邪神の子 ~赤き瞳のクレイドル~   作:末末

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第21話 魔力制御と雨の中の燭台

 

 

朝食。半熟に頼んだ目玉焼き。強目に焼いてもらったソーセージ。チーズとパンに、玉葱と人参のスープ。いつもの酢漬け野菜は、白菜。

いい朝食だと思う。うん、美味い。

訓練所の食卓を囲むは、ダルガンさんにマーカスさん。それといつもの顔ぶれ、ジャンさんにレンケインさん、ミルデアさんだ。ラーディスさんはいない。

ラーディスさんは昨日の夕食後、宿に戻っていった。城塞都市での定宿、“トロルの戦鎚”という名の宿らしい。凄い店名だな。

「おめえ、昨日、ラーディスに体術訓練でなかなかにやられたらしいな」

ダルガンさんが、酢漬け野菜をバリバリ噛みながら、聞いてきた。

「やられました。肘を折られたり、変なツボを突かれて、絞め落とされたりしました」

バリバリと白菜を噛み、答える。

「まあ、体術も一流だからな。オークやらコボルトやらを殴り殺したり、首へし折ったりしてたからなあ」

スープのお代わりを器に注ぎなから、マーカスさんがいう。

魔導士。単純にいうと、魔術師の上位者だそうだが……。

「ええと……ラーディスさん以外の、魔導士であんな人はいますかね?」

「いねえだろ。あいつとの付き合いは長いが、あんなのは、他に聞いたことねえやな」

ダルガンさんの言葉に、マーカスさんが頷く。

「オーガを、火と氷をまとわせた拳で殴り、燃やしたり、凍らせたりした話は、本当ですか?」

レンケインさんが、尋ねる。

「ん。本当だ。叩きまくって、燃え上がらせたのを俺は見た」

ダルガンさんが、茶を啜りながらいう。

「魔導卿ラーディスが異様な存在というのは、聞いてはいるが……尋常の人ではないのだな?」

ミルデアさんが、独り言のように呟く。

「上級冒険者。魔導士。帝都の宮廷魔術師。その肩書きだけで普通じゃねえからなあ……それと、深淵の──」

「ダルガンさん……それくらいで、いいでしょう」

ラーディスさんが、いつの間にか、ひっそりとテーブル近くに立っていた。

「む……そうだな。口が軽くなっちまった。済まん」

ダルガンさんが、ふぅっ、と息を吐く。

「ラーディス、飯は?」

マーカスさんが、空気を入れ換えるようにラーディスさんに尋ねた。

「食べてきました。茶を貰えませんかね」

おう、とマーカスさん。

「魔導卿、魔術師ギルドには顔を出したんですか?」

レンケインさんの質問に、ラーディスさんが茶を啜りながら答える。

「いいや。行ったら面倒事、頼まれるかもしれないからな」

酢漬け野菜をバリバリと噛むラーディスさん。

「魔導卿は、魔術師ギルドに所属してないのか?」

ミルデアさんが尋ねた。

「ん? ああ。魔導院卒業して、いつかは行こうと思ってたが、いつの間にかこの歳になっていた。今更、所属しても意味ないからな」

「一時期、相当にうるさかったんだろ? 所属しろって?」

ダルガンさんが茶を啜り、バリバリと白菜を摘まむ。

「ええ。中級のCに上がった頃くらいが、うるさかったですね。今もたまに、案内書が来ますが放っています」

「ギルドに所属しないのは、何か理由でも?」

ジャンさんの質問にラーディスさんが答えた。

「そうだな……あえていうなら‘’魔導士の塔‘’で、必要な物は事足りるからな」

 

お、異世界知識、発動─魔導士の塔。魔導士を筆頭に、有力かつ才能ある魔術師が集い、研究や実技を行い、切磋琢磨する場所。養成機関。同時に、危険な魔導具や呪物を保管、管理する場所。そして、魔導士試験場─なるほどな。ここに属していれば、魔術師ギルドに所属する必要は、特にないという事か……。

 

朝食後、レンケインさんの講義。要点を押さえながらの講義は、相変わらず分かりやすい。

たまに入るラーディスさんの捕捉。これもまた面白い。

午前の講義が終わり、休憩の後、魔力鍛練。

 

休憩中、茶を啜りながら談笑する三人。

ラーディスさんが、どこからともなく出した、砂糖をまぶした炒り豆を摘まみながらの談笑。

どこから出したのだろうか……炒り豆、美味い……。

 

「そういえば、レンケイン君。‘’雨の中の燭台‘’出来るか?」

「ああ……あれですか。恥ずかしながら……」

こりこりと、頬を掻く。

「ふむ。まあ簡単じゃないからな……後学のために、見せておこうか」

すっ、と立ち上がり、訓練所の真ん中に立つラーディスさん。

ドッドン──濃い灰色の杖を突き、右手を天にかざし、ひらりと振る。

それに釣られ、思わず空を見上げる……黒雲が空に浮かぶ。すん、と雨の匂い……マジか……。

サァッ、と雨が降る。ラーディスさんを中心に半径、二メートルほどの、局地的な雨。

ラーディスさんの手に、三本の蝋燭用の燭台。

「二人とも、見てろ」

燭台に立つ三本の蝋燭。それらに、ぼうっ、と火が着く……雨の中だよな……何で着く!?

「魔力制御の賜物だ。魔力続く限り、火は消えん。維持するのも魔力を消費するんだが、これもいい魔力制御の訓練になるんだ」

ううむ、とレンケインさんが唸る。

今だ降る雨。その中で、火が点る燭台を持つラーディスさん……魔導卿。

というか、ラーディスさんの漆黒のローブ。全く濡れてない様に見えるのは、気のせいか……?

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