じわりと、更新していきます。
Ψ(`∀´)Ψケケケ(鳴き声)
ダンジョン。迷宮。地下遺跡等──冒険者にとっては、一攫千金の機会と場所……死と隣り合わせの名誉と財。
多くの、一攫千金狙いの冒険者達の命を飲み込んでいった場所──それが、地下迷宮。
死亡、全滅率はダンジョンの難易度次第ではあるが、それは目安でしかない。
安心安全なダンジョンなど無いのだ。最も条件次第だが。
ダンジョンに挑む際の最初のハードルは、閉所の恐怖。薄暗さ。何処からともなく聞こえてくる物音。正体不明の唸り声や叫び声……これに耐えられるようになるまでは、それなりの経験が必要となる。ベテラン冒険者の中にも、どうしても駄目だという者も一定数いる。彼らを笑う事は出来ない。こればかりは、適性を要するからだ。
「城塞都市近辺のダンジョンだったら……う~ん。初級でもとなると……ここ、ですかねえ」
城塞都市近辺の地図。各領主の治める土地や街や村落等が地図に記されている。ある種の機密に近い情報なのだが上級冒険者の要求とならば、提示するにやぶさかではなかった……。
受付嬢の猫族の獣人、サイミアが指差すは、静寂の祠と青葉の庭。比較的、初心者向けのダンジョンではあるが、静寂の祠は基本不死者。アンデッドが中心に出現するので、対不死者の準備をする事が、潜入の最低条件となっていた。
青葉の庭は、ダンジョン全体が草原と林になっていて、地上と何ら変わらぬ風景になっている。出現するのは、魔獣と昆虫が中心だ。
ダンジョンの不思議の一つだ。何故、草原や林なのかの理屈は、分からない。
「ふ~ん……難易度はどちらもそうは変わらないが……対不死者の経験を、早い内から味わわせておくか、な……」
「ちょ、ちょっとラーディスさん!クレイドル君は対不死者の準備が出来ているんですか!?」
サイミアが、青い瞳をパチクリさせる。
「いや。だが私が補強すれば大丈夫だろう。クレイドル君だけを潜らせる訳じゃない。先輩連中も、一緒だ」
「魔導卿、それは私達の事を言っているのかな?」
ミルデアが、近くにいた。
「もちろんだ。迷惑か?」
明るく、ラーディスがいう。爽やかな微笑み。
むう。正直、魔導卿は苦手だ。元々リザードマンは、魔術とは近くない種族だからな──。
「そう警戒するなよ。ええと、静寂の祠と青葉の庭……クレイドル君に体験させるには、どう思う、てとこだな」
ううむ……ジャンとレンケインの意見も聞かない、とな……。
「まあ、取り敢えずジャンとレンケインと話し合って、決めるさ」
「うむ。それに、クレイドル君とも話し合う事だな」
「ダンジョン、か。実戦も経験している事だしな……ダンジョン適性があるかどうか、早い内に確かめておいても、いいと思う」
ギルド内の喫茶室。ジャンベールとミルデアが茶を飲んでいる。ジャンベールは冷たい茶を、ミルデアは温めの茶。体質的というより、種族的に冷たいのは好まないのだ。
以前、
美味かった。辛ネギも辛さの中に旨味があり、冷たい出汁と辛味がそばによく絡んで、とても美味かった──食後、体温が急に下がり、明らかに体調悪く見えたのか、店員が熱い茶を持って来てくれた事がある──
「ミルデア、聞いているか?」
皿に盛られた、砂糖まぶしの薄焼き菓子と塩まぶしの薄焼き菓子。砂糖の薄焼きに手を伸ばすジャンベール。
「む。そうだな……魔導卿は、対不死者の補強をすると言っていた」
塩の薄焼きを手に取り、パリパリと口にする。
「青葉の庭は、魔獣と昆虫が中心だったな……適性検査なら、静寂の祠かな……不死者に対応出来るかどうかも、大事だからな」
茶を静かに啜る、ジャンベール。
「ふむ。私もいいと思う。あとはレンケインと少年とも、話し合うか……二人は?」
「ああ、スティールハンドに行くと、言ってたな」
ふん、と横薙ぎに両手持ちの武器を振るう。
片刃のバトルアクス。刃の反対側は短いピック状になっている。斬撃と打撃を兼ねた形状。
木偶人形が真ん中から、砕け折れた。
「おお、なかなか扱い上手いな。上出来だ」
「へ~え。体格に似合わず、上手く扱えてるねえ」
ドワーフの鍛冶職人ストルムハンドさんと、その奥さん、スウィトフィンさんがいう。
鍛冶・スティールハンド。
両手武器を見に来て、なかなかにいいバトルアクスを見せてもらったので、試し切りをさせてもらった。
「う~ん。これ、いいですねえ……」
全長約百三十センチ強。刃は三十センチ強ほどで、柄は約百センチ。実際の刃渡りは四十センチ近い──刃渡り、でかいな。反対側のピックもでかい……この得物を、楽に振れるようになっているとは……どうする? 買うか? 買っちゃう!?
「なかなかにいい出来だから、金貨五枚ってとこだな」
剛健な鋼造り。装飾は最低限。職人のこだわりの様な装飾が、さらりと施されている──。
「買います」
即決。いいと思ったものは、今決めねば……!
懐は良いのだ。先の討伐戦、採取、猪の毛皮の取り分。邪神から贈られた物──
「相変わらず、即決かい。いいっ買いっぷりだな」
わははは、あははは、とドワーフ夫婦が二人、髭を揺らして笑う。
気持ちの良い、買い物だった。ついで、とばかりにレンケインさんも投擲用の短刀を購入していた。
「クレイドル、次はダンジョンに出向こうと思っているんだがな。どう思う?」
ギルドに帰って早々、ジャンさんに聞かれた。
ダンジョン、か……この世界で、避けては通れない場所。経験するに越したことはない……。
「行きます」
即決。避けては通れないならば、踏み込むべきだ──
「ふむ」
いつの間にか、ラーディスさんが側に佇んでいた。
冷たい風が、ほんの一瞬、吹いた。