邪神の子 ~赤き瞳のクレイドル~   作:末末

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第151話 オーク&オーガバトル

 

 

「レイナルド、オーク五十。それを半数の二十五に分け、それぞれがオーガの統率下だ」

レイナルドの指示を受け、斥候を引き受けた軽装の人族の冒険者が、報告をする。

次いで、同じく軽装の狼族の女性が云う。

「やっぱり、居たわよ……ハイオーガ」

斥候の報告を聞いた冒険者達が、溜め息を吐いた。

「……ふん。上等だ」

にいっ、と牙を見せ微笑む、レイナルド──獅子族特有の、獰猛な笑みだ。

 

 

封鎖された西街道沿いで、俺達は待機中。斥候の報告を聞いたレイナルドさんは、各パーティーのリーダーと何人かのベテランと共に、話し合いをしている。レンディアも呼ばれていた。

即席のパーティーを組んだ者同士。後輩を受け入れたベテラン達──それぞれが話し合いをしている。

短い間にも、連携の確認をしているのだろう。

 

「グランさん、ハイオーガとの経験は?」

「……いつだったかな。“碧水の翼”が駆け出しの頃、ばったり鉢合わせした事がある」

あるのか……無事だったから、今があるんだろうな。

「どうなったんです?」

「うん、こちらを一瞬見たが、その後無視された。バスタードソードを肩担ぎにして、チェインメイルの上にブレストプレートを着込んだハイオーガだった。充分距離があったから、無事に別れる事が出来たな」

「あの時は、かなり不意に鉢合わせしたからねー。レンディアが、直ぐ下がろうと、指示したんだよね」

グランさんに次いで、シェーミィが云った。

 

ふうん……そういう事があったのか──おおっと、異世界知識、発動──ハイオーガ。単純にオーガの上位種と言える存在ではない。オーガ、オークを従える、将と言うべき存在。

腕力、体力共にオーガを越え、その戦闘技術は騎士以上。恐れるべきは、オーガ以上の腕力と、戦闘技術と知識。まさしく、武人というべき存在。

一対一で打ち破る事は極めて難しい事ではあるが、それを成したならばまさしく英雄的行為と見なされるだろう。

最も、大概は愚かな結末に終わるが──なるほどな。一対多で当たるべく相手だという事が分かった。

 

「取り合えず、対オーク戦の作戦が決まったわよ」

レンディアが戻って来た。今回、前線に出ている冒険者は総勢三十五名。初級のBから中級のBランク──中級のBランクはレイナルドさんだけ。

即席パーティー以外のパーティーは、三組。

リリンの所属する、“霧雨の風(ミストウィンド)”。狼族の三兄妹、“疾風の牙(ゲイル・ファング)”。そして俺達、“碧水の翼”──疾風の牙は、霧雨の風と碧水の翼が四人組なのを見て、キリが良いからと初級Bランクの冒険者を一人、臨時のパーティーとして勧誘していた。

 

「作戦としては単純よ。左右の陣にパーティーを一組ずつ備え、その回りに冒険者達。中央は、レイナルド率いる冒険者達と、パーティーを一組。オーク隊に向き合ったなら、まず範囲系の攻撃魔術を一、二度。そして、集団戦に移行。なるべく、乱戦にはしない方がいいと言っていたわ」

作戦の説明を終え、レンディアが干し果物を口に放り込む。

 

集団戦闘の訓練を幾度も経験しているグランさんは、フムと頷く。特に問題は感じなかったか。

「私達は左陣。疾風の牙は右陣。霧雨の風は中央よ」

水筒に口を付ける、レンディア。気負いも緊張も無く、落ち着いている──リーダーはこうでないとな。

くうぅ~あぁぁ~、とシェーミィが大あくびをする。お前はもう少し、緊張感持った方がいいと思うが?

 

周囲の雰囲気が、変わり──静かな緊張感が満ち始めていた。

レイナルドさんが、俺達冒険者を見回しながら云った。

「……よし、頃合いだ。皆、行くか。“碧水の翼”は左陣を、“疾風の牙”は右陣をそれぞれ頼む。“霧雨の風”は俺に付いてくれ……皆、豚面はそれなりの統率は取れているだろうが、大した事はない。とっと殲滅して、オーガも始末しよう……気を抜くなよ!!」

応!! と冒険者達が応えた──さすがだな、将の気質というやつだ。

 

 

レイナルドを先頭に、オークの群れを目指し冒険者達が行進する。

その統率の下に進む冒険者達に、混乱は無い。先行していた斥候二人が、戻って来た。

斥候が云うには、こちらに気付いてはいるものの、それほど警戒をしていない様に見えたそうだ。という事は──数の利を確信しているのだろうな……甘いよな、うん。

「よし……少し急ぐか。強襲をかけるぞ」

報告を聞いたレイナルドが、足早に駆け出す。

それに続く冒険者達。平野に轟く足音──よし、“(いくさ)”だ。

 

