ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかif 白兎と雷花の残響・残香 作:青色のラピス
ペースは遅くなりますがこれからもお願いします!
「おい、貸し切りをしたい。これで足りるか?」
女はフード付きのマントを着用しているが、僅かに見える隙間や大まかな体格からさぞかし良い女であることが伺わせる。
一方で男は女と同様にフード付きのマントを着用し、その下に仮面を被っている。唯、隻腕であることが分かるためさぞかし手練れなのだろうと予感させる。
怪しさが満点な組み合わせだが態々貸し切りをしてまで男女ですることは一つだろう。
そう察した宿屋の店主は悪態をつきながら差し出された金貨が詰まった袋を奪うように掴み取り、宿から出ていった。
店主が店に出たことを確認すると二人は予め決めていたという訳でもないのに奥の部屋へ向かう。
部屋につくや男は背負っていた大剣と荷物を下ろし、ベッドに腰掛ける。
女はマントと服を脱ぐ素振りを見せながら何故か男の荷物へ手を伸ばしていた。
―――その瞬間だった。
男の手が女の頭を掴んでいた。
女は驚愕し、逃げようと藻掻くがビクともしない。
「『街』に入った瞬間に声をかけてきたから疑っておいて正解だったな。……で、君は誰だ?」
「……」
力を強めながら男は女を詰問するも、女は口を割らない。
むしろ女も抵抗を強め、今にも拘束を解きそうな程だ。
「誤魔化す素振り位見せたらどうだ? まあ、死ぬけど。」
その瞬間、業火が発生し、女を喰い破る――はずだった。
火力が低かったせいか、それとも女に耐性があるせいか女の僅かな衣服を炭に変え、皮膚に多少の火傷を作るだけに留まった。
「……先に【
女は辛うじて拘束から脱出し、焼き焦げながら男に攻撃する。
肝心の火傷も再生能力のせいですぐさま治っていき、動きはより早くなっていく。
男は大剣を拾い、防御をするが片手であるため対応しきれず気が付けば幾つかの傷を作ることになった。
「死ね。」
自身の優位性を確信した女が男の息の根を止めるべく、一気に加速して肉薄する。
あと一歩で喉を潰すという瞬間だった。
―――先程の比ではない業火が女を襲った。
流石に堪えたのか、防ぎきれず吹き飛ぶ。
炎の勢いも強く、再生が追い付いていない。
当然、男がその隙を見逃す道理は無く、すかさず炎撃が女を襲う。
凄まじい爆炎が起こり、一面を吹き飛ばす。
余熱で壁や床が真っ黒に焦げていたが肝心の女は其処にいなかった。
「逃げたか。……Lv.5、いや6か? 第一級クラスの追手か。さて、どうしたものか……。」
そう言って男――リタは荷物を纏め、素早く宿屋から出ていった。
宿屋の主人が戻り、火事騒ぎになるのは夜が明けてのことになる。
△▼△
理由は唯一つ。借金である。
彼女は以前の『遠征』後から
そのため貸し出された代剣を使っていたのだが、前日の騒動で破壊してしまったのだ。
当然借り物を破壊したということで借金を負ったのだがその額驚きの四千万ヴァリス。じゃが丸君130万個分である。
幾ら第一級冒険者といえどそのような大金を即金で返すことなどできず、
食堂にてその旨を友人三人に伝えると三人が食いつき、偶々食堂を訪れた
第一級冒険者と第二級冒険者で構成されたパーティーは上層程度では屁でもなく、あっという間に十八階層へ到着する。
十八階層に到着した彼等が目にしたのは騒然とする『リヴィラの街』だった。
連日の賑わいとは違う騒ぎを見せる『街』に違和感を覚え、一行は騒動の下へ向かった。
「げ、【ロキ・ファミリア】……。」
向かう途中でそう言ったのはこの『街』の元締め、ボールス・エルダーである。
『リヴィラの街』に領主はいない。
故にこの『街』は腕っぷしが強い=偉いという風潮がある。
実際にボールスのレベルは3の上級冒険者である。
そのため第一級冒険者達は目障りでしかなく、自然と態度が悪くなる。
しかし、事態の収束には願っても無い助力となるため動向を拒むことは無かった。
騒動の原因となっているのは『ヴィリーの宿屋』――ではなかった。
その近くにあるとある路地裏だった。
そこには二つの遺体が捨てられていた。装備や荷物は奪われており、頭は潰されていて見るも無残だった。
「これが今回の騒動の原因かい?」
「ああ、そうだ。いくら『リヴィラ』と言ってもこんな殺人事件なんて起きやしねえ。」
「犠牲者の素性と犯人の目星は?」
「犠牲者は『
「おい、ボールス持って来たぞ! 後、ヴィリーの野郎も来てたぞ。」
ボールスがフィンに知りえる限りの情報を渡していると周囲にいる野次馬を押しのけて一人の男と連れられてきた獣人の青年がやって来た。
この獣人の青年がヴィリー。件の宿屋の主人である。
「ようし、まずはこいつ等だな。へっへっへ、頼むぜ【
「はあ……、仕方が無いな。」
ステイタスは神々が用いる
現状、この中で
薬が背中に垂らされ、秘匿されているステイタスが暴かれる。
暴かれたステイタスをリヴェリアは見る。常人ならば見ても理解できぬ奇天烈な文字列を解読し終わると口を開き、自身が知り得た事柄を伝えていく。
「ふむ……、【セベク・ファミリア】のLv.2、アルダン・バルトロマイ。【プーシャン・ファミリア】のLv.2、ガル・メルマウス。……ボールス、知っているか?」
「……この2、3年で『リヴィラ』に来た連中のはずだ。いい噂の聞かねえチンピラ共だ。」
