ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかif 白兎と雷花の残響・残香 作:青色のラピス
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これからも本作をよろしくお願いします。
未知の空間を進むアイズ達。
ああでもないこうでもないと思考を尽くしながら進んでいると灰の山が目に入る。
「……灰の山? モンスターの亡骸か?」
「まあ、団長に出来るんだからモンスターが居ても不思議じゃないけど……何で死んでいるんだ?」
「
その瞬間、アイズの警鐘が最大限の警告を鳴らす。
そしてそれはバクガー、ハミルも同様であった。
極限まで研ぎ澄まされた第一級の直感が彼等に危険を知らせたのだ。
「―――散開しろッ!!」
号令と共に振るわれる大剣。
大剣は間違いなく、一つの命を散らす。
散らしたモノは―――食人花のモンスター。
「食人花!? まさか、
「不味いぞ。奴等は『魔力』に反応する。魔導師は下がれ!」
「
「いや、動ける魔導師は囮に成れ! 一塊に纏めてしまえ!」
流石は手練れの冒険者というべきかいきなり遭遇した『想定外』に的確に対処していく。
【アトラス・ファミリア】の魔導師が敢えて囮になり、残りのメンバーが
そんな活躍もあり動揺の続く【ヘルメス・ファミリア】も直ぐに取り直し、殲滅へ加わっていく。
「コイツで最後ッ!」
重戦士の一撃が響き、最後のモンスターが沈黙する。
上顎ごと吹き飛ばした一撃の威力は凄まじく、中にある『魔石』も諸共破壊されている。
「……何とか凌げましたね。そう言えば貴方達はこの新種について良く知っているようですが……。」
「……ああ、分かっている。情報共有をしよう。」
△▼△
一通りの情報を共有し合い、彼等は話し合う。
この事態が何のために、誰が起こしているのかを知るために。
本来は腹芸で用いるはずの物さえ開示して。
「成程……『魔石』を求めるモンスター、ですか。」
「ああ、おまけに全員が『強化種』だ。まあ、『魔石』を食い散らかすなら当然の結果だが。」
「頭が痛くなりますね【同士討ち】。『強化種』なんて恐ろしい存在を相手取るのはできれば避けたいんですが……。」
眉間を指で押さえ、悩む素振りを見せるアスフィ。
しかし、聞かされた情報はそれだけ衝撃的なものだった。
「はあ……。これだけ重要な事柄、予め教えて欲しいんですが。」
「すまないな。しかし、君等は【ヘルメス】だろう? 噂好きで足の軽い主神が既に耳に入れていると思っていた。」
その一言を聞いてアスフィは理不尽にも主神へ苛立ちを募らせた。
しかし苛立ちをぶつけても意味がないと気を取り直し、眼前の現実に関心を引き戻す。
一方でアイズは以前に起こった十八階層の出来事を想起していた。
あの事件の後にフィンはこう言っていた。
―――
(だから、多分この個体たちは
その場にいる人間がその数だけの思いを抱きながら進んでいると再び分かれ道に遭遇する。
「分かれ道……いや、いるな。」
その瞬間にぬるりと現れる無数の食人花。
前からだけじゃない、後ろからも現れている。
「……包囲、されましたね。」
「【剣姫】は右、【ヘルメス・ファミリア】は後ろからの奴等を。……いけるか?」
「分かった。」
「こんな事態ですから仕方ありません。ただ、二、三人借りますよ。」
「よし、ゼドとエイガー、アルドートフ。【ヘルメス】の援護に回ってくれ。―――じゃあ、行くぞ!」
背から大剣を抜き、バクガーが突貫する。
それと同時にアイズやアスフィ達も己の敵目掛けて、攻撃を仕掛ける。
そしてアイズが敵目掛けて踏み込み、刃を振るおうとした瞬間、無数の柱が降り注ぐ。
