令和に復活!仮面ライダーダルダ a girl blooms 作:ぽかんむ
第10話 人知れず咲く、英雄の物語。
ナイトローズを倒して、世界には平和が戻った。だがその代償に立花リカは変身能力を喪失。さらにダルダであることが世間にバレ、恐怖の対象と認識されてしまった。
学校の帰り。立花リカと秋月蘭は、通学路を並んで歩いていた。しかし会話はない。それを気まずく思うリカ。何を話せばよいのかわからないのだ。
初めて学校で会った時のような態度で接することは、もはや出来ない。流石に苦しくなってきたので、蘭に問いかけた。
「あのさ、私のお家狭いよ? だからもっといいところが別にあるよ」
「あなたがいる。それ以上に優れた住環境などあるのかしら?」
「どうして私に執着するの?」
「あら? 言わなかったかしら? あなたが好きだからよ。愛してる」
「いざ冷静に聞くと気持ち悪いね」
「小っちゃくて可愛いし、それに……」
その後には『久しぶりにできた同い年の友人』とい文言が入るのだが、彼女は口にしなかった。ふと空を見上げると、遠い目をする。二度と会えないかつての友人たちを思い浮かべながら。軍に入隊してからというものの、友達とは無縁の人生を歩んでいたからだ。
一方でリカは言葉を失っていた。不愉快極まりない表情で蘭を横目に見る。戦友としては信頼しているが、明確な好意の対象としての視線は受け付けない。
「やっぱり一緒に住みたくないんだけど……」
気味悪がるリカは、会話をそこで辞めた。再び気まずい空気が流れる。蘭は無言が平気であり、愛する者と隣を歩けていることに幸せを感じている。
そうしていると、自宅に到着した。店舗の裏に回り、階段を上り、住居用玄関を開ける。リカが言った。
「ただいまー、お母さん、ちょっと来て」
「おかえり、リカ。どうしたの?」
するとリカの母親・立花レイが奥からやって来た。その姿を確認すると、蘭が言う。
「こんにちは、レイさん。今日から住まわせてください」
「ダメです、帰りなさい」
リカが笑みを浮かべた。しかしその返答を予想していた蘭。背中のランドセルを前に持ってくると、開ける。入っていた札束を掴むと、レイに差し出した。ざっと100万円といったところだ。
「月の家賃です。球魂がなくともこの程度、魔法で調達は可能です」
「あなたも今日から私の娘よ! よろしくね、オルキニス」
レイはお金の魔力を前に、一瞬で手首を返した。札束を受け取ると、蘭を歓迎した。
「蘭、秋月蘭です」
「あらそう。よろしくね、蘭」
蘭は靴を脱ぐと、向きを逆にして綺麗に揃える。それから導かれるように、レイの後ろをついていった。靴を脱ぎ捨てたリカが、そのあとを追う。母親に抗議をした。
「お母さん! 受け入れちゃダメだよ!」
「故郷を失くしてあの子も寂しいのよ。わかってあげなさい」
「でも私を変な目で見て来るし……」
「好かれるのはいいことじゃない」
レイは札束を眺めながら、視線も合わせずリカの言葉を否定した。先の戦いによって、蘭が敵でないことを理解したことで、警戒心も大きく薄れている。もはや説得の余地はなかった。
「もう全部嫌!」
家を飛び出したリカ。向かった先は近所の公園だ。そこでは洋子が他の女子と遊んでいる。しかし、リカの姿を見ると、一目散に逃げ出してしまった。
外ではかつての友人に避けられ、自宅でもスペースを奪われ、居場所の喪失を思い知らされる。彼女はベンチに座ると、ため息をついた。そこへ、息を切らした蘭がやって来る。リカに近づくと、ハンカチを差し出した。
「これ使いなさい」
「何? あんたまだいたの?」
「あなたのことが心配だからよ」
「私は大丈夫だってば……」
リカは顔を背けた。そんな彼女を見て、蘭は少しだけ考え込む。そしてこう告げた。
