。

「うおぐっ!?」

 ジャンベールは背後に回り込むと同時に、フルフェイスの男の両肩をビシバシと叩いた。

「動きに無駄が多いんだよ。色々考えているのはいいが、上手く連携出来てねえんだ。だから、小手先技になるんだよ」

 肩を押さえてうずくまる、フルフェイスの男にマーカスさんがいう。

 

「よし、昼飯準備してくるからな。シャワーでも浴びてこい。続きは午後だ、って……おう、レンケインか、久し振りじゃねえか。ここで飯食っていけや」

こちらに気付いたマーカスさんが声をかけてきた。

「はい。そうします」

マーカスさんが手を振り、厨房へ向かって行く。ジャンさんがにこやかに話しかけて来た。

「レンケイン、久し振りだな。貴族院はどうだった?」

「まあまあってとこかな。お澄まし貴族の子らって、知識欲が薄くてね。魔導院の依頼を受ければよかったよ……それより、彼が新入りかい?」

 肩を擦りながらうずくまるフルフェイスの男を見る。

「ああ、なかなか鍛えがいのある奴だよ。クレイドル、紹介しておこう。俺と同期の中級Cランク“教師”レンケインだ」

フルフェイスの男は立ち上がり、兜を脱いで頭を下げた。

「初めまして、クレイドルです」

 にこりと微笑む、新人……汗で濡れた金色の髪が、艶かしく額と頬に貼り付いている。

 漆黒の瞳。整った目鼻立ちと薄紅の唇──思わず見惚れそうになったが、目を反らす。

「クレイドル、汗を流してこい」

ジャンの声に、クレイドルが頷き、去って行った。

「凄まじいね。あれは……」

クレイドルといったか。あの顔立ちは尋常ではない。人を狂わせるに足る顔立ち。あの美貌を道具として使ったなら、どういう事になるのやら……まあ、大げさだな。うん……大げさだ。

 

「訓練所の食事、久し振りですね……美味い」

 玉葱、じゃがいも、ニンジン、ベーコンのスープ。鶏ガラと野菜の出汁か。そして、鶏と玉葱炒め。美味い……付け合わせには、久し振りに見た酢漬け野菜。これだよ、これ。

「やっぱり、酢漬け野菜が無いと食事をした気になりませんねえ……」

「うん? 貴族院の食事は口に合わなかったのか?」

マーカスさんが聞いて来る。そうなんだよな。

「味は良かったんです、上品で。でも、美味くはないんですよ。それに何より、酢漬け野菜が無い」

「それは、物足りないな」

 ジャンさんが笑う。酢漬け野菜を食事前にまずは一口。それが、作法のようになってるからな。

「マーカスさん、スープのお代わりお願いします」

 おうよ、とマーカスさんがクレイドル君の皿にスープを給仕する。たらふく食べるといい、新人君。僕らの時もああだったなあ……にしても、この美貌……全く。

 

「で、クレイドルの座学担当を受けてくれるんだな?」

「ええ。喜んで」

 即決。後進の育成は、ある意味義務だと思うからだ。

「やっと座学担当決まったかあ……ジェミアとリネエラがうるさくてな、体力バカになる前に座学をやれとな。何だったら自分達にやらせろってなあ……アイツらにクレイドル任せたら、何するかわからねえからな」

 ダルガンさんの言葉に少し笑ってしまう。あの容姿だからな。受付嬢(二人)がとち狂うのもわからないでもない……。

「頼むわ。ちゃんと銭は出すからよ……受付嬢(二人)に目をつけられるだろうが、何とかなるだろ」

「……え?」

 

 

 キエエェェェエエッ!!──クレイドル君の気合いが、遠くに聞こえた。

 

 

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