己に立ちはだかる、四人の
愚か者共が。
我が
雪玉共がこうも虱潰しにされると、気分も悪くなろうというもの──虱潰しの代償は高く付くぞ……人間共がッッ!!
昏倒するか、狂気に陥ってもおかしくは無い、が──
この殺気に向き合うは、“碧水の翼”。四名それぞれが曲者であり、並ならぬ器量を持っている。
その四名が、滅甲虫のただならぬ殺気を受けて思う事は──「上等だよ」
オオォォッ、アァァッ!!──クレイドルが
《……大物を前に、
「……
グランの再度の祈りに、
《願いを聞き入れよう。父として、そして
クレイドルとグラン。神の子二人が
ふん、中々に硬いわね……。
対悪魔属性を持つ
四、五本斬り落としたが、この程度では滅甲虫の動きを鈍らせるには至らない……ならばどうするか?
神光剣に斬撃強化の
風よ集え集え 断つ風となり風となり 鋼に風鳴りの響きを与えよ──
「光刃は風鳴りと共に!
シィィッッッンッッ──光刃が、風鳴りと共に輝いた。
輝く風を纏う神光剣を振るうレンディア──
レンディア、グラン、クレイドルが、
その種族適性に加え、シェーミィは“
影の中で、猫は静かに笑う──
「オオオォォォォッアァッッ!!」
剣と盾が、
暗黒騎士が、滅甲虫の伸縮する牙を
その弾かれた滅甲虫の牙を、血塗れの戦士が両断し続ける──グランとクレイドルが前後左右、交互に動きながら滅甲虫への間合いを縮め続けている。
滅甲虫はその巨体ゆえ、グランとクレイドルの細かな連携に対応出来ていない……というよりも、焦りに駆られた様にグランとクレイドルに、矢継ぎ早の攻撃を繰り出している。
焦りによる攻撃が雑になってきたのを、見逃す二人では無かった──グランとクレイドルは思う。今が攻め時、と。
レンディア、シェーミィの動きから目を逸らさせ、真正面から俺達が
斬り落とした節足が、地面に無数に散らばっているが、滅甲虫は今だ小揺るぎもしていない。
蠢く節足はまだまだある──
(ふん。キリが無いわね……とはいえ、やる事は一つ)
レンディアが強い笑みを浮かべる。
「……片っ端から、斬り落とすだけよ」
疾風と化したレンディアは、滅甲虫の側面を駆けた。蠢く節足が、次々と斬り散らされていく。
それはともかく、雪甲虫を殲滅したならば、急ぎ“碧水の翼”に合流しなければ……冒険者達が思っていた矢先、すぐさま駆け出して行くパーティーがいた。
狼族三兄妹の、“
ウオォォ〜ルゥゥウゥゥ〜〜──先頭を駆ける、長兄ヴァルガスの
個人差(種族差)によるが、遠吠えの範囲内にいる者の集中力を高め、視覚と聴覚を短時間強化する効果がある──遠吠えに影響を受けた他の冒険者達が、すぐさま
“碧水の翼”と“疾風の牙”。そして冒険者達が、冬の悪意の象徴、
この
「衛兵隊、村の防備に戻れ!
ジェロームの指示に、すぐさま衛兵達が任務に奔る。
「魔術兵達は二手に分かれて、衛兵隊と冒険者連中の補佐に回れ!!」
ジェドが即座に魔術兵を二手に分け、ジェロームに声を掛ける──「了解!!」
ジェドを見返り、ジェロームが頷く。短い付き合いの中で、意思の疎通が成り立っていた。
互いに、成すべき事を分かっている者同士の繋がりだ──
衛兵隊、冒険者、魔術兵達が一丸となり、
成すべく事を成す為に動き出した者達を見送り、ジェロームは空を見上げる──すでに深夜過ぎ。夜明けまで、それほど時間は無い。
(さて、夜明け前に終わらせる事が出来るか……)
夜明け前の空には、今だ星々が輝いている。
ジェロームは何となく、冬の星座を探した──
クレイドルが撒き散らした己の血飛沫だ……その血溜まりの中に散らばっているのは、クレイドルが斬り飛ばした滅甲虫の牙。だが滅甲虫には、何らダメージが無い様に見える──
だろうな、とクレイドルとグランは思う。
先程の焦りにも似た攻撃は、焦りでは無く怒りだったのだ。
いい加減にくたばれ──との怒りが、あの矢継ぎ早の攻撃だったのだ……となれば、本格的な攻撃はこれからだろう。
滅甲虫が、次に何を仕掛けてくるかは分からない──だが、レンディアとシェーミィを滅甲虫は
滅甲虫もまた、複眼でクレイドルとグランを見据えている──互いに次の一手をどうするか?、と。膠着状態の様に見えたが……不意に、滅甲虫の体が傾き始めた。
鈍い。図体はデカくても、やはり蟲。痛覚も無く、感覚も鈍い……。
自分の足を斬られている事にすら気付いていなかったのか──呆れた思いで滅甲虫を見つめるクレイドルとグラン。不意に、遠吠えが聞こえた。
ウオォォ〜ルゥゥウゥゥ〜〜……狼族の
冬の悪意、
全身を朱に染めた戦士が、悲鳴にも似た雄叫びを上げる。その雄叫びと同時に、更に血飛沫が散る──集う
冒険者達は、指示される事無く
キイッアァァッッアアァァァッ〜〜!!
滅甲虫の耳障りな金切り声と共に、冒険者達が攻勢に入った。
傾く程に体勢を崩されたとはいえ、相手は
この場に集う冒険者達は皆が中級のベテラン。対悪魔戦は初めてでは無い(最も、これほど巨大な存在は初めてだが)。
悪魔種独特の威圧感をものともせず、冒険者達は滅甲虫を囲む──滅甲虫の巨体が、更に傾き沈んだのを今が
堅牢な砦が、吠えた。
あれば、感想どぞ。
( ´ー`)y-~~