邪神の子 ~赤き瞳のクレイドル~   作:末末

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第8話 一ヶ月の初級訓練 受けない手はない

ダルガンさんの説明を聞く。初級訓練の期間は一ヶ月。週に銀貨五枚が支給され、衣食住はタダであり、各教官から身に付けたい技術を学ぶ事ができるという……いや、マジか。いうならば、専門学校のようなものじゃないか。一ヶ月を短いと思うかどうか、だが……。

 

「本来なら初級訓練ってのは、何人か希望者が集まってから、まとめてやるもんだが、今のとこおめえさんしかいねえ。ある意味、運がいいぜ」

「と、いいますと?」

「うん、それはなあ……」

ダルガンさん曰く、城塞都市という場所柄、様々なタイプの冒険者達が集まるそうで、前衛にしても、攻撃役。盾役。その両方勤める事の出来る冒険者。腕のいい斥候。優れた治癒士に、魔術士。剣の腕だけでなく、魔術にも優れた剣士。

「つまり、ここを拠点にしているベテラン連中は多いってこった。その質は、帝都にも引けはとらねえよ。これがどういう事かというとだな、そのベテラン連中に訓練教官を頼めるって事だ」

ニヤリと笑うダルガンさん。それでな、と言葉を続ける。

「要するに、だ。腕利き連中に鍛えてもらえるってこった。選り取りみどりだぜ」

「……でも、そのベテランの人達の時間を拘束する事になりませんかね」

「まあな。だが、教官代として多少の銭は出すし、それに断らせねえよ。俺が直接、冒険者としてのノウハウを教え込んだ奴等が何人もいるからよ」

おおう……何とも頼もしい言葉だ。それだと、一ヶ月で足りるだろうか? 冒険者としての自分の方向性を考える必要があるかもなあ……。

 

ギルドの訓練場から少し離れた場所にある宿舎に案内された。歴史を感じさせる堅牢な石造り。

「男女別で、造りは同じ。二棟ともに、十人の相部屋だ。おめえさん一人だから、かなり寂しくなるだろうな。とはいっても、後から新入りが来て、共同になるかもしれねえがな」

なるほどな。ここが、今日から俺の生活拠点になる訳か……衣食住付きってのが大きい。邪神から持たされた資金は充分とはいえ、やはり金を得られるのは、精神衛生的に嬉しい事だ……。

 

「じゃあ、決まりだな? 初級訓練を受けるってのは?」

「はい。よろしくお願いします」

「ベテラン連中、張り切ると思うぜ。新人が一向に来ない。もし来たら、是非とも初級訓練を受けさせてくれって言ってたからなあ……本当に運がいいぜ?」

ダルガンさんが嬉しそうに言った。

 

宿舎に案内され、荷物を置く。その後ギルド内に戻り、たむろしている冒険者の方々に紹介される運びになった。

喧騒がまたしても止んだ。だがそれは一瞬だった。軽い自己紹介のあとは、酒場に移動して、飲めや歌えやのドンチャン騒ぎになった。解せぬ。

獣人受付嬢二人が両サイドに付き、こちらに杯を持って来る冒険者を牽制、もしくは威嚇するのは、止めていただきたかった。先輩方達との交流を邪魔しないでもらいたいのだが……。

 

もう自分とは何も関わりのない飲み会になる頃には、ダルガンさんに連れ出され、宿舎に送ってもらった。

「まあ、今日はゆっくりと休みな。訓練についての事は、明日詳しく説明するからよ」

ダルガンさんは手を振りながら、ギルド内に戻って行った。

荷物を置いたベッド側、小さなサイドテーブルと椅子と、三段の引き出しのタンス。こじんまりとした、私室という感じだ。

ベッドの間には、最小限の個人スペースを確保するかのように、仕切りが設置されている。

 

今日は色々あったもんだ。靴を脱ぎ、ベッドに横たわる。枕。シーツ。足元に畳まれている毛布は、使い込まれている様子だが、清潔感がある。

毎日、洗濯して取り換えているんだろう……。

目を閉じると、一気に睡魔がやって来た──

 

 

「やあ、パパだよ~まあまあ、色んな事があった日だったねえ~どう? この世界に慣れた?」

貴族らしい豪奢な部屋。だが、決して悪趣味ではない。銀縁の白いテーブルを挟んで、再び邪神と顔合わせ。

というか、パパ呼びは決定なのか……相変わらずの美貌。何故か浴衣姿。白を基調とした浴衣で、その柄は、赤と黒の金魚が散り散りに彩られている。朱色の帯が目を引いた。

襟元から覗く白磁の肌が、艶かしい……なんか腹立つな。コイツ……。

 

「いや、まあ……う~ん。これからってとこだと、思います」

「そ~だね~。今のとこ、大した事起こってないからねえ~でも、あの熊食いダルガンデスに気に入られたってのは、面白いかな~」

く、熊食い?! 何だ、その異名!

「城塞都市かあ~なかなかいいとこだとおもうよ~近々、姉上のお気に入りが来るから~その子と仲良くしてね~必ず、君の助けになるからね~」

くすくすと、楽しそうに笑い、邪神が言う。

「助けになる?……どういう人、ですか?」

邪神が、身を乗り出して来た。こちらの目を覗き込んでくる。凄絶な笑顔。同時に威圧感が漂ってきた……。

「その気になったら、神々に杖を向けられるほどの魔導士。公平にして混沌。自由にして秩序。んっふふっふ。脅かすつもりはないよ~まあ、その子は~きっと君を気に入るとおもうよ~さてと、今日はお休み……我が子よ」

邪神が、そっと頬を撫でてきた……。

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