邪神の子 ~赤き瞳のクレイドル~   作:末末

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幕間 城塞都市グランドヒル 冒険者ギルドの新人達

 

 

 

「おう、来たか。まあ座れや」

ダルガンデスがソファーに腰を降ろす。

ジャンベール、レンケイン、ミルデア。ダルガンデスに向かい合うように、座る。

「単刀直入に言うぞ。お前ら、今日からBクラスに昇格だ」

ジャンベール達が、顔を見合わせる。何か言い掛けたレンケインを、手で制止するダルガンデス。

「まずは、クレイドルをまあまあ、一端の冒険者に鍛えた事。それと悪魔系の討伐に、竜骨の騎士との戦闘……その他、諸々だ。文句ねえな?」

唸るミルデア。レンケインが、温くなった茶に手を伸ばす。

「無いですね。むしろ、いい切っ掛けになりました」

ジャンベールの言葉に、ダルガンデスが尋ねる。

「切っ掛け、てなあ何だ?」

ダルガンデスに、レンケインが答える。

「僕達三人で、改めてパーティーを組む事にしたんですよ」

すすっ、と茶を啜るレンケイン。

「うむ。最も、パーティー名はなかなか、決まらないがな」

「俺達は、それぞれ役割が違いますからねえ。どう決めたら、いいのか……」

ふふん、と笑うダルガンデス。

 

 

喫茶室。亭主のマーカスが、暇そうにカウンター内に腰掛けている。

「マーカスさん、しけた面しないで下さいよ。茶が不味くなりますよ」

ずずっと茶を啜る、冒険者達。ぱりぱり、と焼き菓子を摘まむ音。

「飯作る理由が、無くなったからなあ。寂しくなったぜ」

「何なら、私達にご飯作ってよ」

「やなこった。作りがいが、ねえんだよ。おめえらは塩味しか分からねえからなあ」

そりゃ、ひでえよ──喫茶室に集う冒険者連中が、笑う。

 

昼食後、マーカスがダルガンデスの下に訪ねて来た。

「おう。三人組はまだ休暇中か?」

「ああ、クレイドルが移動してから、使い物にならなくなったからな。しばらく休ませてやろうと思ってなあ」

受付嬢三人組。リネエラ、ジェミア、サイミアは、クレイドルが去ってから荒れた。

酒臭く、出勤してきたと思えば、他の職員に当たり散らす、冒険者や依頼主を冷淡にあしらうわで、苦情が来ていた。

結果、三人組に長期休暇を出した。頭を冷やせという意味を持たせて──まあ、それはいい。

 

「クレイドルが出ていってから、新人が集まって来てるな。妙な感じだ」

「今日で七人、冒険者志願の連中が来ている。まるで、示し合わせたようにな」

ダルガンデスが、茶を差し出す。おう、と受けとるマーカス。

「新人連中、ジャンベール達に預けるか?」

尋ねる、ダルガンデス。淹れたての茶を啜る、マーカス。

「ふん、悪くないな。まあまあ、美味い……新人で、初級訓練受ける奴等は何人だ?」

「七名中、三名。あとの四名は……英雄志望の力自慢だ。それぞれ、同郷組だ」

「馬鹿どもは好きにさせておこう。三人組は、ちっと役不足かもしれねえが、ジャン達に預けるか……ジャン達が受けたらな」

マーカスが茶を啜る。

「英雄志望は放っておけや。三人組を、鍛えた方が効率が良さそうだからな」

うむ。と頷くダルガンデス。

 

 

