邪神の子 ~赤き瞳のクレイドル~   作:末末

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第148話 碧水の翼の晩餐と帝都の過ごし方

 

 

 

夕食は、“黒牛亭(こくぎゅうてい)”で取る事になった。

面子は、レンディアにグランさん。そして、ミザリアスさんにリリン。

ミザリアスさんとリリンは、俺と夕食を取るために宿に来たのだが、せっかくだからという事で、皆で黒牛亭にやって来た。

「おう、いらっしゃい。中々の面子だな」

牛人族(ミルスタス)のルータスさん、店の大将が出迎えてくれた。個室の方がいいだろ、という事で部屋に通された。

 

「リリン、久し振りね。“霧雨の風(ミストウィンド)”の面子は来てないの?」

「休暇中なのよ。まあ、明日にでも合流すると思うわ」

レンディアとリリンは、顔見知りだったのか。リリンは碧水の翼を知っていたしな。

注文を取りに店員が部屋にやって来た。まずは各々、飲み物を頼んだ。

さて、メニューを確認だ。食事と飲みを兼ねてだから、腹拵えが出来る物と摘まみか?

 

「青菜の焼き飯六人前に、豚と豆の煮込みをお願いしますね」

「あとねー、根菜の煮物に、チーズ盛り合わせね」

ミザリアスさんとリリンが、流れる様に注文をする。食事の注文は、この二人に任せていいか。

レンディアもグランさんも特に気にしていない様だしな……いや、待てよ。

「山葵葉の刻み漬けも、お願いします」

俺の注文に、レンディアとグランさんが、苦笑する。

「本当に好きなのね、山葵」

呆れた様に云うレンディア。グレイオウル領の特産品だろうに。

 

賑やかな夕食。個室とはいえ、店の雰囲気が充分に伝わってくる。うん、いい感じだ。

皆、よく食べて飲むよな。まあ、俺も食が進んでいるが……黒牛亭は、肉より野菜類がメインの店だから、次は……これを頼んでみよう。

大根と葱の塩煮と、ジャガイモのチーズ焼きだ──早速、ベルを鳴らす。

「は~い。少々、お待ち下さ~い」

店員の明るい声が、喧騒の中から響いて来た。ああ、山葵葉の刻み漬けをもう一度頼むか……。

 

ミザリアスさんが取り分けてくれたジャガイモのチーズ焼きを、早速口に運ぶ──む……うん。ホクホクと、美味い。

たっぷりのジャガイモの中には、刻まれたハムが入っていて、微かな塩味とともにジャガイモの風味が堪らなく美味い。

そして表面を彩る、焦げ目が付いた、糸を引くほどのたっぷりのチーズ。

果実酒炭酸割りで、さっ、と飲み下す──いや、美味いな。

レンディア達も、嬉しそうに目を細めながらチーズ焼きを楽しんでいる。

 

「大根と葱の塩煮と、山葵葉の刻み漬けお待ちどうさまで~す。お酒は直ぐに来ま~す」

おお、大根と葱の塩煮も美味そうだ。

葱は太葱で、少し焦げ目が付いている──煮汁に浸っている、大根と太葱を取り皿に取り、早速大根を口にする。

熱い。熱いが──美味い。口から湯気が漂うほどに熱いが、美味い。

充分に味が染みた大根は、とても堪らない味わいだ。一息付き、次は太葱を口に運ぶ。

少しの焦げ具合の風味と、葱のシャッキリとした歯応えと同時に、煮汁が口の中に広がる。

贅沢な美味さだよなあ……おっと、山葵葉の刻み漬けも食べないとな。

「まーた、山葵葉。本当に好きよねえ」

レンディアの声。グレイオウル領の特産品だろうに……がやがやと、賑やかになった。今日はゆったりと過ごそう……碧水の翼の晩餐だ。

 

 

早朝前に目が覚めた。すっかり、魔力制御の感覚が身に付いている。

昨日は飲みすぎたのか、多少頭が重い。まあ、大した事はない──そうだな……シャワーでも浴びて、魔力制御といくか。その後で、煙管で一服といこう──着替えを手に、部屋を出る。

冬の早朝。明け方前のシャワーは、さぞ気持ちいいだろうな。

これだけ早いと、他の客とかち合う事は無いだろう──シャワー室には、清潔な備え付けのタオルが揃っている。

毎日、クリーニングに出しているらしい。“タオルを使用後は、洗濯篭に入れて下さい”との注意書が見えた。

 

シャワーを浴びる──熱めの温度がいい感じだ。汗も疲れも、ざっ、と流していく感覚を充分に楽しめたので、シャワー室から出る。

備え付けのタオルでしっかりと体を拭き、新しい肌着を身に付け、普段着に着替える。

ついでに「浄化」も使う……さて、部屋に戻って魔力制御といくか──使用済みのタオルは、ちゃんと篭に入れる。

肌着と寝巻きは、後で洗濯を頼むか。浄化で済ませればいい事だが、洗い立ての洗濯物が恋しい時もあるんだよな。

もう少しで朝食だが、その前に魔力制御の時間だ。

よし、部屋に戻るか──

 

 

魔力制御を終え、一息付いているとノック音。

どうぞ、と答えるとレイナさんがドアを開く。

「直に朝食ですよ」

そろそろか。丁度いいタイミングだ──そういえば、お願いする事があったな。

「すぐ降ります。ええと、肌着と寝巻きの洗濯をお願いしたいのですが?」

一瞬固まる、レイナさん。料金いくらだったかな?

