ビルドイン・マイカントリー!   作:たいたい35

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告白

「私の話を聞いていただきたいのです」

 

やがてポットの紅茶がなくなった頃、彼女は自分の生い立ちについて静かに話し始めた。

 

「物心ついた時からずっと、私は自分の意思で城の外へ出たことがありませんでした。お父様は危ないからと私を外へと出すことを許さず、お母様に相談しても、お父さんを裏切るような真似は怖いからと相手にされなかったのです」

 

淡々と述べるその顔は冷たかった。初めて会った時に似ているその表情はやはり寂しさを帯びている。

 

「酷い仕打ちではないのです。両親は私が退屈しないようにと、絵本や楽器、色々与えました。けれど、絵本の中に出てくる少女は友達に囲まれています。少年は町の人々と協力して生活しています。他者と関わり合いながら生きていきます。ですが私にはそれが分からないのです。皆と助け合いたい。絵本の中のその幸せを感じたいのにそれができない。もちろん今が幸せでないというわけではないのです。ですが私は孤独でいっぱいでした。このまま孤独に暮らす未来が不安で不安で仕方がなかったのです」

 

彼女は戸惑っているようだった。外出を制限され、世界のことは疎か、他者との関わりすら存分に培うことができなかった自分を孤独に感じているのだ。私はずっとフランと一緒に生きてきた。その日々は決して裕福ではなかったけれど幸せで、そんな大切な人が急にいなくなってしまえば気が狂いそうになる。境遇は私とは違ったが、シャロンのその気持ちは十分に理解できた。しかし私の声を挟む余地なんてなくて、シャロンの話はもう止まらない。

 

「ある日お父様が言いました。今年の大会の優勝者をお前の婿とすることにした。勇敢で頼りになる、お前にふさわしい男がきっと見つかるだろう、と。孤独で何も知らない箱入り娘の私は、結婚相手さえも自分で決められないのです。一生を捧げる殿方くらい、自分で選びたいのに……」

 

とん。一滴の涙が滴り落ちた。私に顔を見られないようにしながら拭っている。彼女は大きな不安を胸に怪物として抱えていた。ずっとずっと暗い顔をしていた真意をようやく聞くことができた。しかし、今日の彼女はそうではない気もしていたのだ。私の気のせいかもしれないが、日が経つにつれて彼女の頬は少しずつ緩んでいたように感じている。けれどそれは涙を流す彼女の前で決して考えてはいけないことだった。そう思った矢先、表情が見えない彼女の様子が少し変わった気がした。

 

「そう思っていた時に、アイリス様がここに訪れました。不思議な感覚でした。凛々しく美しいその女性は、とても悲しい瞳をしているのです。けれど同時に、とても優しい瞳をしているのです。大会への参加を表明するアイリス様は、昔本で見た優美な王子様に似ていました」

 

涙を流してすっきりしたのか、彼女は明るかった。心に小さな希望の炎を灯したような、そんな感じだった。

 

「アイリス様は第一試合、目に追えないような速度で圧倒しました。その後も、華麗な剣捌きで表情を変えずに倒していくのです。この人だけは違う、そう思ったのです。それに、終始相手を傷つけないように振る舞うその姿は、紛うことなき王子様でした」

 

少しずつ彼女が昂っていくのがはっきりと分かった。声には張りが生まれて、大きくなっていく。

 

「アイリス様は決勝戦が始まった瞬間、ライーダ様を切り刻んだのです。私は今までに感じたことがないくらいの衝撃を受けてしまいました。けれどそこには大きな魔物が立っていて、空からは雷が何度も何度も落ちてくるのです。それにも全く怯まず、アイリス様は魔物に灼熱を浴びせたのです。私は夢中でした。胸が苦しくなるほどアイリス様に夢中でした。褒美すら人々のために利用する心優しいアイリス様の姿に、すっかり魅入られてしまったのです」

 

目を輝かせながら彼女は私を見つめた。少しずつ距離を縮めて、私の瞳を顔を赤くして見つめている。

 

「初めはこの気持ちが分かりませんでした。けれど今ならはっきりと分かるのです。私はアイリス様に強く惹かれています。その美しい瞳が、私を恋焦がれさせるのです。外との関わりが無かった私に、神様が与えた初めての機会なのです」

 

唐突の出来事に頭が真っ白になってしまった。何も返事を返すことができず焦る私を前に、シャロンはさらに続けた。

 

「今の私はもうアイリス様のことで頭がいっぱいなのです。さっきの笑顔が頭から離れないのです。私のそばで、その笑顔を独占したい。お父様はあのようなことをおっしゃっていましたが、私はアイリス様が良いのです。あなたと、あなたと結婚したいのです」

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