令和に復活!仮面ライダーダルダ a girl blooms   作:ぽかんむ

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仮面ライダー龍騎編
第16話 ミラーバトル


 秋月蘭は最愛の人と別れた。リカとレイを仲直りさせるため。自分が家にいなければ、リカとレイは否が応でも二人きりの時間を過ごす時間が増える。そうすれば関係が改善するだろうと、彼女は考えている。

 その日彼女は学校をサボり、山に生える木の枝に寝転がり、ぼんやりと空を眺めていた。空模様は曇りだ。

 空と森に飽きた彼女は、今度は湖に来ていた。岸に体育座りして水を眺めている。風はやや冷たかった。

 すると水面に波紋が現れる。最初、蘭は気に留めていなかった。しかし、水面が突如噴き出す。水飛沫の中から、イカのような怪物が姿を見せた。怪物が彼女に飛びかかる。

 

「誰かしら?」

 

 敵の突進を避けながら、彼女が問う。しかし返事はない。その怪物からは知性が感じられなかった。彼女は取り戻した追撃の球魂を取り出した。闇を纏い、仮面ライダーオルキニスに姿を変える。

 敵は名をバクラーケンと言う。腕からオルキニス目掛けて、触手を伸ばした。彼女は双刀・デュアルリーファーを生成。逆手に持って斜め上に振り上げる。触手を切り落としつつ、近づく。

 順手に持ち変えると、交差させて振り下ろす。袈裟と逆袈裟に斬りつけた。刀身に赤いエネルギーを纏わせ、必殺技を発動せんとする。

 

「私を狙ったことを後悔して散りなさい」

 

 その時だった。彼女の右横から巨大な白鳥型モンスターが飛来。オルキニスがそれに衝突され、吹き飛ばされる。

 

「そのモンスターは私の獲物よ!」

 

 白鳥・ブランウイングが来た方向から、薙刀を持った白い戦士が駆け寄ってきた。戦士はバクラーケンを押すと、共に湖の中へ消えていく。

 

「なんだったのかしら?」

 

 水面という鏡面を通じて、戦士こと仮面ライダーファムとモンスターは、ミラーワールドという異世界に入った。

 湖の浅い場所で、両者が対峙。バクラーケンはファムの武器・ウイングスラッシャーに斬りつけられていた。蹴り飛ばすと、高く跳び上がる。落下の勢いで、倒れた敵に刃を突き刺した。破れた怪人は爆死する。

 煙の中から、発光体が飛び出した。怪人のエネルギーだ。それを食べたブランウイングはどこかへ飛び去っていった。

 ファムは湖に飛び込み、現実世界に帰る。陸地に上がると、変身を解除。人間の姿に戻った。その者の名は霧島美穂。ロングヘアーの女性だ。すると蘭が話しかける。

 

「あなたも仮面ライダーなの?」

 

「当たり前じゃない。私がモンスターに見える? 今日は疲れたから、戦うのはまた今度な」

 

「戦う? なぜあなたと戦う必要があるのかしら?」

 

「決まってるでしょ。願いを叶えるため。あんたも何か願いを叶えるため、ライダーになったんだろ?」

 

「何を言っているのかしら?」

 

「……神崎からデッキを貰ったんじゃないの?」

 

「神崎? 誰よ。それにデッキ? 遊戯王でもするの?」

 

「そう……ならば知る必要はない。今起きたことはすべて忘れなさい」

 

 美穂はそう言うと立ち去った。新たな事件の予感を感じる蘭。体を透明化させると、美穂を後方へだった場所から着いていく。

 その様子を、双眼鏡で眺める男がいた。彼は木に登っている。そして言った。

 

「次は龍騎の世界と融合したか……」

 

 龍騎の世界では、ミラーワールドを舞台に、願いを懸けた仮面ライダーたちの殺し合いが行われていた。ダルダの世界に来た彼らはそこで何を思い、感じる。

 尾行の結果、次の事実が判明した。神崎士郎からデッキを託された13人の仮面ライダーが、競い合っている。最後に生き残った一人は、どんな願いも叶えることが出来る。

 かつて蘭も参加したデザイアグランプリとも似ているが、殺しあいで雌雄を決する点が大きく異なっている。

 現在、ミラーワールドにて、ファムはライアと交戦していた。その様子を眺める蘭。魔力で体を包むことで消滅を避けている。ライアはファムを圧倒していた。攻撃を受けて倒れ込むファムに、彼が言う。

 

「戦いから降りろ。あんたには破滅が見える」

 

「うるさい! 私は勝たなきゃいけないんだ!」

 

「大事な人を取り戻すことも出来ない」

 

「黙れ! なんでそんなことがわかるんだよ!?」

 

