邪神の子 ~赤き瞳のクレイドル~   作:末末

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第87話 黒壁回廊 小部屋巡りとラミナ草採取

 

 

鉄枠で補強された変哲の無い扉。最も、不自然さを感じるほどに新しいが──

「生命探知と魔力探知をしたが、魔力探知にしか反応しなかった。反応は四だ。レンディア、再確認頼む」

「扉には、鍵も罠もなーし。中にいるのが何なのか、目安付けないとねー」

グランさんとシェーミイの意見。慎重になる事は悪くない──「ん」レンディアが、扉に手を置く。

「確かに。四つの魔力反応しかしないわよ……だったら、霊体系か魔法生物ね」

レンディアが、俺達を振り返る。顔に、入るでしょう? と書いてある。

「無論。宝箱の可能性有るんだよな?」

グランさんが、楽しそうにいう。暗黒騎士とはいえ、冒険者だな。

「じゃ、扉開けるよー。静かにねー」

シェーミイが、ポーチから茶色の布を出し、取っ手に巻き付け、ゆっくり捻る──微かな金属音一つしない──肩を押し付け、扉を開く。

最後まで、物音一つしなかった。さすがだな。

 

部屋は、学校の教室を一回りほど大きくした感じか。仄かに明るく、視界確保は充分だ。さて──あれは鬼火か? 仄かに、明るく輝く火の玉四つ……いや待てよ、確か屍鬼火だっけか? 鬼火と区別がつきにくいというのは……。

「鬼火、四つだな。屍鬼火だったら、独特の腐敗臭がする……私が散らそう」

声低く、グランさんがニヤリと笑う。

「ん。任せるわよ」

レンディアが、微笑む。

 

グランは、ブロードソードを引っ提げ、揺らめく鬼火の元へ歩んで行く。

ようやく、鬼火が気付いたが──遅かった。

間合いに入ったグランが、四つの鬼火に斬りかかり、一息で、二つの鬼火を斬った。

風に吹き散る煙りの様に、瞬く間に鬼火が散った。散る様を見もせず、グランは踏み込み、近くの鬼火に、カイトシールドを叩き突け、弾き飛ばす。霊体にも関わらず、肉体を持っているかの様に転がって行く鬼火。

残る鬼火が、急に膨れ上がり、倍以上の大きさに広がった。

今までの緩慢な動きからは、予想もつかない速い動きを見せ、グランを押し包む──瞬間、鬼火が弾け散った。

何事も無かったかの様に、グランは残った鬼火の元に向かって行く……。

 

 

「ふん。さすが暗黒騎士。低級アンデッド何て、物の数じゃないわね」

「油断する事は無いが、あの程度ではな」

レンディアとグランさんの会話。大いなる父君の加護は、伊達ではないという事か。

 

シェーミイは、いつの間にか出現していた小さめの宝箱を調べている。俺はその間、鬼火の落とした魔石を回収する……何属性なのかは、俺には良く分からん。

「罠解除、かんりょー」

シェーミイの声。レンディアとグランさんが、どれどれと、やって来た。

よいしょ、とシェーミイが宝箱を開ける。

 

宝箱は、変哲もない木箱。中に仕切りは無く、無造作に物が入っている。小袋二つに、瓶二つ。

「ふん。手を付けないで、ラザロさんのとこに持っていきましょうよ」

「はーい」

シェーミイが、回収袋に丁寧に納める。レンディアが、小部屋内を見回す。

「ラミナ草、見当たらないわね……ま、いいわ。まだ先はあるから」

伸びをするレンディア。剣を拭うグランさん。

「先に進もうか。まずは、第一目標だ」

対悪魔の経験を積むのもいいが、やはり依頼優先だ。

「そうね、クレイドル。さあ、行きましょうよ。焦る必要はないからね」

レンディアを先頭に、小部屋から出る。

 

 

再び、回廊を進む。最初に感じた圧迫感は、感じなくなっていた。先導は、グランさんとシェーミイ。間を置いて、レンディアと俺。

さて、今は六階。最下層は十階だっけか……。

「レンディア、ここを踏破するのか?」

改めて、尋ねる。ん~、とレンディア。

「いいえ。あくまで、ラミナ草の採取が目標よ」

再び、シェーミイがこちらに手を振っているのが見えた。また、小部屋だろうか?

 

回廊の左右の壁に扉。部屋二つ、か。

「レンディア、右の部屋だが、悪魔の気配だ。間違いない。とはいっても、小物の気配だ。恐らく、インプだろうな」

グランさんが、右の扉を見つめながら言う。ちなみに、左は反応無しの、空き部屋。シェーミイが、中を確認済みだそうだ。ラミナ草は無かったらしい。

 

「じゃあ、開けるよー。静かにねー」

さっきやった様に、茶色の布を取っ手巻き付け、扉を無音で開く……鬼火のいた小部屋と、同じ広さ。中にいるのは──お、異世界知識発動──小魔(デーモンインプ)。下級悪魔の代表格。悪魔としての驚異は低め。火矢の魔術と素早い動きが特徴。微々たる魔力耐性有り──シンプルな知識だな。それだけ危険性は低いという事か? まあ油断はしないが。

 

中にいたのは……粘土の様な肌色と、のっぺりとした質感の、百センチ足らずの小人ならぬ小鬼という感じの生物がいた。四体。尖った耳をした、にやけ面の猿という顔付きをしている──よし、殺そう……。

 

「あれ? クレイドル?」「おい、クレイドル?」「あー、クレイドル? ねえ?」

 

背を向けているインプを、背後から袈裟斬りに切り捨てる。その横にいたインプの首を、跳ね飛ばす──隙だらけだな、おい。悪魔は〈あっはははっ! こんな下っ端をいくら殺しても、“それ”は、中々成長しないだろうけどねえっ! んんっふふふっ!!〉殺せる時に殺せ、だ──残る二体。俺から距離を取り、手のひらに火、火球らしき物を乗せている──火矢か。

二体に矢が突き立つ。シェーミイの放った矢だ。上手いな、シェーミイ。

怯むインプの手から、火が消える。止めには、やはり──剣だ。

踏み込み、剣を振る。二体のインプが膝から崩れ落ちた……よし。インプ、殲滅。

 

「色々言いたいことあるけど……うん。クレイドル?」

レンディアの説教が始まるな……まあ、いい。うん──やれやれだぜ……。

 

「インプ、四体。即座に仕留められると確認したので飛び込んだ……という事ね? クレイドル」

はい、そうですとしか云えない……。

「シェーミイの補佐があったとはいえ、十秒足らずで四体を始末か……」

呆れとも、感心ともつかない感じのグランさん。

「ねー、インプだったからいいけど、あれ以上の悪魔にはさー、さすがにまずいよー?」

こっちは、完全に呆れているシェーミイ。

「今後、気を付けます……」

いかんなあ、いかん。我を忘れた訳じゃないんだけどなあ……反省だ……というか、邪神の声が聞こえていた気がする。何と言ってたっけか?

 

インプから魔石を回収。単純な魔力属性だそうだ。それから、インプの目は魔術の触媒、錬金術の素材になるとの事で、レンディアがくりぬいていた……。

そして、部屋の片隅にラミナ草がひっそりと、群生していた。白色の葉と花。実物は、清楚というか可憐な雰囲気をしている……実際は、えげつないが。

「みーけっ。結構生えてるねー、私が採取するよ」

「丁寧にね。葉の汁に気を付けてよ」

はいはーい、とシェーミイが解体ツールを取り出す。

さて、どれほど採取出来るかな。

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