令和に復活!仮面ライダーダルダ a girl blooms 作:ぽかんむ
第12話 交差Ⅰ:魔法と棒倒し
美しい紅葉が映えるとある山。そこに似つかわしくない、タキシード姿の男性がいた。彼の名前は浮世英寿。それ以外の人影はない。
するとそこへ突然、一人の女性がやって来た。白と黒の服を着ており、髪型はサイドテールだ。両手には黒と黄色の四角いボックスを持っている。
「おめ……」
「あぁ、知ってるよ。姉さん」
「その呼び方はやめてください! 寒気がします」
そう言いながら、彼女はボックスを英寿に手渡す。端から見れば突拍子もなく見える状況。しかし彼の心はいたって平常だった。
表情を歪ませたツムリは、煙のように忽然と姿を消した。ボックスを開く英寿。その中にはシンプルな形状の黒い機器─デザイアドライバー─と、キツネをモチーフとしたデザインが描かれた丸いチップ─仮面ライダーギーツIDコア─が仕舞われていた。
彼はその二つを取り出すと、ドライバーを腹部に当てがう。するとベルトが伸びて巻き付き、腰に装着された。それから、ドライバー中央の窪みにIDコアをはめる。瞬間、彼の姿もまたどこかへと消えた。
一方その頃、通学路となっている住宅街。小学五年生の立花リカと秋月蘭が、並んで歩いていた。背中にはランドセルを背負っている。リカはピンク、蘭は水色だ。リカがまず話し始める。
「あなたって銭湯に興味はあるかしら?」
「お風呂の方? あんまり馴染みないかな」
「今度行ってみない?」
「たまにはいいかもね。なんてお店?」
「しあわせ湯と看板には書いてあったわ」
「結構この街いるけど、そんなお店聞いたことないよ? 最近出来たのかな」
「いや、そこそこ年季が入っているように見えたわね」
「ちょっと案内してよ」
「ええ、偵察と行きましょうか」
こうして二人はしあわせ湯なる未知の銭湯を求めて歩き出した。蘭によると自宅とは反対の方角にあるそうなので、来た道を引き返す。
そこは彼女が町の散策中、偶然見かけたらしい。外観は伝統的な日本家屋のようだったそうだ。蘭を先頭にして、道を進む二人。しかしいくら歩いてもそのような店舗は発見できなかった。
「だってこの辺りに銭湯なんて聞いたことないもん」
無駄に歩かされたリカが、やや口調強めに言う。蘭はただただ、自身の認識と現実の乖離に困惑していた。
「私の頭がおかしくなったの? それとも……」
するとそこへツムリが現れた。手にはハテナミッションボックス001を二つ持っている。英寿に渡したものと同様だ。彼女が言った。
「おめでとうございます。厳正なる審査の結果、あなたは選ばれました。あなたは今日から仮面ライダーです」
リカが質問した。
「前から仮面ライダーですけど……?」
「はい?」
「だから私は既に仮面ライダーなんだって」
捲し立てるリカ。それを蘭が静止した。
「やめなさいよまったく……変な人と思われちゃう」
「じゃああの人は変じゃないの!? 突然わけわからないことべらべら言ってきてるのに」
「言動が不明瞭なのはあなたも同じよ」
ツムリを無視して、二人は言い争う。ふと蘭が横を向いた。気が付くとツムリは既にいなくなっていた。彼女が立っていた場所には、二つのボックスが置かれている。その上にはスパイダーフォンと呼ばれる、スマートフォン型の端末が乗せられていた。
リカは近づくと、フォンを手に取る。二人して画面に顔を近づけた。そこにはこう書かれていた。デザイアグランプリ、最後まで生き残った勝者は理想の世界を叶えられると。
「理想の世界……」
