令和に復活!仮面ライダーダルダ a girl blooms 作:ぽかんむ
リカが魔方陣の中を漂っている。内部は白く、空間が歪んでいた。様々な色彩が鮮やかに光っている。やがて黒い穴が現れた。それを通過したリカが落下する。
彼女は魔時空界に到着したのだった。そこは宮殿内の通路だった。薄暗く、白いもやが下に充満している。壁は岩で出来ていた。隣にいたオルキニスと鉢合わせる。彼女は一瞬先に到着していた。リカを見て驚く。そして叫んだ。
「着いてきたの!?」
「反撃の球魂を取り返さないとお母さんに怒られちゃうからさ」
「ミッシ! 来なさい!」
オルキニスが叫ぶ。蜜蜂を模した三体の怪人がやって来た。宮殿の警護を担当するビーミッシである。三方から囲まれるリカ。オルキニスが命じる。
「私は球魂を皇帝陛下へ献上する。あなたたちは立花リカを殺しなさい」
オルキニスが奥に向かう。追おうとするリカだが、ビーミッシに阻まれた。怪人たちは鋭い槍を召喚。リカ目掛けて突く。攻撃をかわすリカだが、先程の負傷が祟ってふらついていた。
「変身さえできればこんな奴等……!」
リカは敵の攻撃をギリギリまで引き付けてから避けた。前方の怪人の槍が、後方の怪人の腕に刺さる。同士討ちを狙ったのだ。ミッシが混乱する。その間に彼女は細い通路に逃げ込む。
「今は逃げなきゃ……ここで殺されたら元も子もない」
彼女は人目を避けながら通路を進んだ。宮殿を出るための出口を探す。だが、いつまで経っても発見できない。
「おかしい……さっきから妙に人目が無さすぎる……」
彼女が進んだ先は突き当たりだった。引き返そうと振り向く。だが後ろは岩の壁。辺りを見回すリカ。いつのまにか壁に閉じ込められていた。そこへ怪人がふと現れる。トンボのような容姿のドラゴンフライミッシだ。怪人が話す。
「無駄だ。貴様は最初からこの俺に監視されていたのだ。俺は目がよくてな」
「そして閉じ込めたってわけ?」
「いや、閉じ込めたのはこいつらだ」
ドラゴンフライミッシが両手を横に広げる。すると怪人の後ろに、三体のビーミッシが出現した。リカが何かに気がついたかのように呟く。
「そうか。蜜蜂が巣を作るように、この建物の構造を魔法で作り変えたのね!」
「そういうことだ。流石は短時間で魔法を使いこなしただけのことはある」
「種がわかったところで、対抗策が浮かばなければ意味ないよ」
「そうだな。そして何の力もない貴様が、俺たちに敵うはずがない。せめて苦しまないよう一撃であの世に送ってやる」
ドラゴンフライミッシが大顎を開ける。すれ違い様に、リカの首筋を噛み砕くつもりだ。恐れを抱くリカ。だが強気に怪人に睨み返す。
「私は咲く……もっともっと咲いてみせる!」
その時、彼女の全身が光り輝いた。眩しさのあまり目を瞑る怪人たち。彼女自身も困惑。力が満ちるのを感じた。チャンスとばかりに、リカが横の壁を蹴る。即席の壁だったため、力を増したリカの前に壊された。彼女はそこから外に逃げる。
光が消える。怪人が目を開けた。既にリカの姿はなかった。しかし、ドラゴンフライミッシは落ち着き払っている。まるで種を知っているかのように。
「魔時空人としての力が目覚めつつあると言うことか」
宮殿の外に出たリカ。大きな街の裏路地に隠れる。魔時空界の街並みは、創作物における中世ヨーロッパのような外観をしていた。
ただし空の色は赤。生い茂る木や草木は紫。人間界と様相は大きく異なる。住民は皆、日常生活に魔法を駆使していた。火を起こしたり、空に浮かんだりしている。リカが思考に暮れる。
「オルキニスは言っていた……球魂を皇帝に渡すと。恐らくもう皇帝の手に渡っているはず。何とかして怪人に見つからないよう皇帝のとこに行かなきゃ……」
彼女は思った。宮殿には連日大量の物品が運ばれるだろうと。そして、その中に紛れ込めば警戒されず侵入できるのではないかと。
「もし荷車でも通ったら絶対見逃さないようにしなきゃ」
そしてもうひとつ、彼女は謎の発光について考えていた。小さな石を拾うと、右人差し指に力を込める。そして、石を軽く突いた。すると石に穴が開く。
「どうして変身していないのに魔法が使えるんだろ? もしかして球魂の力が一部残っているとか? それともこの世界にいれば誰でも魔法が使えるとか?」
推測を巡らせるが、答えはでない。とはいえ、この力は彼女にとって現状唯一の武器である。ダルダに比べれば性能は大きく劣る。それでも、戦意の増大には十分だった。
リカは身を隠しながら、街の探索を始める。住民の風体は人間界の者と大差ない。彼らから敵意は感じなかった。そのことに一握の不気味さを覚えるリカ。
ふと上を見上げる。大量の灰色のコンテナを乗せたカーペットが飛んでいた。あれだけの量を運ぶ先は宮殿しかありえないだろうと、彼女は思う。乗っていたのは欠伸をして寝転がっている若者一人のみ。彼女は大ジャンプすると、カーペットの裏にしがみついた。