「あ、は、はい。お任せ下さい! 今篭を持って来ます!」

ぴゃっ、とレイナさんが姿を消したかと思ったら、篭を片手に抱え、すぐに戻って来た。

これをお願いします、と差し出された篭に肌着と寝巻きを入れる。代金は一篭計算で、銅貨三枚だそうだ。一篭には満たないけれど、構わない。

ちなみに、ベッドのシーツ、毛布、枕は無料で取り替え。中宿は皆そうらしい。

洗濯代に加え、チップを銅貨八枚。レイナさんに渡す。

わたわた、と慌てながら代金とチップを受け取るレイナさん。頭を下げ、洗濯篭を抱えながら去って行った。

 

一階食堂。泊まり客や、朝食目当ての客がちらほら見える。俺は、いつもの端のテーブル席に着く。

レイナさんは見当たらない──まさか、洗濯中か?

「よう、おはようさん。朝食はもう少し待ちな……ほら、煙草盆だ。炭酸水を出すか?」

アルガドさんが、わざわざ煙草盆を持って来てくれた。客の事見ているな……気遣いが嬉しい。

「ありがとうございます。炭酸水、お願いします」

「おう。朝食は、ベーコンエッグにキャベツのスープに丸パン。白菜の酢漬けだ」

「ベーコンは、柔らかめでお願いします。卵は固めで」

あいよ、とアルガドさん。こういう、細かい注文を聞いてくれるというのが、いい宿何だろうな……。

煙草盆を引き寄せ、煙管に煙草葉を詰め、指先で火をつける。生活魔法もだいぶ慣れたな……。

 

煙管を吹かしていると、レンディアが降りて来た。ミザリアスさんより早いな。

俺に気付き、テーブル席に着くレンディア。

顔を洗ったばかりで眠気がまだ取れていないのか、顔がしょぼくれている。

「おはよ。早いわね」

ふうぅぅ~あぁぁ~、とだらしない欠伸をしながら云うレンディア。服も、ヨレヨレの寝巻きだ。

「今日の朝食は、何だって?」

朝食のメニューを伝える。ふ~ん、とレンディア。悪くないわね、と呟く。

 

少しして、ミザリアスさんが朝食にやって来た。

「早いですわね、レンディアさん?」

「それはそうよ。同じ宿だもの」

ミザリアスさんの皮肉めいた言葉に、真っ向に答えるレンディア。

朝っぱらから、水面下のバトルは止めていただきたい。

アルガドさんがやって来た。

「よう、お二人さん。メニューは聞いたか?」

水を、レンディアとミザリアスさんの前に置く。

「聞いたわよ。ベーコンはカリカリに焼いてちょうだい。卵は、半熟でお願いよ」

「ええ。ベーコンは柔らかめで、卵は固めでお願いします」

おう、と答えるアルガドさん。ついでに、炭酸水のお代わりを頼んだ。

 

朝食後のお茶の時間。ミザリアスさんとレンディアと、お茶を飲みながら近況の話をする。

「特に、緊急性の強い依頼や難度の高い依頼は、今の所ありませんね。行商人が、オークやコボルトの少々の群れを見かけて、その討伐依頼があるくらいですね……まあ、初級クラスの依頼ですね」

香辛料入りのお茶を啜る、我が姉ミザリアスさん。

「ふ~ん。碧水の翼も今だ面子が揃っていないしね……といって暇なのは、嫌ね」

果実水炭酸割りを口にするレンディア。俺としては、シェーミィと合流するまではのんびり過ごしたいんだよな……一日、十時間ほど眠りたい。

「私はギルドに戻ります。クレイ、帝都から出る時は、必ず報告して下さいね?」

またしても、釘を刺された。返事は一つだ……。

「ああ、分かっているよ。姉さん」

にこり、と微笑むミザリアスさん。

 

 

「妙な姉弟、というかちょっと風変わりな姉よね」

果実水炭酸割りをぐっ、と呷るレンディア。

「まあな。俺もそう思うよ……ああ、昨日皆にいい忘れていたが、中級のEクラスになったよ」

「へえ! おめでとう。そこからDクラスまでは直ぐよ」

レンディアが、我が事のように喜んでくれた。嬉しいものだな。仲間が喜んでくれるというのは、うん。

 

祝杯をあげましょうと、明るい内から酒を注文しようとするレンディアを、やんわりと止めた。




面白い二次小説書ける人、ほんと凄い。

_〆(。。)
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