邪神の子 ~赤き瞳のクレイドル~   作:末末

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執筆速度が落ちてますな。面目無い。
ちと気合い入れます。


(#゚Д゚)y-~~


第188話 ピックマンの霊園 対中級アンデッド

 

 

ピックマンの霊園に出現する、中級アンデッドのおさらいをする。

哭き女(バンシー)”、“屍鬼(グール)”、“歩く腐肉(ロッティコープス)”。あとは武装スケルトン。

この内、屍鬼についてはピックマンから譲って貰った首飾り──ピックマンの護符があるので、注意を払う必要は無いだろう。最も、屍鬼達をなるべく刺激しない様に行動するつもりだが。

 

「ピックマンの話だと、陽のある内は地上にアンデッドは出ないとの事だったわね」

「“不死者探知(アンデッドサーチ)”を試しているんだが、ここいら辺りには、何の反応も無いな……廃棄された墓地特有の、瘴気も感じない」

グランさんが、周囲を見渡しながら言った。

「レンディア、グランさんの探知にかからないなら、直ぐに霊廟に向かわないか?」

俺の意見に、ふむ、と考えるレンディア。

「急ぐ必要は無いと思うけどー、陽の高いうちに帰るんだから、霊廟の中をさっさと見て回った方が良いかもねー」

とは、シェーミィの意見。

確かにな、霊廟内を取りあえず見て回らない事には……少し、地下二階奥の洞窟が気になるな。

あの洞窟、ピックマンは何と言っていたっけか?

 

──ああ、霊廟地下二階奥の洞窟ね。あそこには、アンデッドも近付かないんだ。一度入ってみようとしたけど、屍鬼(グール)達に止められたよ。少しだけ、踏み込んでみたんだが……多分、あの洞窟は他の場所に繋がっていると思うね。

何故かって? 奥の方から、ほんの微かに風が吹いてきたのを感じたんだよ──

 

他の屍鬼と、コミュニケーションが取れるのか? という疑問は置いておいて、ここの霊廟が他所に繋がっているのでは? という情報は、なかなかに有益だと思うのだが、レンディアはどう思っているのだろうか?

 

「ふん……ピックマンの言っていた地下二階奥の事も気になるけれど、まずは霊廟ね。霊廟探索を優先しましょうか。元々ここに来た理由は、対中級アンデッドの経験を積む事だからね」

レンディアが、あっさりと決めた。

まあ、そうだな。対中級アンデッド対策が最優先次項だ……よし。

「グランは引き続き、不死者探知(アンデッドサーチ)。シェーミィとクレイは、先行して」

レンディアの指揮の元、速やかに陣を整える。

「さて。霊廟に向かいましょうか」

朝の気配がまだ充分残る内に、俺達は霊廟に向かう。

中級アンデッドか……さて、どんなものだろうか?

 

 

──ピックマンの霊園の霊廟内。いつか行った、城塞都市の“静寂の祠”とはまた違った趣がある。

一階フロアは静寂の祠よりも広く、天井付近には外気と明かりを取り入れる為の小窓が多く配されているため、石造りの霊廟内は少し明るめだ。

小部屋等は無く、左右の壁際に骨壺と遺灰壺が納められている棚が無数に作られていた。

小部屋が無いだけ、霊廟内は、ちょっとした広場の様になっているのが印象的だ。

 

不死者探知(アンデッドサーチ)には、何も掛からず……だな。霊体が不意に湧く可能性もあるから、このまま探知を続けるぞ」

仄かに明るい霊廟内を見回しながら、グランさんが云う。

「ん。任せるわ。このまま、地下一階に降りるわよ。シェーミィ、クレイ、先行して」

レンディアの指示の下、シェーミィとともに慎重に進む。

 

 

「皆、少し待て」

地下一階に降りる直前、階段前の広場でグランさんの不死者探知(アンデッドサーチ)に反応があった。

「数、五体……恐らく、鬼火だ」

「他のアンデッドの先触れかもねー」

シェーミィが、ほぼ無意識に矢を二本つがえ引く。それに合わせる様に、レンディアが剣の鯉口を切る。

「鬼火、か……俺がやるよ」

魂食み(ソウルスレイヤー)でアンデッドと戦うのは初めてだな。魔剣がどう通用するか、試すとしようか。

「ん。任せるわ……グランと一緒に向かって。その後は引き続き、二人で斥候をお願いよ。シェーミィは私と後続ね」

 

グランさんとともに地下一階に降りると、仄かに明るい霊廟内に、ゆらゆらと青く漂う鬼火が間近に見えた。

その数、五体。こちらに気付いている様な様子はない……。

グランさんと一瞬の目配せ──(後ろは任せろ)──頷きで返し、魂食み(ソウルスレイヤー)片手に鬼火達に近付く。

 

 

異質な気配を纏うロングソード──魔剣、魂食み(ソウルスレイヤー)と云ったか……それを片手に、クレイドルは音も無く鬼火達に近付いて行く。

全く気付いていない鬼火を、無造作に袈裟斬り一閃。

斬られた鬼火が煙の様に消える前に、斬った鬼火の斜め前方に漂っている鬼火を、返す刃で下段から斬り上げた。

次いで、その真横に漂っている鬼火を横薙ぎに斬り払った──クレイドルは、ほぼ二呼吸ほどで、鬼火三体を滅した。ふむ、さすがだな……さて、残り二体は私が始末するか。

 

魂食みで鬼火三体を斬った感触……霊体を斬った手応えでは無かった。

霊体独特の水を叩いた様な手応えではなく、少し重みのある、野菜を切った様なザックリとした感触だった。魂食みだからか?