読んだリカは、文言に魅力を感じた。しばらく立ち止まって、画面を眺める。蘭の反応も認識できないほどに。やがて彼女の真剣な目を見ると、蘭は口を塞ぐ。
リカは何を望むのだろうか。彼女は考えた。第一候補と言えば友達絡みか。洋子とは仲直りしたが、それ以外のクラスメートとは依然、壁が残っている。それを取っ払うことだろうか。
はたまた家業関係か。リカの自宅は『フラワーショップ スタンドグラス』という店を経営している。売上に苦戦している話は本人やレイの口から何度か聞かされていた。ならば彼女の望みは、花屋が繁盛している世界か。候補はそれ以外にもいくつも思いつくが、一つに絞る決定打には乏しかった。
「リカ! いつまでぼーっとしてるのよ」
そう言いつつ蘭はリカの肩を軽く叩いた。するとリカは自分の世界から戻ってくる。
「……あっ、ごめんごめん、ところで蘭は何を望む?」
あくまで自身の望みには口を閉ざすリカに、蘭は違和感を覚えた。いつものリカならば、彼女に隠し事などしないからだ。だがそのことには触れず、相手の質問に答える。それは信用の現れである。
「そうね……叶うなら家族ともう一度会いたいかしら……」
「……そっか、じゃあ参加しようよ、デザイアグランプリに」
二人はゲームへの参戦を決意した。ボックスを開封すると、スパイダーフォンの情報を頼りに、腰にデザイアドライバーを装着。次いでそれの中央の窪みに、IDコアを装填した。『ENTRY』の音声とともに、二人の姿が消えていった。
次に二人が気が付いた時、神殿のような場所にいた。宙に浮かぶ六角形の小さなエリアであり、周囲には柱のようなものが浮いている。他の参加者も既に集まっていた。年齢も性別も立場もバラバラである。その数約30人。英寿の姿もあった。
しかし彼らはいずれも大人。子供の参加者は彼女たちだけだ。他の参加者は二人を奇異の目で見る。だが対照的に、二人に声をかける者もいた。
「あなたたちも参加者なの?」
白い服にスカートを履いた、ボブカットの若い女性だった。ゆるふわな雰囲気にリカの緊張がほぐれる。一方蘭は、彼女の内なる強さを気配で察知した。リカが尋ねる。
「お姉さんは?」
「私は鞍馬祢音、よろしくね、ちっちゃくて可愛いね」
「はい……どうも……」
リカたちが居心地の悪い思いをしていた時、ツムリが現れた。神殿中央の一段高くなっている箇所に、彼女は立っている。
「私はゲームナビゲーターのツムリです。ようこそデザイアグランプリへ!」
その後ツムリから説明が入る。デザイアグランプリの目的は、正体不明の怪物・ジャマトから世界の平和を守ること。仮面ライダーが人知れずジャマトと戦っているが、それを見た一般人の記憶から、デザイアグランプリに関することは消されているという。
そして最後まで勝ち残った者はデザ神と称され、どんな理想も叶えられる。周りの多くの参加者は困惑していたが、英寿や祢音は既知の事のように聞き流していた。リカたちもこれまで摩訶不思議な体験を積んできた身。それほど非現実感はなかった。
「それではデザイアカードに願いを書いてください」
すると参加者の手元にいきなり、プレートのようなものとペンが現れた。各々、自身の望みをそこに書いていく。リカはすらすらと書くと、周りに見られたくないのか、裏返す。
「あら、ずいぶん早いのね」
「まあね……蘭も決まっているんでしょ?」
「……うん」
書き終わると、参加者が一斉に姿を消す。彼らは三組に分かれて、原っぱに移送されたのだ。また、黒と紺のジャケットを始めとしたコスチュームを着せられている。
