邪神の子 ~赤き瞳のクレイドル~   作:末末

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少し短めですが。


(゚∈゚ )ピヨピヨ


第170話 猟犬 貴族 第二ラウンド開始

 

 

インプの群れが、瞬く間に減っていく──冒険者達の攻勢を受け、あっという間に減少し、やがて一匹も残らなかった。どれだけの数を始末したのだろうか? インプの骸が、方々に散らばっている。数十体はあるだろう……。

だが、歓声は起こらない。悪魔の侵攻の第一波が終わっただけだからだ──それほど間を置かず、中級の悪魔が魔城門を通って来るだろう事を、冒険者達は知っている。

「負傷者は、後方に下げろ!重傷者以外は、傷の手当てが済み次第、前線に復帰しろ! 第二波も、直に来るぞ!」

アルバートさんの声に、冒険者達が応える。衛兵達が、武芸者、冒険者関係無く、負傷者を後方に引きずって行くのが見えた。

 

疲れた──インプの殲滅を確認すると同時に、流血と苦痛の茨の外殻(ソーンオブマックスペイン)を解除するも、やはり疲労感は残ったままだ……腰回りのポーチから、体力回復のポーションを取り出し、一息に呷る。

はあ、とため息を付く。インプの姿はもう見えない──次に出現してくる悪魔は、何だ?

「クレイドル、連戦になるけど大丈夫?」

レンディアが話しかけてきた。連戦か──「問題無い」

「この後は、中級クラスの奈落の尖兵(ピットギオン)が出現してくるのかな……?レンディア、大いなる父君の加護を願いたいが、いいか?」

グランさんの言葉に、レンディアが頷く。

「ええ、お願いよ」

レンディアの声に応じ、グランさんが暗黒神に祈りを捧げる──さて、ここからが本番だろうか?

回復ポーションも充分に効いている……再び、流血と苦痛の茨の外殻(ソーンオブマックスペイン)を起動しても、大丈夫だろうが……まだ後だ。連続で使う代物じゃないからな。

 

五十メートルほど先にある、顕現した魔城門(デモンズゲート)を、改めて見る。

以前、黒壁回廊で見た極彩色の輝きに彩られた門とは、かなり違う……何というか、派手で豪華な造り。王の謁見室の扉の様な、雰囲気を感じさせる……。

次に悪魔が出現してくるまでに、多少時間はある。嵐の前の静けさというやつだ……それを理解できている冒険者は、身支度を整えるが、武芸者達はどうだろうか……。

 

先走って、魔城門に攻撃を仕掛ける武芸者が数名見えた──ドウゥン!

攻撃の反射……魔城門から、衝撃波が激しく放出されるのが、ここからでも見えた。

魔城門に直接攻撃を仕掛けるのは、悪魔連中が出尽くしてから……それを知らない武芸者達が、反撃を食らい吹き飛ばされた──倒れた武芸者達を、衛兵達が即座に後方に引きずって行くのが、ここから見えた。

馬鹿だな。手柄欲しさに先走った連中は、痛い目に合っただろう……。

 

「知らないというのは……怖い事ですね」

穏やかな声に振り返ると、神聖騎士団副団長のガーランドさんがいた。

銀色の縁取りがされた純白の全身鎧。同色のカイトシールドに、幅広のブロードソードを帯剣している──その後ろには、同じ装備の若手の神聖騎士。こちらを見ると、会釈をしてきた。

「ああ、ガーランドさん達も参加していたの」

レンディアが、気安く話し掛ける。

「ええ。悪魔が侵略して来ている以上、神聖騎士としては、放って置けませんから」

ガーランドさんは、ちらりとグランさんを見る。グランさんは、同意するとばかりに、頭を下げた。

「神聖騎士がいるのは、心強いわよ。こちらには、暗黒騎士もいる事だしね」

明るく笑うレンディア。心強くなったな……さすがリーダー。

 

魔城門の気配が変わった──じわりと門が波打ち、出現して来たのは犬だった。灰色の毛並みをした、濁った目色の大型犬だ。

前にも見たな……口先から、ちろりと火が見えた──地獄の猟犬(ヘルハウンド)が十体……猟犬を従えている存在は、当然──奈落の貴族(ヘルマスター)だ……やって来たのは、予想通りの存在。きらびやかな、貴族風の装いをした悪魔が、魔城門からやって来た──捻れた二本の角が、金髪から突き出ている。青白い肌に、整った顔立ち。いかにも高慢な表情をしている……。

 

 

ヘルマスターが周囲を見回し、云った──「ふむ……騎士殿がお出ましになるほどかどうか、試してみるか……」

手にしているのは、長めのレイピア。いかにも、貴族然としたは武器だが──ピュゥゥンイン、レイピアを振るった。

それと同時に、五体のヘルハウンドが駆け出し、冒険者達に襲いかかった──第二ラウンドの開始だ。

真っ先に突っ掛けたのは、武芸者連中だった。たかが犬──そう思ったのだろうが、ヘルハウンドの炎のブレスを一斉に浴び、倒れ込んだ。

 