残り二体に目を向けると同時に……バッ、パアァッン──残った鬼火二体が、弾け散った。

鬼火が弾け散る瞬間、視界の端に黒い矢が二つ見えていた──グランさんの暗黒術か。

鬼火五体を殲滅。感覚的に五、六秒という感じ、か……上手く速攻が決まったな。

「いや、見事な剣だったな」

声に振り向くと、微笑みを浮かべるグランさん。その顔を見て、一息つけた。

 

 

鬼火の魔石を回収し、改めて地下一階を進む事にする。地下一階の造りも、一階と変わらない様だ。

違うのは、一階よりも広く暗い事。

「ふん。少し暗いわね……グラン、“闇明け”をお願いよ」

グランさんが頷き、宙に手をかざすと、ゆっくりと印を描きながら詠唱を始めた。

──荒野を照らすは煌々と輝く月明かり 月明かりの下に闇は開ける──

 

おお、いつか見た“闇明け”の詠唱バージョンか。

詠唱の効果なのか、闇が開ける範囲がかなり広がって行く……凄いな、地下一階のフロアがかなり広く視認出来る様になった。

“闇明け”は、普通の明るさとは違うんだよな。何とも不思議な景色だ……。

「ふん。詠唱を使えば、こうも変わるのね。凄いわね」

「それなりに魔力は使うがな。このフロアを充分に探索するまで、余裕で持つぞ」

詠唱後の喉を潤すためか、革の水筒を口にするグランさん。黒ワインだな?

 

 

探索すると言っても、何しろこのフロア。一階同様、小部屋が無い。

骨壺と遺灰壺が納められている棚が、壁際にあるだけ。先程の鬼火以外には、アンデッドは見当たらない。

「……中級アンデッドが出現するのは、陽が完全に落ちた時間、もしくは地上だけなのか?」

独り言の様に呟くグランさん。俺達は警戒態勢を取りながら、フロアを進む。その間、一切の会敵無し。

というか、この地下一階だいぶ広く感じる。一階フロアの倍はあるんじゃないか?

 

今、先頭を行くのはグランさんとシェーミィ。

いち早くアンデッドに気付ける、暗黒騎士のグランさんが、シェーミィよりも少し前を進んでいる。

物音に敏感な猫族のシェーミィの耳が、ピンと立っていた。

微かな音も聞き逃さない様、気を張っているのか……。

 

 

「ん……グラン、一時の方向を探って」

シェーミィの言葉に、グランが即座に反応する。

「……四体が向かって来ているな。種類は分からないが、人型だ。レンディア達に報告頼む」

シェーミィが頷き、音も無く後方に下がって行った。

微かな腐敗臭が漂って来る──哭き女(バンシー)屍鬼(グール)、武装スケルトンが、腐敗臭を漂わせるとは聞いた事は無い……となれば、向かって来るアンデッドは……歩く腐肉(ロッティコープス)か。

 

“闇明け”の薄明かりに照らされたアンデッドは──グランの予想通り、歩く腐肉(ロッティコープス)だった。

最早、性別や種族さえ定かでは無い、グズグズに崩れて腐った体を引きずる様に近付いて来るロッティコープス四体。

戦闘能力自体は大した事は無い。腐敗した爪や歯に含まれる雑菌による、麻痺や毒の効果が厄介なくらいだ。

 

「全く……アンデッドというのは、何ともやりきれないな……」

暗黒騎士として、アンデッドに対しては嫌悪感とともに、一抹の哀しさを感じるグラン。

何の因果で、アンデッド化したのか……と考えても意味は無い。

ロッティコープスは、死体が瘴気に侵されてアンデッド化しただけの存在。

魂が囚われてのアンデッド化とは違う。

分かってはいるが、死の尊厳を汚されている様に思えてならない……。

 

──大いなる父君よ、瘴気に汚されし死骸を今、土に還します──

暗黒神へ祈りを捧げ、己の手で四体のロッティコープスを始末しようと、剣を抜くグラン。

何を察したのか、四体のロッティコープスは急に歩みを速め、グランに迫る。

 

「灰と塵に浄められ 土に還れ──“清浄の闇炎”」

グランの剣に、暗き炎が浮き上がる。

間合いに入って来たロッティコープスを薙ぎ払うグラン。

暗き炎を纏う剣が、ロッティコープスを斬り裂く──炎が、ロッティコープスを包んだかと見えた瞬間には、腐肉が一瞬で塵と崩れた。

床に落ちた塵が、どこからともなく吹き付けて来た風に散らされ、流されていった。

「大いなる父君よ。感謝します」

残りのロッティコープスを浄化すべく、グランが足を踏み出した。

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