「羨ましかったんだ、あなたとレイさんが。私はもう家族と会えないから」
「バカ……うるさい……」
そう言いながらも、彼女の機嫌はいくらか軟化していた。蘭が差し出すハンカチを手に取ると、涙を拭う。
「ごめんなさい……八つ当たりして」
「いいのよ。ほら、帰りましょ?」
「うん」
リカは立ち上がり、蘭と共に帰路についた。その日の夜。結局蘭はリカと相部屋となった。寝るときはリカがベッド、蘭は床に布団を敷いて眠る。
布団の中で蘭が眠っていると、ごそごそとリカが入ってきた。まだ起きていた蘭が聞く。
「あら? 夜這い?」
「ヨバイ? なにそれ?」
「何でもないわ。一緒に寝たいの?」
「うん!」
こうして二人は同じ布団で眠ることとなった。もっとも蘭は緊張してしばらく寝不足になるのだが。
その後も一時は不登校になりかけながらも、蘭に支えられて、小学校生活を再開させていた。
そして、ナイトローズとの決戦から半年の月日が流れる。一月下旬。リカは五年三組の教室のドアを開けた。そして元気よく叫ぶ。
「おはよう!」
挨拶を返す者はいない。それどころか、クラスメートはリカと目すら合わせない。毎日のことだが、落ち込むリカ。それを隣の蘭が励ます。
「大丈夫だから、ね?」
「うん……」
今日も一日が始まった。算数の授業中、リカは窓の外を見る。校庭で体育の授業を受けている児童の姿があった。皆笑顔だ。かつては彼女もそのような表情を絶やさなかった。いつか自分もまた笑える日が来るのだろうか、未来を空想する。
そうこうしていると、午前の授業が終わった。次は給食の時間。城南小では四人から五人の班ごとに席を近づける。そして談笑を交えながら食す。
しかし、班員はリカを会話に混ぜない。初めは彼女も積極的に会話に入ろうとしていた。そして班員を怯えさせた。それ以降彼女は、輪の中に入ることを諦めている。だがまたみんなとお喋りできることを望んでいる。
昼休み。クラスメートの多くは校庭や図書室に行った。教室に残ったのは二人。リカは席に座って本を読んでいる。そこへ蘭がやって来た。リカに話しかける。
「今日は何の本?」
「恋愛小説だよ。前に洋子に勧められたやつ」
「あの子の守備範囲も広いわね。私もミステリー借りてるし」
「……別にいいんだよ? 私に構ってくれなくて。蘭だってみんなと遊びたいでしょ?」
「好きでやってるのよ。気にしないで」
「ほんと……? 無理してない?」
「外でバトミントンでもしましょうか。あなた、ほんとは外で遊びたいんでしょ? さっきずっと校庭を眺めていたものね。体を動かせば、その卑屈な思考も少しは落ち着くでしょ」
「うん! しよう!」
二人が教室を出る。すると突然、上の階から「ドン!」という大きな音が鳴った。リカが振り返る。階段を上るためだ。彼女の腕を蘭が掴む。リカを制止させた彼女が言った。
「あなたはもう仮面ライダーじゃない。いたずらに首を突っ込むべきじゃないわ」
「でも……」
「普通の女の子に戻るんでしょ!?」
「……ごめん!」
リカは蘭を振り払う。彼女は廊下を走った。勢いそのままに、階段を駆け上る。上階では六年生の男子児童数人が輪を作っていた。
そして中央にいる一人の女子児童を虐めていた。前方に手を翳すリカ。掌から放たれた衝撃波が、男子児童を吹き飛ばす。
「痛っ! なんだ突然!?」
「おっおい……逃げるぞ……ダルダだ……」
「うわぁぁぁぁぁ!!」
男子児童たちは、リカを見るなり一目散に逃げ出した。虐められていた女子児童を、リカが見る。それは同級生の洋子だった。かつては親友だったが、正体発覚以降、口を利いていない。
「リ……リカ……」
洋子はリカを見て震え出した。
「大したこと無さそうでよかったよ。じゃあね」
リカが振り返る。すると洋子が叫んだ。
「待って!」
「え?」
「ありがとう……」