「俺の占いは当たる」

 

 立ち上がったファムは、ウイングスラッシャーを振りかざす。それをライアは左腕のエビルバイザーで受け止めた。

 それから、右手に持ったウイングスラッシャーで、刺突。敵を突き飛ばす。ライアのウイングスラッシャーはコピーベントにより生成したものだ。

 

「占いなんて打ち倒す」

 

「あぁ、運命は変えられる。だからライダーをやめろ。ライダーを続けたところで願いは叶わず、自らの命も散らすだけだ」

 

「もういい……お前を殺す」

 

 ファムはファイナルベントのカードを、ブランバイザーにベントインした。飛来したブランウイングが、ライアの後方に陣取る。そして翼をはためかせた。

 吹いた突風がライアを吹き飛ばす。近づいてくる彼を両断するため、ファムは武器を振りかぶった。接近。ファムが振り下ろす。ライアはそれを自らの薙刀で、上に弾き飛ばした。それから左薙ぎの斬撃を、すれ違い様に浴びせる。

 

「よく考えるんだな。自分が何をすべきか」

 

 倒れるファムに向けて、彼はそう言い放つ。そしてどこかへと立ち去っていった。

 ファムの体にノイズのようなものが走る。それは制限時間が近づいた証。このまま滞在を続ければ消滅してしまう。彼女は近くの窓から脱出。蘭もその後を追った。

 

「どうしよう……このままじゃお姉ちゃんは……」

 

 姿を現した蘭が、美穂に話しかける。

 

「ずっと見てたよ、美穂さん。あなたも色々と抱えてそうね」

 

「放っておいてよ……」

 

「そんなこと出来るわけないでしょ!?……少なくとも私の……大事な人なら見捨てない」

 

「優しいんだね。あなたみたいな娘がライダーでなくてよかった」

 

「仮面ライダーではあるわよ。よければ戦い方を教えましょうか? 今のあなたの動きには無駄が多すぎる」

 

「ありがとう。今日はこのあと仕事があるから、明日、お願いできる?」

 

「えぇ、明日この場所でまた会いましょう」

 

 二人は指切りをした。明日また会うために。しかし結局、彼女たちは二度と再会することはなかった。

 

「蘭のいない学校……つまんない……」

 

 その頃、城南中学校。リカは一人で登校したが、元気がない。休み時間、机に突っ伏している。そこへ洋子が話しかけてきた。

 

「今日、蘭は休み?」

 

「うん……そんなとこ……なんか……愛想尽かされちゃったみたい……はぁ……死にたい……」

 

「そんなことないと思うけどなぁ。あの子リカのこと大好きじゃん?」

 

「それはそうだったけど……」

 

「そうだよ! だって蘭はいつもリカのためを想っているよ?」

 

 洋子の言葉を受けて、蘭との思い出を思い出し始めるリカ。蘭は祖国を裏切ってまでリカの側につき、アスモデウスが来ると変身できずとも戦い、デザイアグランプリでは家族との再会を投げ捨ててリカのために願いを叶えようとした。

 しかし、蘭の献身ぶりを思い返すほど、そんな彼女に己を否定された傷がいっそう開く。そして怒りも湧いてきた。

 

「一発ぶん殴らないと気が済まない」

 

 そう呟くと、彼女は立ち上がった。次の授業などお構いなしに、教室の窓に手をかける。飛び降りてショートカットするつもりだ。

 しかし突如、窓ガラスから三人の仮面ライダーが飛び出した。紺のナイト、紫の王蛇、緑のゾルダだ。ナイトはダークバイザー、王蛇はベノサーベル、ゾルダはマグナバイザーを手に、三つ巴の乱戦を繰り広げている。突然のことに教室はパニックと化した。

 

「ちょっと!? お前たち何よ!」

 

 リカは駆け出しながらダルダに変身。戦いを止めようとする。しかしナイトに蹴られ、ゾルダに銃撃を浴びせられてしまった。

 

「邪魔をするな!」

 

 ナイトの叫びに続けて、王蛇が言った。

 

「ライダーがもう一人……せいぜい俺を楽しませてみろ」

 

 リカは軽い読心術を使える。通常の心理状態にある者の心は読めないため、大した意味はないが、興奮状態にある者であれば朧気ながら読み取れる。

 読心術を使った結果、ナイトは死人を甦らせる、ゾルダは生きる、王蛇は戦いを楽しむため戦っていることを理解した。

 

「誰だか知らないけど……お返しさせてもらうよ」

 

 ダルダが放つドロップキック。狙いは王蛇だ。ところが彼はベノサーベルで迎撃。左薙に切り払われたダルダは、吹き飛ばされてしまう。そこへ彼がジャンプで接近。倒れる彼女を、連続で剣で叩きつける。

