夕食は、“
面子は、レンディアにグランさん。そして、ミザリアスさんにリリン。
ミザリアスさんとリリンは、俺と夕食を取るために宿に来たのだが、せっかくだからという事で、皆で黒牛亭にやって来た。
「おう、いらっしゃい。中々の面子だな」
「リリン、久し振りね。“
「休暇中なのよ。まあ、明日にでも合流すると思うわ」
レンディアとリリンは、顔見知りだったのか。リリンは碧水の翼を知っていたしな。
注文を取りに店員が部屋にやって来た。まずは各々、飲み物を頼んだ。
さて、メニューを確認だ。食事と飲みを兼ねてだから、腹拵えが出来る物と摘まみか?
「青菜の焼き飯六人前に、豚と豆の煮込みをお願いしますね」
「あとねー、根菜の煮物に、チーズ盛り合わせね」
ミザリアスさんとリリンが、流れる様に注文をする。食事の注文は、この二人に任せていいか。
レンディアもグランさんも特に気にしていない様だしな……いや、待てよ。
「山葵葉の刻み漬けも、お願いします」
俺の注文に、レンディアとグランさんが、苦笑する。
「本当に好きなのね、山葵」
呆れた様に云うレンディア。グレイオウル領の特産品だろうに。
賑やかな夕食。個室とはいえ、店の雰囲気が充分に伝わってくる。うん、いい感じだ。
皆、よく食べて飲むよな。まあ、俺も食が進んでいるが……黒牛亭は、肉より野菜類がメインの店だから、次は……これを頼んでみよう。
大根と葱の塩煮と、ジャガイモのチーズ焼きだ──早速、ベルを鳴らす。
「は~い。少々、お待ち下さ~い」
店員の明るい声が、喧騒の中から響いて来た。ああ、山葵葉の刻み漬けをもう一度頼むか……。
ミザリアスさんが取り分けてくれたジャガイモのチーズ焼きを、早速口に運ぶ──む……うん。ホクホクと、美味い。
たっぷりのジャガイモの中には、刻まれたハムが入っていて、微かな塩味とともにジャガイモの風味が堪らなく美味い。
そして表面を彩る、焦げ目が付いた、糸を引くほどのたっぷりのチーズ。
果実酒炭酸割りで、さっ、と飲み下す──いや、美味いな。
レンディア達も、嬉しそうに目を細めながらチーズ焼きを楽しんでいる。
「大根と葱の塩煮と、山葵葉の刻み漬けお待ちどうさまで~す。お酒は直ぐに来ま~す」
おお、大根と葱の塩煮も美味そうだ。
葱は太葱で、少し焦げ目が付いている──煮汁に浸っている、大根と太葱を取り皿に取り、早速大根を口にする。
熱い。熱いが──美味い。口から湯気が漂うほどに熱いが、美味い。
充分に味が染みた大根は、とても堪らない味わいだ。一息付き、次は太葱を口に運ぶ。
少しの焦げ具合の風味と、葱のシャッキリとした歯応えと同時に、煮汁が口の中に広がる。
贅沢な美味さだよなあ……おっと、山葵葉の刻み漬けも食べないとな。
「まーた、山葵葉。本当に好きよねえ」
レンディアの声。グレイオウル領の特産品だろうに……がやがやと、賑やかになった。今日はゆったりと過ごそう……碧水の翼の晩餐だ。
早朝前に目が覚めた。すっかり、魔力制御の感覚が身に付いている。
昨日は飲みすぎたのか、多少頭が重い。まあ、大した事はない──そうだな……シャワーでも浴びて、魔力制御といくか。その後で、煙管で一服といこう──着替えを手に、部屋を出る。
冬の早朝。明け方前のシャワーは、さぞ気持ちいいだろうな。
これだけ早いと、他の客とかち合う事は無いだろう──シャワー室には、清潔な備え付けのタオルが揃っている。
毎日、クリーニングに出しているらしい。“タオルを使用後は、洗濯篭に入れて下さい”との注意書が見えた。
シャワーを浴びる──熱めの温度がいい感じだ。汗も疲れも、ざっ、と流していく感覚を充分に楽しめたので、シャワー室から出る。
備え付けのタオルでしっかりと体を拭き、新しい肌着を身に付け、普段着に着替える。
ついでに「浄化」も使う……さて、部屋に戻って魔力制御といくか──使用済みのタオルは、ちゃんと篭に入れる。
肌着と寝巻きは、後で洗濯を頼むか。浄化で済ませればいい事だが、洗い立ての洗濯物が恋しい時もあるんだよな。
もう少しで朝食だが、その前に魔力制御の時間だ。
よし、部屋に戻るか──
魔力制御を終え、一息付いているとノック音。
どうぞ、と答えるとレイナさんがドアを開く。
「直に朝食ですよ」
そろそろか。丁度いいタイミングだ──そういえば、お願いする事があったな。
「すぐ降ります。ええと、肌着と寝巻きの洗濯をお願いしたいのですが?」
一瞬固まる、レイナさん。料金いくらだったかな?