アイズを狙ったものではないのか、彼女には命中しなかったが無数の柱が壁となり、分断されてしまう。
「―――思ったより楽にことが進んだな。そうは思わないか? 『アリア』。」
「―――!!」
アイズの聞いたことがない、そして聞くことなんてあり得ない声。
女の声だった。
声をした方へ振り向けば禍々しい剣を引きずる赤髪の女が一人、いた。
アイズが警戒心を強める中、女は気にした素振りを見せることなく、一方的に語り掛ける。
「……何を言ってるの? 私は『アリア』じゃない。私はアイズ。」
「それはこちらの台詞だ。『アリア』はお前だ。五月蠅い奴等もそう言っている。それにあの
そう言うと剣を構え、宣告する。
その様はまるで処刑の執行人のようであり、拒否を許さぬ絶対の意思を感じさせる。
しかし、アイズはその意志に従う理由は無い。
鞘から
―――そして、誰かが言うまでもなく女と少女は剣戟を始めた。
▼△▼
「おい、どうすんだよ【
「落ち着きましょう、【
「ウぅるルルルる……あア、多分大丈夫サ。ウう……ッ!」
「どうしました【同士討ち】? ……いえ、まさか、貴方!?」
「―――ゥうウウウおおおオオおおオオオおオオオおおオオオオオオオおオオオオオおおおオオオオオッッ!!!」
突然、バクガーが咆哮し、無数の食人花を一瞬で
彼のことを詳しく知らない【ヘルメス・ファミリア】が呆気に取られ、隙を晒すがそれを襲う間もなく食人花が殲滅されていく。
「ああ、やべ。長時間戦闘のせいで理性溶けてるよ、あいつ。」
「ちょ……! 何呑気にしてるんですか! 食人花を殲滅し終えたら次は私達ですよ、アレ!」
「んなもん百も承知さ。―――【ウィンド・プレス】!!」
詠唱を終え、待機状態にしていた『魔法』を放つハミル。
相手を押しつぶすという殺意に溢れた風弾は吸い込まれるようにしてバクガーへ直撃する。
『魔法』の直撃を受けたバクガーは壁に激突し、そのまま動かなくなる。
「え、大丈夫なんですか!?」
「
メインの
そしてその時、バクガーが丁度目を覚ました。
「……すまん。暴走した。」
「いえ、被害は出ていないからそこまで気にする必要は。……ただ、本当に凄まじい程の変貌具合でしたね。」
「ああ、本当に扱いづらい『スキル』だよ……。」
少しの休憩を挟み、再び進み始める彼等。
アイズのことが心配ではあったが、彼女の実力に対する信頼から先へ進むことを優先した。
その後には分かれ道にぶつかることはなく、道中に食人花の襲撃を受けることも無く先へ進むことができた。
そうしていきついたのは大広間―――
「……柱に……何かが巻き付いている? いや、食人花か!? デカすぎんだろ!」
「おい、見ろよ……壁から食人花が生まれてやがるぞ……。檻まである……まるで養殖場だな。」
そこに広がる悍ましい光景に戦慄する冒険者達。
それはアスフィやバクガー、ハミルといった手練れでも例外ではなかった。
しかし、動揺するばかりではない。
そこにある情報を頭に入れ、少しでも真実へ近づくべく思考を途切れさせない。
「―――殺せぇえ。殺せええええええええええッッ!!! 侵入者達を、殺せぇえええええええええッッ!!!」
そうしていると不意に大声が響いた。
声のする方を見れば白装束に身を包み、武装した人々が凄まじい速度で接近している。
武装した白装束―――彼等には見覚えがある姿であった。
「
バクガーがそう言うと、魔導師は『魔法』の詠唱を始め、炎魔法を持たないものは炎の『魔剣』を構える。
距離が縮み、射程内に入った瞬間、号令一つでその全てが炸裂する。
そして、凄まじい爆発が起こった。
驚いたのは【ヘルメス・ファミリア】だ。
何故なら、今起こった爆発はどう考えても起こりようがないものだからだ。
―――予め、爆発物を仕掛けられてでもいない限りは。