「しかし、それでも彼等は十八階層まで来れる実力者だ。」
「それをこうも一方的に殺せる奴つったらLv.3、いやLv.4か。」
「ああ、そうなる。君がヴィリーかい?」
「……ああ、そうだぜ【
フィンに声をかけられたヴィリーは憔悴した様子で前に出てくる。
だが、少し目を離した隙に宿屋の一室は黒焦げになり、店内が荒れてしまい、止めに宿泊客が容疑者ともなれば憔悴することも不思議ではないだろう。
「昨日、君の宿屋に訪れた二人について聞きたい。いいかい?」
「ああ、二人の男女だった。女はフードのせいで顔は分からねえが、いい体つきしてたのは分かるぜ。……其処の
「へえ、そいつは……。」
ヴィリーとボールスの二人が双子の
当然、そのようなあからさまなものにティオネが気付かない訳が無く、【
「なああに、見てんだゴラアアアアアアッッ!! 私の操は団長のモンだああああああッッ!!」
凄まじい怒気を発しながら、二人の
第一級冒険者の威圧は凄まじく、情けないことに男二人は身を寄せ合い、ガタガタ震えていた。
何時ものこととはいえ、フィンは頭を抱えながら、ヴィリーに話を促す。
フィンに促され、ヴィリーは話を再開する。
「あ、後男だったな。女と同じでフード付きのマントを使ってたぜ。そういえば仮面も付けてたし、隻腕でかなり目立つ奴だったな。」
「隻腕で、仮面……。なるほど、どちらかなら兎も角、両方となると確かに目立つな。ボールス、心当たりは?」
「……いや、ねえな。多分、最近来た新入りだろう。しかし、隻腕でここまで来たってんなら相当な腕利きだぜ。」
「ふむ……、都市外から来た手練れならあり得るね……。ヴィリー、事件発生時の情報が欲しい。何か知っているかい?」
「いや、すまねえ【
ヴィリーはそう言って口を閉じる。
一頻り情報が集まったフィンは顎に手を置き、思考の海へ沈む。
神々にも匹敵すると謳われる頭脳をフル回転させた彼は、一先ずの結論を出すとボールスへ顔を向ける。
「……ボールス、『リヴィラの街』にいる冒険者を全て集めてくれ。」
「何か分かったのか!?」
「……さあ、どうだろうね?」
そう言って
▼△▼
広場にて冒険者達がひしめいている。
『リヴィラの街』にいる全ての冒険者が其処におり、正に壮観だった。
「これが全員か?」
「ああ、来ねえ奴は
リヴェリアの問いにボールスが答える。
ボールスの顔は明るい。事件がもう解決すると思っているからだ。
一方でフィンの顔はボールスとは正反対に暗くなっていった。
「フィン、どうした?」
「……上手くいきすぎている。どうして何も起こらない?」
「どういうことだ?」
「僕の予想では『街』の冒険者を全員集めたときに何かしらの動きを見せると踏んでいた。」
「……動きが無いということは既に『リヴィラ』にいないということではないのか?」
「いや、それは無いだろう。門番や見張りは何も見ていないと聞く。流石に夜を担当する彼等が気が付かないとは思えない。」
フィンはそう言って再び熟考を始める。
何もない暗闇の中を藻掻く求道者のように。
苦界を彷徨う修行僧のように。
親指の疼きは、まだ止まりそうにない。
△▼△
アイズとレフィーヤは広場の北方にいた。
広場から離れた場所で広場を窺っていた
追い付かれ、アイズとレフィーヤに挟み撃ちにされた
「逃げたのは悪いと思ってる……! ――でも見逃してくれ! 次は絶対にあたしだ、このままじゃ殺されちまう……!」
「ちょ、どういうことですか……!? 殺されるって……?」
「あいつの言う通りだった……! 早く逃げなきゃ……!」
少女はパニックになっており話を聞き出せず、二人がかりで何とか落ち着かせると少女はゆっくりと自信が置かれた状況を説明し始めた。
「あたしはルルネ・ルーイ。一応【ヘルメス・ファミリア】のLv.2。此処には『
「『
「あー……、あたし
「「……」」
ルルネのまさかのカミングアウトに二人は思わず口を閉ざす。
ランクアップの申請を怠れば
余程後ろめたい派閥でもない限り申請をすることが普通なのだ。
「で、で話を戻すけどよ。アタシの受けた『
「ッ! 本当!?」
ルルネのまさかのカミングアウトにアイズもレフィーヤも驚愕する。
ああ、とルルネは頷き、話を続ける。
「アンタ達が探している男って、仮面を付けた隻腕野郎だろ? アタシが酒場で荷物を受け取るはずの奴だったんだよ。」
「受け取るはずだった? どういうことですか?」
「いや、死んだとかそういう訳じゃないんだよ。荷物の代わりに
そう言ってルルネが懐から一枚の紙を取り出す。
アイズとレフィーヤが紙を開き、内容を見る。
其処には――
『厄介な追手がいるので
――とだけ書いてあった。
「突然こんなことを言われてもさ、困るんだよ。だからさ、文句を言ってやろうと『街』に残ってたら、こんなことになっちまって……。」
「すみません、
「
「それでよく引き受けようと思いましたね……。」
レフィーヤが呆れた声を出すが、ルルネは頭を振り必死に弁明する。
「い、いや前金払ってくれたし、肝心の報酬も滅茶苦茶凄かったんだよ!」
「それでこんな事件に巻き込まれちゃ意味ないじゃないですか……? ――アイズさん、どうしますか?」
「取り合えず、フィンとリヴェリアの所へ連れて行こう。」
「う……。まあ、【
ルルネがアイズの提案に首を振ったその瞬間だった。
―――『リヴィラの街』が地獄に変わった。
大量の食人花の