絞り出すような声が、リカに届く。彼女は無言でその場を去っていった。
放課後。リカと蘭が並んで下校している。住宅街を歩いていた。
「蘭、ごめんなさい。私……また……」
「良いのよ。でもまたみんなに壁を作られてしまったかもね」
「ところでなんで洋子は虐められてたんだろう?」
「さあね。でもあの子は敵を作りやすいから知らず知らずの内に恨みでも買っていたのでしょう」
呑気に話していたその時、隕石のようなものが地表に落下。そこを中心に爆発が発生する。風が二人の元に吹いた。煙が晴れる。中央に黒い身なりの謎の男、その周りを多数のアントミッシが囲っていた。
「あれは魔時空界の怪人!」
「アントミッシはまだしも、あの男は何者よ?」
蘭の疑問に、男が答えた。
「我が名はアスモデウス。この世界の創造主だ。お前達の物語を食らう」
すると男は黒いもやに包まれ、怪人態に変貌する。その姿は龍に近い。右手を前に突き出して、アントミッシたちをけしかけた。立ち向かうリカと蘭。
戦闘員たちは、付近の一般人も次々と襲う。顎で噛みついたりして殺害すると、人々は粒子となって消滅。それがアスモデウスに流れ込む。
「殺した人たちを食べているの……?」
「お前たちは家畜に過ぎない」
「創造主……家畜……? 何を言っているの?」
「言葉通りだ。お前たちを生み出したのはこの私。この世界も、お前たちの持つ記憶、やってきたこと、全て私が作った設定に過ぎない」
明かされる驚愕の真実。二人は否が応でもショックを受けた。それでもアントミッシと交戦するが、敵は以前より強化されていた。リカたちのパンチはまるで通じず、返しの拳で殴り飛ばされる。倒れる彼女が呟いた。
「強い……!」
それにアスモデウスが反応する。
「当然だ。我の力の一部を分け与えているからな」
「でも必ず倒す! たとえ変身できなくても……!」
「そんなことは不可能だ」
アスモデウスが腕を高く上げた。すると上空より無数の槍が、雨のように降り注ぐ。リカたちは岩石の盾を生成。真上に掲げて槍を防ごうとする。だが盾は簡単に貫かれた。土煙が巻き起こり、二人の姿が隠れる。
「逃げても無駄だ……」
勝ちを確信したアスモデウス。呟いた後、アントミッシたちを従えて、踵を返して何処へ去った。
埃の溜まった薄暗い路地裏。室外器の裏。リカと蘭はそこに身を寄せている。彼女たちは自身にそっくりの人形を魔法で作り出すと、それを身代わりに難を逃れていたのだった。蘭が言う。
「厄介なことになったわね……」
「変身できない私たちじゃ、とても勝負にもならないよ」
「……方法があるとするなら、全魔力を注ぎ込んだ自爆……」
「そんなのダメだよ! 死んじゃうよ!」
「私は実質祖国を滅ぼした。もしそれでこの世界だけでも救えるのなら」
「何それ……嫌だ! 蘭が消える未来なんて!」
怒ったリカは、一人で駆け出して家に帰ってしまった。追いかけようとせず、蘭は彼女の背中を眺める。しばらくすると彼女もまた、リカが行った方向に歩いていく。
住宅街を進み、彼女が訪れたのは一軒の家だった。そこの呼び鈴を押す。
「洋子さんはいらっしゃいますか?」
玄関が開き、すぐに洋子が出てきた。そこは洋子の自宅である。彼女達の間は、小さな門と三段の階段で阻まれている。
「蘭? どうしたの?」
「あなたに借りた本を返そうと思って。面白かったわ」
そう言うと蘭は、ミステリー小説を返却した。
「でしょでしょ? 途中からデスゲームが始まるのが痺れるよね!……でも別に明日学校で返してくれればよかったのに?」
「えぇ……本はあくまで方便。あなたにお願いがあるのよ」
「なぁに?」
「リカと仲直りしてちょうだい」
「……は? だってあの子は……」
「世間で言われていることは誤解なの! 本当は……!」
