邪神の子 ~赤き瞳のクレイドル~   作:末末

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ちと、遅くなりましたが。

_〆(。。)


第191話 ピックマンの霊園 魂食み(ソウルスレイヤー)ソウルリーパー(魂を刈る者)

 

 

オォォォアァァァァッ!

ソウルリーパー(魂を刈る者)は、レンディアではなく、グランさんと俺を優先する事に切り替えたらしい。

相変わらずの不快な叫びとともに、速く、重い一撃を繰り出し、俺達を攻め立てて来る──その動きからは、焦りの様なものが感じられた。

 

この焦りの理由は恐らく──暗黒神(大いなる父君)の加護が強く、その加護によって、ソウルリーパー特有の状態異常攻撃が、一切通用しない事。

レンディアの、魔力耐性と抵抗力を低下(デバフ)させる魔術に抵抗、または無効化出来なかった事──それらの要素プラス……俺だ。

 

いつだったか邪神(親父殿)が云っていたな──〈んふふっ悪魔はねぇ僕ら(・・)の天敵だからねぇ目を付けられたねふふふっ〉──と……邪神の眷族たる俺。

つまり、邪神の子を目の前にして、悪魔属性を持つソウルリーパーが焦りを見せているという事になるのか……だとしても、妙だ。

以前闘った地獄の騎士(ヘルナイト)からは、こんな焦りは感じなかった。どういう事だろうか?

 

まあ、いい。今は、ソウルリーパーを、魂食みで叩き潰す事(ソウルスレイヤーに喰らわせる)を考えよう……うん? 俺は今、何を考えた?

──遠くで、邪神(親父殿)の含み笑いが聞こえた気がした──

 

 

ソウルリーパーとグランの、激しい攻防の応酬の末、鍔迫り合い状態になるも、グランの剣がソウルリーパーの鎌を腕ごと弾き飛ばした──元々、腕力はグランが上回り、さらに暗黒神の加護で身体強化がなされている以上、迫り負けはしなかった。

グラリ、と体勢を崩すソウルリーパー。

追撃のため踏み込むグランめがけ、もう片方の鎌が橫薙ぎに迫る──ガヅンッ!

その鎌を、横合いからクレイドルがラウンドシールドで跳ね上げて、防いだ。と、ほぼ同時に魂食み(ソウルスレイヤー)でソウルリーパーの胴を薙ぎ払うが、ソウルリーパーが身を捻って避けようとしたため、その脇腹を切り裂いたにとどまった──切り裂かれた箇所から、黒煙の様な塵が流れ出し、霧の黒衣がまた薄くなる。

それは、ソウルリーパーの耐性の低下を示していた──それを見計らった様に、シェーミィの矢がソウルリーパーの体に、二本突き立つ。

前とは違い、ダメージがあったのか、ソウルリーパーが呻き声を上げ、怯む様に後ずさる。

それを見逃す、グランとクレイドルでは無かった。

 

(耐性低下が、まあまあ効いているみたいね……)

レンディアは、グラン達とソウルリーパーの戦いを、少し引いた距離から眺めていた。

ソウルリーパーの意識は、ほぼ完全にグランとクレイドルに向いている。

このまま二人に任せても良いかも知れないが、やはり短期決着を考えるべきだろう。

何しろ相手は、本来なら遭遇戦で戦う様な存在では無いのだ。

早く決着をつけるなら、強力な手札を切る必要があるのだけれど……「さて、どうしましょう?」

 

他人事の様に呟いたレンディアだが、切る手札はほぼ決まっていた──雷だ。

 

 

胴を両断するつもりの一撃を放ったが、ソウルリーパーが身を捻る動きをしたため、攻撃がずれ、脇腹を少々切り裂くしか出来なかった。

宙に浮いている分、なかなか素早いな……まだ弱らせなければ──そう考えた時、鋭い風切り音が耳元で聞こえた。

シェーミィの矢だ……ほぼ同時に二本、ソウルリーパーの胸と腹に突き立つ。

 

ヴォォオァアアォッ!

ソウルリーパーが呻き声を放った。シェーミィの矢が、明らかに効いている。

怯みながら後ずさるソウルリーパーだが、逃がす訳にはいかない。一気に畳み掛ける絶好の機会(チャンス)

すぐ側にいる、クレイドルと一瞬の目配せ。意思は同じだ。

──ソウルリーパー(魂を刈る者)は逃がさない──

 

グランとクレイが、連携を取りながらソウルリーパーを攻め立てている。

ソウルリーパーはその攻めをしのいでいるが、直に限界が来るだろう……。

相手は、“死神”と称される不死族(アンデッド)…… 追い詰められたなら、何をするか分からない。ならばその前に、手札を切る必要がある……よし。

「グラン、クレイ! 五秒足止めして! シェーミィは、その補助!!」

了承を確認する必要は、無い。

皆、やるべき事をはっきりと理解しただろう。私がやるべき事は──レンディアは、すぅ、と短く息を吐き、詠唱を始めた。

 

──猛き風は轟く雲を呼び 轟く雲は静かに集い雷をまとめる 雷は風とともに行け──

 

レンディアの詠唱が、カタコンベ(地下墓所)内に朗々と響く──ピシィィイィィッン!!

