邪神の子 ~赤き瞳のクレイドル~   作:末末

6 / 245
少しずつ、書き進んでいきます。いや、なかなか簡単では無いですな……。


第6話 ステータス! オ~プン!! (ベテラン芸人風に)

 

 何も起こらなかった。うん、何となくそういう世界だという事はわかっていたよ。まあ正直、期待半分ってとこだったけどな……さて、深夜のバトルを終え、噴水広場で妙な宣言をした後は、急激にテンションが下がり、そのまま廃屋に戻って寝た。速やかにやってきた眠気に抗う事なく、剣を抱いたまま、スャアと眠る事が出来た……。

 

 目が覚めると、もう夜が明けていた……廃屋の出入口、窓から朝日が射し込んでいる。

 どこからともなく、鳥のさえずりが聞こえてくる。もそもそと起き、バッグの中の携帯食。干し肉と干し果物をムチャムチャと噛みしめ、水で飲み下す……さてと、これからの生活はどうするかってとこだが……確か、城塞都市とやらの近くの村……いや、廃村か。今の現状では、城塞都市に向かうのが、ベストだろう──帝国領、城塞都市グランドヒル。都市というのは通称で、正確には城塞王国グランドヒル。移民を率いてきた男が、理性を持ったトロルとともに村を作り、街となり、そして王帝の支援を受け、一つの国を築き上げたという歴史がある──いや、これ以上の歴史の講義は、後からにしよう……。

 今は、城塞都市に向かうのが、最優先事項だろうが……ここから徒歩で向かうには、少しばかり距離が遠すぎる。とりあえず街道を出て、通りすがりの馬車にでも会ったら、近くまで乗せてもらおうか……。

 

 

 街道を歩いてすぐ、行商人一行に拾ってもらった。一行は、帝都領南に位置する、交易都市からの帰りだという。行商人の名は、メルデオさん。褐色の肌をした彫りの深い顔立ちで、いかにも壮健そうな人物だ。

 三十の半ばで城塞都市に店を構え、今や中堅の商人として認められているという。雑貨屋を経営しており、冒険者用の道具も扱っているとの事。

「あの廃村で一泊したのかい……なかなかタフだな……しかもスケルトンを倒すなんてなあ」

「無我夢中でしたよ。もうどう戦ったかなんて覚えてません」

 ゴトゴトと、のんびりとした歩調で馬車が行く。城塞都市までもうすぐなので、ゆったりとした速度なのだそうだ。

 

 俺は御者を自分から勤めるメルデオさんの横に座り、話好きのメルデオさんから城塞都市の話を聞く。帝国領内の都市、つまり各国の治安はほぼ万全だという。酔っ払った女性が、フラフラしていると、衛兵に捕まり、女性の家に連行されるか、衛兵所の一泊部屋にお泊まりされる事になるという。それほどの治安だとの事だ。

 ちなみに、スラム街などは無いそうだ……これって、相当に治安はいいだろう。

 

「身分証を持ってないっていうのなら、衛兵から仮の身分証を発行してもらう事になるなあ。発行には、銀貨三枚。どこかしらのギルドから身分証を発行されたら、仮身分証を返却すれば、銀貨二枚が返ってくるよ」

 なるほどな。異世界知識を出すまでもなかったのはありがたい。

 ゴトゴトゴトゴト、馬車が行く。メルデオさんと色々な話をしていると、城塞都市が見えてきた……おおお……すごいな、これは。TVで観た世界紀行とかで紹介された、中世の城郭の完全版って感じだ。

 そびえ立つ城壁。尖塔。行き交う人々のために開放された、広く巨大な鉄の門……思わず圧倒される。いや、凄い。またしても、異世界に来たのだと実感させられる。

「いや、これは想像以上です……田舎者には刺激が強いですね」

はえ~とばかりに、メルデオさんに告げる。

「まあなあ。私も初めて来たときには圧倒されたよ。でもまあ、住めば都と人はいうからねえ」

 

 行商人のメルデオさんはほぼ顔パスで通れた。

俺はメルデオさんの口利きもあり、すんなり仮身分証を発行してもらえた。ありがてぇ事や。

 ちなみに、持ち合わせがなかったら自分が立て替えておこうか? とまで言われた。

 いや、大丈夫です。持ち合わせはあります。と断った。ええ人や。ありがてぇ。

 今後、何かしら店を利用する時には、メルデオさんの店を利用しよう。

 

「冒険者ギルドで登録する事にします」

 メルデオさんに告げると、何時でも店に来てくれていいよ。と言われた。これも何かの縁だからねと、メルデオさんから冒険者ギルドの場所を聞き、早速向かう事にする。

 とはいえ……俺のご面相が受け入れられるだろうか……。

 

 

 前世の皆上遼示。その強面は、今や新しい『父親』の容姿に寄っているという事をクレイドルは知らない。

『子は親に、自動人形は人に似るという』

 その邪神の言葉を忘れていた──金髪。白磁の様な色肌。漆黒の瞳。紅色の唇。それらの整った目鼻立ち──今、現在のクレイドルの容姿は、そうなっていた。

 

 

 冒険者ギルドの前に立つ。開け放たれた両開きの扉。おおう、これはあれだ。西部劇の酒場の入り口に似てる……。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。