邪神の子 ~赤き瞳のクレイドル~   作:末末

28 / 245
お気に入り──嬉しいものですな。
じわりと、更新していきます。
Ψ(`∀´)Ψケケケ(鳴き声)


第22話 ダンジョン経験 適性検査

 

ダンジョン。迷宮。地下遺跡等──冒険者にとっては、一攫千金の機会と場所……死と隣り合わせの名誉と財。

多くの、一攫千金狙いの冒険者達の命を飲み込んでいった場所──それが、地下迷宮。

死亡、全滅率はダンジョンの難易度次第ではあるが、それは目安でしかない。

安心安全なダンジョンなど無いのだ。最も条件次第だが。

ダンジョンに挑む際の最初のハードルは、閉所の恐怖。薄暗さ。何処からともなく聞こえてくる物音。正体不明の唸り声や叫び声……これに耐えられるようになるまでは、それなりの経験が必要となる。ベテラン冒険者の中にも、どうしても駄目だという者も一定数いる。彼らを笑う事は出来ない。こればかりは、適性を要するからだ。

 

「城塞都市近辺のダンジョンだったら……う~ん。初級でもとなると……ここ、ですかねえ」

城塞都市近辺の地図。各領主の治める土地や街や村落等が地図に記されている。ある種の機密に近い情報なのだが上級冒険者の要求とならば、提示するにやぶさかではなかった……。

受付嬢の猫族の獣人、サイミアが指差すは、静寂の祠と青葉の庭。比較的、初心者向けのダンジョンではあるが、静寂の祠は基本不死者。アンデッドが中心に出現するので、対不死者の準備をする事が、潜入の最低条件となっていた。

青葉の庭は、ダンジョン全体が草原と林になっていて、地上と何ら変わらぬ風景になっている。出現するのは、魔獣と昆虫が中心だ。

ダンジョンの不思議の一つだ。何故、草原や林なのかの理屈は、分からない。

 

「ふ~ん……難易度はどちらもそうは変わらないが……対不死者の経験を、早い内から味わわせておくか、な……」

「ちょ、ちょっとラーディスさん!クレイドル君は対不死者の準備が出来ているんですか!?」

サイミアが、青い瞳をパチクリさせる。

「いや。だが私が補強すれば大丈夫だろう。クレイドル君だけを潜らせる訳じゃない。先輩連中も、一緒だ」

「魔導卿、それは私達の事を言っているのかな?」

ミルデアが、近くにいた。

「もちろんだ。迷惑か?」

明るく、ラーディスがいう。爽やかな微笑み。

むう。正直、魔導卿は苦手だ。元々リザードマンは、魔術とは近くない種族だからな──。

「そう警戒するなよ。ええと、静寂の祠と青葉の庭……クレイドル君に体験させるには、どう思う、てとこだな」

ううむ……ジャンとレンケインの意見も聞かない、とな……。

「まあ、取り敢えずジャンとレンケインと話し合って、決めるさ」

「うむ。それに、クレイドル君とも話し合う事だな」

 

「ダンジョン、か。実戦も経験している事だしな……ダンジョン適性があるかどうか、早い内に確かめておいても、いいと思う」

ギルド内の喫茶室。ジャンベールとミルデアが茶を飲んでいる。ジャンベールは冷たい茶を、ミルデアは温めの茶。体質的というより、種族的に冷たいのは好まないのだ。

以前、鶏源亭(とりげんてい)で季節メニューの‘’冷やし辛ネギ鶏そば‘’を見かけ、しばしの葛藤の後、注文してしまった。

美味かった。辛ネギも辛さの中に旨味があり、冷たい出汁と辛味がそばによく絡んで、とても美味かった──食後、体温が急に下がり、明らかに体調悪く見えたのか、店員が熱い茶を持って来てくれた事がある──

 

「ミルデア、聞いているか?」

皿に盛られた、砂糖まぶしの薄焼き菓子と塩まぶしの薄焼き菓子。砂糖の薄焼きに手を伸ばすジャンベール。

「む。そうだな……魔導卿は、対不死者の補強をすると言っていた」

塩の薄焼きを手に取り、パリパリと口にする。

「青葉の庭は、魔獣と昆虫が中心だったな……適性検査なら、静寂の祠かな……不死者に対応出来るかどうかも、大事だからな」

茶を静かに啜る、ジャンベール。

「ふむ。私もいいと思う。あとはレンケインと少年とも、話し合うか……二人は?」

「ああ、スティールハンドに行くと、言ってたな」

 

ふん、と横薙ぎに両手持ちの武器を振るう。

片刃のバトルアクス。刃の反対側は短いピック状になっている。斬撃と打撃を兼ねた形状。

木偶人形が真ん中から、砕け折れた。

「おお、なかなか扱い上手いな。上出来だ」

「へ~え。体格に似合わず、上手く扱えてるねえ」

ドワーフの鍛冶職人ストルムハンドさんと、その奥さん、スウィトフィンさんがいう。

 

鍛冶・スティールハンド。

両手武器を見に来て、なかなかにいいバトルアクスを見せてもらったので、試し切りをさせてもらった。

「う~ん。これ、いいですねえ……」

全長約百三十センチ強。刃は三十センチ強ほどで、柄は約百センチ。実際の刃渡りは四十センチ近い──刃渡り、でかいな。反対側のピックもでかい……この得物を、楽に振れるようになっているとは……どうする? 買うか? 買っちゃう!?

「なかなかにいい出来だから、金貨五枚ってとこだな」

剛健な鋼造り。装飾は最低限。職人のこだわりの様な装飾が、さらりと施されている──。

「買います」

即決。いいと思ったものは、今決めねば……!

懐は良いのだ。先の討伐戦、採取、猪の毛皮の取り分。邪神から贈られた物──

「相変わらず、即決かい。いいっ買いっぷりだな」

わははは、あははは、とドワーフ夫婦が二人、髭を揺らして笑う。

気持ちの良い、買い物だった。ついで、とばかりにレンケインさんも投擲用の短刀を購入していた。

 

「クレイドル、次はダンジョンに出向こうと思っているんだがな。どう思う?」

ギルドに帰って早々、ジャンさんに聞かれた。

ダンジョン、か……この世界で、避けては通れない場所。経験するに越したことはない……。

「行きます」

即決。避けては通れないならば、踏み込むべきだ──

「ふむ」

いつの間にか、ラーディスさんが側に佇んでいた。

冷たい風が、ほんの一瞬、吹いた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。