「死ねっ!!」
気合一閃。短槍を、逆手に構えたミルデアさんがサハギンに向かって、槍を投げた。
まるで気付いていないサハギンの頭部に、槍が直撃する。そのまま横倒れになるサハギン。
即死だな、あれ……身を低くしながら、ミルデアさんが残りのサハギンに向かって駆け出す。
慌てて立ち上がろうとする一匹のサハギンをミルデアさんが、蹴り飛ばした。そして、もう一匹の、先端を尖らせただけの木の槍を掴み、何とか立ち上がるサハギンを、帯刀していた剣の抜き打ちで一瞬で仕留めた……この間、二、三秒ほどか……そして残るは一匹。
「少年を連れて、サハギンどもを殺しに行きたいのだが?」
斥候から戻ってきて早々、ミルデアさんが言い放つ。紫色の瞳がパチパチと瞬いた。
「三匹か。うん。クレイドルと二人で充分過ぎるな……よし、手早く済ませてくれ」
ジャンさんが、殺る気溢れるミルデアさんに言う。
むふぅ、と荒い鼻息のミルデアさん。
「奴等は殲滅しないとな。行くぞ少年」
鼻息荒く、のしのしと進んでいくミルデアさん。
慌てて、その後を追った。
「少年、生臭の鱗を始末しろ。こいつらは害獣だ。何匹殺してもいい」
おおう……何時にもまして、攻撃的だな。
ミルデアさんが蹴り飛ばした、サハギンは既に態勢を整え、こちらを威嚇している。
木の槍に木の盾。粗末な武装だが……。
「油断するなよ。体力的に多少人間よりは、強いぞ」
槍と盾を構えながら、ジリジリと近付いて来るサハギン。生臭の鱗、か……確かに強い潮の匂いがする。半歩下がり、ショートソードを構える。
サハギン、か……頭部は魚。カチカチと尖った歯を打ち鳴らしている。全体的に青白い体。中肉中背といった上背。手足にヒレが付いているな。
さて、どんなものだろうか──突いて来た。
遅い、盾で殴る─までもない─擦れ違い様に腹を裂き─背後に回り込み、その魚首を─はねた。
「よし。悪くない」
ミルデアが微笑む。
「済んだぞ。一匹残らず始末した」
満足げに笑うミルデアさん。その手には、サハギンから回収した魔石が、チャラチャラと鳴っている。
「水属性の魔石か。うん、浄化しておきましょう」
レンケインさんが、ミルデアさんから魔石を受けとる。
「サハギンはまだ出るかな?」
ジャンさんがいう。う~んとミルデアさん。
「分からん。あいつら、隙間からでも湧いて出るからな。まあ、すぐに湧く事はないだろう」
「よし。予定に変更はなしだ。奥に進もうか」
「祭壇前には、主がいる可能性が高いからね。警戒は怠らないようにしないと」
レンケインさんの発言に、皆が頷く。
サハギンの死体を脇に避け、そのまま進む。
心なしか、洞穴内の明かりが強くなっている様な気がする。進むほどに、明かりが強くなっていく……不思議だよな。普通の洞穴とは、違うという事か。
あそこか、光源の元は。前方にぽっかりと大穴が空いている。もう一つの洞穴の入口のような大穴。
「祭壇前は広場になっていて、さっき言ったように主、いうなれば、守護者の様な存在がいるんだ……それなりに手強いからね」
「クレイドル。今いう事じゃないが、腹をくくれ」
「大丈夫だ、私達がいる。連携を意識しろ」
ジャンさん達の言葉。深呼吸、一つ。よし、腹据えて進むべし……だ。
広場内部に歩を進める。先頭、ミルデアさんとジャンさんが横並び。その背後にレンケインさんと俺。
「おおう。これはこれは、何とも立派な……蟹か? それともエビ?」
「ははは、確かに立派だな」
ジャンさんとミルデアさんの、感心したかのような声。二人の背後から、そっと広場を覗く。
そこにいたのは……立派な、ヤシガニ! でかいって!
こちらを確認した立派なヤシガニが、シャアッとばかりに、ハサミを振り上げ威嚇してきた。