邪神の子 ~赤き瞳のクレイドル~   作:末末

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第46話 城塞都市 石壁の砦

 

 

鶏源亭から出る頃には、夕方過ぎになっていた。訓練所に戻ると、ジャンさん達も戻っていた。

「おう、戻ったか。まず、一服しな」

テーブルに着くと、マーカスさんがお茶を入れてくれた。

「飲みに行くんだろ? 俺も一緒させてもらうぜ」

すすっ、と茶を啜る。マーカスさん。

「場所は、オーガ亭でいいか? あそこにボトル入れているのを思い出した」

「ボトル? オウルリバーですか?」

「おう、十年物だがな。酒場じゃ、それくらいしか、揃えられないんだよな」

ジャンさんに答える、マーカスさん。

「ラーディスから、二十年物貰ったはいいが、あれはそう簡単には、開けられねえ」

「二十年物……直売所でも、予約制の代物か」

ううむ、とミルデアさんが唸る。酒好きだな……皆。

「そろそろ、行きますか。混む前にテーブル取っておきましょう」

レンケインさんが、腰を上げた。

「おう、先に行ってな。片付けてから、向かうぜ」

マーカスさんが、茶碗と焼き菓子の皿を片し始めた。

「俺も、一服して向かいますよ」

購入したばかりの煙草盆を出し、煙管に深風を詰める──ぽっ、と生活魔法で火をつけ、ゆったりと、吹かす……微かな苦味の中に確かな甘味。

ラーディスさんが、魔力制御に役立つといった意味が、分かる……ふうぅ~。うん、いい味だ。

「なんだ。おめえ、煙管なんか吹かしやがって。いい趣味してんな」

「生活魔法、なかなか使いこなしているね。煙管とは、また……」

マーカスさんとレンケインさんに言われた。

何ぞ?

 

 

オーガの拳亭。相変わらずの賑わい。この店のいい所は、誰でも受け入れる事だろうな。

泊まり客関係無く、料理と酒を、振る舞う。値も悪くない。賑わうのも当然だ……ミランダさんにやられた事は、忘れたが……。

 

 

「クレイドル君、ここ城塞都市には三つのダンジョンが有る。その内二つ、静寂の祠と青葉の庭は済んだ。あと一ヶ所、石壁の砦という場所があるんだ」

黒ワインを口に含みながら、レンケインさんがいう。

「そこは相当に古い場所でね。覇王公の時代からある砦だけど、今は」

くいっ、と黒ワインを呷り、続ける。

「武装スケルトンの巣窟なんだ。前に、説明したと思うけれど、武装スケルトンは、生前の戦闘能力を引き継いでいる。あそこの連中は、並の相手じゃない。昔の軍事拠点や、大戦があった場所に現れる武装スケルトンは、軍規を今だに覚えているんだ」

「要するにあれだ。軍規、連携が取れている奴等だ……手強いぞ。十人単位の、小隊並の強さを保っている」

レンケインさんに次いで、ジャンさんがいう。

「もうちっと補足してやるぜ。覇王公の時代からの戦闘能力を引き継いでいるんだ……つまり、歴戦の兵士の実力を保っているってこった」

マーカスさんが、楽しそうにいった。

 

 

「はいは~い、料理お待たせ~」

ミランダさんが、従業員を従えてやって来た。

豚肉と野菜煮込み。鶏のトマト煮込み。青菜のゴマ油炒め。香辛料まぶしの揚げジャガイモ。

「料理は、まだ来るからね~お酒の追加は、もうちょっと先にしましょうね~」

よいしょっ、とばかりにミランダさんが席に着いた。

「おい、ミランダ。俺のボトル出してくれや」

「わ~かっているわよ~。もう言いつけているわ~」

マーカスさんと、ミランダさんのやり取り。

 

煙管に葉を詰め、火をつける……酒が来るまでまだ、間がある。一服するには時間はあるからな。

「ああ~クレイドル君。なるべく、煙管控えてくれないかしら~」

店内禁煙てやつか……仕方ない。なら外で……。

「あ~違うの、違うの。ほら、回り見て」

ミランダさんが小声でいう。回り……?

周囲の客が、ささっ、と目線を逸らす様に顔を背ける……何ぞ?!

「まあ、仕方ないな少年。その唇は罪作りだからな」

青菜のゴマ油炒めを、モシャモシャ食べながらいうミルデアさん。この人、野菜好きなんだよな。

「むう……せっかく、火をつけたので、外で吸ってきます」

詰めた葉は、戻せないからな……邪神のせいだな。邪神め!!

 

 

オーガの拳亭の軒下、出入り口近くのベンチに腰掛け、行き交う人々を見るともなく、見る。

時間は夜になったばかり。夕闇の時間だ。

ぱっぱっ、と煙管を吹かす……苦味と甘さの爽やかさ──美味い、といってもいいんだろうな。

ぷかり、と煙を宙に浮かす。落ち着くな……。

 

ぼんやりと、軒先で煙管を吹かすクレイドル。

通りすがりの人々の内、何人かが、ちらりとクレイドルに目をやり、オーガの拳亭に入って行くのを、クレイドルは気付いていなかった……結果、オーガの拳亭が満員御礼になるのは、ある意味、必然だった。

 

「明日、石壁の砦に出向きたいんだがな? どう思う?」

ぐびり、とエールを呷るジャンさん。ちょっと酔いが回ってないか?

「あそこは、中級レベルの場所だ。地上一階、地下二階の場所だが、マーカスさんのいった通り、手強い。集団戦闘に長けている兵士達だよ」

「軍規が整った兵士は強い。証明されているからな。どうだ? 行って見ないか?」

レンケインさんとミルデアさんがいう。

集団戦闘……連携の取れた集団との戦闘に、慣れておく事も、大事だな……うむ。

「行きましょう。連携の取れた相手への、戦闘経験は積んでおきたいですからね」

経験、大事。柑橘酒炭酸割りが、美味い。

「よし……俺も参加させて貰おうか。久しぶりに、実戦経験させてもらうぜ」

クイッ、とウィスキーのショットグラスを呷るマーカスさん。

「ええ~私の台詞よ~それは~」

ミランダさんが、エールをがぶりと、呷る。

マーカスさん、ミランダさんともに酒のお代わりをする。

追加の料理が来た。ほどよく焦げ目の付いたソーセージとチーズの盛り合わせ。豚肉と根菜の煮物。塩鶏皮と白菜の炒め物……肉と野菜のバランス、いいな。酒が進むメニューだ。

炭酸割りを頼む。パリッとした皮のソーセージが、美味い。

「石壁の砦に行きましょう。戦闘経験はいくら積んでも、いいでしょうから」

俺も、少し酔いが回ったかな……? まあ、いい……うん、炭酸割り、美味い。

一服するかね……手早く煙管に葉を詰め、火をつけ、吸い口に唇を付ける。そして、ゆったりと吸う……。

「明日の昼過ぎに、しませんか。兜の強化を頼んでいるんですよ。その頃には、仕上がるらしいですので」

煙管に唇を付ける。吸い口の口触りが、なんともいえない感触……職人技の造りか……。

何か騒いでるが、どうという事もないだろう。

煙管を吹かし、炭酸割りを飲む。美味い料理に美味い酒。うん、いい時間だ……。

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