邪神の子 ~赤き瞳のクレイドル~   作:末末

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第41話 クレイドル フルスロットル!

 

 

びよびよ、と蠢く、身体に棘を生やしたイナゴ連中。キモい。何でこうも、キモいのか……イナゴめ! イナゴが!!

「クレイドル、ちょっと待て──」

「少年。まだ──」

「クレイドル君、今は──」

ああ、気持ち悪い……顔付き、体、気持ち悪すぎだ──イナゴ! イナゴめ!!

「おおぉあっ!! キモいっ! 死ねっ! 死ねえぇぇっ!! 死ねっ!!」

イナゴの群れに飛び込む。今回は、バトルアクスは置いてきた。

持ってきたのは、盾とスケルトンキラー(鋼造りのショートソード)。

盾で殴り、剣を叩きつけ、盾で払い、剣を撃ち下ろし、突き、切り払い、叩きつける、蹴り飛ばし、盾で打ち払い、殴り、切り裂き、叩き付ける──「死ねえっ! 死ねっ死ねっ!!」

腕に何かが刺さる感触。肩に、衝撃──知るかっ! 痛みなんか無い! 叩く、殴る、薙ぎ払う、斬り、突く──無駄に頑丈な、外皮の隙間に剣を突き込み、抉り抜く。

食い込んだスケルトンキラー(鋼造りのショートソード)を抜くため、イナゴの体を蹴る。

スケルトンキラーを抜き、にじり寄って来たイナゴの頭を盾でぶん殴り──横倒しに倒れたイナゴの頭を、踏み潰す──

 

 

 

ピックホッパーを見た瞬間……クレイドルが、キレた──「おおぉあっ!! キモいっ! 死ねっ! 死ねえぇぇっ!! 死ねっ!!」──

虫が苦手と言ってたが、腰が引けるのではなく、キレる方だったのか……荒ぶり、滅茶苦茶に暴れるクレイドル。

「ジャン、あれでは私達の声は届かない。放っておくしかないぞ」

「何時でも、手助け出来るように待機するしか、ないですね……しかし、凄い暴れっぷりですねえ……」

ミルデアとレンケインが、呆れたように言う。

確かにな。無理に割って入れば、巻き込まれるかもしれない──「死ねえっ! 死ねっ死ねっ!!」──乱戦乱撃、ピックホッパーの攻撃をものともせず、斬り払い、叩き、殴り倒し、イナゴを一匹、また一匹と殺していく。

群がる虫を跳ね散らし、叩き潰していくクレイドル……呆れたな、ただ一人で一匹残らず……潰すとは……。

 

 

周囲を見回す。イナゴの死骸が、散らばっている……うお、死んでもキモいな……なんか、もう面構えがキモいんだよ。のっぺりとした面がホントにキモい。イナゴ死ね。コオロギも死ね──昆虫食、拒絶しろ。根絶しろ。戦時中かよ……。

少々、疲れたな……待てよ、ジャンさん達は? どうしている?

 

 

「レンケイン、浄化してやれ……ちと、酷い有り様だ」

「クレイドル君、ちょっと動かないでね。浄化するから」

ええ~と、そんなにか。いやまあ、体液みたいのが散っていた気がしたが……うむう。

「ピックホッパーの素材は、あまり価値がないからな、魔石の回収で済ませよう。いや、量が多いな……」

ミルデアさんが、解体用のナイフを取り出し、魔石の回収を始める。

「少年、手伝ってくれ。ピックホッパーの、効率のいい解体の仕方を教えておこう……可食部は、足だが──」

「食べませんよ。リザードマンも食べないのでしょう? 食べませんよ」

冗談じゃない。食わないよ、食わない。伝統以外で虫食うのは、虫と同レベルだ。

「お、おう……じゃあ魔石の回収を済ませるか」

ミルデアさんが、少し引いている……許してくれ、昆虫食はアカンのよ。マジで、ダメ、絶対。

異世界知識発動! このタイミングで!

──ピックホッパーの可食部。足の大腿部。外殻を割り、中の筋肉部を切り取る。塩焼きが適しており、味は鶏肉に近い。炭火で焼く事で美味になる──美味になる、じゃねえよ!! 食わないからな!!

 

 

 

魔石の回収が済み、バラバラに散らばったピックホッパーの死骸を、脇に避ける。

焼いた方がいいらしいが、なかなか盛大に燃えるらしく、火の粉が飛んだなら、火事になりかねないとの事。生活魔法で穴を深目に掘り、そこに放り込む事にした。

 

「うん、そう。土を掻き出すというより、掘り進む事をイメージするんだ。うん、その調子」

レンケインさんの指導の元、穴を掘る。消費魔力は軽微。緩やかに、減少していく感じだ。

「よし、それくらいでいいだろう。あとは、風で死骸を穴に落とすんだ。吹き散らすのではなく、方向を考えて、風を吹かせるんだ」

ジャンさんがいう。積まれたピックホッパーの死骸を、直進する風をイメージして……。

 

 

「この先、森の手前、薔薇姫三体だ。サイズは少し大きめだな。回避するより、仕留めた方がいいだろう」

斥候に出向いていた、ミルデアさんが戻ってきた。

「ふむ。薔薇姫か……そうだな仕留めるか。素材も良いのが、回収出来るからな」

ジャンさんがいう。薔薇姫……植物系の魔物だろうな、っと異世界知識発動。いいタイミングだな──赤刃の薔薇。ローズエッジ。薔薇姫。植物系の魔物。根を這わせ移動する吸血性の魔物。

刃の様な花弁は鋭く、頑丈。それによって出血した獲物を優先的に襲う。素材は花弁と根──

 

 

「薔薇姫かあ。根は薬に、花弁は刃物に加工出来るんだよ。とくに花弁は、解体道具への加工に適しているんだよねえ」

「ふむ。確か、根は強壮剤、香水になるんだっけか」

レンケインさんとミルデアさんがいう。香水かあ、ちょっと興味あるな。前世ではたまに、寝る前に付けていたな。よく眠れるんだよなあ。

「よし、さっ、と片付けるか。なるべく、短期戦で仕留めたいな」

ジャンさんがいう。チラッと俺を見た。分かっています。暴走しませんよ……。

 

 

少し移動すると、広い森が間近に見えた。ここに来た時から、気になっていたんだ。深緑の森は、たぶん季節関係なく、深緑なのかもな……。

「いたぞ。見えるな、少年」

ミルデアさんが指差す先には……揺らぎながら蠢く、人間ほどの大きさの薔薇がいた。

身長は……百五十センチほど、花部分は五十センチくらいか。這う根っこがうねうね蠢き、気持ち悪いな……こっちに気付いていない様に見えるが……。

「よし、先制出来るな。レンケイン、石礫で驚かせてやれ。その後、俺が旋刃をぶつける。ミルデアとクレイドルは、そのまま強襲しろ……いいな?」

頷くミルデアさんと俺。投擲用の手斧を構え、握る。よし、何時でも用意は出来ている……。

「ゆっくり、近付きましょう。石礫程度は、何時でも放てます」

「うん。石礫と同時に、旋刃を放つからな」

 

一歩、また一歩と近付く……まだこちらに気付く様子もなく、薔薇姫連中は蠢き、揺れていた。

すうっ、とレンケインさんが息を吸うと同時に──大量の石礫が、散弾状に放たれた。

散弾の後を追う様に、複数の円月状の風の刃が薔薇姫達を襲う──

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