「コ~きゅ~ん♡」
別に特段高くもなく、ごくごく普通の男の声(言い方はキモい)が、アンサリヴァン騎竜学院の上級課程、「シニオス」の学生寮である、アポロ舎の一室に響いた。
コー君と呼ばれた男は着替えの途中であったが、その男はお構いなしに部屋に入っていく。因みに、鍵は掛かったままだ。
「親しき仲にも礼儀有りと言う言葉を聞いたことは無いのか?」
この部屋の住人、コーラル・フォークロードは朝早くからの無礼な来訪者に、少々ご機嫌斜めである。
「え~?僕とコ~きゅんの仲なのに礼儀なんて要らないYO!!」
なぜかラップ調の少年はアンサリヴァン騎竜学院の歴史の中でコーラルと並んで歴代最悪の問題児、ウィンゲル・クランザである。
「朝からテンションの高い奴だ…」
「まあね☆なんてったって、今日から僕らはシニオスだしね!」
「まあ…そうだな…」
「んで、コーラルはパルは見つけた?」
「いや、パルはまだいない…まあ、そろそろどうでもよくなりつつあるがな…」
そう、ウィンゲルが問題児なのはだいたい口調などから予想はつくが、見た目優等生のコーラルが問題児だとは初対面の人ではまったくわからないほどである。その理由が、パル-つまり相棒であるドラゴンがいないことである。
「同じ学年にもう一人パルがいない奴が居るらしいし…どうなってるんだろうね?」
「俺に聞かれても知らん…それより、時間だ…行くぞ」
「アイアイサー!」
ーーーーーーーー
「コーラルはさ、アリエスの騎竜祭には出るの?」
学院に着いて早々に、ウィンゲルが口を開いた。
「パルのいない俺がどうやって騎竜祭に出るんだ…」
「いや、コーラルは自分で飛べるじゃん」
「それはそうだが…アリエスの騎竜祭は地竜のレースと言っても過言じゃあない。つまり飛んだら反則だろ」
「じゃあ走れば?」
「出ないという選択肢は無いのか?」
コーラルは、呆れた様子でウィンゲルとの会話を打ち切った。
ウィンゲルの言うとおり、コーラルはパルがいない代わりに身体能力がずば抜けて高く、それこそ竜と対峙したとしても打ち負かしてしまうほどである。さらに自らの魔法も持ち合わせており、シニオスの下のクラスである基礎課程、「ユニオス」の時には、現アンサリヴァン騎竜学院生徒会長、レベッカ・ランドールの従える聖竜クー・フリンを一撃で地に落とすという怪物っぷりを見せたこともある。(そのせいで問題児扱いされるようになったのだが)
講義を受ける教室は、さながら議事堂のように広く、ユニオスの狭っ苦しい教室とは大違いの部屋であった。
「うっひょー!!広いねー!!よし!」
「あ?どうした?」
「コーラル君、問題です!新学期の一発目と言えば!?」
「は?………自己紹介か?」
「ぶー!!正解は…ナンパでした!!」
「とりあえず死ねよ…思いっきり女子が引いてるじゃねえか…」
「ふっ…ボクの美貌におそれをなs「右ストレート」ぶげらっ!!」
教室の端から端まで吹き飛ぶ人の体のようなものは風に吹かれて飛んでいく花びらのようで儚く散って「まだ生きてるよ!!」逝かなかったようだ、非常に残念である。
「なんかものすごい侮辱されたような気がする…」 「いつものことだろ」
二人が話していると、背後から凛々しい女性の怒声が聞こえた。
「そこの問題児二人!!通行の邪魔になるのがわからないのか!!」
「「あ?なんか文句でも?」」
その日、その教室にいた全ての生徒が凍りついた。
〈蒼氷の姫君(アイスブループリンセス)〉の異名をもつ、シルヴィア・ロートレアモン王女だけなら無視すれば良かったものの、声をかけた相手が悪かった。その日、シニオスに、問題児二人の名が、再び轟いた。
〈完全なる異常者(パーフェクト・クレイジー)〉、ウィンゲル・クランザ。
そして、〈竜騎の具現(ドラグーン・フェイカー)〉、コーラル・フォークロード。
彼らの行く末には、どのような出来事が待ち受けているのだろうか…