邪神の子 ~赤き瞳のクレイドル~   作:末末

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第29話 港町ハルベルトリバー さざ波の洞穴 祭壇の主

 

 

 

「死ねっ!!」

気合一閃。短槍を、逆手に構えたミルデアさんがサハギンに向かって、槍を投げた。

まるで気付いていないサハギンの頭部に、槍が直撃する。そのまま横倒れになるサハギン。

即死だな、あれ……身を低くしながら、ミルデアさんが残りのサハギンに向かって駆け出す。

慌てて立ち上がろうとする一匹のサハギンをミルデアさんが、蹴り飛ばした。そして、もう一匹の、先端を尖らせただけの木の槍を掴み、何とか立ち上がるサハギンを、帯刀していた剣の抜き打ちで一瞬で仕留めた……この間、二、三秒ほどか……そして残るは一匹。

 

 

「少年を連れて、サハギンどもを殺しに行きたいのだが?」

斥候から戻ってきて早々、ミルデアさんが言い放つ。紫色の瞳がパチパチと瞬いた。

「三匹か。うん。クレイドルと二人で充分過ぎるな……よし、手早く済ませてくれ」

ジャンさんが、殺る気溢れるミルデアさんに言う。

むふぅ、と荒い鼻息のミルデアさん。

「奴等は殲滅しないとな。行くぞ少年」

鼻息荒く、のしのしと進んでいくミルデアさん。

慌てて、その後を追った。

 

 

「少年、生臭の鱗を始末しろ。こいつらは害獣だ。何匹殺してもいい」

おおう……何時にもまして、攻撃的だな。

ミルデアさんが蹴り飛ばした、サハギンは既に態勢を整え、こちらを威嚇している。

木の槍に木の盾。粗末な武装だが……。

「油断するなよ。体力的に多少人間よりは、強いぞ」

槍と盾を構えながら、ジリジリと近付いて来るサハギン。生臭の鱗、か……確かに強い潮の匂いがする。半歩下がり、ショートソードを構える。

サハギン、か……頭部は魚。カチカチと尖った歯を打ち鳴らしている。全体的に青白い体。中肉中背といった上背。手足にヒレが付いているな。

さて、どんなものだろうか──突いて来た。

遅い、盾で殴る─までもない─擦れ違い様に腹を裂き─背後に回り込み、その魚首を─はねた。

「よし。悪くない」

ミルデアが微笑む。

 

「済んだぞ。一匹残らず始末した」

満足げに笑うミルデアさん。その手には、サハギンから回収した魔石が、チャラチャラと鳴っている。

「水属性の魔石か。うん、浄化しておきましょう」

レンケインさんが、ミルデアさんから魔石を受けとる。

「サハギンはまだ出るかな?」

ジャンさんがいう。う~んとミルデアさん。

「分からん。あいつら、隙間からでも湧いて出るからな。まあ、すぐに湧く事はないだろう」

「よし。予定に変更はなしだ。奥に進もうか」

「祭壇前には、主がいる可能性が高いからね。警戒は怠らないようにしないと」

レンケインさんの発言に、皆が頷く。

 

サハギンの死体を脇に避け、そのまま進む。

心なしか、洞穴内の明かりが強くなっている様な気がする。進むほどに、明かりが強くなっていく……不思議だよな。普通の洞穴とは、違うという事か。

あそこか、光源の元は。前方にぽっかりと大穴が空いている。もう一つの洞穴の入口のような大穴。

「祭壇前は広場になっていて、さっき言ったように主、いうなれば、守護者の様な存在がいるんだ……それなりに手強いからね」

「クレイドル。今いう事じゃないが、腹をくくれ」

「大丈夫だ、私達がいる。連携を意識しろ」

ジャンさん達の言葉。深呼吸、一つ。よし、腹据えて進むべし……だ。

広場内部に歩を進める。先頭、ミルデアさんとジャンさんが横並び。その背後にレンケインさんと俺。

「おおう。これはこれは、何とも立派な……蟹か? それともエビ?」

「ははは、確かに立派だな」

ジャンさんとミルデアさんの、感心したかのような声。二人の背後から、そっと広場を覗く。

そこにいたのは……立派な、ヤシガニ! でかいって!

こちらを確認した立派なヤシガニが、シャアッとばかりに、ハサミを振り上げ威嚇してきた。

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