「ぐっもーにん、みすたーこーらるぅ!!」
いつも通り聞こえてきたその聞き慣れた声に、コーラルはうんざりしながら応えた。
「ん、ふぁ…眠い…とりあえず死ね」
「ひどっ!!それが親友への挨拶のつもり!?酷いですよねえレベッカさん!!」
「そうだな…まあ、君には相応しいと思うが」
「ですよね…所詮はウィンゲルだかr………は?レベッカさん?」
「そうだが、まさか忘れたわけじゃあないだろうな」
「なんで俺の部屋にいるんだ…」
「なんでと言われても…ウィンゲルに合い鍵を渡したのは私だぞ?」
「人の部屋の合い鍵をなんで無断で渡すんですか…」
「そのほうが面白いからな」
「なんでコイツ生徒会長になったんだろう…」
「まあまあ!!そんなことはさて置き!!」
「因みに一番悪いのはお前だからな」
「気にしない気にしない!!そんなことより!!コーラルの騎竜祭への参加が認められました~!!どんどんぱふぱふ~」
「頼んでねぇ…」
「まあまあ、良いじゃないか…それにしても、竜に乗らずにレースに出る竜騎士など、前代未聞で面白そうだからな」
「それもはや竜騎士って呼ぶのか?」
「細かいことは気にしない!!とりあえず準備しといてね~」
ウィンゲルは言いたいことだけを言って、どこかに走り去って行った。
「…まあ、彼なりの厚意だろう…受け取ってやれ…私は生徒会の仕事があるのでもう行くが、レースは期待しているぞ」
不法侵入の真犯人であるレベッカも、颯爽と去って行き、部屋にはコーラルだけが残された。
「………いや、だから出るって言ってねえよ…」
外では花火が上がり、街が活気に満ちているのが見えた。アリエスの騎竜祭は間もなく始まる……
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「いや、明らかに俺浮いてるだろ…」
多くの参加者の中でただ一人、竜に跨がっていない竜騎士、コーラルは一人呟いた。
まわりの参加者達はそれぞれ好奇、軽蔑、憐れみなど独自の見方でコーラルを見ていた。が、コーラルは気にとめていなかった。面倒くさいからである。
(だいたいなんで竜と一緒に人が走るのを許可するんだよ…あの生徒会長の考えることはよくわからん…)
一人で考え事をしていると、いつの間にかレースの開始時刻だった。
辺りを見渡してみると、シルヴィアと目があった。先日の事があったので、直ぐに目を逸らされてしまった。
(完全にゴミ以下だな…俺…)
ため息をつきながら観客席らしきほうを向くと、大きな文字で〈コーラルガンバ!!〉と書かれた横断幕のような物を見つけた。
(………見なかったことにしよう……)
「位置について!!」
その声に気づいたコーラルは、視線を前に戻した。
「用意…」
バン!!という銃声と共に、地竜達が一斉に駆け出した。コーラルもまた、走り出した…とはいかず、グラウンドを一周してくる竜達に道を開けるように横に避けた。
竜達がグラウンドからとびだして行った後、コーラルはゆっくりと呪文を唱え始めた。
コーラルは、通常の竜騎士が使う竜媒魔法〈オラクル〉とはまた別のみならず魔法を使っている。それが、コーラルの力の源である…
「竜化魔法…ジ・オラクル」
そう唱えた瞬間、コーラルの体に見て取れる変化が起こった。角が生え、翼が現れ尻尾も伸びている…あの実習の時と同じような黒い鱗を纏った、まさしく〈竜化〉状態のコーラルが、そこにはいた。
それを見ていた誰もが言葉を失い、唯一レベッカだけが「やはりいつ見ても凄いな…」と感想を述べ、ウィンゲルは未だに大声で応援していた。その応援に少しだけ手を挙げると、コーラルは対の黒い翼で、グラウンドを一周し、市街の方へと飛んでいったのだった………
「よくよく考えれば走ってねぇが…ま、良いか…」
レースは始まったばかりである………