「……何だよ、どういうことだよ……! あいつら、一体どういうつもりなんだよ!?」
「死を恐れぬ兵士―――文字通り『死兵』ですか……! 『大抗争』を思い出しますね……!」
嫌なことを思いだしたのか、アスフィは端麗なその顔を歪める。
しかし、その間にも死兵の突撃は終わらない。
結果が分かり切っているのに、全くと言っていい程行動に変化がない。
「……しかし、困った。これでは連中の主神が分からん。」
「……不気味なほど冷静ですね、【同士討ち】。」
「嫌な話だが慣れだ。【
「……別に構いませんが……一体何をする気なんですか?」
そう言われるとバクガーは兜の下で不敵な笑みを浮かべ、言った。
「後ろでふんぞり返っている二人組をシバいて来る。」
▼△▼
「……クソッ! 冒険者め! 我等に与えられる祝福の邪魔をして……!」
戦場から離れた場所で歯噛みするのは
残党とはいえ幹部の位を与えられただけあって比較的有能な人物だが、このような状況になっては冒険者への憎悪を垂れ流すしかできない。
「……神に縛られる愚か者共め。」
そしてその様子を見て、嘲笑うのが白い男。
モンスターの頭骨から出来た兜を被る男は協力関係にあるはずの
その様子にいい加減苛立った指揮官が男に詰め寄る。
「
「断る。」
しかし、男の返答は拒否だった。
一瞬、脳が理解を拒み、言葉を出せなくなる指揮官の男。
激昂し、その訳を問い詰めた。
「お前達では何の役にも立たんだろう? それならお前達で冒険者を消耗させた後、私一人で片付けた方が手早い。」
「……随分と偉そうな口を利く! 下っ端の幹部風情が!」
最早、感情の制御などできない程怒った彼は手に持つ短剣で男を突き刺す。
指揮官の男はLv.3。
そして彼の記憶では目の前にいる男も同様。
ならば最近になってノコノコと出て来た狂人には負けるものかという自負があった。
しかし。
「ふん……愚かな。」
彼の思惑は外れ、突き刺したはずの短剣は肌を通らない。
驚くべき話だが、彼と短剣よりも男の素肌の防御力が上回っているのだ。
そして無造作に腕を振るう男。
それだけで周囲に待機していた
「ま、待て! お前は同志を手にかける気かァーーーッッ!!?」
「ふん、お前達が同志? 『彼女』に選ばれ、お前達人類よりも高次に立つ
思わず命乞いをする指揮官の男。
しかし、それは白い男に聞き入れられず、食人花に噛み付かれる。
「や、止めろ……! 我等を失えばお前達だって……!」
「問題ない。元より搾りカスの残りカスには何の期待もしていないからな。分かったか? ―――分かったのなら、死ね。」
「ぐ、ぐううううううううッッ……! ―――お許し下さい、タナトス様ぁああああああああああああ!!!」
その瞬間、凄まじい爆発が起こる。
指揮官の男も体に爆発物―――『火炎石』を仕込んでおり、それを起爆させたのだ。
それを見た白い男はほうと呟き、こう言った。
「成程。神の傀儡しては見どころがあったな。」
しかし、それどころではないのはバクガーである。
(どういうことだ!? あの白い男、いや
「―――それで? 其処で隠れている愚物は一体何時になれば出てくるのだ?」
男の言葉に思わずバクガーの背が跳ねる。
しかし、バレるのは覚悟していたことだと気を引き締めた。
そして背負っていた大剣を下ろし、男の目の前に現れる。
「ほう、出てきたな。しかしたった一人でこの私をどうこうするつもりだったのか? ふん、低能種族らしい楽観的思考だ。」
油断しているのか、ペラペラと御高説を垂れ流す男。
しかし、バクガーはそれに耳を傾けることなく、
「【血に濡れよ、果て無き狂心】」
「『魔法』か? ……無駄なことを。腹を空かせた
「―――【バーサーク】」
その瞬間、真の