 

「ハーハッハ! どうした? もう終わりか?」

 

「……ここで暴れるのは……」

 

 ダルダが白く発光した。

 

「あん?」

 

「やめなさい!」

 

 白い光は全身から放つ衝撃波と化す。王蛇を仰け反らせた。

 四肢をバネとして用いて、高く跳ぶ。その体勢から踵落としを仕掛けた。王蛇の左肩に命中する。しかし反撃で、剣による突きを受けた。よろける王蛇と、飛ばされながらも着地するダルダ。

 その時、ゾルダは鋼の巨人・マグナギガを召喚した。それの背中にマグナバイザーを挿入する。

 

「ごちゃごちゃした戦いは好きじゃない」

 

 そう呟いたゾルダが、引き金を引いた。するとマグナギガは両腕を前に向け、前方が開く。そして無数のミサイル、ビーム、弾丸が放たれた。ゾルダの必殺技・エンドオブワールドである。

 吹き飛ばされるナイト、王蛇、ダルダ。ゾルダが悠然とその場を去る。立ち上がった王蛇はそれを追った。ナイトも戦線を離脱しようとしたが、その腕をダルダが掴む。

 

「荒らすだけ荒らして即さようなら? 何か言うことあるんじゃないの?」

 

「……すまない。ライダーでない者まで戦いに巻き込むわけにはいかなかったな」

 

「小川……恵里……」

 

「なぜその名前を!?」

 

「いや、ごめん。想いがあまりにも強かったから、伝わってきちゃった」

 

「超能力者ということか」

 

「魔法使いだよ。よろしく。どうやら、戦いに勝てばその人を救えると思っているみたいだね。本当にそんなことが出来るの?」

 

「さあな。だが俺は戦い続ける。僅かでも可能性があるなら」

 

「戦う……」

 

 ナイトはこくりと頷くと、破壊された窓から飛び降りて、どこかへ消えていった。それを見て、変身解除したリカも覚悟を固める。

 

「蘭を連れ戻す」

 

 リカと蘭は、魔力を探知することで互いの位置を知ることが出来る。よって蘭の居場所は簡単に掴めた。

 外に出ると、バイク・ビオプランターを召喚。それに跨がった彼女は蘭の元へ向かう。しばらく走ると、公園に到着した。そこにはベンチに座っている蘭がいる。バイクを降りて、話しかけた。

 

「見つけたよ」

 

「あなたと話すことなんて何もないわ。消えなさい」

 

「私にはある!」

 

 するとリカが飛びかかる。蘭目掛けて空中から、拳を突き出した。それを重ねた両掌で受け止める蘭。だが膝蹴りを喰らう。

 後退する彼女に向かって、リカは連続で殴りかかった。蘭はそれを腕で防ぐ。両者のパンチが激突。反動で吹き飛ばされるが、着地する。その手にはそれぞれ、球魂が握られていた。

 

「力ずくで黙らせる」

 

 蘭が呟く。彼女は球魂を持った右手を、前に突き出した。リカは両腕を突き出すと、反時計回りに回す。それから腕を交差させた。両者叫ぶ。

 

「「変身!」」

 

 リカは両腕、蘭は右腕を外側に開く。白い光に包まれてリカはダルダに、黒い球に覆われて蘭はオルキニスに変身した。

 二人が変身して対峙するのはこれが二回目である。しかし前回は決着がつかなかった。

 両者駆け出す。腕を突き出し、衝突。ロックアップの体勢になった。互いに譲れぬものを懸けて、力を振り絞る。そこから同時にキックを打ち合った。手が離れて仰け反る。

 

「もう二度と離れたくない!」

 

 ダルダは前方宙返りからのキックで、オルキニスを後退りさせる。負けじとオルキニスは魔法でゾンビブレイカーを生成。袈裟目掛けて斬りかかるが、かわされる。

 ダルダのパンチを、武器を横に構えて受け止めた。しかし防御は、左足で蹴り上げられる。空いた胴に右足からのボレーキックを受けた。吹き飛ばされるオルキニス。

 

「これが反撃と信念、二つの球魂の力ね……」

 

「悪いけどこの勝負、私の勝ちだよ」

 

 瞬間移動で急接近したダルダ。踵落としで地面に激突させた。

 滞空する彼女の背後に、十聖刃を含めた十二本の聖剣が出現。それをオルキニス目掛けて打ち出した。エネルギーと化した剣が、次々と貫いていく。

 

「これで決める」

 

 ダルダが横に高速回転を始めた。さらに全身に白く刺々しいエネルギーを纏う。彼女は右足を突き出すと、倒れるオルキニス目掛けて特攻を仕掛けた。

 