「やめて! 怖い! あんな化け物の話しないで!」
洋子は聞く耳を持たない。精神に干渉する魔法を、蘭は扱える。それを使えば交渉は楽に進むだろう。しかし使う気はなかった。なぜなら今や彼女にとっても、洋子は大切な友人の一人だからだ。
「本当にそれがすべてなの?……ちょっと暗めになってしまったけれども、以前の優しさは変わっていない」
洋子の脳内に、数時間前に自身を虐めから助けてくれたリカの姿がフラッシュバックする。恩がある以上、無下にはできない。
実はいじめっ子の正体は、リカの心を揺さぶる目的で、アスモデウスが即興で作り出したキャラクターなのだが、彼女達が真相に辿り着くことはなかった。しばし考え込んだ末、洋子が言葉を絞り出す。
「……おやすみなさい……今日のところは……帰ってくれないかな……」
彼女はこの場で結論を出せなかった。先延ばしにするため、蘭を拒絶する。
「うん、今日のところはおやすみなさい」
彼女も特に追求せず、踵を返した。しかし自宅には戻らない。住宅街を抜けて、繁華街に出る。そして夜の雑踏に姿を消していった。
家の中に戻る洋子。彼女に母親が話しかける。
「あんたまた何か忘れ物して、届けてもらってたの?」
「忘れ物……そうかもね……」
顔を俯かせた彼女が、階段を登る。自室に入ると、ベッドに力なく寝転んだ。それから学校生活を思い返す。
彼女が小学校に入学した時、同じクラスには知り合いが誰もいなかった。持ち前のポジティブさで周囲に話しかけるも、簡単には馴染めない。クラスメートに存在を認めて貰おうと、必要以上に絡んだ結果、鬱陶しく思われてしまうこともあった。
そんな時に出会ったのが、同じくソロのリカだった。彼女達はすぐに意気投合。よく一緒に遊ぶようになる。承認欲求が満たされると、他のクラスメートとも適切な距離感で接することが出来るようになり、次第に友達も増えていった。
それでも自分の話を何でも聞いてくれるリカは、特別な存在の一人だった。しかし、彼女がダルダであることが知れ渡り、クラス内から避けられ始める。洋子も未知の恐怖には逆らいがたかった。判断に迷っている内に、いつしか彼女は眠りについていた。
夜、蘭は自宅に帰らず、田畑が両サイドに広がる狭い道を歩いている。いつの間にか繁華街は抜けていた。
幼い頃両親に怒られたこと、帝国軍にスカウトされたときのこと、仮面ライダーオルキニスとしてリカと戦ったときのこと、この世界での暮らしなどを回想していた。
一方、一人で怒って帰宅したリカは、リビングでお菓子をドカ食いしていた。見かねた母親・レイが問いかける。
「なぁに? どうしちゃったの?」
「もう蘭なんて知らない! そんなに死にたいなら勝手に死んでればいいのに!」
「喧嘩したの? 早く仲直りしなさいね」
リカは魔力を探知できるため、蘭の居場所は簡単に把握できた。しかし、会いに行ける心持ちにない。リカは断片的にしか説明していなかったため、レイは経緯を理解していなかった。そこで彼女は今日の出来事を話した。ひとしきり理解したレイが呟く。
「……そう、また新しい敵が……ね」
「そこはこの際二の次なの。蘭ほんとありえないんだけど」
「あんたどんだけ蘭のこと好きなのよ……いーい? 将来はちゃんと男の子と恋愛するのよ?」
「はぁ? あんな奴嫌いよ!」
「本当に嫌いなら死のうがどうでもいいじゃない」
「あ……そっか……」
自らの行動と想いの矛盾を指摘されるリカ。彼女が拒否したのは蘭の考えであって、人格ではない。
それに気がついてからは早かった。謝罪及び共闘の申し出のため、家を飛び出す。
夜。繁華街は夕食を求める人たちで溢れかえっていた。そこへアスモデウスが上空より飛来。落下地点にはクレーターが作られる。アントミッシを生み出すと、人々を襲わせた。怪人に爪で切り裂かれたり、顎で噛みつかれた人々は、粒子となって消滅。粒子はアスモデウスの元に流れ込む。
