邪神の子 ~赤き瞳のクレイドル~   作:末末

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第76話 改めて討伐報告 そして新たな縁

 

 

村に早く戻れそうだ。“碧水の翼(へきすいのつばさ)”は、相手が大物だと速攻戦に入るのは、ジャンさん達に似ているな──連携の取り方も、何となく似ている。作戦は速決で決まり、素早い行動。

ランク上げ、頑張らなければ……。

 

森を抜けると、村が見えてきた。何となく賑わっている雰囲気だ──村長が出迎えに来てくれているのだが……。

「ん? 村長の隣にいる、武装した人……もしかして?」

先頭を行く、シェーミイがいう。武装した人? どこか衛兵っぽくないが……。

「ウォルキース卿、なのか?」

訝しげにいうグランさん。領民思いの、熱血漢というイメージが付いているんだよな……ウォルキース卿には。

 

そのまま家に迎え入れられ、改めての討伐報告をする。

「これが、討伐証明の歯と爪です」

レンディアが、村長にトロルの部位証明を見せる。間近に見ると、なかなかでかいんだよな。重さも結構ある。

 

「おお……これが。しかし皆様方、怪我も無いようで何よりです」

ウィルギアさんが、優しく微笑む。

「むう。これが、トロルの……」

鎧を着込んだ偉丈夫が、まじまじとトロルの歯と爪を見つめている。

この人が、ウォルキース卿か。グランさんとはまた違ったタイプの、武人肌の人だな。

確か、歳は二十歳少しだっけか。武骨な雰囲気を持つ人だ。濃い金髪。逞しい顎に、なかなか立派なモミアゲ。ハンサムってやつだ……ハンサムにモミアゲは付き物だからな。

 

「君達がウォーキンス子爵。父上の領内の問題を解決してくれたのか……感謝する」

ウォルキース卿が頭を下げようとするのを、レンディアが止める。

「あ~、貴族がこういう場で頭を下げるのは、駄目よ」

「む、君は……?」

「私は、レンディア・グレイオウル。ロウディス伯の次女なのよ。初めまして、ウォルキース・ハウルメイス卿」

目を見開く、ウォルキース卿。村長も驚いている。

 

レンディアの父上のロウディス伯は、ウォーキンス子爵の、兄貴分に当たるという。領内経営を互いに補佐する関係──この立場は、かなり大きい意味を持つ。

互いの、後見人にも似た関係性になるのだ。どちらかに、不祥事有れば、即座に連座──そういう関係性。

“兄弟分。血よりも濃し”と言われる、帝国独特の貴族同士の繋がりだ。

 

「ロウディス伯と言えば暁の四伯……」

「あっあ~、駄目よ。それ以上は」

何か言いかけたウォルキース卿に、レンディアが口止めをする。貴族同士の、なにか何だろうな。

「む、済まない……それより、この村を守ってくれた事には、感謝したい。謝礼は──」

「それは必要ないわよ。ギルドから報酬出るから」

レンディアと、ウォルキース卿とのやり取りに、俺達は口を挟まない。貴族同士の交流だろうしな。

 

「ならば、私が出来る事は……村長、何かあるだろうか?」

「そうですな……レンディア様達を、御屋敷に招待なさってはいかがでしょう?」

村長が何気に、面倒そうな事を言った。悪気は無いんだろうが……。

 

依頼主のウォルキース卿と、村長ウィルギアさんに討伐依頼書にサインを貰う。これにて依頼完了──

「少し早いですが、お昼にしませんか?」

ウィルギアさんが、言った。

「ええ、頂きますわ」

にこり、と微笑むレンディア。お嬢様然としてるなあ……。

 

「レンディア嬢達、領を守ってくれた礼を改めてしたい。夕食には来てくれるのだな?」

「ええ、お招きに預かります」

ウォルキース卿に、レンディア嬢が答える。

公式の会食でもないので、畏まった服装や礼儀は無用、との事だったので、夕食に招かれる事になった。

 

次いで、という訳ではないが、カリエラさんとネルソンさんも招待された。

カリエラさんは、ウォルキース卿と商売の伝手が出来る可能性があると、息巻いていた。ネルソンさんは、畏れ多いと、断った……俺も断りたいよ。

 

ウォルキース卿は、夕食の準備を家人に指示するために、屋敷に急ぎ戻って行った。

「慌ただしい事ねえ……」

レンディアがいう。ぎこちなく、村長宅を飛び出して行ったウォルキース卿──何ぞ?

 

取り合えず、宿に戻り着替える。当然、その前に“浄化”だ──誰言うともなく、風呂が面倒だと言い出したので、自分を含めて皆を“浄化”した。

 

村長宅での昼食。村長の奥さん、ケイナさんが給仕をしてくれた。

「たくさんありますから、たっぷり食べて下さいね。酢漬け野菜、なかなかいい出来ですよ」

山菜と鶏肉たっぷりのシチューに、丸パン。酢漬け野菜。シンプルな料理だが、満足の品揃え──うん、美味い。

 

夕刻までの時間は充分ある。昼食後はウィルギアさんの家で、のんびりとお茶の時間──レンディアが、ウィルギアさんにトロルの歯と爪の一部を、贈呈した。

「まあ、何かの見世物になるかもね」

とは、レンディアの言い分。トロル退治の証明は、すでに済んでいる。

残りの歯と爪はギルドに納めればよし、だ──トロル素材は、練金術や魔術の触媒になるという。

「おお……記念に取って置きます」

嬉しそうに、ウィルギアさんがいう。

 

夕食前には、ウォルキース卿が迎えの馬車を寄越すと言っていた。まだ時間はあるな……。

 

「そんちょー、トロル退治の話、ききたーい」

「ききたーい」

ウィルギアさんの家に、子供達が集まって来た……何ぞ?

「トロル討伐の事を、村の連中に少し、話したのですが……」

申し訳なさそうにいうウィルギアさん。暗に、トロル退治の話を子供達に話して欲しい、と思っている風に見える。

なかなか、強かな村長さんだな──善意なんだろうが、正直面倒くさい……まあ、これも縁というやつか。

 

「はいはーい。トロル退治の話、聞きたい人集まってー」

シェーミイが子供達を集める。村長宅の周囲の家々の子供達だろうか。十名と少し。親らしき人も数名いる。

集まった子供達に、手早く干し果物を配るシェーミイ。

「ちゃんと、皆に配ってねー。じゃあ、トロル退治の話、聞きたい人ー」

「「はーい!!」」と、子供達が良い返事をする。子供の扱い慣れているな……。

 

身振り手振りを交え、シェーミイがトロル戦を面白可笑しく、話す。

刺激的な部分は、多少脚色して──結果。面白可笑しく、かつ少々刺激的な内容で話は終わった。

 

村長ウィルギアさんとケイナさんが、礼を言ってきた。トロル退治の顛末は、しばらく語り草になるだろうと……最も、こちらに被害が出なかったからこその物語だ。

 

アルパソの村を見て回る。活気溢れる村だ。人口、二千三百人ほどで中規模か……前世はどうだったろうか?

まあ、ともかく。露店商も出ているし、商人や旅人が行き交っている。

市場の中を衛兵達が巡回しているが、それを見て身構える民達はいない。

つまり、衛兵が威張らず民の中に溶け込んでいるという事だろう……覇王公の威光が、今だ健在という事なのだろうな……。

 

レンディア達と商店街を、あちこち見て回る。

雑貨屋に、食べ物屋の屋台。賑わいは、小規模の街といった感じだ──うん。この賑わいは嫌いじゃない。

 

一回りしたところで、宿に戻る。迎えが来るまで、一休みしとくか……。






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