邪神の子 ~赤き瞳のクレイドル~   作:末末

216 / 245
アンデッドの表記ですが、これからは不死者、不死族と二つで分ける事にします。
筆者の感覚的な問題ですので、御了承下さい。


(*゜Q゜*)


第189話 ピックマンの霊園 地下二階の洞窟

 

 

今は、地下二階に降りる階段前の広場で小休止中だ。

地下一階で遭遇した不死者(アンデッド)は、歩く腐肉(ロッティコープス)と鬼火が数体のみ。

哭き女(バンシー)”、“屍鬼(グール)”、武装スケルトン等は、出現しなかった。

「時間帯が早すぎるって事かなー?」

シェーミィが、そんな疑問を口にする。霊園に来たのは早朝過ぎだった。多分、昼まではまだ時間はあるだろう。

「かもしれんな。ダンジョン内では時間は関係無いといっても、ここは霊廟。まだ死者の時間ではないという事か」

グランさんの不死者探知(アンデッドサーチ)にも反応は無しだそうだ。

 

ふうん、とレンディア。地下一階でこんな感じならば、地下二階もそう変わらないのでは?──と思うのは少し早いか?

「ま、いいわ。二階に降りましょ。グラン、引き続き不死者探知(アンデッドサーチ)お願いよ。シェーミィと一緒に先行して。私とクレイは距離を取って追うわ」

りょーかい、とシェーミィ。よし、とグランさん。

今だ不死者探知には反応が無かった様で、二人は早速階段を降りて行った。

レンディアと二人で、グランさん達を見送る。

「地下二階も、そう変わらないと思うか?」

ふと、レンディアに尋ねる。レンディアは周囲を見渡し、答えた。

「どう……かしらね。ただ、地下一階よりも更に広いと思うわよ。出現するアンデッドは分からないわね」

レンディアもそう考えているか。まあ、降りて見るだけだな……。

 

「さて、私達も行きましょうか」

レンディアは剣の鯉口を切り、ゆったりとした足取りで階段へと向かう。

俺はレンディアの後を追う前に、ふと背後を振り返る。

グランさんの“闇明け”が過ぎ去り、元の薄暗い空間に戻った地下一階を改めて眺めると、何となく感傷的な気分になりそうだ……。

「クレイ、行くわよ」

レンディアの声に、我に返る。霊廟の雰囲気に飲まれる所だった……危ういな、気を付けないと。

「ああ、今行くよ」

 

クレイドルは、もう振り返らない──

 

 

「……地下一階とは、全然違うわね」

レンディアが、呆れながらも、感心した様な声を上げる。

霊廟、地下二階。壁際に棚等は無く、壁自体がまるで遺骨で作られているかの様になっている──“カタコンベ(地下墓所)”だ……。

 

「レンディア、ここでは不死者探知が役に立たない。全ての場所に反応してしまう。シェーミィに気配を探らせて、その勘働きに任せよう」

グランさんが云うには、壁にぎっしりと埋め込まれ、積み上げられた無数の遺骨に、不死者探知がどうしても反応してしまうそうだ……そりゃあ、これだけの遺骨があればなあ。

「ん。分かったわ。シェーミィ、斥候頼むわよ。慎重にね。グランは“闇明け”を続行。皆、あまり離れない様に進むわよ」

「にっしし。任せてー」

ごく自然に矢をつがえ、物音一つ立てずに、前を行くシェーミィ。

“闇明け”を展開するグランさんを中央に、俺達は地下二階、カタコンベ(地下墓所)を慎重に進む──

 

 

“闇明け”に照らされるカタコンベ(地下墓所)を、俺達は慎重に進む。

体感的に、広さは地下一階と変わらない感じはするが、妙な圧迫感からか息苦しさを感じる……カタコンベは、厳粛な雰囲気だと思っていたが、ここは何か違うな。

もっとも、カタコンベなんて前世でテレビでしか見た事ないが──不意に、グランさんが立ち止まる。先を行くシェーミィから、何か合図でもあったのか……?

 

 

「妙なんだよねー。気配どころか、物音一つ無い……静かすぎるね」

戻って来たシェーミィの報告。耳が今も、音を探る様にピンと立っている……不自然な静寂は要警戒──と習ったな。

「ふん。あまりいい感じはしないわね……今日は引き返して、また後日。という選択もあるけど……ふむ」

一時撤退の考えを云い、少し考え込むレンディア。

「……グラン、不死者探知(アンデッドサーチ)を指定した方向のみに絞れる?」

「つまり……特定方向だけに対して、という事だな。ああ、出来る」

グランさんの答えを聞いたレンディアは、頷く。

「シェーミィ、奥にあるらしい洞窟が見えるまで進んで。グランは、不死者探知を前方に絞って。周囲は、私とクレイで警戒するわ」

レンディアの指示を、俺達は了承する。なぜ何どうしてだとは聞かない。

 

