ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかif 白兎と雷花の残響・残香 作:青色のラピス
「ざまぁないな、オリヴァス。小娘共に負けるとは焼きが回ったか?」
這う這うの体で逃げ帰ったオリヴァスに最初に向けられた台詞がこれだった。
【
普通ならバツが悪くなって逃げるだけだが、相手は【
外道の中の外道である彼は逆上し、蝦夷丸に詰め寄った。
「
「へぇ……Lv.3が言う台詞じゃねぇな。」
剣呑な空気が満ちる。
同士討ちの火ぶたが切って落とされようとしたその瞬間、それ以上の剣気がその場に走った。
通路の奥から放たれたことは視線をやらずとも理解できた。
そしてそれを発している人物もまた、同様に。
「蝦夷丸、オリヴァス。同士討ちは止めろ。君等の敵は目の前にはいないだろう?」
「【超人】アリウス……。」
「今から幹部での会議だ。これ以上待たせると【
流石にLv.8を相手にしては反抗する気も起きないらしい。
大人しくアリウスの後ろをついていき、最後の会議に参加した。
灯は少なく、薄暗い広間が会議場だった。
とはいえ最終確認が主題であるため、この場にいるのは幹部格のみで主神は一柱もいない。
「待たせるじゃねぇか、一体いつの間にそんなに偉くなったんだ? オリヴァス。」
「……っ!」
「おっと、今のてめえに発言権はないぜ。お前のせいで葬式みてーな雰囲気が拭われちまった。死にぞこない共が調子に乗り始めた責任、どうとるんだ?」
厭らしい表情でオリヴァスを煽るヴァレッタ。
だが、怒りはなく単純にオリヴァスを揶揄っているだけである。
周囲もそれを知っているからか、にやにやと笑っているだけだ。
「まあまあ、落ち着きましょうヴァレッタ殿。明日は最後の大戦。オリヴァス殿の追及は段取りの確認の後でも遅くありますまい。」
とはいえ、このままオリヴァスを揶揄うだけに終止されてはたまらないと【
楽しみを邪魔されたことに不快そうな顔をするが、エドワードの台詞にも一理あると感じたヴァレッタは不満さを隠そうともせずに本来の話題に戻る。
「ちっ……おい、バスラム。改造は終わってんのか?」
「ん、ああ『
「『
「どっちも100から先は数えとらんわ。強いて言うなら大型の『竜種』は八体かの。」
充分だと口端を歪めると次は蝦夷丸だった。
「呪術儀式の進行は?」
「もう終わっている……と言いたいがそこの孺子がやってくれてな。明日の昼までかかる。」
「昼まで……まあ、いいか。おい、オリヴァス。その分働けよ?」
そしてその後も各部隊や派閥の状態、計画の進行を確認していく。
そして最後―――【顔無し】の番になった。
「既に我が主神は『絶対悪』として『終焉』を迎えに発ちました。」
「おいおい、勝手に陣形をいじった癖に詫びも無しかよ。―――だが、ああ。いいじゃねぇか、準備万端だ。ようやくだ、ようやく! この忌々しい都市を滅ぼしてやる! 待ってろよ、フィン。その面、屈辱でぐちゃぐちゃにしてやるぜ……!」
荒々しくヴァレッタが宣言する。
今まで数多の『悪』が夢見て潰えて来たもの―――都市崩壊。
その恐るべき偉業に、『
△▼△
この日、『
だが依然として市壁を占領しており、都市外が騒がしい。
彼等が諦めたわけではなく、何らかの悪だくみをしている事は明白だった。
嵐の前の静けさに誰もが分かっていたから、必要がなくとも何かをするべく慌ただしく動き回っている。
そしてそれは都市最大派閥―――【ロキ・ファミリア】でも変わらなかった。
「武器防具に糧食、薬品類に衣服、必要物資は貯め込むな! 全部出せ! 【ファミリア】で余っても他派閥に持って行くんだ!」
「し、しかしこれ以上は備蓄が無くなります! 金貨や財宝まで放出したらこの戦いの後の運営に支障をきたしますよ!?」
「この戦いに勝てないなら意味ねーだろうが! アホ勇者とそのおまけ共を強くするんだ、金に糸目はつけんなよ!」
片腕を失いながらも何時も通りに調子でマックが下位団員に指示を出す。
来るべき決戦に向けてできる事を行っているのだ。
そんな中、全身に包帯を巻いた冒険者―――アンドレウがマックに声をかけた。
「おい、マック。フィンの奴が呼んでる。」
「あ? 何であのバカが……。」
嫌な予感が過りながらも普段は
ノックも無しに入ると中にはいつも通りのフィンと主神であるロキがいた。
そしてついさっき来たばかりのノアールもだ。
「おい、クソ勇者。何の用だ。こっちはこっちで忙しいんだ。手短に頼むぞ。」
到底一族の英雄に使う物言いでは無かったが、慣れている三人は気にすることなく話を進めた。
「ああ、マックのノアールには
「借金返し終わったとはいえ、この家はうちとリヴァリアママ達の愛の城や! 傷一つつけたら承知せんでぇ!」
「おいおい、この場が激戦になるだろ。そんな戦力で守り切るのは難しいぞ。あとそんなにうるさいのが居たら集中の邪魔だ。お前が引き取れ。」
「ああ、戦場の位置からして北東が激戦区となるのは明白。兵法に疎いワシでも分かるぞ。」
当然マックとノアールから不満の声が上がるが、フィンは何時もの不敵な笑みを崩す事はなかった。
「まあ、そうだね。でも君達なら何とかできるだろう? 市民も守る『砦』を任せるなら君たち以上の適任はいないさ。いつも僕達の無茶に付き合ってくれた。だから頼んだよ、先輩に副官。」
▼△▼
幾度目か分からない剣戟の音が止まった。
傷に溢れ、泥を全身に被って、血と汗に汚れた彼等の研鑽は一時の休止を得た。
八人の強者がひたすらに鎬を削り、技を極め、肉体を鍛えていた。
そして最後の一人になるまで戦い続け、今最後の一人となったのだ。
「……オッタル、勝ちやがれ! 負けやがったら絶対に許さねえ!」
敗北したアレンが心底悔しいのか、ボロボロの身体からは想像もできない程の音量で叫んだ。
そして元来から口が上手くない錆色の武人は短く答えるのみ。
「アレン、ヘディン、ヘグニ、アルフリッグ、ドヴァリン、ベーリング、グレール……感謝する。」
倒れた者達は答えない、ただ目線で応えるのみ。
オッタルが城壁を、その先に視線を移す。
「待っていろ、アリウス。今度こそ、お前達を乗り越える。」
何時かの日々、与えられた泥を拭う。
都市の興亡など関係なく、オッタルは自分の強さを求めて戦いに身を投じるのだ。