令和に復活!仮面ライダーダルダ a girl blooms 作:ぽかんむ
第1話 復活!超変身ダルダ!
夕方。ほんのりと赤くなった空。セミがけたたましく鳴いている。人気の少ない住宅街。そこを二人の少女が歩いている。彼女達の正面に、何かが飛来してきた。怪人だ。コオロギのような見た目のそれが言う。
「貴様はもう逃げられない。おとなしく渡してもらおうか」
「キャー!!」
少女は同級生の手を取ると、走って逃げた。それを追う怪人。途中で、少女は友達とはぐれてしまう。怪人の目的は少女である。引き続き追う。そして彼女は行き止まりに追い込まれた。怪人が言う。
「もう逃げられんぞ」
絶体絶命のはずの彼女は、にやけながら呟いた。
「あんたがね。変身!」
彼女がスカートのポケットに手を突っ込む。そこから青い輝石を取り出した。それを右手で強く掴むと、腕を交差させて前に突き出す。少女の全身が白く光った。そして反時計回りに腕を回す。すると姿が変わった。彼女が叫ぶ。
「私は咲く! 仮面ライダーダルダ!」
白いアーマーに身を包んでいる戦士・ダルダ。怪人に一瞬で迫り寄ると、連続パンチで怯ませる。怪人が右手より光弾を射出。ダルダはそれを蹴り飛ばして、敵に直撃させた。白の眩い光に包まれたダルダが跳躍。そしてミサイルのように敵へ突撃する。
「ブルーミングシュート!」
掛け声とともに放たれた必殺の飛び蹴りが、怪人を貫いた。怪人は爆破四散。それをバックにダルダは変身を解除する。
「ほんとしつこいんだから。反撃の球魂は絶対に渡してやらない!」
怪人はそれ以前にも数度、彼女を襲っている。しかしその度に撃退されていた。そしてこの件をもって、怪人はしばし現れなくなる。なぜ彼女は仮面ライダーダルダとして戦うことになったのか。その答えは一ヶ月前に遡る。
七月二日。晴れ。城南小学校、五年三組の教室。少女が給食を食べている。彼女の名前は立花リカ。髪型はツインテール。オレンジ色のワンピースを身に付け、白いパーカーを羽織っている。
正面、斜め右、右横ではクラスメートが同じく食事を楽しんでいた。右横の少女が熱弁している。メガネをかけ、これまたオレンジ色のワンピースを着ていた。彼女の名前は滝洋子。リカの友達の一人である。
「魔法は無から有を生み出す究極のサステナブルなの! だから魔法を使えれば世の中はさらによくなると思います! 報告終了!」
リカが反応する。
「あ……うん……おつかれさま……」
「あぁ……本当に魔法が実在したらいいのになぁ……」
「なに? ハリー・ポッターでも見たの?」
「違うよ、マジレンジャーだよ! 面白い魔法が沢山出てくるんだよ!例えばね……」
「そういえば宿題やった? 五時間目のやつ」
「宿題……? あっ! 忘れてた!」
洋子は急いで給食を食べ終えた。それから宿題に取り組んだ。食べながら、その様子を眺めるリカ。彼女の口元は笑みを浮かべている。このまま幸せな日々が毎日続いて欲しい。リカはぼんやりとそう思った。
放課後。帰り道を歩くリカと洋子。他愛のない会話に興じていた。そこへ自転車に乗った女性がやって来る。立花レイ。リカの母親だ。髪型はショートボブ。ベージュのシャツに緑のスカートを履いており、その上から赤いエプロンを身に付けている。自転車の荷台には花が載っていた。リカが彼女を呼ぶ。
「お母さん! ただいま!」
それにレイが反応した。
「あら、リカ、それに洋子ちゃん、おかえりなさい」
レイが二人とすれ違う。その後すぐ、リカの背後でガシャンと言う音が鳴った。振り返るリカと洋子。レイが自転車ごと倒れている。その右横には蜘蛛のような姿の怪人がいた。怪人がレイを突き飛ばしたのだ。逃げ出す洋子。リカは母の元に駆け寄る。
「大丈夫? お母さん」
「どうして近づいたの!? あなたは逃げなさい!」
「だって……」
蜘蛛怪人が言う。
「貴様の持つ反撃の球魂を寄越せ!」
レイが返答した。
「ダメよ! この世界は滅ぼさせない!」
彼女がリカと向き合って言う。
「いーい? あなただけでも逃げて」
「え?」
レイは青い輝石を取り出した。それを握る。瞬間、彼女は白い異形の姿にその身を変えた。蜘蛛怪人が反応を示す。
「ダルダ……六年ぶりだな」
「因縁もこれで終わりよ」
ダルダが駆け出す。勢いを乗せたパンチを繰り出した。それを跳んで避ける怪人。怪人が彼女の背後に回る。口から糸を吐き出し、彼女を拘束した。怪人は腕からも糸を生成。それを鞭のように振り回す。
何度も鞭で叩きつけられたダルダ。変身が解除されて倒れる。彼女の体から、青い輝石が落ちた。石の転がった先はリカの足元。リカが輝石を拾う。瞬間、輝石の使い方が彼女の脳裏に伝達された。レイが叫ぶ。
