これは何の因果か、天国の行き方を記した本が彼女の目の前に落ちる。彼女の名はフレア、まだ修道女になったばかりの女性。フレアは協会の地下室にある図書室で調べものをするために訪れていた。落ちた本を手に取る。
「かなり古びた本ね」
その本は埃まみれであった。軽く手ではたき中身を除く。
-- 天国へ行く方法があるかもしれない --
その文字をみたフレアは運命を感じる。私の目指す場所はここだと、精神が理解した。手に汗が出てきており、呼吸も多少荒くなる。フレアは続きを読む。
‐死んだ先が天国じゃあない。私の言っている天国とは、精神に関することだ。精神の向かうところ、精神の力も進化するはずだ。そしてそれの行きつく所が天国だ。本当の幸福がそこにある。幸福とは、無敵の肉体を持つことや、大金を持つこと、人の上を立つことでは得られない。天国の行き方を忘れぬようこのノートに記しておこう。‐
フレアは思わず固唾を呑む。とんでもないものを見つけてしまった焦りと、この本の作者が考えた天国に行けるかもしれない興奮、何故この本がここにあるという疑問、様々な感情が彼女を襲う。
「私は…天国を目指そう」
強く決意する。その時、地下室の重い扉が開かれるが、彼女はそれに夢中で気が付かない。
「フレア殿、フレア殿」
「は、はい。何でしょう神父様」
フレアは急な呼びかけで驚き、思わず持っている本を後ろに隠した。
「どうしたんですか、そんな汗かいて」
「いや、ちょっとここ蒸し暑いですからね。その中で夢中で本読んでましたから」
「はぁ、あなたは神から【聖者】という天啓をくださいました。いずれ勇者たちと一緒に魔王を倒すのですから、しっかりしなさい」
「すみません。神父様」
彼女は、生まれた時から【聖者】という天啓を受けた。この世界には魔王が存在している。それはこの世界に住む者たちを恐怖に陥れる。そのような存在から守るために、神から4つの者に天啓を授けた。そのうちの一人がフレアだったのだ。
「アンデス王国から使者が来ました。そろそろ旅の準備をしなさい」
「分かりました」
神父は地下室の図書室からで出ていき、フレアは1人になった。
「私の使命は、魔王を倒すことじゃあない。私の使命は、天国へ行くこと。残りのページは時間がある時に読もう」
彼女は固く誓うのであった。
このノートは彼女の近くに落ちたのは運命なのか、それとも偶然なのか、それを読んだ彼女の運命は少なくとも狂い始める。いや彼女だけでなく、この世界の運命が狂っていくのかもしれない。
続くかも。