訓練、修行パート!
Ψ(`∀´)Ψケケケ
前蹴り。当たらない。間合いを完全に見切られている。ローキック。左、右、当たらない。
蹴り足の長さを、把握されているのか──敢えて大振りの、総合格闘の選手が時々放つ、当たればよかろうパンチを放った。無論、フェイントだ──避けられる事前提のパンチ。そして、タックル! 片足を捕らえた! そのまま─トンッ。
「あ~ダメだ」「隙だらけだ」
見学中の、マーカスさんとジャンさんの声と、後頭部への衝撃は、どっちが先だっただろうか──
「大した事ないね。ただ後頭部、手のひらで軽く叩かれただけだから」
治癒をしてくれるレンケインさんが言う。
それだけで、完全に失神したらしい……。
「まあ、体捌きは、なかなか上達しているぞ」
長椅子に腰掛けながら、ラーディスさんが言う。
いつもの様に、煙管をくゆらせているラーディスさん。相変わらず、どこからともなく出した煙草盆。すぐ隣に、当たり前の様にメイギスさんが座っていた。何か眠そうな表情だ。何ぞ?
妙に釈然としないまま、体術訓練を終えた。
休憩の後は、盾と両手武器の訓練。明日は、休みになる。街に出るか。それとも午前か午後に、誰かに訓練をお願いしようか……。
「クレイドル、夕飯何かリクエストあるか?」
マーカスさんに尋ねられた。
リクエスト、かあ~。マーカスさんの食事に不満を感じた事は、一度も無い。美味しさと栄養バランスが良く調えられた食事だと、いつも思っている。
ん、そうだな……リクエストか。あ、そうだ。
「揚げ物は、出来ますか?」
「んん? そういや、揚げ物はやってなかったな。新人がそれなりにいるんだったら、揚げ物はやってたんだが、お前一人だしな。ふむ、鶏揚げでもやるかあ。ジャン達もいるしな。よし、久しぶりにやるか。まあ、楽しみにしてろ。鶏揚げなら、米だな」
おお。言ってみるもんだな。唐揚げに米か。前世を思い出す。チリソース掛け、ニンニク醤油ダレ等……単純に塩ダレもいいな。さて、この世界ではどういう事になるだろうか……うわ、楽しみだ。マーカスさん、期待します!
「少年、攻撃が単純すぎる」
バトルアクスの薙ぎ払いを、あっさりと小盾で弾きながら、受け流すミルデアさん。
どん、と胴を短槍で薙ぎ払ってきた。
ぐう、とうずくまる。ミルデアさんは、盾の扱いが上手い。巧みといった方が、いいだろうか……。
「こんなものだろう。悪くはないがな、もう少し、実戦を経験した方がいいかな」
実戦経験は、馬鹿にならないという事だな。ううむ、先は長いなあ……。
「よし、次は盾の訓練か。体力は大丈夫か?」
ヒュヒュッ、と愛用のレイピアを器用に、廻しながらジャンさんがいう。
いつ頃からか、ミルデアさんとジャンさんの武器は、真剣になっていた。何の、不満も無い。
「大丈夫です」
深呼吸、二つ。充分だ。盾を構え、スケルトンキラー(鋼造りのショートソード)をジャンさんに向ける。
「いい面構えだ……行くぞ」
独特のステップで、素早く近付いてくるジャンさん。
ヒュゥッと、レイピアが斜め上段から、振り下ろされて来た──
ショートソードでレイピアを弾き、踏み込むクレイドル。盾を前面に構え、体当たりを試みるもそれを読んでいたジャンベールが、一歩下がる。
ふうむ。やはり面白いな、前衛の訓練は。
「ふふん」
思わず、笑みが漏れる。新人の訓練が楽しいのだろうな。ミルデアもジャンベールもレンケイン君も、楽しんでいる。
ふう~、と煙管を吹かす。ふうわりと、煙が空に溶けていく……。
「ラーディス様。帝都には?」
メイギスの声。寄り添う様に横に座る、弟子。
「そうだな……もう三、四日したら戻るか。クレイドル君に、もう少し魔力制御を教えておきたい」
「……少し、妙な子ですね。あのクレイドル君は……私が魔力制御を、引き受けましょうか?」
「いや、すぐに帝都に戻るからな、俺が引き続き彼の魔力制御を訓練する……彼は普通じゃないぞ、その理由は……後から説明してやる」
銀色の瞳で、おのが師を見つめる朱色の女。
「普通……じゃない、ですか……ふふっ」
深紅の唇に笑みが浮かぶ。
戦闘訓練が終わった。ふう、と一息ついていると、ラーディスさんに浄化をかけられ、汗を落とされた。
「魔力制御に入ろうか。どうだ?」
夕食までは、まだまだ時間はある……よし、受けよう。唐揚げが俺の士気を上げている。唐揚げだけに!
昏倒──気付くと、ラーディスさんが目の前に。
「さて、もう一度だ。夕食まではまだまだ時間はあるぞ。はい、集中」
ラーディスさんが、魔力を流し込んでくる。
ずうっ、と体の中に圧力。この圧力に抵抗する事も、魔力制御の訓練になるそうだ。
この圧力を押し返しつつ、包み込むイメージを強く、持つ……あ、早くも気が、遠く──