その内の一組はリカと蘭、英寿、その他参加者7人で構成されていた。彼らの背後には、5mほどの木製の棒が立っている。何も支えのない棒が、倒れそうになった。参加者は慌てて棒に向かうと、手で支えた。
「何が始まるというの?」
リカが迷っていると、ツムリの声が聞こえた。
「それではデザイアグランプリを開催します。運命の第一回戦、最初のミッションは棒倒しゲーム! 自陣の棒を守りつつ、ジャマトが守る棒を倒してください!」
その声は、他の二組にも放送されていた。参加者たちが辺りを見回す。各陣地は50mほどの間隔を置いて、三角形を描くかのように位置していた。北の陣、西の陣、南の陣の三つだ。
そして向かい側には、ジャマト側の陣地が、線対照の配置で引かれている。リカたちのチームは西の陣。最もジャマトに近い頂点であった。
プレイヤーの足元には、ピンクと黒のボックスが置かれている。それを英寿は持ち上げ、開く。中に入っていたのは、マグナムバックルだった。
「最初から手に入るとは、今日はついてるな」
それを見たリカが尋ねる。
「どうすればいいの?」
「その箱に入っているのはレイズバックル。そいつをドライバーにセットして変身だ。こんな風にな」
すると英寿はマグナムバックルを、デザイアドライバー左側のスロットに装填した。右手でキツネの形を作ると、前に向けた。そして発声する。
「変身」
バックルのシリンダーを回転、次にグリップを掴んでトリガーを引く。するとドライバーから6発の銃弾が放たれ、戻ってきたそれを全身で受け止める。
そうして黒いスーツ『デザイアベーシック』を全身に纏う。頭にはキツネを模したギア『ギーツヘッド』を被る。現れた白いロボットアームが、マグナムのボディを上半身に合体させた。彼は仮面ライダーギーツ・マグナムフォームに変身した。
プレイヤーに気が付いたジャマトが、走り寄ってくる。リカら他の参加者も、英寿を真似て、ボックスを開いた。リカが中身を手に取って言う。
「なんかさっきのと違うんだけど?」
「それはクローバックルだな。時間がない。使い方は実戦で勉強してくれ」
そう告げるとギーツも駆けだした。手にした銃型の拡張武装・マグナムシューター40Xを前方に突き出す。トリガーを引き、銃口より銃弾を射出していく。射撃を食らったジャマトは、火花をまき散らしながら倒れていった。それを眺めていたリカが口に出す。
「私たちも負けてられないね! いくよ蘭、変身!」
「えぇ、変身!」
リカはクローバックル、蘭はアローバックルをデザイアドライバーにセット。バックルのスイッチを操作する。
二人は黒いスーツで全身を覆った後、上半身に簡易的な胸当てと肩アーマーを装着した。ダルダ・アームドクローと、オルキニス・アームドアローに姿を変えた。頭部はダルダ、オルキニスと共通だが、顎は黒い。首から下もギーツ・エントリーフォームと同様の仕様となっている。
「なんか弱そうなんだけど。まあでも頑張ってジャマトを倒さないとね!」
他の参加者も次々と変身していく。彼らの行動は二つに分かれた。進んでジャマトに向かっていく者は3割。棒から離れられない者が7割。後者の大半は恐れから足がすくんでいる。自身も前線に出ようとするダルダ。それをオルキニスが止める。
「待って! 私たちまで行ったら誰が棒を守るのよ」
「あっ、そうか!」
ギーツは絶えない射撃でジャマトをねじ伏せ、道を切り開いていく。敵の群れに囲まれると、空高くジャンプ。回転しながら地上へ、銃弾の雨あられを浴びせて、一掃した。
そのすぐ近くでは、ナーゴがジャマトと交戦している。形態はゾンビフォーム。初めて使うフォームだが、防御力に優れたそれを使いこなしていた。ゾンビブレイカーを振るって、敵を次々と斬り倒す。