「リカ! 逃げて!」
蜘蛛怪人がリカに近づく。それから言った。
「渡してもらおうか。反撃の球魂を」
リカが返す。
「嫌だ。お母さんを傷つけたお前は絶対に許さない!」
輝石が白く発光した。光がリカの全身を包む。光が晴れたとき、彼女は変身していた。自身の掌を見るリカ。変化を確認する。体色は白。ところどころパープルのラインが入っている。身長も伸びていた。それから彼女が叫ぶ。
「私は咲く! 仮面ライダーダルダ!」
怪人が言う。
「貴様も母親同様倒してやろう」
ところが、怪人の余裕は一瞬にして打ち砕かれた。ダルダは目にも止まらぬ速さで急接近。膝蹴りで敵を怯ませる。次いで放たれるダルダのドロップキック。頭部に受けた怪人は転倒する。ダルダがエルボードロップで追撃。グロッキーになる怪人。
「なぜだ……ありえない……これほどの強さとは……」
「知らないけど、今日は色々とストレス溜まってたから、かな?」
白い閃光に包まれるダルダ。右足にエネルギーが集約される。よろよろと立ち上がった怪人に、回し蹴りを食らわせた。怪人の首が切断され、落ちる。そして爆破四散した。ダルダの変身が解除された。リカは母の元へ駆け寄る。
「お母さん! しっかりして!」
「……すっかり成長したわね。カッコよかったよ」
「えへへ……」
思わず笑みを溢すリカ。輝石をかざしてやると、レイの傷が塞がる。
十八時頃。リカとレイの自宅。二人は夕食を食べていた。本日の献立は白米、味噌汁、鳥の唐揚げとサラダだ。二人は向かい合ってテーブル席に腰かけている。リカがレイに話しかけた。
「あの怪人はなんなの?」
「名前はミッシ。さっきのはさしずめ、スパイダーミッシってとこかしら」
「どこから来たの?」
「魔時空界と呼ばれる別世界からよ」
「そんなところがあるんだ! でもどうしてそんなこと知ってるの?」
レイは一瞬考え込んでから言った。
「昔、魔時空界に迷い混んでしまったことがあってね。色々あって、奴等の人間界進行を防ぐため、反撃の球魂を奪って逃げ帰ってきたんだ。十一年前のことね」
「そうなんだ……」
リカの箸の動きが止まっていた。話の内容を理解しきれていないのだ。
一方、魔時空界。そびえ立つ大きな宮殿。内部はゴツゴツした岩肌に囲まれ、白いもやがかかっている。建物の奥に玉座の間が存在する。中央の玉座に鎮座しているのが、魔時空界皇帝・ナイトローズである。ナイトローズは金髪の若い男性の姿をしている。彼の目の前では、人間が跪いていた。部下が報告をする。
「スパイダーが立花レイの所在を発見。しかし、その娘のリカが変身したダルダによって殉職されました」
ナイトローズが吐き捨てるように言った。
「十一年もかかりやがってバカめ。しかも奪還にしくじるとは。これではまた逃げられてしまうではないか」
「速やかに新たなミッシを手配して反撃の球魂を奪わせます」
「任せたぞオルキニス。現状、我々の軍を向こうの世界に送る術は、お前の持つ追撃の球魂のみだからな」
「承知いたしました」
オルキニスと呼ばれた部下は、報告を済ますと、玉座の間から退室する。そこへ女性がやって来た。彼女がオルキニスに懇願する。
「オルキニス、私を向こうの世界に送って。スパイダーの犠牲を無駄にしたくないの」
「モスキート……確かスパイダーとは恋人関係にあったか。勝算はあるのか?」
「なぜだか立花リカは反撃の球魂の力に過剰に順応している。しかし扱い方はなっていない。練習される前に叩くべきだと思うの」
「……いいだろう。仇を討ってこい」
オルキニスが懐に手を突っ込む。そこから赤い輝石を取り出した。追撃の球魂である。それを前に突き出すと、小さい魔方陣が現れた。魔方陣を潜ろうとするモスキート。彼女をオルキニスが止める。
「これを持っていきなさい。私の魔方陣は生物なら一体しか送れないが、非生物の兵力であればこの限りではない」
「ありがと」
モスキートが袋を受けとる。彼女は魔方陣の中に入った。出た先は夜の森だった。モスキートが蚊のような怪人態に変化。羽根を羽ばたかせて、飛び立つ。
リカの家。レイがリカに言う。
「おおよその居場所を奴等に知られた以上、もうここにはいられないわ。今晩にでも逃げるよ」
「え? 嫌だけど……」
「ワガママ言わないで! あなたは今狙われてるのよ!」
「だけど、私はこの町が好き! 学校にも友達が沢山いる! だから離れたくない!」
その時だった。怪人がガラス窓を突き破って入ってくる。モスキートミッシだ。レイが言う。
「そんな! もう家まで割れてるの!?」
「大体の居場所はスパイダーからのデータで把握済み。あとはそこを起点に魔力のありかを辿れば簡単よ。この世界で魔力を持つのはお前たちだけだからね」
