不死鳥は地に落ちた。衝突の瞬間、
「どこに落ちた……?」
フォルケは目を細めながら、遠く、
「ダレン宮のあたりか……?」
ダレン宮はヴェラらが祈っていた地点から北に約650
「あんなに高くから落ちて、ローズマリーは無事なのか……。いや、聖女だから、大丈夫……、なんだよな……?」
フォルケは僅かに声を震わせながら答えた。
「いや、聖女と言えども、衝撃で体が弾け飛び、
□□
ダレン宮正面『
不死鳥は痙攣している。落下の衝撃で
そしてリューデン公爵ヒューバート・ダーフを先頭に、
「思ったよりもデカい。生きているのか……?」
ヒューバートは
その後は決められた箇所に呪文を書いて魔法陣は完成するが、仕上がりまではどんなに早くても3分。陣に間違いがあれば修正せねばならないし、作動させて不死鳥の動きを鈍らせるまで1分程度はかかる。いや、思ったよりも体が大きいので、もっとかかるかも知れなかった。
マン卿は池の前に到着すると、下馬して
「巫女は祈れッ!! 石灰を切らした騎士も祈るべしッ!! 不死鳥の体を聖で弱める!!」
神官や
遅れて現れた荷物持ち達は、持ってきた薪を手早く焚べて、
雪と噴水の雨とが吹き付ける中、東西南北定められた箇所で麻薬を飲んだ舞姫が踊り始めた時、リトル・キャロルは不死鳥の体の下から脱出した。芋虫の魔法は既に解呪していた。だが右腕と右足は
キャロルは浅い池の上を這い、叫んだ。
「ローズマリーっ!!」
祈りの音が激しく、自分の声も聞こえない。
「ローズマリーっ! ローズマリー、どこだっ!!」
腕と脚の代わりに
「目が見えていないのか、リトル・キャロルッ!」
キャロルは目を閉ざしている。
「どこかにローズマリーがいるはずなんだっ!!」
「まずは目を治せ! 薬師に頼もうっ!」
「構うものか、
キャロルがヒューバートの手を振り払おうと揉み合う中、不死鳥は
「ちぃ……! まだ魔法陣も描き終わっていないのだが……!」
しかし、ヒューバートの心配とは裏腹に炎は巫女や騎士にまで届かず、というよりも天に向かって炎を噴く時間が多いようだった。それどころか、自身の体にも炎を浴びせているように見え、ついに体の各所に炎が燃え移った。
「まさか、自分の体を焼いているのか……? 魔法陣で体が冷えるのを防止している……?」
「いや……」
キャロルが思うに、それは妙である。音からして、徐々に体を
意味深で、不気味な仕草だった。祈りの苦しみで狂ったなら良い。脳を痛めて自他の分別が付かないなら、なお良い。──正気で自死を選んでいるのなら、怖い。
そしてキャロルは息を呑む。暗闇の中、不死鳥の気配が
(……不死鳥が、増えた?)
キャロルは凍てついたように思考停止する。
次いで乱れたキャロルの髪が静電気を帯びたようにふわりと持ち上がった。巫女たちの髪も、騎士達の髪も同様で、帯電質の者に関しては
「何が起きている、ヒューバート」
「光だ。光が、
不死鳥の体に燃え移った炎から、一本の細い光が天に伸びた。光は瞬く間に増えて、次第に重なり合って太くなり、10秒も経たぬ内に太い幹のようになった。──不死鳥フェニクスは王都を焼き尽くした
「縞の木……?」
その縞の木が何であるか、キャロルには良くわからない。ただ、相反する2つの感情が空間に満ちるのは感じていた。
1つは『怒り』。狂おしいほどの怒り。言わば呪詛的な怒りに近い。例えるならば田舎、道端で行われる
もう1つは愛。
キャロルは気がついた。──今さっき二重となったと感じた気配は、不死鳥の子ではあるまいか。
つまり、不死鳥は死を予見して、
キャロルは決意する。不死鳥を殺してはいけない。
左手で十字を切り、脚──の代わりにした
(──間に合えっ!)
池に張った根は
天で傘を広げるようにして光の葉を茂らせていた
それと同時、二重となっていた不死鳥の気配は一つに集約された。つまり、腹の中に生まれたらしい
不死鳥は力を取り戻した。キャロルの
金切り声を上げるのと同時に、めりめりと音を立てて、不死鳥は左右3つの翼を生やした。キャロルの生命の力が干渉して、更なる力を得たらしい。
(──凍結の魔法は)
既に魔法陣は完成して、キャロルの足元では水が凍っている。不死鳥の体にも霜が纏わりついていて、動きも確実に鈍くなっていた。
そして不死鳥は
「ヒューバート!! 下がれ! ヤツを凍らせて
キャロルは回復の魔法を凍結に転じさせて、不死鳥を氷漬けにしようとした。しかしヒューバートはその場から動く気配がない。
「どうした、早く下が──」
「すまない。リトル・キャロル、許せ」
ヒューバートは深く息を吐くと、聖鎧の腰部に吊り下がる、不死鳥を封ずるための『水晶の
☆3巻上が発売されました。
【挿絵表示】
Amazonの商品ページ
楽天の商品ページ
オーバーラップストアの商品ページ
☆ 1巻はこちら(ご購入まだの方はぜひ。書き下ろしの短編があります)
Amazonの商品ページ
楽天の商品ページ
オーバーラップストアの商品ページ
☆2巻はこちら(ご購入まだの方はぜひ。キャロルの過去エピソードがあります)
Amazonの商品ページ
楽天の商品ページ
オーバーラップストアの商品ページ