「……
全身から血飛沫を撒き散らす戦士が呟き、
耐えられる──意表を付かれたが、耐えられ……何だ? 目眩に、吐き気? 戦闘中にか!?
何、だ?……メイスか!!何かしらの魔力付与がされたメイス……いや違う。
そんな生易しい物では、無い──「呪物か!」
血塗れの戦士が、フェイスガード越しに笑いかけているのが伺えた。
上等だ──状態異状があろうが、関係無い。やれる事を、互いにやっているだけだからな──私は構わない。それより、貴様気付いているか……?
最も、その状態異状がどういうものかは分からない……それより、あんた分かっているか?
「貴様、今──」
「あんた、今─」
──笑っているぞ──
撃つ打つ避ける避ける撃つ斬りかかる斬る避ける撃つ凌ぐ受け流す受け流す撃つ避ける撃つ──いつまで続く?続く続く受け流す避ける斬り撃ち打つ──しんどくなってきた……向こうもそうなのか?同じか?出血と痛みなぞどうでもいい妙に頭が冴えてきたな……血の匂いが強くなってきたそのせいか?痛みが集中力を引き起こしている?
“
大剣の突きを捌くのがキツいなこれは斬り落としの方がまだましだ考えるな行動が追い付かなくなる余計な事を考えるなと思っても考えてしまうまた突きだ何か狙っているのか……大剣の、左右の薙ぎ払い──左、右、左、右そして、袈裟斬り。
それを避け───よし、ここだ。渾身の一撃を。ほら、鎧の隙間に横薙ぎの剣が入った── ぞぶり、と深い手応え……
「一対一で、ヘルナイトを……」
ガーランドさんが、呟く。
あの呪物、“
クレイドルは、出来る事をやっただけだから──「グラン、行きましょう。クレイドルは直に動けなくなるだろうから、回収しないと」
レンディアの言葉に、頷く。
「……ふむ、見事、だ」
腹を裂かれたヘルナイトが、地に膝を着いている。はらわたが、血と共にドロリと垂れている──
“
「首を……取れ。それなりの、名誉、になるだろう、な」
ヘルナイトの言葉に……応えなければ。
「では」
ソウルスレイヤーを上段に構える──介錯か……上手く出来るだろうか……?
「さらば、だ」
ヘルナイトの最後の言葉。体が、自然に動く。うなだれるヘルナイトの首筋目掛け──剣を振る。
ヘルナイトの首は、綺麗に落ちた──その体が、ゆっくりと横倒しに崩れ落ちる。
「血と苦痛は去った」
“
血生臭い体に、浄化をかける──悪魔を殺した際に得られる活力は、感じられない。
あまり使わない属性だが、なかなか上手くいったな……一メートル近く、穴を掘った──理由は一つ。
静謐な顔立ちをしているその首を、放置は出来ない──穴の中にそっと置き、土魔法で深く埋める。
これで、済んだ……疲れたな。ただ、疲れた。
あとは、レンディア達に任せよう──よし、少し横になるか……。
「グラン、担いで」
「了解」
レンディアの指示を受け、グランが意識を失っているクレイドルを肩担ぎにする。
ロングスウォード卿がやって来た。馬から降り、手綱を引きながら私達に合流する。その身は、返り血にまみれていた──「私の騎兵隊も無傷ではすまなかったわ……」
顔をしかめながら、ロングスウォード卿が云う。
二十名の部下の内、五名を失ったそうだ。
「有意義な……犠牲だと思いたいわ」
歯を食い縛りながら、呻く様にロングスウォード卿が云う。
「それより……クレイドルは大丈夫なのか?」
グランに担がれているクレイドルを見て、ロングスウォード卿が尋ねてきた。レンディアが答える。
「疲労ですよ。身体には異状は無いでしょう」
「む、そうならいいが……」
すうすう、と寝息をたてているクレイドルを、ロングスウォード卿は呆れた様に見ている。
「おう、レンディア。クレイドルの奴、血塗れになっていたが、ありゃあ何だ?」
アルバートがやって来て、レンディアに尋ねる。
う~ん、と考える素振りを見せるレンディア……。
「冒険者ギルドに戻ってから話すわよ」
レンディアの言葉に、ふうむ、と頷くアルバートとロングスウォード卿。
ギルドマスターのアルバートは、改めて戦場を見渡す……
それに加え、ロングスウォード卿の騎馬隊は、二十名の内、五名失っている。
出現した悪魔の数からしたならば、犠牲の割合でいえば
「……ちっ」
アルバートは、ぎりりと歯を食い縛り、戦場を眺める……戦後処理は、少々時間がかかるだろう。
「セリオス、戦後処理の指揮を頼む」
「分かりました」
側にいた、副ギルドマスターのセリオスに指示を出した。
セリオスはいつものスーツ姿ではなく、茶色のローブ姿。セリオスは、一流の治癒士でもある。
神聖騎士のガーランドとガルスは、自発的に負傷者の治癒に加わってくれていた。
ガーランドとガルスに目をやり、(ありがてえ事だ……)と感謝する。
アルバートは、もう一度戦場に目をやると、ロングスウォード卿とレンディア達に合流すべく、歩み去って行く……。
「ロングスウォード卿、アルバートさん、私達は先に戻っていい? クレイドルを宿に運びたいのよ」
「うん? 構わねえよ。魔石やらの回収はこっちでやるさ。早くクレイドルをちゃんと休ませてやりな」
グランに担がれ、寝息をたてているクレイドルを訝しげに見るロングスウォード。
「……に、してもだ。
「あの状態のクレイドルは、
レンディアの言葉に、ロングスウォードとアルバートは、クレイドルの異様な出血状態の事を言っているのだと、分かった。
「ま、後でね。皆、宿に戻りましょうか」
先を行くレンディア。では、と頭を下げるグラン。じゃねー、と軽く手を振るシェーミィ。
二人は、レンディアの後を追って行った。
「“碧水の翼”か……」
悠々と去って行く、レンディア達の後ろ姿を見送りながら、アルバート、ロングスウォード共に、呟いた。
宿に戻るまで、クレイドルはグランに担がれたままだった。
「ただいま」
とレンディアが、“
ぐったりと、グランに担がれているクレイドルを見て、女将のイーライが目を見張る──「クレイドルは、大丈夫なのかい!?」
「眠っているだけよ。部屋に運ぶわよ。グラン、お願いね」
驚くイーライを尻目に、レンディア達が二階に上がっていく。
部屋に戻った時には、クレイドルは目覚めていた、グランは居ない。
ただクレイドル一人──しばらくボンヤリすると、普段着に着替える。
まあ、いいか。腹も減っていないしな……眠たい。ただただ、眠たい──クレイドルは、毛布にくるまり身を丸める。
すぐに、深い眠りの底に落ちて行く──
〈んっふふふ~。良くやったよ我が子よ。“
邪神の声は、クレイドルには届かなかった……。
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(゚∈゚ )ビヨビビビ~。