邪神の子 ~赤き瞳のクレイドル~   作:末末

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第39話 帝都領 グレイオウルを目標に

 

 

「で、グレイオウル領に行く事に決めたの?」

ウィスキーの炭酸割りを、グビリと呷るミランダさん。太い指で、スパイスの効いた揚げジャガイモを摘まみ、口に放る。

「直ぐに帝都に行くより、まずは他領を見たいと思いまして」

柑橘酒の炭酸割り、美味い。香りがいいんだよなあ。

「出発は、防具が出来上がり次第だな」

ジャンさんが、ウィスキーのショットグラスをチビり、と舐めるように飲む。渋いな。

ミランダさんが従業員に、炭酸割りのお代わりを頼んだ。店員さんがこちらをチラ見しながら、去っていった。何ぞ。

「訓練は、もう充分だと思うぞ。座学も基本は済んでいるのだろう? 解除ツールの使い方を学ぶ時間を取ればいいのでは?」

ミルデアさんが、エールをがぶり、と呷り、さっそく店員にお代わりを頼んだ。

そして、二回目の野菜煮込みを口に運ぶ。

「うむ。やはり、ここの野菜煮込みはいいな」

ミルデアさんは、目を細目ながら煮込みを楽しんでいる。これ美味しいよな。

「すいません。塩豚と青菜炒め、お願いします。あと黒ワインも」

レンケインさんが、店員に注文する。というか皆、食うわ飲むわですごいな……。

 

 

柑橘酒炭酸割りをチビチビやりながら、料理を摘まむ。厚切りベーコン、美味い。程よい塩味が酒を進ませる。酒良ければ、つまみ良し……か。

「グレイオウル領は、どういう所ですか?」

ラーディスさんからは、あまり詳しくは聞いていなかった……ワサビを特産品にしようと、しているくらいだ。もっと詳しく、聞いておけば良かったなあ……。

 

 

「グレイオウル領はね~最初に言えるのは、水ね。あそこの水で作られたウィスキーは一級品よ~精霊の加護を受けた、大きな湖があってねえ~そこの魚介類も絶品なのよ~」

追加の料理。ソーセージとチーズの盛合せ、ねぎ塩鳥炒めに、ベーコンとトマト煮込み……。

ご馳走だな。もうちょっと、飲むか。

「柑橘酒炭酸割り、お願いします」

 

 

朝日が、宿舎に射し込んで来ている。ええと……しばし、ぼんやりと朝日を眺める。

オーガの拳亭で、少々、酒を過ごしたんだっけか。いい酒と美味い食事……うん、満足度は充分だった。さすが、ミランダさんの店。

もう少し、したら朝食の時間になる。顔を洗って、身支度を整えるか……あ、魔力制御、忘れた。

 

 

朝食。丸パンとチーズに、半熟の目玉焼き。刻んだ干し魚と、白菜と玉葱のスープ。酢漬け野菜。うん、いい朝食だ。

 

「取り合えずは……うん。近場のダンジョンを行き来しながら、実戦を重ねるか?」

ミルデアさんがいう。なるほどな、実戦大事という事だ……。

「構いません。解除ツールの訓練も充分済ませたいですから、別に急いでいません」

まだ、時間はあるからな。急ぐ必要ないんだよなあ。

「青葉の庭に行くか。昆虫、植物、魔獣系が出現する草原……一見の価値あるぞ、あのダンジョンは」

ジャンさんがいう。前はアンデッドの巣窟、静寂の祠だっけか……次は、青葉の庭か。よし行くか。虫嫌いの克服にもなるだろう。

「はい、行きます」

即決。経験、大事……虫系かあ……うん。

「クレイドル、青葉の庭は妙な場所だぞ。まあ実際、その目で見ておけ。いい経験になる」

ミルデアさんが、いう。実戦の経験はいくら積んでも、いいからな……俺も、この世界に馴染んできたらしい。

「昼過ぎには出るか。レンケインとミルデアが準備している間、メルデオ商会に野営道具を買いに行こう」

ジャンさんがいう。そういえば、野営道具持って無かったな。

 

 

「ああ、いらっしゃい。今日は、何の御用かな?」

おお、入店早々、メルデオさんに挨拶された。

帳面片手に、商品棚を見回している。

前にも思ったが、執務室でどっしり構えているタイプじゃないんだな。客対応が好きなのだろう……。

 

「野営用ね。寝袋とテントが基本だね。ただね、商売気抜きにしても、それなりにお金は掛けて、損はないよ。四季問わず使える寝袋。同じく一人用のテント。少々値は張るけど、長く使えるし、快適性も悪くない。ここでケチると、後悔するよ。私の経験上からも、言える事だね」

なるほどな。メルデオさんの丁寧な説明。

「メルデオさんの言う通りだ。悪い事は言わない。お奨め品を聞いて決めればいいさ」

ジャンさんの意見。よし、さっそく見せて貰おうか、お奨め品を。

 

 

せっかくなので、奮発した。何、金はある。

通気性良く、軽い寝袋。頑丈で軽いテント。金貨十五枚のところ、十三枚にまけてもらった。

あとは、小物入れの獣革のポーチに、頑丈な作りの小銭入れ。計銀貨四枚。これは、割引なく払わせてもらった。

ついでに、小さめの魔道コンロも買おうとしたが、ジャンさんとメルデオさんに止められた。何ぞ?

応接室に通され、お茶をご馳走になった。

近い内に、見聞を広げるため、城塞都市を離れるという話をした。その時、なぜか同席していたメルデオさんの娘。メジェナさんも居たが、騒いで大変だった。

──もう二度と会えないのですか 何で出ていくのですか 私も付いて行きます!!──等。

「むごごご!」 騒ぎ出したメジェナさんの口を丁寧にふさぎ、黙らせるメルデオさん。

 

「城塞都市から出立する時は、顔を見せに来るといいよ。ささやかな、お祝いをするからね」

メルデオさんがいう。頭を下げ、商会を後にする。

 

 

ギルドに戻る頃には、丁度昼になっていた。

昼食は、鶏出汁が効いた野菜たっぷりの雑炊。ベーコンと玉葱の炒め物。チーズに酢漬け野菜。

午後からは、ダンジョンだというので、少々、軽めにしてくれたらしい。うん、美味い。

 

昼休み後に、青葉の庭に出発と決まった。野営の準備を終えたあとは、朝方に出来なかった、魔力制御をする事にした。

ジャンさん達は、少し昼寝でもといい、宿舎に 向かっていった。普通に使うんだな……。

 

 

昼過ぎ、夕方には少し早い時間。青葉の庭に向かうには、丁度いい時間だそうだ。

「距離としては、静寂の祠と変わらない。方角は、ここから真東だ。到着する頃には、夕方にはなっているかな?」

「ですね。馬車を使っても、到着時間はそう変わりませんからね。歩いて行きましょう」

ジャンさんとレンケインさんがいう。

「少年。あの場所は、階層は無く、ただ広い空間だ。行けば分かるが、本当に妙な場所だ」

ミルデアさんがいう。妙な場所か……。

異世界知識、発動無し……何だろうな、事前に発動してもいいだろうに。邪神め! 邪神が!!

 

 

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