邪神の子 ~赤き瞳のクレイドル~   作:末末

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第47話 石壁の砦 武装スケルトン隊

 

 

早朝、朝日に照らされる訓練所──三名の男が、朝日に照らされ車座になっていた。

魔力制御中の、ジャンベールとレンケイン、そしてクレイドル──

「まあ、こんなとこかな……朝日は充分、浴びれた……」

「夜明け前から、朝日が上るまでの時間が、いい時間帯ですからねえ」

立ち上がり、大きく伸びをしながらジャンベールがいう。コキコキ、と首を鳴らすレンケイン。

「いい具合の……倦怠感、ですね……」

ふああぁ、と大あくびをする、クレイドル。

「直に、朝食だ……もう一度、顔を洗うか」

う~ん、と心地良さそうに背を伸ばす、ジャンベール。

 

魔力制御は、一、二時間の集中が大事。数時間かける事は、非効率。明け方前と夜更けが、最も効率的──魔道卿、ラーディスの言葉だ。

 

朝食。カリカリのベーコンと半熟の目玉焼き。丸パンに、玉葱の鶏ガラスープといつもの酢漬け。うん。いいバランスの食事だ。

カリカリのベーコンと、半熟の目玉焼きの相性は抜群だな……スープ、美味い。

 

「石壁の砦には、昼過ぎに出るんだな?」

食後のお茶中。マーカスさんがいう。

「昼前に兜の補強が済むといってましたから、それを受け取ってから、出向きましょう」

煙草盆を引き寄せ、煙管に葉を詰める。

「少年、人前での煙管は気を付けろ。目に毒過ぎる」

温めの茶を、ゆったりと啜りながら、ミルデアさんがいう。むう……納得いかない。邪神のせいなのは間違いない……邪神めが!!

 

 

 

昼過ぎに石壁の砦に出向くという事になった。城塞都市から、北東寄り。北街道からその砦は見えるが、旅人は寄らないように勧告が出ている──その周囲は、危険地帯──武装スケルトンの巣窟として。

 

スティールハンドに到着。店に入るやいなや、スウィンさんの声が響く。

「おう! 待っていたよう!! さ、来な、兜は仕上がっているからねえ!!」

声、でかいな。何ぞ?

「ほら、兜が仕上がってねえ。再調整するから、被ってみな。ほらほら」

むむむ……強引じゃないか!?

 

 

調整が済んだ鷲の兜は、少しの余裕をもった仕上がりになっていた。フェイスガードを降ろしたなら、ぴったりと頭に合うような出来に仕上がっている。

いいな……さすがの出来だ……うん。

 

にやにやと、新調した鷲の兜を撫で回しているクレイドルを横目に、ストルムハンドがマーカスに、少し短めのバトルハンマーを渡す。

「ふむ……さすがの造りだな。初めて手にしたのに、馴染む」

「いい出来だろ? しっかし‘’精妙剣‘’に、ハンマー似合わねえな……いや、これが自然か……?」

「ほっとけや。石壁の砦に出向くんだ。打撃の方が、効率いいんだよ」

ボフッ、と空を潰すような音がなる。

「お前さんなら、相手が何であれ関係ないんじゃねえか?」

「まあな。たまにゃ、打撃武器も使わねえとな」

ボッボボッ、立て続けの風断ち音。片手で扱って鳴る音では無い。両手でも、どうだろうか。

‘’精妙剣‘’の名は伊達では無かった──

 

「よし、これ貰うぜ。あとは……バックラーもな」

直径、約三十センチの小盾。縁と、中央を中心に、上下左右を金属で補強されている。

「よし……ハンマーとバックラーで、銀貨八枚でいい」

「ほら、釣りは取っときな。盾を使うのは、久しぶりだが、まあ大丈夫だろ……クレイドル、もう兜を撫で回すのを、止めろ」

金貨を、ストルムハンドに指で弾き飛ばすマーカス。毎度、とばかりに受け取るストルムハンド。我に帰ったクレイドルが、黒鷲の兜を小脇に抱える。

「石壁の砦で竜骨スケルトンが出たら、素材を回収してくれ、高く買い取るからな」

「その可能性あるな……おう、覚えとくぜ。ほら、クレイドル、戻るぜ」

 

 

ギルドに戻ると、出発の用意を終えたジャンさん達が待っていた。俺の荷物も一緒だ。

「徒歩でもいいですが、馬車で近くまで行きませんか。陽が暮れる前には着いておいた方が、いいでしょうから」

「おう。そうするか、馬車代は俺が出す……といっても、大した額にはならねえがな」

ジャンさんと、マーカスさんの会話。石壁の砦は、徒歩で二時間足らずの場所。

馬車を使えば、一時間も掛からないそうだ。

「うむ、早い内がいいだろうな。夜にアンデットとやり合うのは、面倒だ」

「よし……行きましょうか。石壁の砦がどういう場所か、クレイドル君に説明する時間はあるでしょうからね」

ミルデアさんとレンケインさんが、荷を担ぐ。

 

ゆっくりと進む馬車。とはいえ徒歩より速い。目的地に近くに到着するまでに、石壁の砦の情報をレンケインさんから聞いた。

「前に聞いたかも知れないけどね、あそこは、覇王公時代からの砦だ。そこに巣くう武装スケルトンは、普通じゃないからね。精兵のスケルトンだ。連携、軍規が残った連中だからね」

「それと……戦闘練度も充分に、引き継いでいる。手強いぞ」

レンケインさんの言葉を継ぐ様に、ミルデアさんがいう。

「そろそろ、着くぜ。馬車を止めるぞ」

マーカスさんが、御者に合図を出した。

 

 

街道から見える砦。遠目に見ても、大きく頑丈そうな造り……その周辺に、武装した兵士達がたむろしている。何ぞ?

 

 

「うん……? あれは衛兵部隊か。珍しいな」

石壁の砦の城門近くに、衛兵達が野営の準備をしていた。

「こんなとこで野営の準備ですか……」

ジャンさんとレンケインさん。よし、とマーカスさんが衛兵隊に向かって行く。

「ちょっと、聞いてくるぜ。元々、こんな所にいる連中じゃねえからな」

のっしのし、とマーカスさんが、衛兵隊の下に向かって行く。

 

 

戻って来たマーカスさん曰く……。

衛兵隊は、集団戦闘訓練のために来たらしいが、武装スケルトンが思った以上に多く、どうしたものかと、悩んでいたらしい。

衛兵隊の数、二十名。小隊クラス。というか、衛兵隊の中に何時だったかの、メルデオ商会を教えてくれた、女性獣人がいた。狼族だったのか……。

「武装スケルトンの数四十。小隊、といってもいいな……あとな」

 

マーカスさんがいうには、武装スケルトン小隊には竜骨スケルトンが含まれているという──うお、異世界知識発動──竜骨スケルトン。スケルトンの最上位種の一つ。頑丈さでは、並みのスケルトンに比べ、別格。竜の骨が如く、頑丈との事から、“竜骨”の異名をとる。

頑丈さだけではなく、戦闘能力も別格。武装スケルトンの指揮官クラスである事が多く、中には騎士クラスの強さと指揮能力を持つ──

 

まあ、並みのスケルトンよりも強力って事か……スケルトンキラー(鋼造りのショートソード)の出番だな!!


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