(お荷物増やしてゴメンね)
若者は一瞬の揺れにやや不思議がる。しかし荷物の無事を確認すると、すぐまた寝転がった。そしてカーペットは宮殿の裏口から入る。若者と宮殿の役人がコンテナを念動力で運搬。その間に彼女はこっそり奥に進んだ。
「何とか再侵入完了……蜻蛉野郎に見つかりませんように……」
通路を歩く。物陰に身を隠しながら、少しずつ進む。しかし、一体のビーミッシと鉢合ってしまった。
「やっば……!」
応援を呼ばれてはまずい。リカは右拳に力を纏わせる。怪人を殴り付けた。吹き飛ぶビーミッシ。
「やっぱり今の私じゃこれが限界か……!」
よろよろと立ち上がる怪人。それを尻目にリカは走る。彼女はあえて、人の多い道を進んだ。警護の一番厳重な箇所に、皇帝はいるはずと思ったからだ。
警備兵をかわして前進。すると、前方にひときわ大きな空間を見つけた。槍を持った二体のビーミッシが、行く手を阻む。皇帝はこの先。彼女は直感で感じ取る。怪人が臨戦態勢を取ってきた。
「どきなさい!」
彼女の体が発光する。両足に力が込められた。斜め上にジャンプするリカ。そしてドロップキックで突っ込んだ。ビーミッシを蹴り飛ばして、入室する。
彼女は着地後、前を見た。玉座に座るナイトローズと、側で控えるオルキニスを目撃する。リカに襲いかかるビーミッシ。だがそれをナイトローズが止めた。
「ビー、立ち去れ」
命令を受けて、怪人が部屋から出る。リカは奥に進んだ。それから尋ねる。
「あなたが皇帝?」
「いかにも。余こそ魔時空界を統べる皇帝、ナイトローズだ」
「どうして攻撃を止めたの?」
「ここまで辿り着いたお前に興味が湧いたのだ。余に仕える気はないか?」
「嫌よ! 仕えるわけないでしょ!?」
「なぜだ? 同じ魔時空人がいがみ合う必要はない。お前はマンティスミッシの娘だからな」
「マンティスミッシ? どういうこと? 私のお母さんは立花レイよ?」
「教えてやろう。お前の母の過去を」
ナイトローズが語り始める。
魔時空界の文明は、高度に発達した魔法によって成り立っている。それを支えたのは、魔時空界に豊富に存在する魔法元素。これが大気中や土壌に無数に存在するため、住民は制限なく魔法を扱える。
しかし近年、魔法元素が無限でないことが判明。元素の減少による国土の消失が起こりつつあった。魔時空界は魔法技術の限界に直面したが、代替案を見いだせない。
十一年前、マンティスは魔法学者として日々実験に努めていた。その際、偶発的に二つの球魂が誕生。そして球魂が映す映像によって、魔時空界と異なる異世界、人間界の存在を知る。
科学による発展を遂げていた人間界。魔時空界人は三つの計画を始動させた。人間界の住民の滅亡、人間界への移住、魔法から科学への転換である。
しかし、マンティスはそれに反対。反撃の球魂を持って人間界に逃走した。彼女は以降、レイを名乗るようになる。ナイトローズはスパイダーミッシを追っ手に任命。追撃の球魂の力で派遣させた。
レイは現地民を誘惑。彼との間に子供を設けたあと、補食した。そして十ヶ月後、子供が誕生。リカと名付けられる。六年後、潜伏していたレイをスパイダーミッシが発見。レイは反撃の球魂を使ってダルダに変身。スパイダーミッシと引き分ける。
レイはその後すぐに引っ越した。スパイダーミッシも捜索を再開する。そして十一年後、スパイダーミッシは再びレイを発見。しかしリカの変身したダルダによって倒された。
説明が終わる。リカは困惑しながら呟く。
「いきなり……そんなこと言われても……追い付けないよ……」
「無理もない。だが真実だ。お前はここに来てから数々の魔法を使用していたな。それもお前が魔時空人である証左となる」
「だけど……」
「お前は戦うための駒として立花レイに産み出された存在なんだぞ? 母親の肩を持つ義理がどこにある」
「そんなことない! お母さんは愛情持って私を育ててくれた!」
「愚かな。立花レイは我々を滅ぼそうと目論む巨悪。人間と魔時空人のハーフは球魂を扱える資質を持つことを知った奴によって、戦力として産み出され、何もわからず戦わされているのがお前だ」
「……それ、本当なの……?」
「あぁ。そうでもなければ現地民との混血など行わない」
リカの戦う理由は、母の言いつけの一点であった。自らや母の秘密を知ったこと、加えて人間界におけるダルダの評判が芳しくないこと、魔時空界の民衆の光景が彼女の頭によぎる。
戦意は大きく削がれていた。人間界を守る価値があるのか、魔時空界を滅ぼす意味があるのか、大いに悩ませる。彼女が黙っていると、ナイトローズがオルキニスに告げた。
「立花リカを部屋に案内しろ。客人として丁重に扱うように」
オルキニスはやや不服そうな表情を浮かべながらも、指示に従う。
「リカ様、ゆっくりとおくつろぎくださいませ。こちらです」