ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかif 白兎と雷花の残響・残香   作:青色のラピス

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ストックが切れたのでまた更新ストップです。

次の本編再開は二月頭を予定しています。


第九話 事件の終わり

「ガハッ……。ごふっ……。がああ……ッ!」

 

燃え盛る灼熱地獄の中、リタは胸を搔き毟り、もがき苦しんでいた。

口からはどす黒い粘ついた血液を吐いていた。

 

口からだけではない。鼻からも目からも、そして耳からも血が漏れ出し、皮膚も傷つき血が滲んでいる。

 

(クソ……、やっぱりこうなったか! しかも久しぶりの発作だから余計に酷い……。)

 

「驚いた。まさか君もそこまで()()()()()()とは。」

 

心底驚いた声がリタの後ろから聞こえる。

リタにとっては懐かしい小生意気な声だった。

少しの懐かしさを覚え、後ろを振り向く。

 

「……相も変わらず愛想のない生意気なチビすけめ。他にもいるな、高慢ちきの魔力馬鹿、そしてお前もいるのかチンピラ紛い。」

 

「おや、フィンとは呼んでくれないのかい?」

 

「うるせえ、お前らなぞ永遠にクソガキだ。……少なくとも俺からしたらな。」

 

リタの台詞にレフィーヤやティオネが少しざわつくがその他誰も気にせず会話が続く。

 

「で、一体何の用だ? 態々こんな大人数で来て。」

 

「ただ、今回の事件について何か知っていないのか聞きに来ただけだけどね。それに君は面倒を嫌って超大型級を倒せば直ぐに地上へ戻っていただろう?」

 

(知恵が回るのも変わらず、か。全く面倒な奴……。)

 

「まあ、仕方が無い。落ち着いた所で話そう。……ああ、後俺を【不死鳥】と呼ぶな。今はリタ・ナラティブってことになってるんだよ。」

 

「分かった。じゃあ、場所を移そうか。確かにここはゆっくり話すような場所ではないからね。」

 

 △▼△

 

そして夜、【ロキ・ファミリア】の本拠(ホーム)――『黄昏の館』にて事件の当事者達は集結することになった。

この場にいるのはリタ、フィンを始めとする【ロキ・ファミリア】の幹部とその主神、そしてルルネ・ルーイある。

 

「―――確かに落ち着いた場所で話をしようと言ったが……。これでは尋問じゃないか、チビ?」

 

「仕方あるまいに。長年死したと噂される者がいるとなればこうもなろう。」

 

リタの不満に【重傑(エルガルム)】ガレス・ランドロックが答える。

その反応にリタは少しの悪態を吐きながら三首領らを見渡す。

 

「ガレスの言う通りだぜ、【不死鳥】。大体今まで何してたんだよ。」

 

ドワーフの大戦士に同意を示すのは一人のヒューマンだ。

傷だらけの顔を晒し、腰には試験管やら短剣を始めとした武器を装備している。

 

男は【技巧の知恵者(ヘカトンケイル)】アンドレウ・ジャイロ。

三首領に次ぐ古参であり、Lv.5の第一級冒険者でもある。

 

「お前は相も変わらず忙しそうな格好だな。いい加減落ち着きを見せたらどうだ?」

 

「別に格好のことはいいだろ。で、何してたんだ? まさか、其処ら辺をほっつき歩いていた、なんてことはあるまい?」

 

虚偽も誤魔化しも許さない瞳がリタを貫く。

無論その視線は一つではなく、複数存在していた。

 

「おいおい、そんなに殺気立たなくてもいいだろーが。後、ヘタレ。今の俺はリタ・ナラティブだ。そこの周知徹底を頼むぞ、マジで。」

 

しかし、所詮Lv.5やLv.6の威圧。

数多の『英雄候補』や二人しかいない『英雄』のものを鱈腹受けてきた彼には屁でもなかった。

現に血気盛んな狼人(ウェアウルフ)の青年と妖精(エルフ)女戦士(アマゾネス)の少女から発せられる形容しがたい怒気を受けても不敵な笑みを浮かべたままだ。

 

「おい、いいからさっさと話しやがれ。」

 

「……短気だなあ。……いやしかし、それが若さの証でもある、か。」

 

気の短い狼人(ウェアウルフ)の青年が早くしろとせっつくが、リタはやれやれと首を振るとようやく口を開き、自身の身の上を話し始めた。

 

 ▼△▼

 

「とは言っても、俺がオラリオに戻ってきたのは七年前、いや六年前だな。既に『大抗争』は終わってたし。」

 