「ねぇ英寿! いくら倒してもキリがないんだけど!?」
「当たり前だ。敵陣の棒をよく見てみろ」
ギーツの指摘を受けて、遠くの棒に目を凝らすナーゴ。棒の上部から10秒に1回ほどの間隔で、黒いヘドロのようなものが垂れ下がる。それはジャマトの形を作ると、新兵としてプレイヤー側に向かってきた。
「なるほど……棒を倒して出現を止めろってことなのね」
敵の一体がナーゴ目掛けて、手斧を振り下げた。彼女はそれを真っ正面から受け止める。左腕の鉤爪『バーサークロー』で左切上に切り裂き、消滅させた。
前線のライダーの隙間を縫って、ジャマトたちが棒に接近する。10体ほどがダルダたちの陣にもやって来た。それに対して、オルキニスが緑のボウガン型拡張武装・レイズアローで射抜く。
それを避けた敵へは、ダルダが近接戦を仕掛けた。両手の黄色い爪型拡張武装・レイズクローで、相手のパンチを受け止める。空かさず腹部を蹴り飛ばし、右のクローで唐竹に打ち下ろした。
「本家ダルダに比べたら出力は全然かな。蘭! やっぱここは任せた!」
「ちょっと!」
前線ではギーツやナーゴといったライダーたちが奮戦。しかしまったく棒に近づけずにいた。それだけジャマトの数が多いのだ。
そこへダルダも駆けつける。飛び蹴りでジャマトを蹴り飛ばして着地。二体の怪人が迫ると、ラリアットからのダブルエルボードロップで攻撃。相手の首を肘で打ち、卒倒させた。いくらか余裕が出来ると、ギーツがナーゴに命じる。
「おいナーゴ、俺を守れ」
「え? なんで?」
「こんなゲームはさっさと終わりにしよう」
「何か考えがあるみたいね。乗ってあげる」
ナーゴがギーツの前に立つ。敵の攻撃をゾンビブレイカーで受け止めた。それから、回転しながらの右薙の斬撃で仕留める。
その間にギーツは、マグナムシューター40Xの砲身を展開。ライフルモードにした。銃後方の撃鉄『バレットチャージャー』を引く。そして棒の上部に標準を合わせた。狙撃を試みようという腹だが、弾丸では棒を貫通するだけ。とはいえそれは彼自身も理解していた。
「蹴り上げろ!」
「うん!」
彼女がドライバーを回転させた。手足を大きく広げると、横に180度回転。上半身と下半身が入れ替わる。リボルブオンだ。上半身はエントリー、下半身にはゾンビの装甲が展開されている。
変形が済むと、右足でジャマトを蹴り上げた。バーサークローでさらに威力は増している。宙に浮いた怪人目掛けて、ギーツがトリガーを引いた。弾丸がジャマトに命中。さらにそれの体を運んで棒まで到達する。怪人は棒に強く叩きつけられて爆死。その衝撃で、棒は勢いよく倒れた。
「ざっとこんなもんか」
ギーツは銃の砲身を畳み、ハンドガンモードにした。手先で銃を回転させながら発砲。周囲の敵を撃ち倒す。棒の跡地に残るジャマトを殲滅するため、地点まで走った。
だがその時、ナーゴの背後に迫るジャマト。勢いよく手斧を振り下ろす。刃は彼女の頭上に強く打ち付けられた。規定以上のダメージを負ったことで、変身が解除される。無防備の彼女を、ジャマトが囲んだ。踏みつけや手斧による斬撃に晒される。
「お姉さん!」
祢音の危機にダルダが気付く。叫ぶと、周囲の敵を掻き分けて前進。背後から敵を袈裟斬りにして倒し、輪の中に入った。
爪に魔力を籠めて、刃渡りを伸ばす。それから回転して、周囲の敵を一掃した。爪の長さを元に戻すと、祢音に駆け寄る。そして声をかけた。
「お姉さん! しっかりして!」
「さっきの子かな……? 油断しちゃったよ……」
「本当は使っちゃダメなんだろうけど……仕方ない」
