邪神の子 ~赤き瞳のクレイドル~   作:末末

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なかなか、更新が遅くなりました。


第192話 魂食み(ソウルスレイヤー)の変化と洞窟の奥

 

 

──“魔剣”には意思がある。さらに、強力な魔剣は成長する可能性を持つ。

魔剣というのは総称で、何も剣の形状をしているから魔剣と呼ばれている訳ではない。

槍、斧、棍、戦鎚、弓等。要は、何かしらの力を秘めている武器を称して、“魔剣”と呼んでいるのだ──

 

俺の剣、魂食み(ソウルスレイヤー)は、ソウルリーパー(魂を刈る者)を喰らった様に見えた……実際、喰らったのだが──魂食みを回収した際に、異様な活力を帯びているのが伝わって来た──そして、また“成長”する事も。

 

小山の様な大量の灰、ソウルリーパー(魂を刈る者)の残骸を前に、俺達は佇んでいる──

「……クレイ、あなたの剣、何なの?」

レンディアが、呆れた様に尋ねてきた……うん、そりゃあ聞かれるよな。

さて、どう答えたものか……「何の変哲も無い魔剣だ」で納得してもらえるか?

「どう見ても、魔剣だな……」

グランさんに、先に云われてしまった。いずれ、知られる事だったしな……なら仕方ない。

「グランさんの言った通り、これ(・・)は魔剣だよ」

魂食み(ソウルスレイヤー)を鞘に収めながら答える……というか、鞘が微妙に変化している気がするな……。

後で刃と一緒に改めよう……魔剣の事を正直に云うと──「いつ、そんな代物手にいれたの?」

レンディアが、再度尋ねてきた。

やはり、聞かれるか。適当に誤魔化すなんて出来ないな……邪神の加護が発動して、上手く納得させる事が出来ないかと思ったが、発動せず!

やはり己の言葉で説得せねば……。

 

「スケルトンキラー(鋼造りのショートソード)から、少々……強化、というか成長したみたいだ──」

「少々~? 前から思ってたけど、全然そんなんじゃなかったよねー、その剣」

シェーミィが、さらに尋ねてきた。

さっさと魂食み(ソウルスレイヤー)の話を終わらせようと思ったが、適当に済ませる事ではないな……仕方ない。

話せる事は皆話そう。もちろん、親父殿(邪神)絡み以外の事をだが──故郷から出る時持たされた短剣で、家では家宝扱いしていたが、謂われは全く不明。

そもそも、いつから家にあったのかも不明。そしてラザロさんの鑑定で、成長する魔剣だという事が分かった……そして、今現在──

 

「今、この剣の名は、魂食み(ソウルスレイヤー)。対悪魔に効果があるみたいだ」

邪神の加護をあてにはしない、と思った矢先に少しばかり発動した……故郷から持って来た家宝って何だよ。故郷の下りは、城塞都市でダルガンさんに身の上話をした時とほぼ一緒で、無いこと無いことの連続だった……“呪物鑑定”に関しては、今は伏せて置く。

「……ふうん。ま、いいわ。“魔剣”の話はもう充分よ」

レンディアの言葉にグランさんが頷く。皆、それなりに納得してくれた様だ。

シェーミィは話の途中から、大あくびをしていたが。

 

「さて……ソウルリーパーを仕留めたこの後の予定を決めましょうか」

レンディアが云う。俺が気になっているのは、ソウルリーパーの残骸……というより、大量の灰とソウルリーパーが出て来た洞窟内部だ。

「レンディア、この灰の事何だが──」

グランさん曰く、灰の山は、ソウルリーパーが今まで取り込んだ不死族(アンデッド)の亡骸との事。

不死族(アンデッド)は、神職や聖職に関わる者達にとって灰や塵として土に還すべき存在なので、この亡骸を“浄化”させて欲しい──との事だ。

 

「そうね……亡骸は任せるわ」

レンディアが、カタコンベ(地下墓所)内の周囲を見回しながら、グランさんに尋ねる。

「“浄化”にはどれくらいかかる?」

「そうだな……量が量だから……一時間は欲しいな」

灰の山を見ながら、グランさんが答える。ふん、とレンディアが頷き、云った。

「シェーミィ、グランの“浄化”中、護衛をして。その間、私とクレイとであの洞窟を調べるわ。皆、それでいい?」

やはり、調べるか。願ってもないな。

あの洞窟内部に、何も無い(・・・・)訳はないと思うんだよな……。

 

 

レンディアと二人で、ソウルリーパーが現れた洞窟に向かう。

ここから見える洞窟入口からは、少し前に感じた、不自然に浮き上がる様な暗さが無くなっているように見える……。

「ふん……さっきまであった、圧迫感と息苦しさが無くなっているわね」

レンディアの云う通り、カタコンベ(地下墓所)内の空気は一変していた。

カタコンベ本来の厳かさと静寂が、今は周囲に満ちている──

 

「この雰囲気が、カタコンベ本来のものなんだろうな……」

「でしょうね……ソウルリーパー(魂を刈る者)なんてものが居着いていたら、死者も安らかに眠れないでしょうよ」

周囲を警戒しながら、進み続ける。

洞窟入口がはっきり見えてきた時、レンディアがふと立ち止まった。

「どうした?」

「……水の精霊が、反応しているわ。洞窟の奥に水場があるかも知れないわよ」

そう言えば、レンディアは水の精霊と契約しているんだったな。

「……ふん。危険を知らせている訳じゃなく、何かはしゃいでいる感じね。進みましょうか」

云いながら、先を行くレンディア。

水の精霊がはしゃいでいる、か……何か良い事でもあるのか?