「ああいや副団長(アリウス)達とは別だぜ? あいつ等みたくオラリオを無茶苦茶にしてやろう何て俺にはする気も、お節介を焼く気も無かったしな。」

 

「え、どうやって都市に入ったのかって? ……おいおい俺はザルドにトールズじゃないんだぜ。市壁をぶち抜くなんて真似はしてないし、しないからな。別に方法は一つじゃない。それだけさ。いや本当にそれだけだ。」

 

「……だから、飛び越えるなんて真似もしねえよ。いやカルスやオーギュスト辺りは怪しいけどさ……。」

 

「あのな、俺は【ゼウス】の中ではクソ雑魚の平々凡々だからな。あんな無茶苦茶共と一緒にするな、マジで。」

 

「話を戻すぞ……。ええと、それで……。ああ、そうだ。都市に入ってからだな。」

 

「こんなに情けない俺でも一応は【ゼウス】―――都市最強派閥の端くれな訳だ。それに第一級冒険者も数が少なかったから絶対に目立つであろうことは明白。だから、古い知り合いに頼み込んで訳ありの【アトラス・ファミリア】に入団して、個人情報を改竄したって訳だ。」

 

「ここからは特に何もないぞ。普通に冒険者稼業を続けてただけだし。」

 

「都市に舞い戻る以前? そっちも何もないぞ。『呪い』と『火傷』にやられた連中の治療をしてただけだぞ。流石に【黒竜】のものだからな。一部の連中以外まだまだ療養中って所かな。」

 

「と、まあ十五年前からの軌跡はこんな感じだな。」

 

 ▼△▼

 

「―――という感じだな。」

 

「成程。君のこれまでは分かった。それで本題だが君はどのような経緯で冒険者依頼(クエスト)を引き受けたんだい? 【泥犬(マドル)】の話では怪しい人物から直接引き受けた、と聞いているけど。」

 

「……あー、スマンがまだまだ調査中の所が多くてな。はっきりとしたことは言いたくないんだが……。……それでもいいという顔だな。仕方が無い、分かっていることを話そう。―――お前の疑う通り俺は依頼人(クライアント)を知っている。」

 

「……そうか。それでその人物は?」

 

「ああ、悪いがそれは言えない。俺の場合は秘密の強制依頼(ミッション)みたいなものだからな。」

 

リタはそう言うと一層、【ロキ・ファミリア】の視線が鋭くなる

 

「……一応、聞いておこうか。それは何故? それに何故そのようなモノを君に?」

 

「あー……。知らないのか? 【アトラス・ファミリア】の役割。」

 

フィンは知らないと首を横に振り、他もそうなのか知らないと行為で示す。

それを見たリタはなるほどと呟き、自身の所属ファミリアについての説明を始める。

 

「意外かと思うが【アトラス・ファミリア】は探索系では珍しいランクAだ。一応公的には第一級冒険者が二人所属しているからな。しかし、俺みたいな厄介者が所属していることから分かるが表社会では堂々としていられない奴が所属している。とはいえ、そいつらはほとんどが更生した元犯罪者とかだが。」

 

「……そんなファミリアが存在していたとは……。」

 

「幾ら更生したと言っても直ぐには信用されないからな。かといってほとっけば再犯が起きる。その受け皿だな。とはいえ高々ファミリア一つでは立ち行かない。ファミリア毎周りから見捨てられておじゃんだ。―――だから管理機関(ギルド)と手を組むことにした。俗に言う『管理機関(ギルド)の私兵』と言う奴だな。」

 

「『管理機関(ギルド)の私兵』……。でもそれが本当なら管理機関(ギルド)の中立性は……。」

 

「まあ、幾ら中立を謳ってもこの都市が回る訳では無いからな。冒険者本位の計画(プラン)に全依存した都市は流石に歪もいい所だろう? 実際、塩漬けクエストは山のようにあるし、掃除当番(スィーパー)は上位派閥のその時その時に依存している。そういう時、都合よく手助けしてくれる存在は便利だろう?」

 

「成程……。つまり、情報の大本を得たのは管理機関(ギルド)、か。しかし、調査を行っている人物は別。」

 

「まあな。何せお前達部外者に知らせればそれこそ『抗争』の再開だ。何せあの『宝玉』は闇派閥(イヴィルス)由来だそうだしな。」

 

闇派閥(イヴィルス)という言葉に一瞬、空間が騒然とする。

闇派閥(イヴィルス)都市最強派閥(ゼウス派とヘラ派)が消滅したと後に表面化した下界有数の『歪み』。

七年前までは都市の興亡が掛かった『大抗争』を引き起こした正真正銘の『悪』。

【疾風】の暴走や第一級冒険者の活躍で六年前に壊滅しながらも現在に大きな爪痕を残している。

 