モスキートミッシは左腕から縄を発射した。それをレイに巻き付かせる。それから、手繰り寄せた。レイが捕まってしまう。
「お母さん!」
「ダルダ! 私はお前を許さない!」
モスキートミッシがレイを小脇に抱える。それか、来た道から飛び去った。慌てて追いかけるリカ。しかしとても追い付けない。
「もっと速く……!」
すると、反撃の球魂が光輝いた。輝石からビームが虚空に向けて発射される。そしてバイクが形作られた。名前はビオプランター。花の意匠が盛り込まれたオートバイだ。
「バイク? でも私乗れない……」
リカは一瞬戸惑う。だがすぐ、操作方法を理解した。輝石から魔法を通じて、情報が流れ込だのだ。彼女はバイクに跨がると、エンジンをかけて発進する。
「お母さんを返せ!」
夜の住宅街を舞台に、ライダーと怪人の激しい鬼ごっこが始まる。モスキートミッシが振り返った。リカ目掛けて口から針を射出。それをリカは華麗なドライビングテクでかわしていく。
「変身!」
白い光に包まれて、リカが仮面ライダーダルダに変化した。怪人が光線を発射。ダルダが爆発に巻き込まれる。だが、ダルダは爆風を抜けた。爆発の勢いでビオプランターが上昇。そのまま怪人に突撃した。ダルダが叫ぶ。
「ライダーブレイク!」
「ぐわぁぁぁぁ!」
落下する怪人。その拍子にレイが手放される。ダルダはバイクから飛び降りると、レイを空中でキャッチ。そして着地した。ビオプランターは光と共に消滅する。
「お母さん、安全なところへ」
「うん……」
その場を離れるレイ。モスキートミッシが起き上がった。怪人が腕を横に振る。すると手から種子のようなものが複数ばらまかれた。種子は十体のアリのような戦闘員に変貌する。怪人が叫ぶ。
「行きなさい! アントミッシ!」
戦闘員がダルダを囲む。そして八方から襲う。ダルダは四肢に白いエネルギーを纏わせた打撃で応戦。だが多勢に無勢。被弾していった。モスキートミッシが口から針を射出。戦闘員を援護した。ダルダは追い詰められていく。
「負けない……負けてたまるか……」
「いや、負ける。お前はここで死ぬのだ!」
その時、レイが叫んだ。
「リカ! 球魂の声に耳を傾けて!」
ダルダは母の助言を実行しようとした。レイの声を不快に感じるモスキートミッシ。部下に命じる。
「アントミッシども! まずはあのノイズを取り除け!」
レイに向かって襲いかかる戦闘員たち。ダルダは地面に軽く触れた。するとレイの周囲のアスファルトが隆起。彼女を囲んで守る盾に変貌した。アスファルトの盾に戦闘員がぶつかる。ダルダが指から光弾を発射。怯んだアントミッシたちを撃ち抜く。戦闘員を全滅させた。
「そうか……私が望みさえすれば、球魂はそれに応えてくれる」
ビオプランターを産み出せたのも、その理屈によるものだった。
「使い方に気づき始めたか……だがもう遅い!」
モスキートミッシが針を高速で射出した。しかし、攻撃はダルダをすり抜ける。彼女は怪人の背後に出現。強力なパンチで吹き飛ばした。驚く怪人。
「なに!? 瞬間移動だと!!」
「私の戦いはここから始まるのよ!」
ダルダが怒濤の連続攻撃を繰り出す。怪人は対処できず、一方的に殴打される。次にダルダは、右手から白い光の剣を伸ばした。縦横斜めと斬撃を次々に放つ。それから、蹴り飛ばした。
「ダルダソード、ダルダブレード、ダルダスラッシャー……うーん……ま、名前は次回までに考えておこうかな」
戦力差は歴然。モスキートミッシは飛び上がり、逃走を図る。光る投げ縄を生成したダルダが、それを投げた。縄は怪人の足に絡み付いた。彼女が縄に炎をつける。火が縄を伝っていった。炎上した怪人が落下する。
「これで決める!」
眩い光に包まれたダルダが跳躍。足を突き出し、落ち行く怪人に迫る。
「ブルーミングシュート!」
ライダーキックが怪人を貫く。空中で爆発が起こる。着地を決めるダルダ。だが、直後ダルダの変身が解除された。リカは倒れ込む。彼女にレイが駆け寄る。魔力の供給が断たれたことで、アスファルトは元に戻っていた。レイが告げる。
「リカ、ありがとう」
「お母さん、私、もう動けない……」
「魔力を使いすぎたのよ。完全に使い果たすと死んじゃうから気を付けなさいね」
「うん……それで、転校は……」
「これからも怪人と戦い続ける覚悟はある?」
「うん!」
「そっか。じゃあやめにしようか。でもこれだけは約束して。ダルダのことは私とあなただけの約束よ。絶対他の人には言わないこと。わかった?」
「うん!」
レイは娘を信じることにした。リカを抱えると、帰宅の途につく。幸せな日々を人知れず守る覚悟を決めたリカの戦いがここから始まる。