「超電子ドリルキック!」

 

 それはチャージアップストロンガーの必殺技だった。ライダーキックがオルキニスに激突。彼女は防御障壁を張って耐える。

 ところがキックは壁を突破。地中まで炸裂する。衝撃でオルキニスは吹き飛ばされ、地面には巨大なクレーターが完成した。

 

「想いを為し遂げる強さが私にはある!」

 

「こんなもんなのかしら?」

 

 砂煙の中から、オルキニスが平然と立ち上がる。各部装甲に汚れは目立つが、大したダメージは負っていない。左腕をクライシスバスターに変化させた。

 ダルダ目掛けて発砲するも、光弾は難なく手で弾かれる。それでもオルキニスは攻撃をやめなかった。連発する。弾を弾くダルダだが、一発を弾き返せず被弾。よろけた。

 

「威力が増した?」

 

 オルキニスは瞬間移動でダルダの後方に移動。横に駆け出しながら銃撃して、死角にヒットさせていく。

 相手が怯んだ隙に、右手にデュアルリーファーを召喚。ジャンプからの幹竹割りで、一太刀を入れた。

 倒れそうになったダルダだが、負けじと殴り返す。両者、衝撃で後ずさった。オルキニスの奮闘を理解できないダルダが言う。

 

「どうして……今さら蘭ごときに苦戦する……」

 

「なぜあなたの球魂が反撃の球魂で、私のものは追撃の球魂という名称なのか。それは最適の戦闘スタイルに由来するわ」

 

「え?」

 

「ダルダは逆境や苦戦からの反撃に出ることで出力が増していく。そしてオルキニスはペースを作り、次々に追撃していくことで魔力が強まる。心当たりあるんじゃない?」

 

 リカはこれまでの戦いを思い出した。母親の危機から始まった初戦のスパイダー戦、捕らわれたレイを救うため追ったモスキート戦。

 敵の猛攻にボコボコにされながらも、一縷の勝ち筋を掴んだ幹部戦、ナイトローズ戦、アスモデウス戦、ラスボスジャマト戦、クオン戦。彼女の勝利にはいつも逆境が存在した。

 

「そして、行動への信念を持たぬ今のあなたに、信念の球魂は使いこなせない。本当は気づいているのよね? こんな戦いに意味ないって」

 

「信念……蘭を取り戻す……!」

 

 想いを込めたダルダの右ストレートが放たれる。しかしそれは信念足り得なかった。オルキニスの左手に呆気なく受け止められる。

 倒れたダルダは変身解除した。リカはうつ伏せになってうずくまっている。そして泣き出した。

 

「だって……蘭がいなくなっちゃって……私もうどうしたらいいのかわからなくなって……」

 

 変身解除した蘭が、地面に立て膝を突き、リカの両肩を掴んだ。そして抱き寄せる。

 

「ごめんなさい……私の行動でここまであなたのことを傷つけるだなんて思わなかった……」

 

 リカは蘭に抱きしめられたまま、しばらく泣いた。それを無言で受け止める蘭。やがてリカが落ち着いてくると、優しく言い放つ。

 

「レイさんとの確執だけは解消してほしい。これは私のワガママかもしれないわ。でも出来れば家族を大事にしてほしい」

 

「うん。わかった」

 

 覚悟を決めたリカ。バイクに乗ると、帰宅する。店ではレイと瑠夏が作業に励んでいた。そこへリカが入る。レイが言った。

 

「いらっしゃ……ってリカ? 随分と早いわね」

 

「お母さん、話がしたい」

 

 いつになく真剣な彼女の目を見たことで、レイは変化に気づく。

 店を瑠夏に任せると、二人は住居スペースの方に向かう。リビングで向かい合って、テーブルに座った。するとリカが切り出す。

 

「私、やっぱりお母さんのこと、許せない」

 

 リカは元々、都合のよい兵士としての運用を目的に作られた。魔時空界との戦いも決して偶然でなく、レイの掌の上だった。

 そしてそのために彼女が行ってきた、残酷な行い。これまで内に秘めていた不満をぶつける。だがレイは動じなかった。

 

「そう……悲しいね」

 

「……それだけ……?」

 

「うーん、まあ人間界を守れた時点で私の願いは叶ったわけだしね。もうあなたに大した価値はないのよ」

 

「価値……? なにそれ……」

 

「復讐されても困るから養ってあげるけど、私はあなたに何も求めない。好きに生きなさい」

 

「嘘でしょ……お母さん……」

 

「本当よ。自意識過剰かな」

 

 予想外の反応で動揺するリカ。だがレイの言葉に抑揚がない。興味がないことは明らかだ。リカは机を飛び越えると、レイにドロップキックを喰らわせた。

 蹴り飛ばされ、倒れるレイに向かって、リカが言った。

 