「君の言うことは分かった。しかし、何故ルルネ・ルーイが選ばれたんだ? 【ヘルメス・ファミリア】は管理機関(ギルド)とそこまで密接な関係ではなかったはずだけど?」

 

「それは俺に聞かれても分からんよ。……しかしまあ、予測するなら彼女自身の気質じゃないか? 金さえ払えば問題なさそうな奴だとは聞くし。もう夜も遅い。スマンが帰らせてもらうぜ。何かあれば知らされるはずだ。だから変に勘ぐるなよ。」

 

そう言ってリタは部屋から出ていく。

それを止める者は誰もいなかった。

 

玄関の扉に手をかけ、外に出ようとした時だった。

リタは後ろにいる存在に気が付き、後ろを向く。

果たしてそこにいたのは金の少女だった。

急いで来たせいか少し息が上がっている。

 

「あー……。何か用かい?」

 

「何で『アリア』を知っているの? 貴方は、何を知っているの?」

 

単刀直入な問いかけだった。

しかし、リタにとって予測の範囲内の質問であった。

 

「……これでも都市最強の一員だったからな。否が応でも情報は回って来る。それだけだ。」

 

「……。」

 

「そんな顔をしなくても、俺は君に詮索するつもりも言い触らすような真似はしないさ。」

 

そう言ってリタは身を翻し、都市の暗闇に溶けていった。

アイズは少しの間、其処から動くことは出来なかった。

 

 ▼△▼

 

リタに続きルルネが出ていき、【ロキ・ファミリア】の幹部だけが残った部屋の中で彼等の話し合いは続いていた。

議題は無論、怪物祭(モンスターフィリア)と『街』で起きた騒動、そしてリタ自身についてだ。

 

「【ゼウス・ファミリア】の生き残り、まだいたとはね。それに彼が言うには【ヘラ・ファミリア】含め多くの生き残りがいるそうだ。」

 

「……ゾッとするな。Lv.8にLv.7の戦力が誰にも制御されずにいるとは。」

 

「今の都市を見てあやつらが何を思うかは明白じゃしのう……。」

 

「現時点では何もする気はないと言うとったけど、何時気変わりするか分からんしな~。備えといても無駄にはならんやろ。……ディオニュソスの言うとったウラノスの隠し事はこれか? でも、それにしては……。」

 

三首領とロキは嘆息しながら言葉を交わす。

その内容は到底普段の彼等彼女等らしからぬ弱気なものだった。

 

「おい、フィンにジジイにババア、そしてロキ。何をそんなに弱気になってるんだよ。」

 

しかし、そんな三人と一柱の弱気を嘲笑うかのようにベート・ローガは声を上げる。

驚く他を他所に自身の持論をぶつける。

 

「あいつらは『負け犬』だろうが。何であれ此処から逃げ出した雑魚共だ。」

 

「半ば伝説と化したファミリアを雑魚扱いって……。」

 

「うーん。流石の駄犬。―――でもあいつらにとっては違うみたいだな、ラウル。」

 

聞く人によっては鼻で笑われるであろう台詞だった。

実際、その場にいたLv.4の青年―――【超凡夫(ハイ・ノービス)】ラウル・ノールドは絶句してしまっている。ラウルだけでなく、幹部候補や一部幹部も呆れた目線を送る。

しかし、彼の狼青年をよく知る三首領と女神の反応は異なった。

 

「全く、言ってくれるのう。」

 

「だが、そうやなあ。何時までも過去の遺物に縛られるわけにはいかんし。しかもあの狒々爺と最悪最恐(クレイジーサイコ)の奴とか無茶苦茶嫌やわ。」

 

「ああ、確かにロキの言う通りだ。超えたつもりになっていたな……。」

 

「しかし、実際として僕等は彼等彼女等を超えることは出来ていない。」

 

「ということは、やはりか。」

 

ガレスの頷きにフィンは小さく同意する。

 

「『遠征』を早める。五十階層の借りを返しにいこうじゃないか。」

 

「五十階層……。そう言えば今回も出て来たっていう……女体型? あれが出て来たな。それ以上に鬱陶しい芋虫もいたが。」

 

前回の遠征時、【ロキ・ファミリア】は新種と断定される怪物(モンスター)と遭遇した。

溶解液を吐き出す巨大芋虫(ジャイアントキャタピラー)や悍ましい声を放つ女体型。

姿形こそ違っていたが『リヴィラの街』に現れた女体型と同じ性質を持っていた。

 