初級訓練は受けた方がいいよ、色々特典がつくからね──ギルド職員から言われた。

私達は、即決で受ける事にした。訓練期間は一ヶ月。衣食住無料。三食、ご飯を食べさせてもらえる上に、週に銀貨五枚も支給される。

その上、冒険者としての基礎知識を学べるし、戦闘訓練もしてくれるという──夢のような話。

にも関わらず、同じく冒険者志願の四人組は、初級訓練を受ける事を、拒否した。

そんな暇は無い。俺達は、すぐにでも名を売ってやる。初級訓練なんて、意味がない──そう言い放った。

根拠の無い自信としか思えなかった。それを聞いた受付の人は、ため息を吐くと、冒険者証の登録を始めた。

登録を終えた四人組は、意気揚々と、何の依頼を受けるかと、大声で話し合っている──四人組を見る、他の冒険者、先輩達の目は、哀れみと呆れを露にして、浮かれる新人達を見ていた──

 

 

前衛一人。一際体の大きいジョシュ。中古の盾に、頑丈な革鎧。古びてはいるけど、ちゃんと手入れのされたロングソード。

中衛は私、リーネ。治癒術の使い手の祖父から学んだ、治癒術と棒術に体術。祖父曰く、正統な治癒士は、棒術と体術も習うものだそうだ──骨折までは、癒せる自信はある。

後衛に位置するは、シェリナ。水属性の魔術師。両親共に水属性の魔術師。彼女は、短刀術にも長けている──

私達は、同じ村で育った幼馴染み……子供の頃から、ほとんど一緒だった。お互いに、次女、三男。このままだと、行く末は決まっている。

ある時、ジョシュが言った。どうせ、このまま村に居ても兄貴達に、こき使われるだけ。

だったら──冒険者になって、世界を見て回りたい、と──それを聞いた時、私とシェリナも思わず言っていた……「私も、そうよ」と。

 

それからは、早かった。ジョシュは、村の衛兵から剣を学び、私は祖父から受けている治癒術に加え、棒術と体術を再度、訓練してもらった。

元々、シェリナは両親から、短刀術と魔術の訓練を施されていた。

 

一年ほど経ち、ジョシュは衛兵から、基本を学んだと認められ、私は祖父から、あとは実践あるのみと言われた。シェリナは、基礎はもう充分だと、父親から言われたらしい──私達は、冒険者になると言って、村から出る事にした。

もちろん、反対もあった。ジョシュと私の両親は、冒険者何てものに、先は無い。大人しく、この村で生活していればいい──これに強く反論したのは、ジョシュだった。

俺は、兄貴達に顎でこき使われるのは、もううんざりだ。でかいだけが取り柄。大人しく、畑を耕していろだの何だのと、奴隷扱いはうんざりだ──温厚なジョシュの口から出たのは、かなり強い言葉だった。

ジョシュの二人の兄は、しどろもどろになった。奴隷扱い、という発言にだ。帝国領内での奴隷発言は、見過ごされるものではない。

そんなつもりでは、と言い訳しようとする兄達を無視し、ジョシュはきっぱりと両親に、頭を下げて、村から出ますと言った。

私の両親は、ため息を吐き、お前の人生だ、と言ってくれた──シェリナは、体だけには気を付けるように、とだけ言われたそうだ。

身の回りの、簡単な装備と多少の路銀を整えてもらい、私達は一番近い城塞都市に向かったのだ。

 

 

「よし。初級訓練を受ける三人組、来い。宿舎に案内するぞ」

マーカスさん……といったか。ごつい体付きの人。副ギルドマスターで、喫茶室の亭主でもあるそうだ。宿舎は当然、男女別。それぞれ、簡単な説明を受け、夕食まで時間はあるから、街を見て回るといいと言われた──今日から、見習いとしての日々が始まるんだ──うん、頑張ろう。

「ああ、お前らの食事は、今日から俺が作る。夕飯は、ちょっとばかり、豪勢にしてやるよ。楽しみにしてな」

マーカスさんが、ニヤリ、と笑う。

 

リーネをリーダーとした、三人組の運命が、クレイドルに繋がるのは、まだ先の話──

 




縁はどこで繋がるか、分かりませんからね。
縦か横か、どう繋がっていく事か──
Ψ(`∀´)Ψケケケ
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