逃げ惑う人々。その流れに逆らうように、バイクに乗った少女が駆ける。専用バイク・エクスターゼに跨がった蘭だ。彼女は敵と相対すると、バイクを消した。そして口を開く。
「虐殺をやめなさい」
「来たか秋月蘭。やれ」
戦闘員をけしかけるアスモデウス。彼女は魔力を解放した。全身に黒いオーラを纏う。その力はアントミッシにも劣らず、次々と返り討ちにしていった。
高く上げた右足に赤いエネルギーを貯めて、左足を軸に回転。変則的なクリムゾンパシュートは、彼女を囲む怪人を一掃する。
アスモデウスが手をかざした。すると蘭の周囲が突如発火する。彼女は火に閉じ込められてしまった。火力が強まる中、バリアーを張って凌ぐ蘭。その光景を見て、笑いながらアスモデウスが言った。
「いつまで持つかな? お前の魔力が尽きるのも時間の問題だろう」
「……そうかもね……でもあなたを倒さない限り、リカの笑顔は永久に取り戻せない!」
「愚かな奴だ」
炎は温度を増して青に変色。さらに勢いよく燃え上がり、遂には火柱が立った。アスモデウスが剣を召喚。火柱に近づいた。刃に炎を纏わせると、トドメの一撃を振り下ろす。
「ん?」
アスモデウスが手の感触で気づく。攻撃が何者かに受け止められたことを。彼の剣は、その誰かの剣に受け止められていた。剣士が剣を外側に鋭く払う。すると炎が吹き飛ばされた。
蘭の前に立ち、アスモデウスと睨みあっているのは、文豪にして剣豪・神山飛羽真。黒い帽子と衣装を身に付けており、右手には聖剣・火炎剣烈火が握られている。
「セイバー……なぜお前がここに?」
「お前の反応をノーザンベースがキャッチした。ソフィアさんに頼まれて、ここまで追ってきたんだよ」
飛羽真の元へ、刃王剣十聖刃が飛来した。それをキャッチすると、腰に装着してある、聖剣ソードライバーに納刀する。ブレイブドラゴンワンダーライドブックをドライバーに挿入後、剣を引き抜く。
「変身!」
『聖刃! 抜刀! 刃王剣クロスセイバー!創世の十字! 煌めく星たちの奇跡とともに! 気高き力よ勇気の炎! クロスセイバー!クロスセイバー!クロスセイバー! 交わる十本の剣!』
十本の聖剣をその身に宿し、飛羽真は仮面ライダークロスセイバーに姿を変えた。右手に十聖刃、左手に烈火を持った二刀流で、アスモデウスに接近する。
敵が光弾を右手から放つ。それをジャンプしてセイバーが避けた。そのまま空中で一回転。勢いをつけた二振りの斬撃を、怪人に叩き込む。だがアスモデウスは負けじと、セイバーを蹴り飛ばした。両者が得物を打ち付け合う。刃と刃が交差した。セイバーが問い質す。
「アスモデウス! どうして復活した!?」
「復活ではない。私は物語がなくならない限り決して滅びないのだよ。……もっともあの戦いで一時的に力を減らしはしたがな」
「なるほど……この世界の物語に介入したことと、お前が力を取り戻したことに何か関係があるようだな」
「その通り! 私は物語の神。物語を作りだすことで、再生も強化も思いのまま……」
アスモデウスが剣を振り上げ、セイバーの二刀を弾き飛ばした。無防備のセイバーの胸部目掛けて、X字状に斬りつける。さらなる追撃を目論み、剣を上段から振り下ろした。ところが、刃を右手で掴まれ阻まれる。
「物語を己の野望の捨て駒としか見ないお前は、絶対に許さない!」
セイバーが左手で、ブレイブドラゴンワンダーライドブックをタッチした。すると彼の右手が青い炎に包まれる。力を込めると、刃が折られた。
「ドラゴン・ワンダー!」
拳を一度引き、素早く突き出す。青いブレイブドラゴンのエフェクトと共に、燃えるライダーパンチを放った。それはアスモデウスを吹き飛ばす。
