──“魔剣”には意思がある。さらに、強力な魔剣は成長する可能性を持つ。
魔剣というのは総称で、何も剣の形状をしているから魔剣と呼ばれている訳ではない。
槍、斧、棍、戦鎚、弓等。要は、何かしらの力を秘めている武器を称して、“魔剣”と呼んでいるのだ──
俺の剣、
小山の様な大量の灰、
「……クレイ、あなたの剣、何なの?」
レンディアが、呆れた様に尋ねてきた……うん、そりゃあ聞かれるよな。
さて、どう答えたものか……「何の変哲も無い魔剣だ」で納得してもらえるか?
「どう見ても、魔剣だな……」
グランさんに、先に云われてしまった。いずれ、知られる事だったしな……なら仕方ない。
「グランさんの言った通り、
後で刃と一緒に改めよう……魔剣の事を正直に云うと──「いつ、そんな代物手にいれたの?」
レンディアが、再度尋ねてきた。
やはり、聞かれるか。適当に誤魔化すなんて出来ないな……邪神の加護が発動して、上手く納得させる事が出来ないかと思ったが、発動せず!
やはり己の言葉で説得せねば……。
「スケルトンキラー(鋼造りのショートソード)から、少々……強化、というか成長したみたいだ──」
「少々~? 前から思ってたけど、全然そんなんじゃなかったよねー、その剣」
シェーミィが、さらに尋ねてきた。
さっさと
話せる事は皆話そう。もちろん、
そもそも、いつから家にあったのかも不明。そしてラザロさんの鑑定で、成長する魔剣だという事が分かった……そして、今現在──
「今、この剣の名は、
邪神の加護をあてにはしない、と思った矢先に少しばかり発動した……故郷から持って来た家宝って何だよ。故郷の下りは、城塞都市でダルガンさんに身の上話をした時とほぼ一緒で、無いこと無いことの連続だった……“呪物鑑定”に関しては、今は伏せて置く。
「……ふうん。ま、いいわ。“魔剣”の話はもう充分よ」
レンディアの言葉にグランさんが頷く。皆、それなりに納得してくれた様だ。
シェーミィは話の途中から、大あくびをしていたが。
「さて……ソウルリーパーを仕留めたこの後の予定を決めましょうか」
レンディアが云う。俺が気になっているのは、ソウルリーパーの残骸……というより、大量の灰とソウルリーパーが出て来た洞窟内部だ。
「レンディア、この灰の事何だが──」
グランさん曰く、灰の山は、ソウルリーパーが今まで取り込んだ
「そうね……亡骸は任せるわ」
レンディアが、
「“浄化”にはどれくらいかかる?」
「そうだな……量が量だから……一時間は欲しいな」
灰の山を見ながら、グランさんが答える。ふん、とレンディアが頷き、云った。
「シェーミィ、グランの“浄化”中、護衛をして。その間、私とクレイとであの洞窟を調べるわ。皆、それでいい?」
やはり、調べるか。願ってもないな。
あの洞窟内部に、
レンディアと二人で、ソウルリーパーが現れた洞窟に向かう。
ここから見える洞窟入口からは、少し前に感じた、不自然に浮き上がる様な暗さが無くなっているように見える……。
「ふん……さっきまであった、圧迫感と息苦しさが無くなっているわね」
レンディアの云う通り、
カタコンベ本来の厳かさと静寂が、今は周囲に満ちている──
「この雰囲気が、カタコンベ本来のものなんだろうな……」
「でしょうね……
周囲を警戒しながら、進み続ける。
洞窟入口がはっきり見えてきた時、レンディアがふと立ち止まった。
「どうした?」
「……水の精霊が、反応しているわ。洞窟の奥に水場があるかも知れないわよ」
そう言えば、レンディアは水の精霊と契約しているんだったな。
「……ふん。危険を知らせている訳じゃなく、何かはしゃいでいる感じね。進みましょうか」
云いながら、先を行くレンディア。
水の精霊がはしゃいでいる、か……何か良い事でもあるのか?
