邪神の子 ~赤き瞳のクレイドル~   作:末末

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第23話 静寂の祠 参る者無き墓地

城塞都市から、南東側。少し進むと荒野が見える。さらに進むと、荒廃した墓地がある。

崩壊した門。墓地を囲む朽ち果てた柵。かろうじて形を残す墓石。墓碑銘は、もう読めないほどに崩れ果てている。

建ち並ぶ無数の墓石群の、中央。まるで獣道の様になってしまった通路。なんとか道に見えるのは、参拝者が来るからでは無い。

ダンジョン化した霊廟──“静寂の祠”を目当ての冒険者や、浄霊、浄化の為に神徒がたまに訪れるからだ。

 

「ダンジョンとしては浅目でね。全五階層。二階まではスケルトン、アシャー、ダストスという、体持ちのアンデッドが出現するんだ」

異世界知識、発動─アシャー・遺灰の塊に障気が宿り、アンデッド化したもの。脆いが、傷を受けると麻痺を受ける事がある─ダストス・障気を受けた墓場の土が土人形になり、動き出したもの。石混じりの体は脆くはなく、やや力強い─

 

異世界知識プラス、レンケインさんの説明でそれらのアンデッドの事が、理解できた。

「あとの、アンデッドの説明は、二階の休憩室に到着してからにしようか」

「よし、少し待っててくれ。私が斥候に出る」

「ミルデア、頼む」

ジャンさんに、うむと答え、ミルデアさんは静かに、崩壊した門を潜って行った。

 

妙に、少し冷える。何だろうな、墓場から漂ってくる冷気……なのか?

羽織っているマントの襟を寄せ、フードを被る。

メルデオ商会で購入したマント。撥水性が高く手入れが簡単で、保温性も悪くないという事で購入したものだ。

メルデオさんのお嬢さんが、着せかえを企もうとしたので即刻、濃い灰色に決めた。

 

ミルデアさんが戻ってきた。報告によると、スケルトン二体が祠近くを、うろついているだけだと言う。

「よし、陽が明るい内に入るか。クレイドル、二人でスケルトンを始末しよう。ミルデア、レンケイン、周囲の警戒頼む」

ミルデアさん、レンケインさんが頷く。

よし、スケルトン相手なら、俺のスケルトンキラー(鋼造りのショートソード)で事足りる。

「バトルアクス、使うまでもありません。スケルトンキラーで充分です」

「スケルトン、キラー?」

 

二体のスケルトンは素手。ジャンさんと、あっさり始末した。魔石もきっちりと回収した。

「少年、スケルトンキラーとは何だ?」

「クレイドル君。そのショートソード、何だって?」

「……気にしないで下さい」

フードを目深に被る。スケルトンキラーは、スケルトンキラーなのだ……。

 

階段を降り、静寂の祠に足を踏み入れる。思わず、声が出た。

「おお……」

なかなかに広い。思ったよりも暗くなく、薄明るい。さすがに奥までは見えない。柱が幾つも並び立ち、天井を支えている。左右の壁際、骨壺と遺灰壺が納められている棚が無数にある。

先頭を行くは、斥候担当のミルデアさん。少し離れて、ジャンさんと俺。その背後に、レンケインさん。

一階、広い霊廟。小部屋がある訳でもない。ただ広い空間。骨壺が納められている壁……先頭を行くミルデアさんが立ち止まり、腕を前方に指し示す……。

太い影三体。のそりのそり、と近づいて来る。

「ダストス、だな。なかなか力強いが動きは単純だ……クレイドル、一人でやってみるか?」

「……バトルアクス、使います」

ダストス。ずんぐりとした体型。やや幅広く、身長は高くない。少々、堅いんだっけか……。

よし……やってみるか。

ジャンさん、ミルデアさん、レンケインさんもいる。うん、頼りにしよう。

「行きます……!」

 

バトルアクスを肩担ぎにして、ずんぐり体型のアンデッドに向けて走る─先頭のダストス目掛けて、飛び掛かる─ダストスの顔を見た。

ぽかりと空いた、目と口の黒い空間。頭部目掛け─バトルアクスを、打ち降ろす─ざぶり─頭部から、胴体までを断ち砕く感触。

バトルアクスを横構えにして、二体目のダストスに向けて、薙ぎ払いを打ち込む─ざぶり─同じ感触。胴体を断ち砕く感触。

ぼああぁぁ~、と声を発する、三体目のダストス。

掴みかかる様な動きを見せるが─遅いな、遅い。

やはり、同じく胴を薙ぎ倒す。三体のダストスが、バラバラと土塊に戻る……。

「ふむ。まあ、この程度のアンデッドなら、少年でも、どうとでもなるか」

「うん。そうだねえ。体持ちの低級アンデッドならば、大丈夫だろうねえ」

「よし、悪くないな。魔石を回収して二階に降りるか」

ふうっ、と息を吐く。対アンデッドは、まあ初めてじゃないが……うん、あのダストス。正直いって気味悪かった。

あの灰色の体付きとずんぐりとした体型。ぽっかりと黒く空いた、目鼻立ち。

気味悪かったなアレ、慣れるのに少しかかるだろうな。

あとは、アシャーかあ……どうだろうなあ。

アンデッドは生きる者に対して、敵対心というか憎悪に似たものをぶつけて来るって、感じ何だよなあ……ううむ……。

 

広い広場。壁に居並ぶ骨壺と遺灰壺。そこから出現するアンデッド……理屈は無いんだろうな。

「気配は、もう感じない。二階に降りようか」

ミルデアさんの言葉に、ジャンさんが頷く。

レンケインさんは、自然体で後方の警戒をしている。

いや、さすが……ベテランの心強さってのは本当に凄いな。

「クレイドル、こっちだ」

ジャンさんの声。バトルアクスを担ぎ直し、後を追う。

霊体相手なら、どうなるだろうか……ラーディスさんが対霊の補強をしてくれた効果はどれ程のものか。まあ、疑う事はない。うん。




故・西村賢太さんの言葉。
「作風と心中する覚悟」凄く無いですか?
なかなか言えないでしょう、これ。
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