邪神の子 ~赤き瞳のクレイドル~   作:末末

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幕間 グランドヒルの新人達④ 冒険者証更新

 

 

ジャンさん達は、まだ戻ってない。なんでも、遠方にある古代遺跡の、調査隊の護衛依頼を受けているそうだ。

今は昼食の時間。ダルガンさんと、マーカスさん。そして私達。賑やかな食卓は楽しい。

鶏肉と白菜の炒め物。豆とトマトのスープに丸パン。何時もの酢漬け野菜。今日は玉葱だ──豆の甘みと、トマトの酸味が出汁の効いたスープと合う……美味しい。

 

昼食後の一休み。お茶を飲みながら、ダルガンさん達との会話。色々と為になる……。

 

「後から初級訓練、受ける事は出来るんですか?」

ジョシュが、ダルガンさんに尋ねる。

「う~ん。そうだな、そいつらのやる気と性根次第だな」

「何らかの課題を出すな。例えば、基本の常設依頼か採取、採掘依頼を一週間続ける、とかな」

ダルガンさんとマーカスさんが答える。

「それで、嫌な顔したら……一発で、拒否だ」

ダルガンさんが、お茶を美味しそうに啜る。

なるほど。やっぱり厳しいんだな……。

 

 

「お前達も、なかなか様になってきたな。採取、採掘や、少数の討伐依頼をそつなくこなしている……ダルガン、そろそろいいんじゃないか?」

「よし……そうだな。リーネ、お前ら休憩済んだら、俺の部屋に来な」

お茶を飲み干し、ダルガンさんが席を立った。

 

「あの……何の話、でしょうか?」

シェリナが不安そうにいう。ジョシュも不安げだ……。

「まあ、悪い話じゃねえよ」

マーカスさんが、豪気に笑った。

 

休憩が終わり、早速、ダルガンさんの所に向かう事にする。

「おう。冒険者証、持ってけよ」

テーブルの上を片しながら、マーカスさんがいう。

 

 

ギルドマスターの部屋に案内してくれたのは、受付嬢のサイミアさん。青い瞳をした、しなやかな体付きの猫族の女性。スカートではなく、ズボン。

「皆さん、来た頃に比べて、だいぶ逞しくなりましたね」

優しく微笑む、サイミアさん。自分達では分からないけれど、そうなのかな?

「え、あ、はい! ありがとう、ございます!」

ジョシュが、顔を赤くする。

「何、照れてるのよ」

シェリナが、からかうように笑った。

 

「ギルドマスター、リーネさん達をお連れしました」

心地良い響きの、サイミアさんの声。

「おう、入れや」

威圧感と同時に、頼もしさを感じさせる、ダルガンさんの声。

 

ダルガンさんは、お茶の準備をしていた。

「まあ、座れ。マーカスほどじゃねえが、それなりの茶を淹れる事は、出来るぜ」

背を向けながら、ダルガンさんが言う。

さ、どうぞ、とサイミアさんに席を勧められ、少し堅めのソファに座る。このソファ、落ち着くのよね……。

 

「まあ、一服しながら聞きな」

ダルガンさんが、お茶を勧めてくる。砂糖まぶしの焼き菓子も一緒だ。

パリ、とダルガンさんが焼き菓子を含む。

それを見て、私達もお茶を手に取る。

「そのまま聞けや。おめえらが、初心者訓練を受けて、もう一ヶ月近い。少し早いが、今日から冒険者として登録だ。ジャン達の推薦もあるしな」

という事は、私達は今日をもって正式に、冒険者になったんだ……実感が、湧かない。

「まあ、そういう訳だ。おめえら、今日から初級のEランクって事だ」

初級訓練を達成したなら、Eから始まるのが通例と聞いていたけど……。

「今日から、冒険者としての第一歩だ……祝いがあるから夕方は空けとけ。あと、祝いの品があるからな」

ダルガンさんが、嬉しそうにいう……今日から正式な冒険者……うん、地に足付けないと。

 

サイミアさんが書類手続きを終え、改めて冒険者証を私達に渡してくれた……頑丈な木枠の鉄製のカード。名前、等級(初級・Eランク)が刻まれた冒険者証。名前の横に、羽根の印。初心者訓練を受けた、証明だそうだ──何だろうか、嬉しさと緊張が一緒になったような、妙な気持ちになってきた……でも、けして嫌な気分じゃない……。

 

シェリナとジョシュも、嬉しそうで恥ずかしそうな、妙な表情をしている。私もそうなのかな?

 

「ま、ジャン達から教えられた事を大事にな──無謀の代償は死──心しろよ」

ダルガンさんが、微笑みながら言う。

「……はい」

私達は、ダルガンさんの顔を見て、はっきりと答えた。

 

 

夕方までは自由行動となった。ダルガンさんの、『祝いの品は、楽しみにしてな』との言葉が嬉かった。お祝いは、“トロルの戦鎚”という、宿と食堂を兼ねる所でやるそうだ。

「そう言えば、宿舎以外でご飯食べた事、なかったよね」

シェリナがいう。そういえばそうだ。三食はいつもギルド内だっけ。

「俺は何度か、鶏源亭でそばを食べた事あるよ」

ジョシュがいう。鶏源亭って、城塞都市ではかなり有名なお店なのよね……というか。

「え。何で誘わなかったの?」

思わず、言っていた。先輩冒険者達から、城塞都市の美味しいお店を色々教えて貰っていた。 小腹を満たすなら鶏源亭よ、と。

 

「分かったよ、俺の奢りだ。鶏そばを食べに行くか」

ジョシュが、肩を竦める。

「んふふ~、楽しみね」

シェリナが嬉しそうにいう。まあ、私も楽しみ何だけど。

「今は、辛味葱鶏そばかなあ。ピリ辛で美味いんだ。辛味葱が美味くてな、辛さだけでなくて──」

普段、口数少ないジョシュが、いかにも美味しそうに、そばの説明を始めようとする。

「あ~、もういいから、早く行くわよ」

ジョシュの背を押す、シェリナ。

「分かったよ。押すなって」

大柄のジョシュが、シェリナに押され、進んで行く。

 

まあ、今は初の鶏源亭を楽しみにしましょうか。夕方のお祝い事も、楽しみね……。

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