 

洞窟内に足を踏み入れ、少し進むと──まさかこんな風になっているとは、想像もつかなかったな……。

「凄いわね……霊園に地下湖がある何て、想像も出来なかったわね」

レンディアが、感心した様に云う。

確かに……まさか霊園奥に地下湖があると、誰が想像出来る?

 

洞窟内部はそれなりに広い。壁全体が仄かに青白く光っているので、結構な明るさがある……苔が何かが光を帯びているのだろうか?

地下湖自体はそれほど大きくはない。

大体、半径百メートルくらいの大きさで、中央には小島の様な土地があり、地下湖の畔から小島まで、古びた橋が掛かっている──島の中央には、祠の様な物が見えた。

遠目からはよく分からないが、大層古い様に見える……調べるならば、皆が揃ってからだな──「クレイ、渡りましょうか」

レンディアが何のためらいもなく、橋に向かって歩き始める。

「待て待て……グランさん達と合流してからでもよくないか?!」

慌ててレンディアを追う。全く……こいつの速断即行な所は読めないな……。

 

 

橋の中頃まで来ると、小島中央の祠の様子がはっきりと見えてきた──古いというより、瘴気に侵食され、汚されたかの様な色合いになっている石造りの祠。

ソウルリーパー(魂を刈る者)がここに居座っていたせいで、祠が汚されているわね……」

舌打ち混じりにレンディアが言った。

 

確かにな、瘴気が今だ残っているのを感じる……改めて祠周りを見回すと、地面も嫌な色合いに染まっている──

「ふん。まあソウルリーパーを撃滅出来たのだから、直に祠とここら周辺も清らかな土地になるでしょうね」

それに、とレンディアが続けて云う。

「地下湖までは、汚す事は出来なかったみたいね」

レンディアにつられて、地下湖を覗き見ると……遠目では分からなかったが、近くで見る地下湖は、青白く澄みきった、透明度のかなり高い湖だ。

水底(みなそこ)に揺蕩う水草や、大小形様々な石や岩がよく見えるが……。

 

「ふん……生き物は皆、すっかり隠れている様ね。これもソウルリーパーのせいでしょうね」

地下湖を覗き見ながら、レンディアが云う。

「……水の精霊を、しばらく地下湖で遊ばせるわ。生き物達にもう恐れる者は消えたと、知らせるでしょうね」

レンディアが言い終える前に、ばしゃり、と地下湖に何かが飛び込む音──水面から飛沫が立ち、俺達にぱらぱらと、水飛沫が降りかかる……ほんの一瞬、飛び散る水飛沫の中から笑い声が聞こえた気がした……。

 

 

もう少し、祠とその周囲を調べてからグランさんとシェーミィに合流する事となった──

石造りの祠の扉は、錠や(かんぬき)等は掛けられてないが、きっちりと閉められている。

「……中から閉められていない? この祠」

「……怖い事言うな」

祠の大きさは、大体俺達の背丈半分ほど。捧げ物や奉納品が納められた形跡も無く、周辺には他の建築物の跡も見られない……見た感じは、長年放棄されている様に見えるが……。

 

「ふん。よく分からないわね……グランと合流すれば、何か分かるかしらね」

レンディアは祠の前にしゃがみこみ、きっちりと閉められた扉に触れようとしていた。

「止めとけよ。何が起こるか分からんぞ」

ソウルリーパーの穢れがまだ残っているだろうからな……冒険者が普段使用している様な通常の“浄化”ではなく、高位の神職や聖職の、“不死者の浄化(ディスペル)”でもなければ、穢れの浄化は無理な気がする。危うきには触れず、だ……。

 

「ま、そうね……ソウルリーパーが居なくなったとはいえ、今だここら辺は不浄な気配がするものね……」

レンディアが、大人しく祠から距離を取る。

「グランさんの、“浄化”がどうなったか確認しに戻ろう」

「うん、そうしましょう。ついでに少しばかり休憩しましょうか。ちょっと小腹が空いたわよ」

伸びをしながらレンディアが云う。

 

ハーフエルフのマイペースな物言いと振る舞いに、穏やかな気分になった──




よければ、感想どぞ。


(`・ω・)人(・ω・´)
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