邪神の子 ~赤き瞳のクレイドル~   作:末末

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第70話 驚きの鑑定結果とは!!

 

 

すでに夜。上級宿“雄山羊と戦槌亭”に集う碧水の翼。カリエラさんが個室に、俺達を呼んだ。

 

防音の個室。客のプライベートを守る部屋。風属性持ちの、レンディアが確認済みだ……。

部屋に運ばれているのは、酒と軽食のみ。カリエラさんが、少し震える手で、ワイングラスをしっかりと掴み──ぐうっ、と一気に飲み干した。

ふうぅっ、と息を吐くと……一気に捲し立てる。

「あの変異したミスリル。スカイライト(蒼天石)何だけど、とんでもない値が付いたわ。なんか、もう商人辞めようか、なんて思うほどよ……」

グラスにワインを注ぐカリエラさん。落ち着いたのか、震えは止まっている。

遣り手のカリエラさんが、やる気を無くすほどの儲けってどれほどだと、いうのか。

「ちょっと、カリエラさん。自棄にならないで頂戴よ」

レンディアが、カリエラさんの背を擦る。

「ミスリルは確かに貴重だが、希少というほどでもないだろう?」

ゆるり、とグラスを傾けるグランさん。

ギンッ、と凄まじい目付きで、グランさんを睨むカリエラさん……殺気が出てますよ。

場の空気なぞ知らぬ、と言わんばかりに店員を呼ぶためのベルを鳴らす、シェーミイ。まあ、猫だからな……。

「まあ、食事よ食事。話を聞く時間はあるわよカリエラさん」

背を擦る、レンディアの言葉が沁みたのか、しくしくと泣き始めるカリエラさん……相当やられているな。

 

料理と酒が来た。肉に野菜、果実酒にワインにウィスキーの瓶。炭酸水に、氷──まあ、宴会だ。

変異したミスリルの値……カリエラさんがおかしくなるのも、無理なかった。

その値……金貨五万枚。ええと……一月、親子四人で金貨一、二枚あれば、多少の贅沢と貯えも出来るほどのもの。それが五万枚、か……。

 

「堅実に稼いでの五万枚と、いきなり入ってきた五万枚とでは、全然違うのよ!」

むふう、と鼻息荒く、ワインを一息に半分飲み干すカリエラさん。目が血走っている──

「堅実。慎重。誠意と謙虚。祖父の代からの教えなのよ! こんな急な実入りは、父とお祖父様の教えに反するわ!!」

がぶり、とワインを干すカリエラさん。飲むなあ……。

やれやれ、とばかりにレンディアと顔を合わせた。グランさんは、困ったようにカリエラさんを見る。

シェーミイは、氷たっぷりのグラスに果実酒を注いでいる。お前、ちょっと空気読め──

 

ぐだっているカリエラさんを、レンディアとグランさんが個室に運んで行った。

もう少し飲もう、という事になったので、シェーミイと二人で個室に残った。直にレンディアとグランさんも戻って来るだろう。

「会議室の中までは、私達護衛は入れなかったんだけどねー、中々の騒ぎになっていたのよー」

「ふむ。どんな面子が、来ていた?」

「そうねえ。商人ギルドのお偉さんに、鍛冶師が二人ね。メルデオ商会長は来なかったみたい」

果実酒を、ぐっ、と呷るシェーミイ。なるほどな……。

「カリエラさんの叫び声、というか雄叫びが聞こえたんで、部屋に入ろうとしたんだけど、グランに止められたのよねー」

雄叫びて……まあ、そうなるか。総額でそれだけの──待てよ? 総額?

「なあ、持ち込んだミスリル総額でだよな?」

「違うよ。 スカイライト(蒼天石)だっけ? それ一つで、金貨五万枚だよ」

グビリ、と杯を干すシェーミイ。

 

「他のミスリルと合わせて……六万何千枚だとかだったかなー。グレイオウル領のミスリルは質がいいんだって」

空けた杯に無造作に氷を入れ、果実酒を注ぐシェーミイ。ほんと自由だなこいつ……一つの塊が金貨五万枚か。

俺も叫びたくなった……まあ、いい。料理が冷めないうちに食べないとな。

バターで炒めた玉葱の上に乗せられた、ほどよく焦げ目の付いた厚みのあるポークソテー。きれいに切り分けられている。

取り皿に取り、さっそく口に運ぶ。塩味のソース。美味い。何だろうな、食堂とはやはり違うな。

シェーミイは、炙り鶏の野菜盛りを、パクついている。野菜食べるんだな、と何となく思った。

 