「今までお世話になりました!」

 

 一礼をしたリカは家を後にする。玄関を出た先では、蘭が待っていた。

 

「ごめん、蘭! 仲直りなんて出来なかったよ……」

 

「そう……なら今後住むところを探さなきゃね」

 

 彼女たちは手を繋ぐと、かつての自宅を後にした。住む場所を失ったというのに、二人の顔は晴れている。

 レイは床に座って項垂れていた。階段をドタドタと駆け登る音が、外から聞こえてくる。そしてドアが開かれた。瑠夏だ。レイを見つけると聞く。

 

「リカと喧嘩してたみたいだけど何かあったのか?」

 

「リカに嫌われちゃった。あの子達出ていくって。育ててあげた恩も忘れて最低」

 

「出ていくって、じゃねぇだろ! なんでそんなに冷たいんだよ。親子の情とかないのか!?」

 

「あるわけないでしょ。あの子は傭兵。もはや今となっては穀潰しよ」

 

 それに激昂した瑠夏は、レイに平手打ちを食らわせようとする。しかしその掌は、レイの掌に阻まれた。

 

「ただの人間のあなたごときに私は止められない」

 

 瑠夏はその瞬間、思い出した。レイの真の姿を。かつてレイは怪人体となり、瑠夏の家族を殺したのだ。その力はダルダやナイトローズには遠く及ばない。だが、球魂を持たない今の瑠夏にとっては驚異である。

 腕を振り下げ、俯く瑠夏。レイは立ち上がると、彼女を突き飛ばした。そして外に飛び出していく。

 

「私にも力があれば……母に手をあげた娘を絶対に許さない……」

 

 レイは寂れた商店街をさまよっていた。両サイドの店舗はほとんどがシャッターに閉ざされている。すると窓ガラスに男の姿が浮かんだ。レイが左を向く。男は何かを投げ渡しながら言った。

 

「お前の目には強い憎しみが宿っている。力を行使して願いを叶えろ」

 

 レイが受け取ったのはカードデッキ。カマキリのような紋章が描かれていた。

 

「これは?」

 

 その男、神崎士朗が答える。

 

「それを使って仮面ライダーとなり、戦いに勝ち残れ。生き残った一人はどんな願いも叶えられる。戦え」

 

「わかった……この力があればリカを倒せる……」

 

 気がつくと、神崎の姿は消えていた。レイは手に持ったデッキを眺めている。この力があれば、リカをその手で倒せる。彼女はリカの魔力を察知すると、居場所に向けて歩き出した。

 リカと蘭は公園のベンチに座っている。そして話していた。

 

「生活に関しては魔法で何とでもなるわ。だから心配することはない」

 

「そうだね。どこに住む?」

 

「ホームレスにはなりたくないものね。取りあえず当面はホテル暮らしにしましょうか。お金は魔法で増やせるから」

 

「わーい! バイキング楽しみ!……あとね、信念の球魂のことなんだけど……」

 

「別にいいじゃない、使いこなせなくても。あなたは十分に強い」

 

「さっき圧勝された相手に言われてもな……」

 

 握り締めた黒い輝石を眺めながら、リカが言った。二人が今後について考えていたその時、レイがやって来る。

 

「よくもさっきはぶちかましてくれたわね……」

 

「今更なにしに来たの?」

 

「恩知らずには手痛いお仕置きをね」

 

 そう言いながらレイはリカに、カードデッキを見せつけた。取り出したスマホの画面に、デッキを向ける。すると腹部にベルトが現れた。それの窪みにデッキを装填する。

 

「変身」

 

 アーマーを纏い、レイは仮面ライダーに変身した。その姿はダルダとミラーライダーを混ぜたような見た目をしている。

 アンダースーツは黒。全身各部にジペットスペッドがある。ベルトの両サイドにホルスターが増設されており、二振りの鎌を携帯していた。

 

「私こそこの世で最初にダルダに変身した女。つまり本家本物、オリジンダルダよ」

 

「なんなの? その姿は……」

 

 動揺するリカ。オリジンダルダが襲いかかる。蘭はリカの前に割って入ると、腕をクロスさせて、敵のパンチを受け止めた。

 

「リカと歩む未来を掴み取る!」

 

 蘭は黒い闇を纏い、オルキニスに変身する。その後ろでは、変身したダルダが跳躍。オリジンに飛び蹴りを喰らわせた。

 オリジンダルダが鎌─ジェダイバイザー─を抜刀。X字状の斬撃を打ち下ろして、蹴りを迎撃する。ダルダは吹き飛ばされたが、一回転して着地した。

 オルキニスがデュアルリーファーを召喚。突撃する。連続で振り払い、二刀流同士の剣劇を演じる。刃と刃が打ち付け合わされた。

 