ダルダが祢音に向けて手をかざした。そこから魔力の渦を放つ。回復魔法である。それは彼女の傷を塞ぐことには成功する。
しかし意識は戻らない。時既に遅かったのだ。ナーゴのIDコアも割れ、『retire』の音声とともに彼女の肉体は消滅していった。目の前で死に立ち会ったことで、リカはデザイアグランプリの過酷さを思い知る。
ジャマトに倒されたのはナーゴだけではない。前線には9人程度のライダーが出ていたが、ギーツとダルダ以外は倒されていた。
プレイヤー側の南の陣に、ジャマトが襲来。ライダーたちが立ち向かう。だがジャマトはジャンプして棒にしがみつく。そのまま上から振り回され、遂に倒されてしまった。
怪人はその棒を左右反転させて立てた。するとそこはジャマトの陣地となり、棒の上部からはジャマトの元となるヘドロが溢れ出る。そこを守っていたライダーたちは脱落扱いとなり、消滅した。
ギーツは銃の撃鉄を引きながら、ジャンプ。回転しながら、強化された弾丸を発砲する。連続で放たれたそれは、ジャマトの群れを蜂の巣にして、撃破した。
次に彼は進路を左に移動。南の陣に向かう。北でなく南を選んだ理由は、プレイヤー側の防衛力の差である。
プレイヤー側の北の陣はまだ健在なため、フィールド上部の防衛力は比較的堅い。一方南は敵に奪い取られたため、下部は貧弱である。そのため、先に南を倒すべきだと、彼は考えた。
「さあここからがハイライトだ」
啖呵を切った彼が群れに突っ込む。一体を回し蹴りで吹き飛ばした。滞空中の敵に、弾丸を放って追撃する。
高く跳ぶと、ジャマトの頭を踏みつけ、さらに高く跳躍。それからバックルの引き金を引いた。
「ハァァ!」
『マグナムストライク』
空中で一回転すると、両腕を横に開き、右足を突き出す。全身を朱色の銃弾のようなエフェクトで包み、背後にはシリンダーが写っていた。そして棒目掛けて一直線に迫る。
ライダーキックで棒を倒した。着地後、上腕『ガンスリンガーアーム』より『アーマードガン』を展開。腕を交差させると、そこから弾丸を放って、周囲の敵を一掃する。
北の敵陣に空から近づく者あり。蛍のようなマスクをした、仮面ライダーセツコ・アームドプロペラだ。彼女は右手でプロペラを持ち、飛行している。左手にはマグロのようなマスクの仮面ライダーツナを吊り上げていた。
ジャマトが地上から、大砲を発射する。それをツナは、左に持ったレイズシールドで弾いた。右手でレイズチェーンアレイを振り回すと、投擲。棒に巻き付けてから、引っ張る。そして棒を倒した。ツナが叫ぶ。
「よっしゃぁ!」
倒さなくてはならない棒は残り一本。西の自陣では、オルキニスを中心に交戦していた。
「ちょっと、あんたたちも戦いなさいよ!」
戦いに消極的なプレイヤーに対して、オルキニスが怒る。しかし行動が変わらない様子を見て、彼女は考えを改めた。
アローバックルを取り外すと、レッサーパンダのようなマスクをした、仮面ライダーフウタ・アームドハンマーに交渉する。彼とバックルを交換すると、オルキニスはドライバーにハンマーバックルをセット、スイッチを押した。彼女は拡張武装・レイズハンマーを手に持ち、アームドハンマーを装備する。
「近接は怖くても援護射撃ならできるでしょ?」
「は、はい!」
間合いの狭いハンマーは、戦いに不利である。しかしオルキニスならば使いこなせた。地面に叩きつけると、ジャマトを打ち上げる。それらをフウタが射抜く。
さらにツナ・セツココンビが同様の方法で、南の元自陣の棒を倒した。これでジャマトの発生が止まる。残された戦闘員をライダーが倒して、ミッションは終了した。
