邪神の子 ~赤き瞳のクレイドル~   作:末末

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そろそろ連載二年目。これも読者がいるからこそ。感謝します。

(`◇´)ゞ
サンキュー。


第190話 ピックマンの霊園 ソウルリーパー戦

 

ソウルリーパー(魂を刈る者)──通称、死神。

冒険者、神職や聖職に関わる者達から、忌み嫌われ、恐れられている不死族(アンデッド)

神職者や聖職者曰く──「魂と生と死を冒涜する存在であり、不倶戴天の敵」。

神職者や聖職者達にとって、不死者(アンデッド)達は忌むべき存在では無い(もちろん例外はあるが)。

魂と生と死の尊厳に対してへの、敬意と慈悲の心をもって、灰と塵として土に還すべき存在として見ている──

 

ソウルリーパー(魂を刈る者)が神職者と聖職者達に忌み嫌われる理由は、土に還すべき不死者(アンデッド)を刈り、喰らうからである。

その行為は、尊厳を踏みにじる以外のなにものでないと、神職者と聖職者達は義憤めいた感情を持っているのだ。

冒険者が恐れる理由は、上級の不死族(アンデッド)として危険な敵性存在だからだ。

アンデッド特有の状態異常持ちで、特に厄介な昏倒・恐怖・吸精(エナジードレイン) を持ち、それに加えて魔力、物理耐性が高く、生半可な攻撃はほぼ通らないが、対処法はある意味単純だ──

ソウルリーパー(魂を刈る者)の魔力、物理耐性を貫く攻撃手段を持つ。神の加護を得て、対不死族(アンデッド)への抵抗力を持つ──等だが、言うは易く、というやつでそれらの手段を用意するのは簡単では無い。

 

ソウルリーパー(魂を刈る者)と戦う状況というのは、遭遇戦ではなく、周到に準備を済ませた上での討伐戦。つまり、緊急度の高い討伐依頼としてだ。

依頼主は領主であったり、各神殿等。

冒険者、神職者と聖職者達が協力して、ソウルリーパー(魂を刈る者)討伐に挑むのだ。

 

それほどの相手に、“碧水の翼”はこれから挑もうとしている──

 

 

ソウルリーパー(魂を刈る者)……死神と称される穢らわしき者。それが近付いて来るのが実感出来る。

この耳を打つ、不快な(ノイズ)だけじゃない。何か、前にも経験した事のある感覚に似ている──「……来るぞ」

祷りを終えたグランさんの、忌々しげな声。

それが(・・・)、姿を現した──

 

四方に波打つ、質量を持つ様な濃い黒き霧。第一印象はそれだった。大きい。大人一人を包む込むほどの黒い霧の塊が、ゆっくりと近付いて来る。

黒い霧の塊は、こちらから一定の距離を取り、動きを止めて佇む──いつの間にか、不快な(ノイズ)は止んでいた。

目が、合った。明確な殺気を含んだ視線と。

そう直感した、と同時に理解した。

前にも経験した事のある感覚(・・・・・・・・・・・・・)……なるほどな、こいつ……。

 

「悪魔か!」

俺の声に呼応するかの様に、黒い霧が大きく膨らみ弾けると、亡霊の様な姿が現れた──霧の様な黒衣を身に纏い、両腕に歪な形状の鎌を持った、異形体。

その身は宙に浮き、足は見えない。

頭部はフードで包まれ、忌まわしく爛々と光る目だけが、その影から覗いている──不死族と悪魔の両属性を持つか……ふん、面白い。

ソウルリーパー(魂を刈る者)だと? ならば、こっちは魂食み(ソウルスレイヤー)だ──フェイスガード越しに、獣の笑みを浮かべるクレイドル。その瞳は、赤く瞬いていた。

 

「シェーミィ、下がって! グランとクレイ、前に! 私とシェーミィは補佐に回るわ!!」

レンディアの号令一下、即座に隊列を入れ換える、“碧水の翼”。

グランとクレイドルが、シェーミィとすれ違う様に、前衛に出る。

後衛に位置取っているレンディアが、素早く詠唱する。

──風は霧を払い散らし 見るべきものを (あらわ)にする 纏いしまやかし散るべし──

ソウルリーパー(魂を刈る者)を、レンディアの風属性の魔術が突風となり、吹き包んだ。

 

ヴアォオォォォアァァァッッ!

突風に包まれたソウルリーパーが、身を捩りながら突風から抜け出した。

その身に纏う霧の黒衣の一部が、風に散らされ薄くなっていた──レンディアの放った、対象の諸々の耐性を下げる魔術。ソウルリーパーの、魔力と物理耐性を少しでも低下させるため放った風属性の魔術が通ったのだ。

「……ふん。ちと(・・)、通りが浅いわね。さすが上級の不死族(アンデッド)

舌打ちをしながら云うレンディア。ソウルリーパーの高い魔力耐性で、術の通りが悪く、思ったより効果が現れなかったのだ……しかし、レンディアは挑発するかの様な、不適な笑みを浮かべていた。

 

アアァァァオォォアアッ!

