放たれた雷球を、真正面からガーランドさんがカイトシールドで弾き散らした。神聖神の加護を受けているのだろうな……。
その左右から、グランさんと若手の神聖騎士が、挟み込むように攻めかかる。俺は、少し距離を取り様子を見る……。
「下郎らめ!」
こめかみに青筋を受かべ、三人の攻撃を迎撃をするヘルマスター。
いつぞや戦ったヘルマスターよりも近接戦闘に長けているのか、レイピアで攻撃を受け流し、払い落としながら、反撃をしている。
さすが、上級悪魔……余裕のある様子だ。でもな……四人目がいるんだよ。
特に気配を隠すという事もなく、剣の鯉口を切りながら、静かにヘルマスターの側面から背後に回り込み──抜き打ちに、剣を斬り上げる。
確実な手応え。背後からの強襲に、振り返ろうとする、ヘルマスターの動きが止まった。
目の端に、グランさんがヘルマスターを袈裟斬りにするのが、少し見えた──
ヘルマスターの死体が、障気を上げながらくすぶっている。悪魔の死体は、皆こうなるのだ……。
「副団長、冒険者の背後からの強襲は、私としては──その……」
「卑怯、汚い、とでも言いたいのですか?」
若手の神聖騎士に、ガーランドが問うた。
「いえ……ですが」
「ガルス、細かい事は言いません。ただ、殺せる時に殺す……それを覚えておきなさい。彼らのやった事は間違っていません。対悪魔戦は、そういう事ですよ」
若いな、とガーランドは思った。ガルスの言いたい事は分かる──だが、対悪魔戦においてだけでなく、戦いにおいてはなりふり構わない事も必要なのだ。
「……分かりました」
ガルスという名の若手の神聖騎士が頭を下げた。いや……まだ分かっていないだろうと、ガーランドは思った。
ヘルマスター、ヘルハウンドも始末し終えた今、小休止状態だ。今だ
「おめえら、直に第三波が来るぞ! 今の内に休んでいろ!!」
ギルドマスターのアルバートさんが、冒険者と武芸者達に指示を出している。
「
ガーランドさんが、干し果物を口にしながら呟く。その目は、鋭く
ロングスウォード伯の騎兵隊が、魔城門から距離を取り、待機しているのが見えた。
その数二十。一騎も欠けていない様だ──先頭に立つ、ロングスウォード伯の赤ずくめの佇まいが、何ともきらびやかだ……。
ドウンッ……ドンッドウン……ドンッ……。
魔城門から、太鼓の様な太い音色が鳴り響いて来た。
「来るぞっ! 皆、下がれっ!!」
アルバートさんが、指示を出す。第三波のお出ましだ……だが、明らかに今までの雰囲気と違う。
魔城門が、ゆっくりと広がっていく──太い音色はまだ止まない。
「う~ん……何だろ。馬?みたいな臭いするよー」
スンスン、とシェーミィが鼻を鳴らす。レンディアが尋ねる。
「ロングスウォード伯の騎馬隊じゃなく?」
「ううん。今臭ってるのは、馬みたいな臭い……魔城門からね」
武人然とした顔付きの悪魔が、
優に二メートルを越えた、がっしりとした体格。全身鎧を身に付けながらも、動きは鈍る事は無いだろう。
「人間側にも、騎馬隊がいるな……門から出たなら騎馬隊を相手にしろ。私は冒険者と、武芸者らしい連中を相手にする」
低くよく通る声で、側で騎乗している悪魔に云った。
「承知」
騎乗の悪魔が、言葉短く頷く。引き締まった体格の、騎兵らしい中装備の装い。急所を金属で補強された、濃い紫の革鎧を身に付け、手には薙刀の様な長柄の武器を持っている。
灰色がかった顔には、武人然とした悪魔と同じく、
「よし……頃合いだ」
全身鎧の悪魔が、魔城門を見て云った。門はもうじき開ききる……その時が、決戦の時だ。
「では、お先に」
騎乗の悪魔が云うと、背後に揃っている騎兵隊に合図を出した。
騎兵達が規律よく、騎乗の悪魔の左右に陣取る。
ドドンッ──魔城門が、腹まで響く様な音を立てた。同時に──「行くぞ、蹴散らせ!」
騎乗の悪魔の指示と共に、悪魔の騎兵隊が魔城門から飛び出していく。
それを見届けた全身鎧の悪魔は、大剣を肩担ぎにして、ゆったりと魔城門から出て行く……。
大きく開いた魔城門から飛び出して来たのは、灰色の馬に騎乗した、悪魔の騎兵隊だった──「
ガーランドさんが叫ぶ。
そのヘルライダー達は、脇目もふらず、ロングスウォード伯の騎馬隊に向かって行く。
ロングスウォード伯は槍を振り上げ、指揮する騎馬隊に反転の合図を出す……ヘルライダーの騎兵から、俺達を遠ざけるつもりなのだろう。
騎馬の移動する轟きが、大地に響く──悪魔の騎馬隊とロングスウォード伯の騎馬隊が、遠く離れて行った……だが、それだけでは無かった。
続いて、
武人──そうとしか言い様のない悪魔が姿を見せた。
厚く、濃い気配をまとわせる悪魔。
ガーランドさんが呟く。グランさんは、巨体の悪魔を睨み付けている。
早くも、
衝撃音と共に、武芸者達が宙を舞い、地面に叩き付けられた。
ヘルナイトがやった事は、ただ大剣を振っただけだった。ただそれだけで、強力な衝撃波を発生させて、武芸者達を払いのけたのだ──地に伏している武芸者達を見向きもせず、ヘルナイトがゆっくりと歩を進める。
その歩みには、戸惑いは無い──真っ直ぐに、こちらに向かって来る。
その理由は、暗黒騎士と神聖騎士がいるからだろう。悪魔にとって、この現世の神々。そしてその信徒は、敵でしかないのだからな……グランさんも、ガーランドさんも、それが分かっているのだろう。
二人共に、俺達の前に出て盾を構えた──「私とクレイドル、ガルスさんは中衛。シェーミィは後衛!!」
矢継ぎ早に指示を出すレンディア。その指示に、素早く陣形を整える。
中央、レンディア。その左右に俺とガルスさん。シェーミィは少し距離を取り、背後に付く。
ゆったりとした歩調で距離を詰めて来る
鳴り響く衝撃音。その衝撃を、前衛に立つグランさんとガーランドさんが、しっかりと受け止めていた──さすが、騎士だ。“盾”の役割を充分に果たしてくれている……ならば、今度はこちらの番だな。
「左右挟撃! シェーミィ、補助!」
レンディアの指示。ヘルナイトの左右に回り込むべく、挟撃の体勢に入る。
ほんの少しガルスさんが遅れたが、それは仕方ない。俺達がフォローすればいいだけだ……キリ、リと、シェーミィが弓を引く音が微かに聞こえた──一対六。ヘルナイトはそれほどの相手。
レンディア達には、他の冒険者や武芸者の事は、脳裏から消えていた。
ただ、全力を持ってヘルナイトを倒す。それだけを考えていた──
よし、俺達で、仕留めよう……改めて、対
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(゚∈゚ )クックルポー