旅人は夜の街を
「くそっ! 素早いっ!」
兵士2人は
必死に追っている内に笛の音を聞いて駆けつけた兵士四人が合流、そのうちの1人がボウガンの名手で、旅人の背中目掛けて連続で射かけた。しかし旅人は振り向く事なく、ひらひらと避けて見せ、ぐんぐん突き放す。
「せ、背中に目でもついてんのかっ⁉︎」
旅人の走りは速い。とても捉えられず、このまま追いかけていても逃すだけだ。──だが、旅人の向かう先は
「しめたっ! ここは
言って、兵達は三叉路の
だが他の兵は旅人を追うのに必死で、発砲音も、撃たれた兵の小さな悲鳴も耳には届いていなかった。とにかく、兵らは旅人を直接追う者が3人と先回りする者が2人という形で、三叉路で二手に分かれた。
先回り組2人が
「痛っ……」
急に指先がチクリと痛んだ。手も足もである。暫く走っていたが、我慢ならなくなって立ち止まる。しかし、手を見ても何か異常かあるようには思えない。
「な、なんだ?」
「お前も痛むのか?」
徐々に痛みは痺れのようになってきて、暗がりでも何となく分かる程度には見た目にも変化が現れた。指先が徐々に闇に溶けて──いや、指先が黒く変色している。
「何が起きている……」
結論から言えばこれは
「クソ、なんとかしなくては……‼︎」
兵は焦った。凍傷だと気が付かず、何らかの毒を仕込まれたのだと思って、体のどこかしらに毒矢が刺さってないか体を
「さ、寒い……」
体が芯から冷えて、二人、
「どう対処したら……」
こんな魔法は知らない。
そして兵は急激な眠気に襲われて、旅人を追うことは出来なかった。
□□
旅人の背中を追う兵3人は疑問に思っていた。先回りをしているはずの2人が一向に現れない。まさか、道に迷ったのだろうか。
「ええいクソっ! あの野郎共は何してやがる!」
そして
「おい! 止まれっ! どこからか狙撃──」
そう叫んだ時、この兵は膝を撃たれて倒れる。
ついに旅人を追う兵は、
思惑通り、旅人は真っ直ぐ進む。そしてついに足を止めた。道が
「ハァハァ、追い詰めたぜ……」
兵は肩で息をしながら旅人を
「もうお前は逃げられねえ」
「お勤めご苦労様です。お一人ですか?」
背後を振り返る。ついて来ていた
「……なっ! 」
「それで、何の用でしょうか」
旅人の
「お前たちは民を
旅人は兵を暫くじっと見つめた後で、顎に手をやった。──思っていた答えと違った。
民を煽動とは? 何かの
「何の話ですか?」
「黙れッ‼︎ お前は罪を重ねていると言っているんだッ! 神聖カレドニア王国はお前たちのような存在を認めてはいないッ!」
「私が罪を重ねている?」
気になる言い方だった。禁軍は第三王子リアンを捕らえに来たものだと思っていたが、目的は海聖の私? 何故?
「……私が罪を重ねているのですか?」
「ハッ。とぼけるつもりのようだな。 ならば実力行使だ」
男は緊張を
「俺は
マリアベルは思う。この男の目的は、やはり聖女。でも、何故?
しかし、これらの疑問は次に男が発した一言で、全て
「覚悟しろ。──輝聖リトル・キャロル!」
「……は⁇」
──リトル・キャロル? この男、もしかして、私を
「正体を知られて驚いているようだな! だがこれ以上隠しても無駄だぜ。輝聖は外套を羽織って
男はマリアベルの脚を指差す。
「──
マリアベルは
私が、あの、リトル・キャロルと間違えられた? 他の人間ならまだしも。
よりによって、あのリトル・キャロルと?
「はあああああああ⁇」
マリアベルは額に
確かに、デュダの街は大白亜、即ち聖都アルジャンナと街道で繋がっている。そしてリアンを女子と勘違いするのも分からなくはない。
分からなくも無いが、許せない。
マリアベルは帽子を投げ捨てた。
「……なに?」
2人の間にしんと沈黙が流れる。長い沈黙だった。互いに言葉を待っていたのだが、痺れを切らしたのは兵の方だった。
「貴様、誰だ……?」
「──マリアベル・デミ」
言われて、ぽかんと口を開ける。
「
そして兵は鼻で笑った。海聖は一度巡礼に出たきりで都に
さて普段のマリアベルであれば、
我慢できず、マリアベルは吠えて全ての間違いを指摘する。
「──輝聖と共に旅をしているのは、銀髪の田舎娘ッ!」
マリアベルが男を睨め付ける。男の足元に
「輝聖はデュダにはいないッ! マール伯爵領から南西に向かって、王都を
マリアベルの背後、水路の水が
「輝聖の身長は5
水路の表面を風が撫でて、ふわりと無数の水玉が浮いた。爪ほどの大きさの何百という水玉は宙で風に踊り、
「たとえこの街にあの子がいたとしてッ!」
マリアベルは兵に向けて手を
「──お前如きがリトル・キャロルに指1本でも触れられるものかッ‼︎」
翳した手を振り下ろす。すると踊る水玉が一斉に兵に向かっていった。1つ1つが輝く針となって、男の体を貫く。甲冑も全く意味をなさなかった。
水玉は脚部を覆っていた霜をも粉砕し、兵は倒れた。血溜まりが広がっていく。脳や心臓には当たらなかった為、なんとか生きながらえて
そしてマリアベルは兵の顔面を踏みつけて十字を切る。
「何より、リトル・キャロルはこそこそと逃げ回るような女じゃない。舐めるな、
海聖の足の裏は仄かに光って、兵の傷を死なない程度に癒していた。喉や肺に開いた穴も臓器の傷も、じわりじわりと治す。マリアベルはこのまま、男から情報を引き出すつもりだった。何かを隠すようであれば回復魔法を弱め、死を実感させてから、また問いただす。
だが、兵は諦めが悪かった。意を決したように
「《──
そして男は小さく呪文を唱えて、
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