_〆(。。)
オォォォアァァァァッ!
相変わらずの不快な叫びとともに、速く、重い一撃を繰り出し、俺達を攻め立てて来る──その動きからは、焦りの様なものが感じられた。
この焦りの理由は恐らく──
レンディアの、魔力耐性と抵抗力を
いつだったか
つまり、邪神の子を目の前にして、悪魔属性を持つソウルリーパーが焦りを見せているという事になるのか……だとしても、妙だ。
以前闘った
まあ、いい。今は、ソウルリーパーを、
──遠くで、
ソウルリーパーとグランの、激しい攻防の応酬の末、鍔迫り合い状態になるも、グランの剣がソウルリーパーの鎌を腕ごと弾き飛ばした──元々、腕力はグランが上回り、さらに暗黒神の加護で身体強化がなされている以上、迫り負けはしなかった。
グラリ、と体勢を崩すソウルリーパー。
追撃のため踏み込むグランめがけ、もう片方の鎌が橫薙ぎに迫る──ガヅンッ!
その鎌を、横合いからクレイドルがラウンドシールドで跳ね上げて、防いだ。と、ほぼ同時に
それは、ソウルリーパーの耐性の低下を示していた──それを見計らった様に、シェーミィの矢がソウルリーパーの体に、二本突き立つ。
前とは違い、ダメージがあったのか、ソウルリーパーが呻き声を上げ、怯む様に後ずさる。
それを見逃す、グランとクレイドルでは無かった。
(耐性低下が、まあまあ効いているみたいね……)
レンディアは、グラン達とソウルリーパーの戦いを、少し引いた距離から眺めていた。
ソウルリーパーの意識は、ほぼ完全にグランとクレイドルに向いている。
このまま二人に任せても良いかも知れないが、やはり短期決着を考えるべきだろう。
何しろ相手は、本来なら遭遇戦で戦う様な存在では無いのだ。
早く決着をつけるなら、強力な手札を切る必要があるのだけれど……「さて、どうしましょう?」
他人事の様に呟いたレンディアだが、切る手札はほぼ決まっていた──雷だ。
胴を両断するつもりの一撃を放ったが、ソウルリーパーが身を捻る動きをしたため、攻撃がずれ、脇腹を少々切り裂くしか出来なかった。
宙に浮いている分、なかなか素早いな……まだ弱らせなければ──そう考えた時、鋭い風切り音が耳元で聞こえた。
シェーミィの矢だ……ほぼ同時に二本、ソウルリーパーの胸と腹に突き立つ。
ヴォォオァアアォッ!
ソウルリーパーが呻き声を放った。シェーミィの矢が、明らかに効いている。
怯みながら後ずさるソウルリーパーだが、逃がす訳にはいかない。一気に畳み掛ける絶好の
すぐ側にいる、クレイドルと一瞬の目配せ。意思は同じだ。
──
グランとクレイが、連携を取りながらソウルリーパーを攻め立てている。
ソウルリーパーはその攻めをしのいでいるが、直に限界が来るだろう……。
相手は、“死神”と称される
「グラン、クレイ! 五秒足止めして! シェーミィは、その補助!!」
了承を確認する必要は、無い。
皆、やるべき事をはっきりと理解しただろう。私がやるべき事は──レンディアは、すぅ、と短く息を吐き、詠唱を始めた。
──猛き風は轟く雲を呼び 轟く雲は静かに集い雷をまとめる 雷は風とともに行け──
レンディアの詠唱が、
カタコンベ内の空気が震え鳴り、一瞬の雷光が墓所に積み重ねられた遺骸を、蒼白く照らした直後──疾風が吹き抜け、雷雲がカタコンベの天井。レンディアの頭上に、渦を巻く様に集まる……。
「
レンディアが
蒼き雷光が、ソウルリーパーを直撃した──ギイッッアァァ、アァァァァッ!!ソウルリーパーは、両腕に構えた鎌を取り落とし、凄まじいまでの声で叫ぶ。
雷光が直撃したその身体から、焦げた黒煙が舞い上がっている。
“
“
当たり所によっては、オーガを一撃で始末する事が出来る威力を持つ。
かなり魔力を消費するので、使用後は枯渇ギリギリになるけれど……兄上からは、『
簡単に言ってくれるわよ……まあ、それはいいわ。
一撃では、始末出来なかったわね……後は、グラン、クレイ、任せたわよ……。
魔力を枯渇寸前まで使用したレンディアは、床に座り込んだ。
疲労したレンディアを守るように、シェーミィがそっと背後に佇む。
全身から黒煙を燻らせ、その身は襤褸の様にぼろぼろになり、フードから覗く眼窩と口を思わせる様な闇の空間から、焦げた黒煙が立ち上っている──もう一押しで、この“死神”と称される、穢らわしい
暗黒神の加護を受けてさえも、尋常では無い衝撃にレンディア達の身が竦む……一時的な麻痺状態に陥ってしまった。
形振り構わない、
レンディア達が怯んでいる隙に、洞窟内に引き返す動きを見せるソウルリーパーだったが、その目に映る物は──剣、だった。
ソウルリーパーが上げた絶叫は、物理的にも精神的にも俺達を強く縛り付け、一時的な麻痺状態をもたらせた。まさに、形振り構わない為の逃げの一手……だがな。
──
ソウルリーパーの絶叫から来る、一時的な“
その逃げ足は速い。逃げると決めたらならば、形振り構わず逃げる姿勢は、感心出来るほどだ──追いながら、
魂食みが、雄叫びの様な風切り音を立てながら、放たれた猟犬の如く、ソウルリーパーを追っていく。
手元から離れた魂食みは、自らの意思を持つかの様に、ソウルリーパーの胸中央に向かって行き──深々と、突き立った。
剣の柄を中心に、ソウルリーパーの身体が、渦に巻き込まれる様に魂食みに吸い込まれていく──ソウルリーパーの、壮絶な悲鳴にも似た絶叫が、
何とも言えない凄惨な情景を、レンディア達は呆然と眺めていた──クレイドルの剣、
ソウルリーパーの絶叫が止んだ。
後に残るのは静寂と小山の様な大量の灰。その中央に、
灰の小山を見ながら、レンディアが呟くように云った。
「……クレイ、あなたの剣、何なの?」