カタコンベ内の空気が震え鳴り、一瞬の雷光が墓所に積み重ねられた遺骸を、蒼白く照らした直後──疾風が吹き抜け、雷雲がカタコンベの天井。レンディアの頭上に、渦を巻く様に集まる……。

()く行け! “雷撃(ライトニングストライク)”!!」

レンディアがソウルリーパー(魂を刈る者)を指差すと同時に、雷雲から一条の雷光がソウルリーパー目掛け、疾走(はし)る──バギッン!! 金属が引きちぎれるかの様な音が、雷光に遅れて、カタコンベ内に轟いた。

 

蒼き雷光が、ソウルリーパーを直撃した──ギイッッアァァ、アァァァァッ!!ソウルリーパーは、両腕に構えた鎌を取り落とし、凄まじいまでの声で叫ぶ。

雷光が直撃したその身体から、焦げた黒煙が舞い上がっている。

雷撃(ライトニングストライク)”──レンディアの切り札だ。

 

雷撃(ライトニングストライク)”──私の術で上位の威力を持つ、切り札の一つ。

当たり所によっては、オーガを一撃で始末する事が出来る威力を持つ。

かなり魔力を消費するので、使用後は枯渇ギリギリになるけれど……兄上からは、『それ(雷撃)を対単体だけでは無く、対範囲でも使用出来る様にしておけば、かなり捗るぞ。そのためには魔力量を増やすしかない。魔力制御を怠らない事だな』と言われているけどね。

簡単に言ってくれるわよ……まあ、それはいいわ。ソウルリーパー(魂を刈る者)には、いいタイミングで命中させる事が出来たけれど……さすがは、上位の不死族(アンデッド)

一撃では、始末出来なかったわね……後は、グラン、クレイ、任せたわよ……。

 

魔力を枯渇寸前まで使用したレンディアは、床に座り込んだ。

疲労したレンディアを守るように、シェーミィがそっと背後に佇む。

 

 

雷撃(ライトニングストライク)の直撃を受けてなお、ソウルリーパーは今だしぶとく残っている。

全身から黒煙を燻らせ、その身は襤褸の様にぼろぼろになり、フードから覗く眼窩と口を思わせる様な闇の空間から、焦げた黒煙が立ち上っている──もう一押しで、この“死神”と称される、穢らわしい不死族(アンデッド)を撃退する事が出来る──レンディア達が思った矢先、ソウルリーパーが今までとは違った、壮絶な絶叫を上げた──ヴゥゥウウァァアアッガッアガッッアアァァッ!!!──耳をつんざく、凄まじい絶叫。

暗黒神の加護を受けてさえも、尋常では無い衝撃にレンディア達の身が竦む……一時的な麻痺状態に陥ってしまった。

 

形振り構わない、ソウルリーパー(魂を刈る者)の逃げの一手。

レンディア達が怯んでいる隙に、洞窟内に引き返す動きを見せるソウルリーパーだったが、その目に映る物は──剣、だった。

 

 

ソウルリーパーが上げた絶叫は、物理的にも精神的にも俺達を強く縛り付け、一時的な麻痺状態をもたらせた。まさに、形振り構わない為の逃げの一手……だがな。

──ソウルリーパー(魂を刈る者)は逃がさない──

 

ソウルリーパーの絶叫から来る、一時的な“恐怖の麻痺(フィア・パライズ)”を振り払い、逃げるソウルリーパーを追う。

その逃げ足は速い。逃げると決めたらならば、形振り構わず逃げる姿勢は、感心出来るほどだ──追いながら、魂食み(ソウルスレイヤー)を逆手に持ち、槍を投げる様に構える。狙い、良し……喰らえ!!

魂食み(ソウルスレイヤー)ソウルリーパー(魂を刈る者)目掛け、投擲する──シィィィアァァッッン……!

魂食みが、雄叫びの様な風切り音を立てながら、放たれた猟犬の如く、ソウルリーパーを追っていく。

手元から離れた魂食みは、自らの意思を持つかの様に、ソウルリーパーの胸中央に向かって行き──深々と、突き立った。

 

剣の柄を中心に、ソウルリーパーの身体が、渦に巻き込まれる様に魂食みに吸い込まれていく──ソウルリーパーの、壮絶な悲鳴にも似た絶叫が、カタコンベ(地下墓所)内に響き渡る。

何とも言えない凄惨な情景を、レンディア達は呆然と眺めていた──クレイドルの剣、魂食み(ソウルスレイヤー)が、ソウルリーパー(魂を刈る者)を喰らう様は、何に例えようも無かった……。

 

ソウルリーパーの絶叫が止んだ。

後に残るのは静寂と小山の様な大量の灰。その中央に、魂食み(ソウルスレイヤー)が墓標の様に突き立っている……。

灰の小山を見ながら、レンディアが呟くように云った。

 

「……クレイ、あなたの剣、何なの?」

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