一番最初に突っかかって行ったのは、レイナルドさんだった。慌てるオークの群れに飛び込んで、大剣を左右に振るう──ほぼ同時に、霧雨の風のパーティーから放たれた魔術が、オーク達を貫き、切り裂いた。

撒き散らされるオークの血肉。たちまちの内に、血が降り注ぐ──「押せえ!!」

レイナルドさんの、咆哮にも似た指示の下、俺達はやるべき事をやるべく動く。

レンディアの風属性の魔術が、渦を巻きながらオーク達の肉体を削り、切り裂いていく。

「今よ。出来る限りオークを、減らすわよ!」

レンディアが、叫ぶ。

 

血飛沫舞う中、碧水の翼と共に行動する冒険者達が、オーク達に斬り混んで行く──ヒュヒュッ、と弓鳴りの音。オーク二体が、胸元を貫かれて仰向けに倒れる。シェーミィの速射──にしし、と声が聞こえた。

錆び槍を向けて来るオークの横面を盾で殴り付け、その隣にいたオークの首を跳ねる。

返す剣で、盾で殴ったオークを袈裟斬りに仕留めた──すぐ隣を、緑色の風が吹き抜けて云った。 レンディアだ。

 

風に乗る様な動きで、オーク達の間を駆け抜けて行く──腕が、足が、斬り飛ばされ、腹が、首筋が、斬り裂かれ、血飛沫が舞う──数体のオークが、地に伏した。

致命傷を与えるよりも、戦闘不能に出来れば良し、というのがレンディアの考えだ。

いずれ他の冒険者に止めを刺されるか、失血死するだろう……。

 

周囲の喧騒をよそに、俺達“碧水の翼”の面々は、少し一息吐く。

「まあ、こんな所かしらね」

ふうっ、一息吐くレンディア。緑のケープコートには、返り血一つ無い。

「そろそろ、オーガ戦が見えてきたな」

グランさんがカイトシールドを構え、レンディアと入れ替わる様に、オークの群れに突き進んで行く──

腹を押さえ、地に横たわるオークの首を踏み砕き、切断された腕を押さえる、虫の息のオークの首を撥ね飛ばしながら、グランさんが進んでいく。

 

すっかり、引き腰になっているオークなど物の数ではないとばかりに、カイトシールドで殴り付け、例の初披露の剣を振るい──衝撃属性に刺突強化。二属性持ちの剣──独特の刃音を鳴らしながら、オーク達を斬り潰していくグラン。

斬られ、突かれたオークの体が四散していく。

暗黒騎士の威圧感を前面に押し出しながら、グランは突き進んで行く──その合間に矢音が鳴り、オーク達の体に、シェーミィの矢が突き立っていく。

致命的なものではなく、戦闘能力を奪うための一矢。それを立て続けに放つシェーミィ。

一矢絶命を狙うのは時間がかかる。集団戦において、素早く敵の戦闘能力を奪う事を重視しての、シェーミィの行動だ。

 

他の冒険者達と共に、次々とオークを始末していくグラン──ゴオァァァッ!!

オーガの咆哮。その咆哮には、怒りが満ちている。オークの統率者としての怒りだろうか。

獣皮を身にまとい、錆び付いたバトルアクスを両手に構えたオーガは、真っ直ぐにグランに向かって行く。

この黒ずくめの男が、中心なのだろうと直感したのだろう──

「ふむ。私の所に来るか。だがな──」

グランは、オーガに向けてニヤリと微笑む。

怒りに満ちた一撃を加えんと、バトルアクスを振るおうとするオーガの胸板と肩に、矢が突きたった。

ダメージ目当ての射撃では無い。注意を逸らすための二射──何の痛痒も感じさせない素振りで、オーガは矢が飛んで来た方向に、怒りの視線を向け、矢を払い落とす。

 

「集中力、無いな」

一歩踏み込み、オーガの腹を撫でる様に剣を潜らせる。獣皮が裂け、腹に刃が充分に潜りながら裂ける感触が、滑らかに腕に伝わって来る──衝撃属性に刺突強化。二属性持ちの剣──腹を裂いたその直後に、心地好い衝撃音が剣から腕に伝わって来た。

ドゥン──そのまま、剣を振り抜く。

グバアッ! オーガのうめき声と共に、ズシリと重量音。オーガが、地に膝まずく音だろう。

オークの様に、肉体を四散させないまでも充分な致命傷を与えたのが、見て分かった。

腹からは内臓が溢れ出て、口や鼻からは大量の血がドボリ、と溢れている。

「さよならだ」

オーガの首を斬り落とす。すぱん、と綺麗に切断する事が出来た。

 

おおぉぉぉっっ!、と上がる歓声を、グランは他人事の様に聞いていた。

「さて、レンディア達の所に戻るか」

剣を納め、何事も無かった様にオーガの死体に背を向けるグラン。

 

(いくさ)”は、まだ終わっていないのだ──




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