「私たちのコンビネーション、舐めんなよ!」

 

 いつの間にか敵の背後に移動していたダルダ。ハイキックを相手の首に打ち込んだ。オリジンの防御が解ける。そこをオルキニスが、袈裟と逆袈裟に斬りつけた。後ずさるオリジン。

 二人は続けて蹴りで畳み掛けようとする。しかし敵が大きくジャンプしたことで不発に終わった。

 空中でオリジンダルダはデッキからカードを引き抜き、それをバイザーの束頭のスロットに挿入する。

 

『ADVENT』

 

 すると緑のミラーモンスターが出現した。カマキリ型で名前はジェダイス。オリジンダルダの契約モンスターだ。

 

「分断させてもらうわ」

 

 自身はダルダと、ジェダイスはオルキニスと対峙する。ダルダが右手にダルダスプリッターを現出。オリジンに突撃した。

 敵はガードベントを発動。前方に円形の盾─ダイスサークル─を生み出して、それを受け止める。

 さらに盾を変幻自在に動かして二の太刀、三の太刀と打ち合う。そしてダルダの刃が弾かれた。危機を察知したダルダが瞬間移動する。だがその移動先を読んだオリジンは、背後にトラースキックを繰り出す。それは出現した瞬間のダルダの鼻筋に命中した。

 

「困ったら後ろに回る。まったく癖が抜けていない」

 

 オリジンがカードをバイザーに装填した。

 

『SWORD VENT』

 

 空中より飛来したのは、長い柄を持つ大鎌─ダイスラッシャー─。振り向き様、左薙の斬撃を浴びせた。

 さらにダイスサークルを自身の頭上に設置。そこからサイコロ状の光弾を放つことで、援護射撃をさせる。ダルダの回避や反撃の隙を潰していった。

 一方でオルキニスもジェダイスに苦戦を強いられていた。羽根を広げて空を飛ぶ敵に対して、オルキニスも赤い翼を背中に生やして対抗。鎌から繰り出される衝撃波を避けつつ、左手のクライシスバスターより砲撃を仕掛ける。しかし巨体に似合わない機動力で、ジェダイスはそれをかわす。

 オルキニスの優位点は小回りにある。しかしジェダイスの複眼の視野角は360度。つまり死角が存在しない。

 

「弱い箇所を突く考え方は止めましょう。相手の強みをさらにそれ以上の強さで砕く!」

 

 作戦を決定した彼女は、空中で制止した。左腕のクライシスバスターを魔力で巨大化させると、右手を添える。そして砲口から紅い光線を発射した。

 ジェダイスも両手の鎌より二振りの緑の衝撃波を放つ。両者の攻撃は中央で拮抗する。

 ジェダイスはさらに上を飛ぶ。ビームの光で視界が封じられているオルキニスに、降りかかるよう強襲。鎌で連続で斬りつけた。

 オルキニスの砲撃が中断されたことで、抵抗を失った衝撃波が直進。追撃を受ける。彼女は地面に落下した。

 

「くっ……強い……!」

 

 ジェダイスが接近してくる。絶体絶命の危機。だがその時、赤き龍が襲来。ジェダイスを尻尾で叩きつけ、地面に打ち落とした。

 

「一体何が……」

 

 オルキニスが困惑している。するとそこへ赤い仮面ライダーがやって来た。無限龍・ドラグレッダーを従える仮面ライダー龍騎だ。倒れるオルキニスに問いかけた。

 

「あんたもライダー……なのか?」

 

 これまでに目撃したファムやライアとも共通する龍騎のフォルムを見て、オルキニスが正体を悟る。

 

「なるほど……あなたもライダーバトルの参加者……悪いけど私は違うわ」

 

「だったら早く逃げて」

 

 彼はそう告げると、ジェダイスに立ち向かっていった。また、背中にダークウイングを装備した仮面ライダーナイトも、空から登場。ダークバイザーを引き抜くと、斬りかかる。

 龍騎とナイトはジェダイスが発した気配を聞き付けて、ここまでやって来ていたのだ。

 

 二人は倒れた敵に攻撃を仕掛ける。しかしジェダイスは回転してライダーを遠ざけると、再び飛翔。ナイトが後を追う。

 上空の攻防を見上げる龍騎。その足元に、ダルダが殴り飛ばされた。視線をオリジンダルダにやる。腹部のデッキを見て、ミラーライダーと認識した。龍騎が尋ねる。

 

「あんたはなんの願いのために戦っているんだ?」

 

 それにオリジンダルダが答えた。

 