さっきから気になっていた、俵型の狐色の揚げ物──濃い色のソースがかかっている。もしかしたら……あ、これメンチカツだ。安物の肉臭さは無く、いい香りだ。油もいい、さすが上宿。

いつの間にか、ポークソテーは無くなっていた。玉葱も……猫族、玉葱大丈夫何だな。

「おい、待て。一人で食うな」

炙り鶏の野菜盛りを、平らげんとするシェーミイを止める。

「えー、また頼めばいいでしょ。カリエラさんの払いだし。あ、お酒頼まないと」

ベルを鳴らすシェーミイ。ほんと、自由だな、猫族は……。

 

「はー、もう大変だったわ。宥めるのに時間かかって」

オウルリバーをグラス半分に注ぎ、一気に呷るレンディア。おいおい、そんな飲み方でいいのかよ──はあ~、と強く息を吐くレンディア。

グランさんは、ワイングラスに黒ワインを注ぎ、上品な仕草でグラスを傾けた。

「カリエラさんは、明日、半日は起き上がれないだろう。相当荒れてたからな」

「金額が金額だから、今日明日で振り込まれる事にはならないわよ。あと二、三日は自由行動になるかもね」

レンディアが、オウルリバーを炭酸水で割る。

 

酒と、追加の料理が運び込まれた。肉、野菜様々。夜っぴての、宴会になるんだろうな……まあ、いい。よし、飲んで食べようか。

不意に、レンディアが向き合ってきた。普通の雰囲気ではない。何ぞ? と思い、レンディアに向き合う。

「クレイドル。今現在、あなたは初級のCランク。私達は中級のDランク。ゆくゆくは、あなたも中級にならないといけないのよ。だからね、あなたのランク上げのための、依頼を受けようと思ってるのよ……どう?」

どうも何も、そうするのが当然だろうな……。

「皆が、そう思っているなら受けるよ。いずれにしろ、クラスとランクは上げないと、自由に振る舞えないからな」

前から思ってたんだよな。中級に上がらないと、レンディア達と対等に依頼を受けられない事に。いずれ言おうと思っていたので、丁度いいタイミングだ。

「話が早いわね。いいわ、ランク上げの近道は、まず討伐に、簡単ではない、採取に採掘かしらね」

「何にしろ、カリエラさんはしばらく動けないだろう。一応、断りを入れるが、パーティーを組んでの行動は許可されると思う」

丁寧に、切り分けられた鶏の照り焼きと、付け合わせの温野菜を、取り皿に分けてくれるグランさん。

グラスに氷を入れ、オウルリバーを注ぐレンディア。ウィスキーのロックか。俺もそうするかな……。

 

 

目が覚めた。窓の外は仄かに明るくなっている──夜明け、少し前か。魔力制御にはベストな時間。

窓を開けて、外気を取り入れる。冬も近いか……よし、魔力制御の後に一服といこう。

 

魔力制御後の一服を終え、頼んだお湯で、顔と体を拭った。浄化だけだと、何か物足りないんだよな。とはいえ、シャワーや浴場は面倒だ。

少し覗いて見たが、シャワールームと浴場は、さすが上宿といってもいいほどの広さで、なかなかに凝った内装だった。一度は体験してもいいだろうな……グランさんを誘ってみるか。

 

一階の端のテーブル席に着く。朝食は皆で取る事に決めていた。まだ早いのか、客はまばら。

カウンター席は、皆空いている。厨房の喧騒が聞こえてくるが、それほど騒々しくない──「あの……お客様?」

制服姿の店員さんに声を掛けられた。ベージュ色の高級感のある、パンツスーツ姿の女性。二十歳ちょっとくらいか。清楚な雰囲気の美人さんだ。

「朝食には、少し早いのです、が……お茶ならば、ご提供出来ます。いかが、でしょう?」

確かにな。食事には早いか。他の客も、お茶を飲んでるな。だったら──「お茶を、お任せでお願いします」

「は、はい! 少々、お待ち、ください!!」

顔を真っ赤にした店員さんが、脱兎の如く駆けて行った。何ぞ?

ふと視線を感じると、シェーミイがいた。

 

「また、女の人。オトしたの?」

ジト目のシェーミイ。何て事言いやがる!

「誤解だ!」

はいはい、と席に着くシェーミイ。昨日の大酒を、微塵も感じさせない雰囲気だ。

階段から、グランさんとレンディアが降りてくるのが見えた。カリエラさんの姿はない。

まだ、ダウン状態何だろうな……。

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