「準備は整ったから、着いてきて~」
デルモアさんと歓談中、邪神が戻って来た。
こちらに向かって、手招きをする。デルモアさんに促され、邪神の元に向かう。てくてく歩く邪神のあとを追いながら、話をする。
「転生の準備はもう出来てるし、あとは種族の最終決定と~種族に応じての容姿の決定だね~」
「いや、種族は人族ですからね。人族で」
「え? 昆虫を元にした強化人間じゃなかったっけ? 普段は人間形態だけど──」
「いやダメです。人族で人族でお願いします」
さっきから微妙に心揺さぶってくるんだよ。この邪神は。
そりゃあ俺だって言いたいよ、悪魔の力を手にしたが、人の心は失わなかった!だとか、 変!身!!とかな……でもアウトなんだよ。
「ところで、転生ってどうなるんですか?」
「ああ、二つのやり方があるんだよ~。まず一つ、赤ちゃんからのやり直し。この方法だと、自我が芽生えるまではただの赤ちゃんで~転生後の両親との絆やら、その周囲とのしがらみが出来ちゃうからね~面倒でしょ? そういうの、お奨めしないな~大体、お父さんは僕一人で充分!」
何故かグッと拳を握る邪神。なるほど、俺は父子家庭という訳だ……。
「もう一つは~種族、容姿、年齢を決めてからの転生だね~こっちがお奨めだね。すぐに転生後の世界を生きる事が出来るからね~」
種族は人族! 容姿、年齢は……う~ん。
「さて、転生の間に着いた。中央の魔方陣見えるかい?」
いつの間にか、妙な部屋に着いていた。なかなかに広く、床、壁、天井は淡い青色の光りを放っている。邪神のいう魔方陣に目を向けると、銀色に輝く円形の魔方陣が明るく輝いていた……。
「最終決定としようかね~ええと、種族は面白みも無い人族で~容姿は……まあ君は僕の息子だからね……子は親に似て、
うん? 何か引っ掛かる言葉が聞こえた気がするが、好きにさせておくのがいいだろう……。
「よおし! 種族は人族! 容姿は僕寄り! 年齢は……前世の君の年齢より、多少引いておこうかなあ~ええと、前世の君の年齢、はと……うん、転生後の年齢、は……十七ってとこにしておこっか!この世界では十五から、成人って事になってるからねえ~」
なるほど。転生後の俺は十七才の成人男性か。
「さ~てと~転生場所は~うん、うん……」
邪神は、いつの間にか取り出した地図を広げながら、うんうん唸っている。邪神の背後から、デルモアさんが地図を覗きこんでいる。しかし身長差すごいな。邪神の身長が百四十センチくらいとして、デルモアさんは……二メートルはあるな。
身長差が大分ある主従をボンヤリ眺めていると邪神が声をあげた。
「よし、決めた! 城塞都市近くの村に転生だ。あそこは安全だからね~比較的」
何と、どこと比べて比較的なのだろうか……少々不安になるが、もう腹を決めるしか、ない。
「さ~てと我が子よ。ほら、魔方陣に乗って乗って」
促されるまま、銀に輝く魔方陣に乗る。邪神が微笑みを浮かべた。邪神らしからぬ優しい笑み。
妙に慈愛を感じる、優しい微笑みだ……。
「よし。今から君は新しい世界で、第二の人生を送る事になる。前世の記憶と知識は当然、引き継がれる。でもね、それらをひけらかすのは止めといた方がいいよ。変な事に巻き込まれかねないからね……いいかい、君以前に転生されて来た先人達が、この世界を発展させてきた歴史があるんだよ。でもね……まあ、いいや堅苦しい事は」
慈愛の笑みを浮かべながら、邪神が魔方陣を指差す。陣の輝きが少しづつ強くなる。邪神の笑みを見ると、再び感謝の気持ちが、湧いてきた。
ポンコツ女神に魂を消滅させられるところを救って貰った恩義があるんだよな……きちんと礼は言っておくべきだろう……。
「あの、色々とありがとうございました。第二の人生を、俺なりに──」
「あるじ様、この地図、百年以上前のものですが……」
デルモアさんの声が聞こえた。それに被さるように、邪神の声……。
「あ。まあ、いいんじゃない? 大丈夫だよ~」
魔方陣の輝きが眩しくなってきた──百年以上前の地図!? おい、ホントに大丈夫か!?
「邪神! おおぉぉおいっ、ホントに大丈夫なんだろうなあぁぁぁっっ!?」
んふっ、ふふふっ! だ、大丈夫、だよ~ふふふっ! 邪神の含み笑いが聞こえてくる……ああクソっ!
感謝の気持ち? 恩義!? 邪神め! 邪神がっ!
輝きが視界を完全に塞ぐ──浮遊感を感じたと同時に、意識が飛ぶ。
その直前、邪神の声が微かに聞こえた──「良き旅と人生を!」
風が飄々と鳴いている。空を見上げると、夕暮れ。
どこからともなく、鴉の鳴き声が聞こえてくる……ふむ、この世界にも鴉はいるのか。
俺はどうやら仰向けに倒れていたらしい。目に写るは夕暮れの空。体を起こすと、見えるのは廃墟。廃墟の村……邪神がっ!!
筆者は基本、情緒的にアレですが、感想には目を通して返す事を心掛けてはいます。
( ´ー`)y-~~ 感想あれば、どぞ。