「娘を一生飼い殺す」

 

「それが親の願うことかよ!」

 

 龍騎が反論する。立ち上がったダルダは、龍騎を突き飛ばした。

 

「どいて! あいつとの決着は私がつける!」

 

 駆け出すと、ジャンプからのパンチを繰り出す。だがシールドに阻まれた。

 大鎌が左薙に振られる。ダルダはその刃を、右膝と左肘を打ち付けることで受け止めた。

 

「大振りの攻撃が何度も決まるなんて……思わないでよね!」

 

 右手に光の刃を生やすと、振り下ろして、ダイスラッシャーの柄を切断する。

 上空ではナイトがジェダイスのさらに上を飛ぶ。そしてデッキから引き抜いたカードを、バイザーに装填した。

 

『FINAL VENT』

 

 新たに現れた槍・ウイングランサーを両手で逆手で持つと、マントで全身を包む。巨大なドリルと化して、標的に突っ込む。ナイトの必殺技・飛翔斬だ。

 だがジェダイスも鎌で攻撃。両者せめぎあう。しばらくの拮抗の後、勝ったのはジェダイス。ナイトは吹き飛ばされてしまった。

 そこへジェダイスが鎌から衝撃波を放つ。マント・ウイングウォールで受け止めるナイト。だが衝撃を殺しきれない。落下する。彼に龍騎が駆け寄った。

 

 一方、ダルダもまた、オリジンダルダに圧倒されていた。攻撃を悉く防がれ、反撃の糸口を掴めない。その原因は明らかだった。

 

「信念の球魂さえ使いこなせれば……!」

 

「あなたに信念なんてあるわけないでしょ? そんなもの、持たせてこなかったんだから」

 

「だったら今、掴めばいい」

 

 何のために戦うのか。リカは思考に繰れる。大切な人を守るため? 本で不幸になる人をなくすため? 人の夢やヒューマギアを守るため? 命を懸けてでも叶えたい願いのため? 恋人の命を救うため? 自分が生き永らえるため? 欲望のまま暴れるため?

 答えはでない。オリジンダルダの連続パンチに晒される。

 

「無いものは無い!」

 

 ジェダイバイザーによる刺突。ダルダは吹き飛ばされる。地面に垂直に鎌を振った。放たれる二筋の衝撃波。それが直撃し、ダルダの両腕は切り落とされてしまった。

 

「勝負あり……ね」

 

「あっ……うぐっ……」

 

 母を倒すことは、信念足り得ることとリカは考えていた。しかし球魂の力を引き出しきれない。何が足りないのか。何が違うのか。

 オリジンダルダは白く発光すると、跳び上がった。空中で一回転すると、右足を前に突き出し、ダルダに迫る。絶体絶命の危機を前に、リカは思い出した。

 

「そうだ……! 私の望みは平穏な生活……それを脅かす立花レイを倒す!」

 

 ようやく見つけたリカの信念。それに球魂が応える。肘から光が溢れ出すと、両腕が魔力により再生された。

 敵の足首を両手で掴むと、ハンマー投げのようにぐるぐると回す。それから手を離して、投げ飛ばした。

 

「なに!?」

 

 オリジンダルダは空中で姿勢を制御。ダイスサークルを掲げると、無数の光弾を射出した。だが、彼女の背後から、ダルダの右足のみが出現。そのまま蹴り飛ばされた。

 ダルダは雷を纏うと、雷鳴のごとき速度で跳び、オリジンダルダの目の前に迫る。雷が走るダルダスプリッターを、右手に精製。すれ違い様、左薙に切り裂いた。

 

「クオンの力……敵だったときは恐ろしかったけど、自分が使えるとなると頼もしいね!」

 

 彼女は振り返ると、左腕を掲げた後、念じた。次の瞬間、天から落雷が落ちる。それはオリジンダルダを地面に叩きつけた。

 倒れた相手の四肢に、岩石を生み出す。地面と張り付け、動きを封じた。大の字で無抵抗のレイ目掛けて、ダルダはライダーキックを繰り出す。足先を雷で包み、全身は赤い熱風で覆われている。背後には五つの氷塊を従えていた。

 

「リベンジャーフェイス!」

 

 クオン特有の属性攻撃が合わさった一撃。オリジンダルダに炸裂した。地面にクレーターを形成するほどの破壊力は、膨大な砂煙を生む。

 一方、龍騎とナイトは引き続きジェダイスと交戦していた。ジェダイスに大苦戦していたが、立ち上がったナイトが叫ぶ

 

「城戸! ドラグシールドを装備したお前を抱えて接近する」

 

「そうか! それなら奴の懐に潜り込める!」

 