洞窟内に足を踏み入れ、少し進むと──まさかこんな風になっているとは、想像もつかなかったな……。
「凄いわね……霊園に地下湖がある何て、想像も出来なかったわね」
レンディアが、感心した様に云う。
確かに……まさか霊園奥に地下湖があると、誰が想像出来る?
洞窟内部はそれなりに広い。壁全体が仄かに青白く光っているので、結構な明るさがある……苔が何かが光を帯びているのだろうか?
地下湖自体はそれほど大きくはない。
大体、半径百メートルくらいの大きさで、中央には小島の様な土地があり、地下湖の畔から小島まで、古びた橋が掛かっている──島の中央には、祠の様な物が見えた。
遠目からはよく分からないが、大層古い様に見える……調べるならば、皆が揃ってからだな──「クレイ、渡りましょうか」
レンディアが何のためらいもなく、橋に向かって歩き始める。
「待て待て……グランさん達と合流してからでもよくないか?!」
慌ててレンディアを追う。全く……こいつの速断即行な所は読めないな……。
橋の中頃まで来ると、小島中央の祠の様子がはっきりと見えてきた──古いというより、瘴気に侵食され、汚されたかの様な色合いになっている石造りの祠。
「
舌打ち混じりにレンディアが言った。
確かにな、瘴気が今だ残っているのを感じる……改めて祠周りを見回すと、地面も嫌な色合いに染まっている──
「ふん。まあソウルリーパーを撃滅出来たのだから、直に祠とここら周辺も清らかな土地になるでしょうね」
それに、とレンディアが続けて云う。
「地下湖までは、汚す事は出来なかったみたいね」
レンディアにつられて、地下湖を覗き見ると……遠目では分からなかったが、近くで見る地下湖は、青白く澄みきった、透明度のかなり高い湖だ。
「ふん……生き物は皆、すっかり隠れている様ね。これもソウルリーパーのせいでしょうね」
地下湖を覗き見ながら、レンディアが云う。
「……水の精霊を、しばらく地下湖で遊ばせるわ。生き物達にもう恐れる者は消えたと、知らせるでしょうね」
レンディアが言い終える前に、ばしゃり、と地下湖に何かが飛び込む音──水面から飛沫が立ち、俺達にぱらぱらと、水飛沫が降りかかる……ほんの一瞬、飛び散る水飛沫の中から笑い声が聞こえた気がした……。
もう少し、祠とその周囲を調べてからグランさんとシェーミィに合流する事となった──
石造りの祠の扉は、錠や
「……中から閉められていない? この祠」
「……怖い事言うな」
祠の大きさは、大体俺達の背丈半分ほど。捧げ物や奉納品が納められた形跡も無く、周辺には他の建築物の跡も見られない……見た感じは、長年放棄されている様に見えるが……。
「ふん。よく分からないわね……グランと合流すれば、何か分かるかしらね」
レンディアは祠の前にしゃがみこみ、きっちりと閉められた扉に触れようとしていた。
「止めとけよ。何が起こるか分からんぞ」
ソウルリーパーの穢れがまだ残っているだろうからな……冒険者が普段使用している様な通常の“浄化”ではなく、高位の神職や聖職の、“
「ま、そうね……ソウルリーパーが居なくなったとはいえ、今だここら辺は不浄な気配がするものね……」
レンディアが、大人しく祠から距離を取る。
「グランさんの、“浄化”がどうなったか確認しに戻ろう」
「うん、そうしましょう。ついでに少しばかり休憩しましょうか。ちょっと小腹が空いたわよ」
伸びをしながらレンディアが云う。
ハーフエルフのマイペースな物言いと振る舞いに、穏やかな気分になった──
よければ、感想どぞ。
(`・ω・)人(・ω・´)