令和に復活!仮面ライダーダルダ a girl blooms 作:ぽかんむ
レイの自宅の一階は花屋である。その名もフラワーショップ・立花。花屋の朝は早い。店頭の花の手入れや、ベンダーから仕入れた商品の納品など朝から大忙しだ。
そんな忙しい毎日でも、リカと一緒に朝食を取ることは欠かせない。二人は椅子に向かい合って座り、食パンに噛り付いている。
彼女たちの食事風景を、魔法で作った円形の液晶越しに眺める者がいた。特別士官のオルキニスである。彼女は魔時空界の宮殿にいた。その背後から女性がやって来る。画面を見ると言った。
「自宅が割り出されているのに呑気に朝飯とは、間抜けな奴等じゃねぇか」
「あらバタフライさん、お疲れさまです」
バタフライミッシ。その名の通り蝶の力を宿した怪人である。オルキニスが皇帝の元で働き始めた直後に世話になった先輩であり、今でも彼女はバタフライのことを慕っている。
「……だがこの心の強さにあたしたちが苦戦しているのも事実か」
「はい。何しろ十一年……でしたか」
「なぁ、次はあたしを派遣しろ。街ごとこいつらもぶち殺して、死体から球魂を回収してやるよ!」
「それは認められません。球魂の奪取はなるべく人間どもに我々の存在は悟られない方法で、というのが陛下のご命令です。奪い取ることはあくまで目的ではなく手段ですから」
「そうかよ……でもあたしは許せねぇ! 仲間の命を奪ったこいつを!」
「えぇ。それは同感です。実はひとつ策があるのですが……」
オルキニスはバタフライに、自らが立案した作戦を伝える。それを聞き、勝算を得たバタフライ。彼女はオルキニスが開いた魔方陣を抜けて、人間界に足を踏み入れる。
「それじゃお母さん、行ってくるね!」
玄関。ランドセルを背負ったリカが、学校に向かおうとする。それを止めるレイ。
「あら? まだ早いんじゃないの?」
「走り込んで体力をつけるんだ! みんなを守れる力を手に入れるための修行だよ」
笑いながらリカが言った。靴を履くと、玄関をあとにする。二階の居住スペースから裏口の階段を下り、外に出た。そして学校と反対側方に走り出す。
これまでの人生にももちろん満足していた。だが明確な目標を持ったことで彼女はさらに日々を楽しめるようになった。その時だった。彼女の耳に微かに発砲音が響く。慌てて体を左横にずらした。右を向くと、石塀に開けられた穴から煙が登っている。
「弾丸? 狙撃? まさか新手の魔時空界の怪人なの!?」
リカは状況を察した。姿の捉えられない敵から逃げるため、遮蔽物の多い場所を目指して走る。しかし、いざ探すと中々見つけられない。
発砲は止まず、リカは紙一重でなんとかかわしていた。逃げることが困難と感じた彼女は、球魂をポケットから取り出す。そして握りしめてから叫んだ。
「変身!」
ダルダに姿を変えると、地面を強く殴り付けた。隆起したアスファルトが彼女の周りを囲う。これで狙撃を凌げるだろうと考えた。しかし大きな爆音が鳴ったかと思うと、盾は破壊されてしまった。
「そんな……! どうやって!?」
未知なる敵へ怯え始める。彼女はビオプランターを生み出すと、それに跨がった。エンジンをかけて走らせる。道をジグザグに進んでいると、発砲音も聞こえなくなった。
振り切ったのだろうと考えた彼女は、変身を解除すると、登校中の他の児童に混じる。その後も攻撃はなく、なんとか小学校に着いた。
給食の時間。その後もリカはいつ来るかもわからぬ攻撃に警戒していたが、結局行われることはなかった。しかしずっと気を張っていたためにヘトヘトになっている。そんな彼女に洋子が尋ねた。
「リカはなにか怖いものとかある?」
「スナイパー……あっ、いや、別に……」
「確かにスナイパーって怖いよね! いつどこから襲ってくるかわからないから。マジレンジャーにもスナイパーの敵がいてね……」
いつもなら洋子の長くなりそうな話は適当に流す。ところが今日は違った。激しく食いつく。
「その敵はどこにいてどうやって倒したの!?」
「うん! その敵は鏡とかガラスといった反射するものの中に潜んでいて、最終的にそこに入り込んだマジイエローがスナイパー勝負を制したの! つまりは常識を疑うことが大事なんだよね!」