 龍騎がガードベント・ドラグシールドを二つ召喚。両手に持った。彼の足を抱えて、ナイトは大空に舞う。

 ジェダイスが鎌を振り下ろす。だが縦に命中した先端は、滑り落ちた。ドラグシールドは曲面なため、衝撃を分散できるのだ。すかさず上昇。体当たりを相手の首に命中させた。

 

「よっしゃぁ!」

 

「油断するな! 邪魔な鎌を切り落とすぞ」

 

 二人がソードベントを発動。龍騎はドラグセイバー、ナイトはウイングランサーを召喚した。龍騎は落下しながら剣を振り下ろし、右鎌を切断。ナイトは飛び上がりながら切り上げ、左の鎌を両断する。

 そのまま落ちていた龍騎だが、突如、虚空に見えない地面が現れて、それに両足をつけた。足場を作ったのはオルキニスだ。龍騎はファイナルベントを発動する。

 

『FINAL VENT』

 

 とぐろを巻くドラグレッダーの前方で、腰を下ろしたポーズを取る。跳び上がると回転。ドラグレッダーが吐き出した炎をその身に受けて、跳び蹴りを放つ。

 ドラゴンライダーキックはジェダイスを貫いた。空中で爆破四散するジェダイスをバックに、着地する。怪人の死体から現れた発光体を、ドラグレッダーは食べると、そのまま飛び去っていった。

 大ダメージを受けたオリジンダルダだが、まだ変身を維持していた。ダルダに向かって歩を進める。しかしその時、全身から力が抜けていった。

 

「なぜ……」

 

 困惑するオリジン。そこへ、ダルダの前に立った龍騎が解説した。

 

「モンスターは倒した。もうお前は戦えない」

 

「どうして!? どうして私の邪魔をするの!?」

 

「俺は人を守るためにライダーになったんだ。ライダーを守ったっていい!」

 

 ブランク体になってなお、拳を振り上げ駆け寄るオリジン。だがダルダが指先から光弾を放つ。それは腹部のデッキに当たり、粉々に砕いた。変身が解除されるレイ。

 それを見て他の者も変身を解除した。リカがレイに歩み寄り、片膝をつき、話しかける。

 

「ごめんね、お母さん。お母さんとはもう一緒にはいられないの」

 

「この……恩知らずが……!」

 

「ううん。感謝してる。だからお母さんを殺さないんだよ?」

 

「……そこまで恨まれていたなんてね……そう、ならもうどこにでも勝手に行きなさい……」

 

 レイは項垂れながらその場を立ち去る。リカと蘭は憑き物が晴れたかのように笑顔でどこかへ行った。あとには城戸真司と秋山蓮だけが残される。真司が呟いた。

 

「こんな悲しい終結があるかよ……」

 

「……他人の家庭事情にいたずらに首を突っ込むべきじゃない。帰るぞ」

 

 真司と蓮もまた、帰路についた。

 神崎士郎はミラーワールドから、一連の出来事を眺めていた。そしてライダーバトルに支障を来しかねないダルダの存在を認識する。

 世界の融合を解くため、融合が起こる前に戻り、同じことを繰り返さぬようすることを決めた。現れた仮面ライダーオーディン。ゴルトバイザーにタイムベントを装填する。龍騎の世界の時間が巻き戻っていった。

 

 レイはまだ帰宅していない。リカと蘭はその隙を縫って、一度自宅に戻る。そこでは瑠夏が四人分の夕食を作って待っていた。

 

「ただいま、レイとはどうなった?」

 

「……ダメだった!」

 

「そうか……まあ気にすんな、血が繋がってるだけでわかり合えたら苦労しねぇ。ここには居づらいって感じだろ?」

 

「うん」

 

「じゃあしばらくは俺が住んでたアパートで暮らせ。月末まではいられる。そっから先、また困ったことがあったら連絡しろよ」

 

「わかった、ありがとう!」

 

 リカは瑠夏から鍵を受け取り、アパートの所在地を教わった。部屋から必要なものを取り出すと、足早に去る。

 

「そんじゃ、俺も助けてやらねぇとな」

 

 そう呟いた瑠夏。家を出て町を奔走する。やがて畑道に出る。そこでボロボロのレイを見つけ出した。倒れそうになる彼女の肩を掴み、支えてやる。それから語りかけた。

 

「いい加減に帰ってこいよ。花がお前を待ってる」

 

「妹……」

 

「瑠夏ちゃん、な?」

 

「瑠夏……ちゃ……」

 

 体力を使い果たしたレイは、眠りについた。瑠夏は彼女を背中におんぶすると、帰路に着く。リカ、蘭、レイ、瑠夏は衝突、対立、離反、協調、紆余曲折を経て新たな一歩を踏み出したのだった。

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