生き残ったライダーたちは、変身が解除され、最初の神殿に集められた。残った人数は12人。半分以上は脱落している。
壇上に立つツムリ。参加者に向けて話し始めた。
「皆様、お疲れさまでした! それではスコアの発表です!」
ツムリの右横に、スクリーンが現れた。そこにランキング形式で参加者のスコアが表示される。一位は棒を二本倒し、ジャマトも多数撃破した英寿。二位と三位は、二人がかりで棒を二本倒したセツコとツナ。
三位は吾妻道長の変身した仮面ライダーバッファ。彼はアームドドリルで北の自陣に割り当てられていた。棒を何とか死守するも、敵陣に向かうことは出来なかった。
「なんだお前も参加していたのか。目立たなくて気づかなかった」
悔しがる道長を、英寿が煽る。
「ギーツ! 次こそは必ず勝つ!」
そして六位がダルダ。彼女はジャマトを比較的多く撃破したが、肝心の棒倒しに関われなかった。
どこに行けばよいのか迷っている内に、ライバルに先を越されてしまっていたのだ。八位がオルキニスという結果に終わる。最後にツムリが締め括る。
「それでは次回のミッションもお楽しみください!」
その一言とともに、参加者たちは元の場所に戻された。外はすっかり暗くなっている。リカたちは慌てて自宅に帰った。
フラワーショップ立花。リカと蘭が入浴している。疲れを癒すためだ。浴室は狭いため先にリカがシャワーを浴び、蘭は浴槽に浸かっていた。蘭がリカに聞く。
「続けるの? デザグラ」
「もちろん」
頭をシャンプーで洗うリカは、即答した。
「そう……」
「怖くなっちゃったの? なら棄権したら? 棄権できるのか知らないけど」
「おバカ、私が今さら戦闘で怯えることなんてないわ」
蘭が目を瞑り、物思いに耽る。初めて人を殺した時のことを思い起こした。それは3年前、まだ7歳の時。魔時空界にも教育機関は存在する。蘭、いや、オルキニスもごく普通の小学校に通っていた。
当時、国は追撃の球魂の適合者を探していた。それは軍関係者のみならず、一般市民も含まれる。定期検診の体を取り、ほぼすべての国民の適合度を測定していたのだ。そして選ばれたのが、オルキニスだった。
彼女はすぐさま、特別士官として軍に召し抱えられる。その後、教官のバタフライミッシから厳しく指導された。
ある日、宮殿内に怪人が出現。平時の防衛力であるビーミッシでは太刀打ちできず、対処をオルキニスが任される。追撃の球魂を用いて変身した彼女の敵ではなかった。殺害するが、実は怪人の正体は彼女の母親だった。
これは数年後に明らかになったことだが、ナイトローズは彼女の母親を拉致。洗脳した上で魔法による人体改造を施し、宮殿に放っていたのだ。すべてはオルキニスに知的生命体の殺害経験を与えるため。また、拉致の過程で、彼女の父親と妹も殺害されていた。
「ねぇ、聞いてる?」
ふとリカに声をかけられて、意識を今に戻した。
「どうした?」
「横に詰めて、湯船ちっちゃいんだから」
気づけばリカは体を洗い終えていた。蘭が左に身を寄せる。空いたスペースにリカが入った。体積が増えたことで、お湯がやや溢れ出す。
「小さいのがわかっているなら、別々に入りましょうよ」
「やだ! 一緒がいいの!」
そう言うと蘭の肩に頭をもたれた。かつてはいがみ合っていた二人。しかし、集団無視にあったリカを蘭が支えたことで、二人の距離は急速に縮まった。今ではリカは完全に彼女に心を許し、懐いている。
元々好意を持っていたこともあり、今の関係に蘭は不満はない。だがなぜそこまで好かれているのかは理解できず、それが若干の不安要素となっている。