さらに、落下してきた二刀を、キャッチした。高速で敵に接近。十聖刃ですれ違い様、左薙に斬撃を喰らわす。アスモデウスが問うた。
「やるなセイバー……だがどうする? ここで私を倒したところで、私はまた新しい物語を寄り代に復活するだけだ」
「だったら、これならどうだ」
セイバーが十聖刃の鍔を、上下にスライドさせた。それから中央のボタンを押す。
『月暗! 既読! 最光! 既読! 月暗!最光! クロス斬り!』
十聖刃をベルトに納刀。代わりに、召喚した二本の聖剣を掴んだ。闇と光の聖剣・暗黒剣月暗と、光剛剣最光を振るうと、アスモデウスの背後に、黒の渦と白の渦が出現。二つの渦は、引力でアスモデウスを飲み込もうとする。
「なるほど……私を封印するつもりか」
「あぁ、お前を物語から隔絶する!」
渦はさらに巨大化。アスモデウスを引き寄せる。ところが彼は腕を伸ばした。セイバーと蘭を掴む。暴れる二人を握力で押さえつけると、共に渦の中へと消え去った。
その光景を眺めていた少女が一人。リカだ。駆けつけた彼女だったが、間に合わなかった。戦場には一人、リカのみが残される。
「蘭!……蘭……」
打ちひしがれるリカ。大切な友を目の前で失った悲しみ、何より己の無力さから心は折れかけていた。
その時、空間に扉のようなものが現れる。ドアが開くと、一人の男がやって来た。
「飛羽真に先を越されてしまったな……あいつはどこだ?」
彼の名は富加宮賢人。ソード・オブ・ロゴスはノーザンベースに所属する雷の剣士・仮面ライダーエスパーダである。現在は翻訳家としても活動している。今回、飛羽真とともに任務を命じられていたが、仕事の都合で合流が遅れていた。リカが彼に話しかける。
「いきなり出てきて誰なの!?」
「俺は富加宮賢人。君のことは聞いているよ、リカ。飛羽真を見なかったかい?」
「飛羽真……? その人かはわからないけど、剣士がアスモデウスを封印しようとしたら、逆に蘭も巻き込んで三人でどこかへ消えちゃったの……」
「……そうか……蘭と飛羽真は必ず俺が救い出す」
「……」
「ん? どうかしたか?」
「蘭って誰だっけ? そういえば私、何してたんだろう?」
突然、リカは一部の記憶を失った。そしてどこかへ駆けていく。あまりにも急な出来事に、賢人も反応が追い付かない。
とはいえ、飛羽真やアスモデウスを追う目処はついた。再びブックゲートを開き、ダルダの世界を後にする。彼が向かった先はノーザンベース。二階にいたソフィアが、階段を降りながら言う。
「随分と早いご帰還ですね、エスパーダ」
「ソフィア様、立花リカ……仮面ライダーダルダが突然記憶を失くしたようなのですが、原因はわかりますか?」
少し考えてから、ソフィアが返す。
「ダルダの力はアスモデウスがもたらしたものです。恐らくはアスモデウスが封印されたことで干渉が途切れたのが原因でしょうか。しかし、本当の目的は疑問の解決ではないようですね」
「はい。お願いがございます。月暗をお借りできないでしょうか」
「……わかりました。事件の解決のために必要なのですね?」
ソフィアがどこからともなく、暗黒剣月闇を取り出した。それを受けとる賢人。
「ありがとうございます」
礼を言った彼は、邪剣カリバードライバーを腰に装着。ジャアクドラゴンワンダーライドブックを、ドライバーに装填する。
「変身」
それから、両手で持った月闇の束頭で、ドライバー上部のボタンを押した。本が開かれ、現れたジャアクドラゴンを纏い、賢人は仮面ライダーカリバーへと変身する。
カリバーが月闇で空間に円を描く。するとそれは黒い穴を作り出した。彼がその中に入る。内部は砂漠にそびえる廃墟の様になっていた。その闇の世界を辿っていけば、飛羽真の元へ行けるのではないかと、彼は考えている。
「お前は必ず俺が助ける……」