その後も洋子の語りは続いたが、リカは聞き流す。同時に彼女の情報が、敵を倒すヒントにならないか考えていた。そして何かに気づく。
「ひょっとして……こういうこと?」
ならばむしろ今はピンチでなくチャンス。そう思った彼女は、勢いよく駆け出す。乱暴にドアを開けて教室を飛び出た。
そのまま廊下を走り、体育館に入る。児童がみな給食を食べているため、そこには誰もいない。彼女はダルダに変身すると、周辺の空気を魔法で操る。竜巻のような渦を発生させた。すると彼女の背後に、蝶のような見た目の屈強な怪人が姿を見せる。
「しまった、鱗粉が吹き飛ばされた……」
「そこね!」
振り向き様、右ストレートパンチを放つ。怪人を吹き飛ばした。
「なぜだ……なぜわかった!?」
「私はスナイパーに遠距離から狙われていると思っていた。でも常識を疑った。そして、敵はスナイパーでなく近距離から私を狙っている可能性を考えたの」
そのため、リカがバイクに乗ったあとも、バタフライミッシは翼を使って追い付いていた。しかし通行人が視界に入ったことで、事件が明るみになることを嫌って攻撃を中断。これをリカは、振り払ったものと誤認していたのだ。
「ほう……なるほどな……」
「まさか透明化してずっと私の近くをつけていたとは思わなかったよ」
バタフライミッシは分泌させた鱗粉を全身に覆うことで、光の屈折を操り、外部からの視認を困難にすることができる。
怪人がピストルを構える。魔法で生み出した武器だ。そこに鱗粉を込めると、ダルダ目掛けて発砲した。鱗粉は強力な弾丸にもなるのだ。しかしダルダは左右にステップを踏みつつ、距離を詰めていく。
「やばっ……!」
懐に入り込んでからのエルボーで怯ませた。間髪入れずに腹を両手で押さえ込み、背中方向に投げ飛ばす。フロントスープレクスが決まると、そのままヘッドロックに移行。敵の頭を脇に抱えて締め上げる。
「てめぇ……やるじゃねぇか!」
「このまま落ちなさい!」
バタフライミッシが天に一本の槍を生み出す。それをダルダと自らに目掛けて落下させた。気配を察したダルダは、拘束を解くと、素早く転がって串刺しを逃れる。怪人は槍を掴むと、立ち上がる。それからダルダを突き刺そうとした。
刃を避けていくダルダ。怪人は左手にピストルを再召喚。発砲して、ダルダの太股に命中させた。動きが鈍った彼女に向けて、今度はバズーカを生み出して構える。それを放った。今朝、アスファルトの盾を打ち破った攻撃だ。着弾した弾が爆発する。
「はっはっは! あたしの持ち味は多彩な武器の生成及び取り扱い! 闇討ちだけの相手と思ったら火傷するぜ!」
勝利を確信した怪人が叫ぶ。だがダルダは死んでいなかった。ミッシの足元から、アッパーパンチを放って高く跳び上がる。
「残念ね! 力の使い方は私が上よ!」
彼女は着弾の瞬間、床に穴を開けて地下に逃れていた。さらに爆風の威力を、気流を操る魔法で方向を操作して、自らの推進力に変えていたのだった。
打ち上げられる怪人。ダルダは白く発光しながら、天井を蹴って落下する。体を捻りドリルのように回転させながら、右足を突き出した。
「ブルーミングシュート!」
打ち下ろされたキックがバタフライミッシを貫く。怪人は空中で爆発。ダルダは着地したが、太股に痛みが走って倒れた。
「いたたた……」
早く教室に帰らなければ、体育館に児童が来てしまう。変身を解除した彼女は魔法で傷を塞いだ。さらに壊れた体育館を元に戻す。後始末が済むと、教室に戻っていく。
「ギリギリセーフ……ヒーローってやっぱ大変……」
廊下を歩いているリカの様子を、オルキニスは画面越しに眺めていた。その形相は怒りで満たされている。
「おのれダルダ……よくもバタフライさんを!」
そこへ話しかけられる。
「オルキニス、貴様、バタフライミッシまでも使い潰すとはどういうつもりだ?」
声の主はナイトローズだ。オルキニスの肩を後ろから片手で掴むと、圧力をかける。
「貴様には才能がある。これ以上失望させるな」
「……申し訳ありません……」
作戦に失敗したオルキニスは、ただ謝罪することしかできなかった。