「あ、は、はい。お任せ下さい! 今篭を持って来ます!」
ぴゃっ、とレイナさんが姿を消したかと思ったら、篭を片手に抱え、すぐに戻って来た。
これをお願いします、と差し出された篭に肌着と寝巻きを入れる。代金は一篭計算で、銅貨三枚だそうだ。一篭には満たないけれど、構わない。
ちなみに、ベッドのシーツ、毛布、枕は無料で取り替え。中宿は皆そうらしい。
洗濯代に加え、チップを銅貨八枚。レイナさんに渡す。
わたわた、と慌てながら代金とチップを受け取るレイナさん。頭を下げ、洗濯篭を抱えながら去って行った。
一階食堂。泊まり客や、朝食目当ての客がちらほら見える。俺は、いつもの端のテーブル席に着く。
レイナさんは見当たらない──まさか、洗濯中か?
「よう、おはようさん。朝食はもう少し待ちな……ほら、煙草盆だ。炭酸水を出すか?」
アルガドさんが、わざわざ煙草盆を持って来てくれた。客の事見ているな……気遣いが嬉しい。
「ありがとうございます。炭酸水、お願いします」
「おう。朝食は、ベーコンエッグにキャベツのスープに丸パン。白菜の酢漬けだ」
「ベーコンは、柔らかめでお願いします。卵は固めで」
あいよ、とアルガドさん。こういう、細かい注文を聞いてくれるというのが、いい宿何だろうな……。
煙草盆を引き寄せ、煙管に煙草葉を詰め、指先で火をつける。生活魔法もだいぶ慣れたな……。
煙管を吹かしていると、レンディアが降りて来た。ミザリアスさんより早いな。
俺に気付き、テーブル席に着くレンディア。
顔を洗ったばかりで眠気がまだ取れていないのか、顔がしょぼくれている。
「おはよ。早いわね」
ふうぅぅ~あぁぁ~、とだらしない欠伸をしながら云うレンディア。服も、ヨレヨレの寝巻きだ。
「今日の朝食は、何だって?」
朝食のメニューを伝える。ふ~ん、とレンディア。悪くないわね、と呟く。
少しして、ミザリアスさんが朝食にやって来た。
「早いですわね、レンディアさん?」
「それはそうよ。同じ宿だもの」
ミザリアスさんの皮肉めいた言葉に、真っ向に答えるレンディア。
朝っぱらから、水面下のバトルは止めていただきたい。
アルガドさんがやって来た。
「よう、お二人さん。メニューは聞いたか?」
水を、レンディアとミザリアスさんの前に置く。
「聞いたわよ。ベーコンはカリカリに焼いてちょうだい。卵は、半熟でお願いよ」
「ええ。ベーコンは柔らかめで、卵は固めでお願いします」
おう、と答えるアルガドさん。ついでに、炭酸水のお代わりを頼んだ。
朝食後のお茶の時間。ミザリアスさんとレンディアと、お茶を飲みながら近況の話をする。
「特に、緊急性の強い依頼や難度の高い依頼は、今の所ありませんね。行商人が、オークやコボルトの少々の群れを見かけて、その討伐依頼があるくらいですね……まあ、初級クラスの依頼ですね」
香辛料入りのお茶を啜る、我が姉ミザリアスさん。
「ふ~ん。碧水の翼も今だ面子が揃っていないしね……といって暇なのは、嫌ね」
果実水炭酸割りを口にするレンディア。俺としては、シェーミィと合流するまではのんびり過ごしたいんだよな……一日、十時間ほど眠りたい。
「私はギルドに戻ります。クレイ、帝都から出る時は、必ず報告して下さいね?」
またしても、釘を刺された。返事は一つだ……。
「ああ、分かっているよ。姉さん」
にこり、と微笑むミザリアスさん。
「妙な姉弟、というかちょっと風変わりな姉よね」
果実水炭酸割りをぐっ、と呷るレンディア。
「まあな。俺もそう思うよ……ああ、昨日皆にいい忘れていたが、中級のEクラスになったよ」
「へえ! おめでとう。そこからDクラスまでは直ぐよ」
レンディアが、我が事のように喜んでくれた。嬉しいものだな。仲間が喜んでくれるというのは、うん。
祝杯をあげましょうと、明るい内から酒を注文しようとするレンディアを、やんわりと止めた。
面白い二次小説書ける人、ほんと凄い。
_〆(。。)