レンディアの決断──リーダーの決定に従う。これは、今までの信頼の積み重ねによるものだ。

つまり、“リーダーがそうだと決めたから、そうなんじゃろう”という精神だ──

 

静寂のカタコンベを進む。圧迫感と息苦しさは相変わらず。

先を行くシェーミィが立ち止まり、前を向いたまま合図を出した──おそらく、洞窟を見つけたのだろう。

俺達が近付くと、シェーミィが前方を指し示しながら、囁く様に云う。

「……あそこ、ホラ。ぼんやりとした暗がりになってるとこ」

“闇明け”の範囲外からでも、シェーミィが指し示す場所が見えた──カタコンベの中に存在する、不自然な暗い空間。

あれが、ピックマンが言っていた洞窟か……。

「よし……入り口近くまで進みましょうよ。グラン、洞窟に向けて、不死者探知(アンデッドサーチ)を。シェーミィは、引き続き気配を探って。クレイと私は、そのまま周囲の警戒を続けるわよ」

レンディアの指示の下、改めて“碧水の翼”は動く──アンデッドは近付かず、屍鬼(グール)達がピックマンを引き止め、ピックマンが、他の場所に通じているのでは?という疑問を持った場所……さて、何が出るか?

 

 

洞窟をめざして進んでいる途中。最初に異変に気付いたのは、先行しているシェーミィだった。

「ん……何か変な音、というか声?みたいのが、洞窟の方から聴こえるけど……何だろう?」

猫耳が前方を向き、ぴこりと動いている。

「……グラン、何か反応は?」

「いや……まだだが……もう少し進んでみるか?」

ふん、とレンディアが洞窟の方向を見つめる。

「そうね。シェーミィ、進んで。慎重にね。グラン、そのまま探知を。行きましょうか」

さて、何がおきるか見てみましょう、とレンディアが呟いた──目指すは、洞窟だ。

 

洞窟の入口らしき、不自然な暗さの空間が、はっきりと見える距離まで来た。

なるほど……確かに不自然だ。

“闇明け”に照らされるカタコンベの薄暗さの中、洞窟入口の暗さだけが、妙に浮き上がっている様に見えるのだ……。

「近くまで進むわよ。シェーミィ、そのまま気配を探って。グランも引き続き、不死者探知をお願いよ」

シェーミィを先頭として、少し後ろにグランさん。その左右にレンディアと俺。この配置で、洞窟を目指して進む。

シェーミィが聞こえたという、音だか声を俺達にも聞こえるまではこのまま進むつもりだろうな。

レンディアとともに、何かしらの気配に気を付けているが──うん?

 

「……聞こえたわね?」

レンディアの発言と同時に、皆の動きが止まる。

先頭にいるシェーミィは、片膝を床に着け、弓をいつでも射つ事が出来る様に構える。

洞窟の方から聞こえた、音とも声ともつかない微かなもの……何ともいえない不快な気分にさせる(ノイズ)だ……。

「……不自然に静かな理由と、アンデッドが見当たらない理由が、分かったぞ……」

洞窟を見つめ、舌打ち混じりに忌々しげに云うグランさん。

「レンディア、大いなる父君の加護を願う。少し時間をくれ」

「ん。お願いよ。クレイ、シェーミィの近くで待機。私はグランの背後に付くわ」

俺達は、暗黒神(大いなる父君)に加護を願うグランさんを守る配置に付く。さて……何が出てくるか見てみよう。

 

〈珍しい奴が来るよ~。“魂食み(ソウルスレイヤー)”が成長する、いい機会かな──お、兄上の気配だ……じゃ、まったね~〉

いきなりの、邪神(親父殿)の言葉。云うだけ云うと、さっさと去って行った……魂食み(ソウルスレイヤー)の成長? また変化するのか? あと、兄上と云っていたが、それは……。

 

黒ワインに浸された短剣を前に、床に膝を付き手を組んで、本格的な祷りを捧げ始めるグランさん。

 

────魂を刈り取る 穢らわしき者が迫って来ています あなたの息子 そして我が友らを護る御力を 一時(ひととき)お与え下さい 生と死 そして魂を侮辱する 死神を称する穢らわしき者を打ち破り退ける加護を あなたの息子グランが 乞い願い申し上げます───

 

グランさんの長めの祷りが、今からやって来るもの……“死神を称する穢らわしき者”とやらが、かなり厄介な存在だと思わせる……何が来る?

 

ヴゥゥァァァアアァァァ──(ノイズ)が耳を打ち始めて来た。

この不快な声の元凶が、間もなくやって来る……。

 

“碧水の翼”が戦闘態勢に入った───




よければ、感想等を。
モチベーション、やはり大事ですな。


(゚∈゚ )
ピー、ピヨピヨ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。