「馬鹿どもが!」

アルバートさんが、ちらりと武芸者達に目をやる──冒険者達を指揮し、ヘルハウンドに強襲をかける。

接近戦に持ち込まれたなら、ブレスは吐けない。それを見越しての、アルバートさんの行動だ──ふと、馬蹄の音。ロングスウォード伯が、騎兵を率いて戦場に到着した。その数、二十騎。

ロングスウォード伯が先頭だ。赤い槍を橫構えにして、ヘルハウンド目掛け、突き進んで来る。

それを見たヘルマスターが、レイピアを頭上に構える──魔城門から、追加のヘルハウンドが現れた。その数、三十ほど……まだ増えるかもしれないな。

ロングスウォード伯の騎兵との数の差は、十以上か……?

「皆、取りあえずは目の前の敵よ」

レンディアの声に、気を引き締める──よし、やるぞ。ヘルハウンドと、ヘルマスターが相手だ。

 

ロングスウォード伯の騎兵隊は、ヘルハウンドを蹴散らした……だが、一匹ずつを始末するには浅い……それは想定内だ。ただ蹴散らすだけでいいのだ。

ヘルマスターが、追加のヘルハウンドを召喚した……ロングスウォード伯の仕事は、ただ悪魔連中を撹乱する事──同時に、魔城門の魔力を消費するために、動き回っているのだ。

騎兵と、冒険者達に武芸者達の連携で、ヘルハウンドを始末する──そう考えていたのだが、そう簡単にいかなかった。

慌てふためく武芸者達を放っておき、アルバートさんが冒険者達を一まとめにして、ヘルハウンドへの対処を指示している。

 

「レンディア、“碧水の翼”はガーランドさんと組んで、奈落の貴族(ヘルマスター)に当たってくれねえか?」

アルバートさんが、レンディアに頼む。答えは一つだ……「いいわよ」

レンディアが、即座に応えた──アルバートさんの側にいるガーランドさんと、若手の人が頭を下げる。

奈落の貴族を相手どるには、まだ足りないと思っていたが──ヘルハウンドの群れを、ロングスウォード伯の騎兵が蹴散らしている。

この機会だな。ヘルマスターに強襲をかけるのは──「行きましょうか。碧水の翼の方々」

ガーランドさんが云う。真剣な眼差しだ……対悪魔戦だからな、そうもなるだろう。

「ええ、もちろんよ。神聖騎士に暗黒騎士、心強いわよ」

レンディアが、明るく云った──ふん、いいな。さすがリーダー。

 

 

ヘルハウンドと冒険者、武芸者が乱戦状態になっているのを横目に、“碧水の翼”はガーランドさん達と共に、ヘルマスターに近付く──その回りには、ヘルハウンド三体。風下なのか、今だ気付く様子は無い。

「シェーミィ、ヘルハウンドに矢を放てる?」

レンディアが、囁く。シェーミィが頷き、応えた。

「一体は仕留められるけど、二体は軽い打撃くらいかなー」

「うん。充分よ……ガーランドさん、シェーミィが矢を放ったら、一気に攻めたいのだけれど、いい……?」

レンディアの声に、ガーランドさんが頷く。

「シェーミィ。合図を出したら、矢を放って。そのタイミングで、強襲するわよ……いいわね」

あーい、とシェーミィが牙を剥き出しに笑う。

 

ゆっくりと、ヘルマスター達に近付く……強襲をかけるには、充分な距離だ。

先を行くレンディアが、腕を振る──ブブッン。矢の鳴る音。

首筋に、シェーミィの矢を受けたヘルハウンドが、横倒しに倒れた。ほぼ、即死だろう。速射を受けた二体が、悲鳴を上げる。

致命傷にはならなかっただろうが、その体に矢が突き立っている──「今よ」

レンディアの声に、俺達は強襲をかける。

「ヘルマスターに、向かいます」

ガーランドさんが、若手と共に駆け出す。レンディアが頷き、指示を出す。

「グラン、クレイドルは、ガーランドさんの支援。ヘルハウンドは、私とシェーミィが始末するわ!」

 

「下郎共、推参なり!!」

ヘルマスターが、こちらに気付いた。ピシリ、とレイピアを撃ち鳴らす。

よろめきながらも立ち上がるヘルハウンドに、レンディアが突き進み、シェーミィが矢をつがえる。

俺とグランさん、そしてガーランドさんと若手の一人……四対一にも関わらず、傲慢さを見せる奈落の貴族(ヘルマスター)。さすが、と云うべきかな。

手を頭上に掲げるヘルマスター。バチリ、と雷球がその手に浮かんだ──第二ラウンドの開始だ。

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