レンディアを術者と認識したソウルリーパーが、レンディアを、真っ先に廃除すべき相手と見なし、流れる様な動きで突っかかって行く──かに見えたが、ガクン、と動きを止める。

ソウルリーパーの体に、二本の矢が突き立っていた。シェーミィの二連射だ。

にッしし、とイタズラが成功したかの様な笑い声を上げるシェーミィ。

そのまま、バックステップで大きく距離を取り、離れて行った。

 

ソウルリーパーにダメージがあるようには見えないが、それでも挑発するには充分な攻撃──ヴォォォアアッ!!

激昂したソウルリーパーの、怒号にも似た叫び声が、洞窟前、“カタコンベ(地下墓所)”内に響き渡る。

この叫び声。暗黒神(大いなる父君)の加護を得ていなかったら、何らかの状態異常に陥っていたかも知れないな……。

それはともかく、本来なら、ヘイト(敵視)を集めるのは前衛の(タンク)の役割なのだが、中衛と後衛を受け持つレンディアとシェーミィが、それ(ヘイト)を担った……ならば──「「こっちだ」」

グランさんと俺は、ソウルリーパーのヘイト(敵視)外から仕掛ける。

 

胴への薙ぎ払い、下段からの斬り上げをほぼ同時に繰り出す──が、グランさんと俺の攻撃は、ソウルリーパーが両腕に構える鎌で受けられ、弾かれた。

いや、さすがと云った所だが──それだけで攻めを終わらせるつもりは無い。

グランさんと連携を取り、さらに攻撃を続ける。

こちらの、上下の撃ち分けを捌きつつ、反撃をしてくるソウルリーパー。

なるほどな、手強い。グランさんと俺の攻撃を、正面から受けながらも反撃をしてくる──だがな、俺達はもっと手強い相手を知っているぞ。

 

首を狙ってきた鎌の薙ぎ払いを、半歩引いて避ける──速い。反撃の間も無いほどだが……。

追撃をしようと迫り来るソウルリーパーの横合いから、グランさんがカイトシールドをぶつける様に、ショルダータックルを食らわせる。

ソウルリーパーは、大きくバランスを崩すも、浮遊状態なのでその身を翻すだけにとどまる。当然、ダメージは見受けられない。

そのまま上空に浮き上がり、俺達を睨み付けながら宙を漂うソウルリーパー。

「……さて、どうしたものか?」

ソウルリーパーの、恨みがましい視線に臆する事無く、睨み返すグランさん。

このまま膠着状態なのは良くないな。時間を掛けていい相手とは思えない……そう思っていた時だった。

 

ガヅッッンッ! 金属同士がぶつかる衝撃音──レンディアが音も無く跳躍して、ソウルリーパーに接近し、斬り付けた。その斬擊をソウルリーパーが鎌で受け止めたのだ。

「凍てつく霜氷よ 包め!」

レンディアの短い詠唱とともに、剣から霜が発生し、その霜がソウルリーパーの鎌から腕にかけてまとわりつき、その腕を凍てつかせる──レンディアは、ふわりと着地した。

空中での滞空時間の長さは、風属性の魔術によるものだろう。

 

ソウルリーパーは、凍てつき利かなくなった腕をしばし見つめると──もう片方の腕に構えた鎌で、凍てついた腕をあっさりと斬り落とした。

斬り落とされた腕は、地に落ちると同時に塵と化し、すぐに消え散った。

ソウルリーパーの腕が、早くも再生し始めている。ご丁寧な事に、鎌も一緒だ。

「片腕潰した程度じゃあ、あまり意味無かったわね」

ふん、とレンディアが、吐き捨てる様に云う。

「……いや。そうでもないみたいだ」

よく見ると、ソウルリーパーの身体。霧の黒衣がほんの少し、薄くなっている気がする……。

それに気付いたレンディアが、改めて指示を出す。

「一気に叩き潰すわよ!」

時間を掛けていい相手ではないと判断しての、指示だ。

ヴゥゥゥオオォォォアァァッッ!

ソウルリーパーもまた、長引かせるつもりは無い、と云うかの様に、悲鳴にも似た叫び声を上げた……決着は近いか?

 

 

──そう言えば、“魂食み(ソウルスレイヤー)”が成長するいい機会だと邪神(親父殿)が云っていたな……やるぞ、魂食み(ソウルスレイヤー)──

 

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