「ああ、しかも【不死鳥】―――いや【緋炎】によれば三十階層で回収した『宝玉』によって超大型級(モンスター)が変異し、あの女体型になったそうだ。」

 

怪物(モンスター)を変異させる『宝玉』、ね。俄かには信じられないわ。」

 

「で、でもそれが本当なら大変なことになるっす……。闇派閥(イヴィルス)があんな戦力を大量に保有できるとなったらそれこそまた『大抗争』が始まるっす。あれだけ強いなら【ゼウス・ファミリア】や【ヘラ・ファミリア】がいなくてもヤバいっすよ……。」

 

不気味な魔石を持つ『極彩色の怪物(モンスター)』。

『緑の宝玉』によって変異した女体型の怪物(モンスター)

何れも既存の常識を打ち破る存在であり、同時に強力な敵でもあった。

第二級冒険者では歯が立たず、第一級冒険者でも苦戦する程だった。

 

「そう言えば【ゼウス・ファミリア】で思い出したけど、【緋炎】って一体何者なの? Lv.6だってのは分かったけど、聞いている限りじゃそんなに凄いって訳でもなさそうだけど。」

 

ティオナ・ヒリュテが嘗てを知る者達に尋ねる。

そしてその疑問は他の者達にとっても同様だった。

 

「【緋炎】……、いやここは敢えて【不死鳥】と呼ばせてもらおうか。確かに彼はLv.6。嘗てのオラリオでは精々数いる手練れで終わる人間だ。」

 

「だが、奴は唯のLv.6ではなかった。()()()()()においてLv.6並みだったのだ。」

 

「どういうことだよ。Lv.6ならそれ相応の技能を持つのは当たり前じゃねえのか?」

 

ベートの反応は当然のものだった。

冒険者はLv相応ないしそれ以上の『技と駆け引き』を持つ。

これは自身の超人じみた身体能力を十全に、若しくはそれ以上に扱うためだ。

そのためLvが高い者は総じてそれ相応の努力と研鑽を続け、己を磨き続けているのだ。

 

「言い方が悪いぞ、アンドレウにガレス。ベート、確かに【不死鳥】は自身を魔法剣士と称したが私達からするとそれは正しくない。いや、奴を表すには不十分だ。正しくは前衛兼中衛兼後衛(オールラウンダー)。少し長いけどこう評するのが正しいだろう。」

 

「前衛並みの攻撃力と防御力、フットワークに魔法剣士特有の魔法行使速度。威力は後衛並みじゃ。おまけに下手な治療師(ヒーラー)よりも傷を癒せる。化物揃いの【ゼウス・ファミリア】の中でも数少ない異端者だろう。」

 

ガレスの言葉で場が驚愕で静まる。

その静けさはあの男を異端者だということを言葉なくとも物語っていた。




リタ・ナラティブ改め【不死鳥】ヨルドのステイタスです。
そして彼自身の設定も追記しました。(2023/8/27)


【不死鳥】ヨルド、【緋炎】リタ・ナラティブ

ハーフエルフ

Lv.6


《アビリティ》

力:S906

耐久:S948

器用:S927

敏捷:S936

魔力:S948

対異常:D

魔導:D

魔防:E

先制:F

精癒:G


《スキル》

炎霊心核(フロガ・カルディア)
・『征伐』又は『浄罪』の性質を持つ『聖火』を使用可能。性能はアビリティ『魔力』の値に依存し、発展アビリティ『魔導』により性能が向上する。
・炎耐性。

炎熱導師(フレイムマスター)
・炎属性の威力、効果、範囲の超強化。
・炎耐性。

最強系譜(ゼウス・カリス)
・発展アビリティ発現率上昇。
・スキル、魔法の発現率上昇。

【ゼウス・ファミリア】の冒険者。主兵装は大剣。
前衛、中衛、後衛として戦える唯一無二の存在。
つまり同レベル(ゼウス・ヘラ基準)の戦士、魔法剣士、魔導師の役割を涼しい顔でこなせるということ。
しかしそのレベル以上のことはできず、何かしら上位者へ下剋上の手段を持つ同僚へのコンプレックスから必要以上に自分を下に見ている。
心臓が精霊となっているため【炎霊心核(フロガ・カルディア)】という特殊なスキルが発現している。
このスキルで『聖火』を操り、冒険者として活躍した。
『征伐の聖火』は攻撃や防御に、『浄罪の聖火』は治癒に用いる。
全盛期は首を斬られても死なない不死身具合であり、【不死鳥】の由来になっている。
因みにだがハーフエルフなのに耳は短く、外見だけ見ればヒューマンと変わらない。
そんな訳で周囲もヒューマンとして認識しており、価値観はヒューマンと変わらない。
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